新規投稿 ┃ツリー表示 ┃一覧表示 ┃トピック表示 ┃検索 ┃設定 ┃PCホーム ┃使い方 ┃携帯ホーム  
6 / 10 ページ ←次へ | 前へ→

【108】CPss2第24話「魅惑のミラクル」
 REDCOW  - 07/12/7(金) 12:14 -
  
第108話「魅惑のミラクル」
 
 
「…凄い。」
 
 
 ミネルバが思わず呟く。
 彼女の目前に広がる戦いは次元の違う物のように感じられた。今までの試験の歴史でこれほどの戦いは有っただろうか。自身の知り得る範囲では聞いた事の無いことが起こっている。それはとても恐ろしい事だ。
 
 
「ぐ、ぐぅうう!!!」
 
 
 ヒカルが唸る。
 既にクロノが先ほど放ったシャイニングの出力の倍は有ろうかという巨大な魔力に、体の全体から悲鳴が上がっていた。ただでさえコントロールの難しいシャイニングという魔法を、これほどの大出力で長時間使い続けることは並大抵ではない。だが、ヒカル自身は既にそんな事は関係の無い事だった。
 
 目前の敵を倒す…ただ、それだけだ。
 
 アミラは相手の出力の高さに対応を苦慮していた。だが、彼女としてもこのままこの力に対抗し続けるのは得策ではなかった。
 
 
「…仕方ないわね。あまり使いたくなかったけど……マルタ!リーパ!返すわよ!」
「はい!お姉様。」
「はい!お姉様。」
 
 
 二人の返事を聞くと、彼女は集中した。すると急速にバリアフィールドの厚さが厚くなった。それを確認すると、彼女はフィールドへの魔力供給を打ち切り、新しい魔法の集中を始めた。
 魔力供給を打ち切られたフィールドは、一時的に分厚くなったとはいえ徐々に抵抗力を弱め、次第に削られ始めた。
 
 
「…メーガスかしまし娘。〜」
 
 
 アミラが唐突にお決まり(?)の決め台詞の宣言を始めた。
 
 
「…魅惑のミラクル〜〜〜、ミラー!ミラーッッ!!!」
 
 
 そう叫ぶと、彼女はまるで押し出すような動作をして魔力を解放した。
 すると、突然冥の黒きバリアフィールドは明るく輝く光を放って、一瞬にしてヒカルの魔力を跳ね返した。
 
 
「!?」
 
 
 ドドオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォン!!!!
 
 
 巨大な爆風が巻き起こる。
 シャイニングの閃光が空間全体を満たし、猛烈なエネルギーの渦がアミラのフィールドにも襲いかかる。その力は大きな振動となって少なからず伝わり、中にいる者たちを動揺させる。
 
 
「だ、大丈夫かケロ!?」
「いやん、怖いわ!」
 
 
 カエオとパンチが不安を口にする。しかし、アミラは不敵に言った。
 
 
「心配無用よ。さて、私達の勝利は確定の様ね。」
 
 
 そう言うと前方を見据えた。
 そこにはボロボロになった腐れ縁チームを保護する光の幕が見えた。
 
 
「…最後にエンジェルバードに救われたようね。でも、彼らは再起不能よ。」
 
 
 彼女はそう言い放つとフィールドを解き、つかつかと腐れ縁チームのもとへ行くと、魔力で呪印プレートを引き出し、そこから一つ呪印を引き抜いた。緋色に輝く火の呪印だ。
 彼女はそれを仕舞うと、二人の妹達に目配せした。
 彼女達はそれを合図に、フロノ・ノ・コリガーチームと乙子組から魔力で呪印を奪った。
 
 
「あぁ、勝手にぃ!!!」
「あんまりだケロォ…」
 
 
 2チームから不満が漏れる。
 しかし、アミラはそんな彼らに反論した。
 
 
「あたしらはあなた方に呪印争奪のバトルを申し込んでいるワケ。つまり、お宅らはそれに同意したわけだから、負けた以上は差し出すのがルールなワケ。…それとも、失格の方が良かったワケ?」
 
 
 彼女の言葉は正論だった。
 2チームは大人しく彼女の言に同意した。
 彼女らはそれを確認すると、にっこりと微笑んでクロノの方を見た。
 
 
「うふ、あなたと戦えて良かったわぁ!」
「おう!こちらこそありがとよ!」
 
 
 クロノはそう言って頷くと、彼女は再び微笑んで別れを告げた。
 
 
「では、さらばいば〜い♪」
「さらばいば〜い♪」
「さらばいば〜い♪」
 
 
 メーガスかしまし娘。は謎の別れの挨拶を残し、再び闇の中に消えて行った。
 クロノ達も去ろうとしたが、敗者として残るチームが気にかかった。
 
 
「元気出せ。まだ終っていない。頑張れよ。」
「もう、終わりだケロ。」
 
 カエオの力ない言葉が返る。
 フロノ・丿・コリガーチームはまるで真っ白と言わんばかりの状態だった。すぐ隣の乙子組も………ここは触れないでおこう。
 クロノ達は身支度を整えると、光のヴェールで守られた腐れ縁チームのもとへ行った。
 
 
「大丈夫か…って、大丈夫じゃないよな。」
「…、…、…るせい。さっさと消えやがれ。」
「…そうか。凄かったぜ。じゃぁ。」
 
 
 クロノの言葉に、ヒカルが少し微笑んだ気がした。
 クロノは新しく現れた通路へ向けて歩き出す。
 それにシズクが続く。
 最後尾のミネルバは、彼らに深々と一礼を捧げると、彼女もまた彼らに続き闇の中へ歩く。
 
 
「おーし、最後は冥だ!」
 
 
 クロノの力強い声が洞窟に響いた。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.11) Gecko/...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【107】CPss2第23話「我慢比べ」
 REDCOW  - 07/11/30(金) 13:59 -
  
第107話「我慢比べ」
 
 乙子組組長であるフォースは、チームメイトのパーとパンチに用意を促すと構えた。
 それに対し、対峙するメーガスかしまし娘。達は余裕の表情でそれを眺めている。フォースはそんな彼女達の余裕っぷりが腹立たしくて仕方なかった。そして、思い出されるのは、前回の敗戦の記憶。…彼らは彼女らに屈服したのだ。無残に。
 しかし、今回の彼は同じ轍を踏むまいと用意してきていた。それは乙子組としての意地を、いや、男としての意地を通す為の決意ともいえる努力だった。
 
 
「俺達を前に余裕かましているたぁ、良い度胸だ。だが、今回の俺達はお前達に負けんぞ!!!」
「そうっすよぉ、アニキの言う通りっす!」
「乙子組を舐めちゃダメダメ。」
 
 
 一通り彼らの売り文句が終っても、対する相手は呆れたように余裕で構えていた。
 フォースはとても腹立たしかったが、ここで感情に溺れるわけにはいかない。彼らはこの時を待ったのだから。
 
 
「乙子組ーーーーーっ!ふぁぁいおっ!(Fight!)」
 
 
 フォースが叫ぶ。
 厳つい体でポージングを決めると、彼を中心に天の魔法陣が展開される。そして、それに呼応するように右隣で同様にポージングを決めたパーから火が吹き出し、左隣で同様にポージングを決めたパンチから水が噴き出した。
 
 
「いざ、デルタ、エクストリーム!!!」
 
 
 フォースが突進する。それに引かれるようにパーとパンチの火と水が混ざり合い、天の魔力がその力を推力に変えてフォースのスピードを加速する。
 巨大な魔力を纏ったフォースの突進に、ようやくメーガスかしまし娘。が動き出した。
 
 
「マルタ!リーパ!良いわね!」
 
 
 二人の妹に促す姉でありリーダーであるアミラに対し、彼女達からも準備が整ったことを同時の返答で返した。
 
 
「はい、おねーさま」
「はい、おねーさま」
 
 
 アミラは頷くと、妹達の3歩前へ出て合掌し、魔力を集中し始めた。
 そして、三姉妹の三女であるマルタが構えて叫ぶ。
 
 
「メーガスかしまし娘。ーーーーーー!!!」
 
 
 マルタの叫びにリーパが続く。
 
 
「デルタっ!!!」
 
 
 リーパが同様に構えて叫んだ時、リーパとマルタの体から魔力が放出され、それらは全てアミラに注がれた。彼女はその力が充填されると、最後の決めぜりふを叫んだ。
 
 
「リフレクターっっ!!!!」
 
 
 アミラが叫びながら合掌した手を前に突き出す。
 すると、彼女達全体に薄い青緑のバリアフィールドが展開された。
 だが、それ以上は何にも起こらない。
 その間にもフォースの突進は続き、遂に彼が目前に迫った。
 デルタストームの力をフォースの力技で引っ張り集約して体当たりするデルタエクストリームは、その技の性質上単体の魔力だけではなく、強力な物理的エネルギーも味方にできる。しかも試験の違反に繋がらない自然発生する空間エネルギーをも味方にできるため、単に突進しているだけではない。
 この勝負、その場の誰もが乙子組の勝利を確信した。
 しかし、
 
 
 スポコーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
 
 
 なんと、突然フォースがあらぬ方向に吹っ飛んだ。しかも、ただ吹っ飛んだわけじゃない。彼らは自分達の魔力エネルギーに半ば感電したかのような反応を起こして爆発し、吹っ飛んでいた。そして、無残にもフォースの巨体は彼らの仲間を下敷きとして着地した。
 3重の力を持った彼らの力も、メーガスかしまし娘。の張り巡らしたバリアフィールドであるデルタリフレクターによって、その力の全てを完全に跳ね返されたのだ。勝負はあっという間に着いた。
 
 
「さぁ、お次はどなた?」
 
 
 あまりの格の違いにフロノ・ノ・コリガーチームが逃亡を計る。だが、アミラは見逃さず、即座にまるで魔力を鞭のように収束させると投げはなった。
 放たれた魔力の鞭はゴムの様に伸びて彼らを拘束する。
 
 
「つ、捕まえるなんて卑怯ゲロ!」
「あたし達は降参ケロよー!」
「…無様。」
 
 
 フロノ・ノ・コリガーチームも戦意喪失の降参を決めた。だが、それを見ても対峙するチームがあった。
 
 
「ヒカリ、あのフィールド…たぶん冥のフィールドで、しかも有り得ない高レベルの出力で安定していると見たけど、やれる?」
 
 
 ベンの問い掛けに、ヒカリは行動で示した。
 彼は構えると魔力を集中し始める。
 彼を中心に青い天の魔法陣が浮き上がる。それは次第に支配を広げ、空間全体に浸透を始めた。その魔力は先ほどのクロノの魔力にも匹敵する。
 あまりの出力の高さにクロノも構えて加勢しようとした。だが、アミラはその動きに軽く手を挙げてにっこり微笑んで静止すると、再度前方を見て先ほど同様にデルタリフレクターの構えに入った。
 その間にも天の魔法陣の出力は上昇する。元々この空間が天の呪印の間であることも相まって、その出力は高レベルになっても安定して上昇を続けた。
 
 
「(…やれやれ、ぼくらもこの攻撃に賭ける他ないですね。)イーマ、君の力を僕に貸して貰えないかな?」
 
 
 ベンの願いに、彼女は笑顔で応じた。
 
 
「えぇ、良いわ。本当に…腐れ縁ね。」
「…まったく。」
 
 
 彼女は呆れたように自身の全魔力をベンに託すと、彼もまた自身の魔力を全て引き出し、それらを合わせてボール状に収束させてヒカリに投げつけた。
 
 
「思う存分、ぶつけて下さい!!!!」
 
 
 ボールがヒカリに衝突すると、その力はまるで飲み込まれるようにすうっと吸い込まれた。そして、時を同じくして彼の魔力が急激に上昇した。
 
 
「(シャイニング)」
 
 
 陣が力を解放する。空間にいる全ての存在を圧殺する様な激しい魔力の波が襲いかかる。これには思わずクロノ達も防御フィールドを展開しないではいられないが、その巨大さに追いつかない。慌てるクロノ達を、アミラは微笑んで両手を上げると、そのフィールドを拡大して保護した。
 
 
「お、おい、他の奴らも保護してやってくれないか?」
「えー、面倒よぉ。それに、彼らは敵よ?」
「…んなもん、勝負が終っちまえば関係ないだろ。わかった、俺の魔力も貸す。」
 
 
 そう言うとクロノはアミラに自身の魔力を注ぎ込んだ。
 アミラは驚いた。
 なぜなら、今まで感じた事が無い程の巨大な奥行きを感じる魔力の流れが入ってくるのだ。通常の魔力は自身に転換されれば馴染んでしまうが、クロノの持つ魔力は彼女の中に流れてきてもなおクロノの存在感を感じる。そして、その力は途方もなく底の知れない巨大な、まるで空の上を漂っている様な力だ。
 彼女は全身に鳥肌が立つのを感じた。と同時に、これほどの力があれば空間を拡大することは不可能ではないと感じた。というのも、彼女自身はクロノに言われずとも拡大する用意は有った。だが、このフィールドはとてもデリケートで巨大な魔力を常にコントロールする必要があり、彼女達の魔力ではさすがに今の空間が限度であった。また、空間を拡大し仲間に入れるということは、この鉄壁の防御が消えて無防備になるということでもあった。
 しかし、今ならばクロノの願いも叶えると同時に、彼女達も試した事の無い領域へ行ける気がした。何より、彼らは約束を違わずに自分達を仮に保護下に入れるチームが攻撃してきても守ってくれるだろう。…アミラは大人しく彼の厚意を受け入れると、魔力を集中する。

 空間が拡大し乙子組とフロノ・ノ・コリガーチームのメンバーが領域の保護下に入った。
 それと時を同じくしてシャイニングの攻撃が始まる。
 
 莫大な力のうねりが防御フィールド全体に負荷をかける。アミラはさすがにこれほどの力はこれまで扱った事がなく、対抗するにも普段通りとは行かない。
 空間の向こうで魔力の流れを見ながら、ベンがつぶやいた。
 
 
「…我慢比べか。」
 
 
 ベンの瞳の向こうで展開される勝負は、それほどに結果の分からない力比べとなっているように感じられた。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.10) Gecko/...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【106】CPss2第22話「不利」
 REDCOW  - 07/11/23(金) 11:09 -
  
第106回「不利」(CPss2第22話)
 
 
 シズクが跳躍する。
 それと時を同じくして他のチームも呪印球目掛けてジャンプした。だが、ジャンプ力では蛙族に及ぶ種族は居ない。
 
 
「いただきだゲロ!」
「あ、ちょっと!」
 
 
 カエオが素早くキャッチしてフログにパスを回す。
 だが、
 
 
「パーーーーーーーーー!!!!はっはっはぁ」
 
 
 そこに乙子組副リーダー(?)パー・ヤネンが豪快なパスカットを決めて呪印球を弾く。しかし、弾いては意味が無いとすかさずチームメンバーから突っ込みのパンチが走る。
 
 
「いやぁぁーーーーん、そこ、だめよぉ〜〜〜〜!!!」
 
 
 奇声を発しながら、怪しいお仕置きの始まる乙子組を他所に、その隙に腐れ縁チームの紅一点である、紫の髪に金色の瞳をもった美少女イーマが、華麗に魔力で引き寄せる。彼女の地属性の魔力が引力となって、後僅かで彼女の手に入る瞬間、そこに猛烈な勢いでシズクがラリアット体制で突進。
 
 
「うはははははははははは!あたしの前にいたら、跳ね飛ばすわよぉおお!!!!」
 
 
 彼女が驚いて身を咄嗟に引いた隙を突いて、シズクはしっかりと呪印球を右手でキャッチすると、左手で予め貯め込んでいた火の魔力を地面に叩付けた。
 
 
 ゴォオオオオオオオオオ!!!!
 
 
 「きゃぁ!」
 
 
 シズクを捕まえようとしていた矢先に起こった爆発に、イーマが思わず悲鳴を上げて身をかわす。シズクは爆発の反動を利用して後方に素早く跳躍。
 
 …こうして、チームポチョは火の呪印と同じ轍は踏まなかった。
 
 だがしかし、それを確認して一斉に3チームがチームポチョに対戦を申し込んだ。
 基本的に拒否できないルール上承諾せざるを得ないが、3対1という不利な状況に腑に落ちないシズクが、天上を向き審判に大声で抗議する。
 
 
「ねぇ!ちょっとぉ!3対1なんて、どう見てもおかしいよ!」
 
 
 彼女の抗議に、待ってましたとばかりに即座に応答があった。
 
 
「…審判のカナッツです。チームポチョの要求は却下します。この戦闘はルール上の違反項目に抵触せず、全て正当な手続きの上に進行しています。」
「え”ー!!!マジ、何よそれ!ちょっと!一方的過ぎじゃないのよぉ!!!」
「ルールですから。皆様のご健闘をお祈り申し上げます。」
 
 
 彼女の無情な宣告に、シズクは怒りを露に天上のスピーカーに向けて睨みをきかすと、すぐに構えた。
 彼女の姿勢を見て、攻撃に回る3チームもまた構えた。
 
 
「…悪く思うなよ。」
 
 
 ヒカリのその一言が口火を切るように、一気に3チームの猛烈な魔法攻撃が開始される。クロノ達はバリアフィールドの展開に全力で魔力を集中し防ぐが、流石にクロノ達にも3チーム同時の強烈な魔法攻撃を防ぐのは容易ではない。しかも、彼らの攻撃は全ての属性を含んでおり、フィールドへの対応も必然的に全属性に効果のある冥属性フィールドを展開しなくてはならないが、その為には反属性の反作用の均衡を取らなくてはならず、天属性主体のクロノ達には不利に働いた。
 
 
「くぅ、奴ら、さっきの戦いを観て学習したってことか!?」
 
 
 クロノが苦る。
 先ほどの戦いで出したシャイニングを見て、確かに彼らがクロノ達の実力を考えて共同戦線を張っていると見るのは妥当な判断と言えた。しかし、妥当なだけでは次は無い。だが、それはこちらも同じ事と言えた。
 
 
「…引いて駄目なら、押してみるっきゃ無いでしょ!」
 
 
 シズクはそう言うと、ミネルバに目配せする。彼女もまたシズクの意図を理解し、魔力を集中し始めた。
 シズクは火の魔力をミネルバの出力に合わせて安定させると、二人は同時に前方フィールド向こうの敵に向かってそれを投げ掛けた。
 
 火と水の反作用属性が反発し猛烈な爆発が起こる。
 反作用ボム。…昔、ルッカが発案した魔法攻撃だ。
 
 だが、前方では爆風の向こうで腐れ縁チームのベンとイーマが同様の反作用フィールドを放ち、相殺していた様だ。そして、攻撃が終ると間髪を入れずにヒカリが跳躍すると、両手に貯めていた天属性の魔力を放った。彼の足元には青白く光り輝く魔法陣が支配を広げている。
 …これは紛れも無い、天属性最大最強の魔法、
 
 
「シャイニンーーーグ!!!」
 
 
 彼を中心に爆発的に天の魔力が空間に作用し始め、猛烈な勢いで魔力の中心目掛けて空間が歪曲していく。膨大な重力と反発する斥力が波のように押し寄せ、圧縮し加圧された空間から膨大なエネルギーが吹き出す。
 
 クロノは驚き、自身もシャイニングを咄嗟に放つ。
 だが、準備の整ったヒカリのものと比べると、その魔力の出力は格段に弱い。
 それを見てシズクとミネルバはもう一度反作用ボムをシャイニングに向けて出力を上げて放つ。
 
 
 ドォォオオオオオオオオオオン!!!!!

 
 直撃だった。
 
 その衝撃はクロノ達の背後の壁面を抉るような爪痕として残されていた。だが、爆風の後に現れたのは、誰もが予想しえなかったものだった。
 
「わて〜ら、よーきな、かしましむすめ〜♪」
 
 そこに現れたのは、クロノ達の前に立つ3人の女性の姿。
 その1人、赤い全身タイツ状のスーツを着た、見事なボディラインの女性がクロノに言った。
 
「この戦い、お宅らに加担するよ。その代わり、あんたらに天の呪印はくれてやるから、あたしらは奴らの他の呪印を頂く。どうだい?」
「…よし、良いぜ。その条件飲んだ!約束忘れないでくれよ。」
「ウフ、おーきに。良い男は返事も色良いねぇ〜。さて、リーパ、マルタ、纏まったよ。用意は良い?」
「はい、おねーさま!」
「準備万端ですわ。おねーさま。」
 
 
 二人の妹の返事に、メーガスかしまし娘リーダーであるアミラは、そのしなやかな肢体を妖艶にくねらせると、突如何かのポーズをとった。すると、それに時を同じくして二人もポージングを決めた。
 
 
「愛は!」
「どろどろ!」
「昼ドラのプリンセスになりたかったけど、ちょっと難しいんじゃなぁいって言われてもめげない、そんなしなやかな女性って良いわよねぇって思いながらも、がさつさが抜けない自称セブンティーンな27歳独身絶賛婿募集中のアミラ、with、メーガス、かしまし娘ぇええええ!!!」
 
 
 沈黙が支配する。
 
 
 多少気後れしている面々を他所に、そこに先頭に立って彼女達に立ち向かう勇姿があった。突如何処からともなくバンジョーと、口笛の渋いBGMが鳴り始める。

 
「ほぉ、もはやバブルと共に弾けたと思われていた絶滅危惧種、ボディコン(死語)美女集団、かしまし女の登場か。」
「アニキ、やっちまいましょう!ここでやらねば男がすたるっってもんすよ!」
「そおっす!今度こそ奴らに目に物見せてやりましょう!!!」
「お前達、…強くなったなぁ。兄ちゃんは嬉しいぃ!!!」
 
 
 何やらベタな芝居と共に対抗心を燃やし、筋肉馬鹿変態男3人組と思われていた乙子組が、珍しく男らしき姿で彼女らに対峙した。
 
 その情景は、誰もが確かに緊迫していることには間違いないと考えるだろうが、何か激しく間違っている様に感じられた。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.9) Gecko/2...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【105】CPss2第21話「あめ」
 REDCOW  - 07/11/16(金) 10:49 -
  
第105話「あめ」(CPss2第21話)
 
 
 一面に降り注ぐ光の雨が容赦なく全ての者を攻撃する。
 5属性の中で最も強力な破壊力を持つ天の魔力は生半可な防御では全てを防ぐのは不可能。しかし、それでも一度負けているであろう全てのチームも、この試験に来るだけの力はあるのだろう。第一射は何とか防いでいる様だが、このままではやられるのは時間の問題だろう。そして、それはクロノ達も例外ではない。
 
 
「なんなの!?圧倒的じゃない。こんな力がこの国にあるなんて…」
 
 
 シズクの驚きの声に、ミネルバが言う。
 その声はシズクとは違うが、彼女も困惑している様に感じられる。
 
 
「私もここまでとは思いませんでした。先ほどの地の呪印といい、この力は扱い方を間違えると恐ろしいことになる。(お父様は何を…)」
 
 
 二人の驚きにクロノはというと、元々先天属性が天であることもあり、彼にはまだこの攻撃は温い様子だった。彼は魔力を集中すると、地面に向かって天のフィールドを張った。彼のフィールドは3人をドーム状にすっぽり包み込むと、それまでの攻撃を一切受け付けないバリアフィールドを形成した。
 
 
「ナイス!クロノ!」
「へへ。」
 
 
 クロノがフィールドを張った頃、時を同じくして他の2チームも同様のフィールドを張っていた。ただ、フロノ・丿・コリガーチームだけは天とは逆の地のフィールドを形成していた。…どうやら天属性の術者がいないらしい。
 
 
「ゲコゲコ、頑張るけろーーー!!」
「ゲロロロロロロロロロロロロロ…」
 
 
 必死にフィールドを張るフロノ・ノ・コリガーチーム。しかし、強力な属性攻撃に対抗するアンチ属性フィールドでのバリア形勢は通常の倍の魔力を要する為、急速に魔力を消費して行く。だが、蛙族は元々地と水の属性が通常より高い種族であることもあり、高い地属性のES効果が地属性の魔法出力を通常より低い力で発動させることができる。
 
 4チーム4様の防御体制が整ったが、エンジェルバードの第2射が襲いかかる。
 光の雨は眼下のチャレンジャーの対応を見て倍以上の出力となって降り注ぐ。必死でフィールドを張っていたフロノ・ノ・コリガーチームだが、突如倍に増えた魔力に堪えられずフィールドが消滅しようとしていた。
 
 
「(き、消えるゲロ!?)」
 
 
 3人は皆消滅を覚悟し祈るように目を瞑った。しかし、彼らの恐れていた事態は起こらない。恐る恐る目を開ける3人の頭上には天のフィールドがあった。そして、一人の男が立っていた。
 
 
「大丈夫か。フィールドを延長した。」
「だ、大丈夫だケロ。あなたはチームぽちょの…ありがとうだケロ。」
「なーに、気にするな。困った時はお互い様だろ?それに、ここをクリアしないことには出られない。とりあえず目的は一緒だろ?」
「そうケロね。」
 
 
 フロノ・ノ・コリガーチームは笑顔を見せると、クロノ達のもとに合流した。
 チームリーダーであるカエゾーが人間の言葉で挨拶した。
 
 
「迎えてくれて感謝する。俺はカエゾー・カエ。そして、彼女はカエミ、んでもって、彼は勇者グレンの血を引くフログだ。」
「え、勇者グレン?」
 
 
 クロノは驚いた。この時代にもカエルの血を引く者が居て、実際に会えるとは思いもしなかったからだ。しかし、紹介されたフログは静かに否定する。
 
 
「…フログ、フォレストだ。助太刀感謝する。だが、先に言っておくが、俺は勇者ではないぞ。」
「しかし、フォレストって姓は…」
「フォレストなんて有り触れた名だ。フィオナに来れば幾らでも会える。特にグレンは伝説では蛙男で、我々の一族を導いたと聞く。それに敬意を表してフォレスト姓を名乗った蛙族は多い。」
「はは、そ、そうか。」
 
 
 彼の冷静な否定に、クロノもそれ以上聴く事は出来なかった。
 そこにフロノ・ノ・コリガーチームの紅一点であるカエミが挨拶する。
 
 
「カエミです!助けてくれて有り難う!」
「あぁ、どーも。一緒に頑張ろうな。」
 
 
 互いの簡単な紹介をして合流を済ませた2チームは、尚も降り続く光の雨に対して対策を考えていた。だが、考えている内にどんどん魔力が増強されてきており、その出力に耐えかねて遂に1チームが被弾した。
 
 
「ぎゃぁあああああああ」
「あ〜〜〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜〜〜」
「うふぅぅぅ〜〜〜〜ん、………もっと。」
 
 
 最後の悲鳴はともかく、時は一刻を争う状況と言えた。クロノはシズクにバリアフィールドを引き継がせると、一か八かの賭けに出た。
 
 目をつぶり魔力を集中する。
 クロノの体が浮き上がり、全身から青いオーラが漏れ出し、彼の足元に魔法陣が形成される。その魔法陣は次々に支配圏を広げ、急速に空間全体に魔法陣が描かれ埋め尽くす。
 青きオーラは空間を満たし、その魔法陣からは青く輝く粒子が吹き出して舞い始める。
 
 
「(そろそろか…………今だ!)えい!!!」
 
 
 クロノは目を開けて勢い良く宙から地面に向けてパンチを当てた。そのパンチは地面に描かれた魔法陣の中心にめり込む。すると急速に全ての魔法陣が反応し、膨大な青い輝きが空間を一斉に膨れ上がるように満たした。クロノ最大最強の魔法、シャイニング。
 だが、効果は全く現れなかった。
 そこに現れたのは、青色の鈍い輝きを放つ全チームを覆う巨大な天属性のドーム状のバリアフィールドだった。
 フィールド内部に突如保護されて驚く乙子組と腐れ縁チーム。だが、彼らが驚いている間に頭上のエンジェルバードが第3射を仕掛けた。
 
 
「(これで、終わりよ。)」
 
 
 天から降り注ぐ光が、全てを破壊する。
 …はずであったが、全ての光が青きドームに衝突した瞬間、なんと、飴になった。
 
 
「え”!?」
 
 
 全員が驚いた。
 降り注ぐ光の雨は全て飴となって降り注ぎ、全ての攻撃は無害な甘いキャンディーとなってしまった。…だが、落下してくる物が痛いことには変わりない。
 そこにフログが魔力を集中すると、全チームの頭上に地属性のフィールドを張り、まるで受け皿の様に飴を受け始めた。
 
 
「…これで痛く無いだろう。」
 
 
 もはや全く無害なものとなってしまった光の雨。
 そんな状況にエンジェルバードは怒り、それまでの最大級の魔力で第4射を放った。それはそれまでと違ってバケツをひっくり返した雨の様な膨大な量となって降り注ぐ。しかし、それさえもフィールドは全て飴に変換し、何もかも無害化してしまっていた。
 受け皿には大量の飴が溜まっている。
 
 
「…あなた方の勝利を認めましょう。そう、全ての力は受け流す事もできる。力はあなたの敵ではなく、味方ともなることを覚えていて下さい。」
 
 
 そう言うと、彼女は光の粒子になると、他の呪印獣同様に呪印球となった。
 天の呪印をクリアしたのだ。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.9) Gecko/2...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【104】シ・ル・シ 〜すれちがいコスモス〜
 紗希  - 07/11/10(土) 8:26 -
  
※これは私の実話をもとにした小説です。最後まで読んでいただけるとありがたいです。


もし 神様が
私の願い事を
ひとつでも
叶えてくれるなら


強い心がほしいです


どんな強い風が吹いても
どんな大きな波が襲い掛かっても


折れない  強い心が欲しい

自分の大切なものを
守りきれる


そう  あのコスモスのような

あの  すれちがいコスモスのように


I,始まりの詩〜ハジマリノウタ〜


 もしあの時私が強かったら
 もしあの時私がみんなの心に思いを届けることができたら
 いつも自分に襲われる。自分という大きな影が私に襲い掛かる。夢の中でも

(なんで、あの時もっと頑張らなかったんだ)

 いつも、夢の中の自分に襲われる。そして、自分に返す返事はいつも同じ。

(ちがう!私は・・・・・私は頑張った。私はやったんだ。自分にできること   を!みんなが幸せになるためには、あぁするしかなかったんだ・・・・。)

 違う。こんなの全部ウソだ。自分でも分かってる。逃げていることくらい。
でも、仕方ないじゃない。自分を守らなきゃ。自分を守ることで精一杯なんだ。
私だって、やっと広い広い海の上でもがきながら浮いてるんだ。


これは今から5ヶ月前の話。ここから私の人生は大きく変わったんだ。


中学1年生。西藤 紗希 いよいよ今日は待ちに待った。入学式。8(あんまり楽しみじゃなかったけどネ・・・。)小学生の頃から仲のよかった友達(サチとマリ)と一緒に自転車に乗って中学校へと向かう。まだ春風が肌寒いころなのに、坂道を降りるときの風を切り裂いていく感覚はとても気持ちよかった。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1)@nthrsm069127.hrsm.nt.adsl.ppp.infoweb.ne.jp>

【103】CPss2第20話「天国と地獄」
 REDCOW  - 07/11/9(金) 12:46 -
  
第104話「天国と地獄」(CPss2第20話)
 
 
 天の呪印への道を進み始めたクロノ達3人は、呪印のフィールドが近づくにつれて前方から光が見え始めた。天の呪印の間への道は前方から光を放っており、空間認識に視覚が徐々に戻り始める。3人は視覚があることに安堵しながら進んでいると、前方でプラズマ放電らしきものが無数に走っているのが見えてきた。
 
 
「あれって、…やっぱり天のフィールドのせいよねぇ。」
「だな。」
 
 
 シズクの言葉にクロノも苦りながら同意する。
 ミネルバは落ち着いて前方を見て立ち止まると、プラズマ放電に向けてウォーターを放つ。
 
 彼女のウォーターの水球は宙をふよふよ浮いて進むと、徐々に放電している電気を吸収し帯電させ始めた。彼女はそれを確認すると、ウォーターの出力を上げてどんどん吸い上げる。彼女の考えた方法は上手く行くように思えた。しかし、電気エネルギーを次々に帯電させてゆくウォーター内部の電力は莫大なものとなり始めていた。その力は次第にウォーターの呪縛の許容量を超え、魔力の流れを伝ってミネルバにも襲い始める。
 だが、彼女はそれも見越していた。
 もう片方の腕を伸ばすと、彼女は地の魔力を集中する。そして、無数の砂粒が手のひらから水球へ向けて放たれた。
 砂は帯電する水を吸収すると、周囲の壁に拡散して吸着した。
 プラズマ放電は見事にアースされ、その場から消え去った。
 
 
「ミネルバさん、お見事!」
「さすが、ミネルバさん!」
「フフ、私も少しくらい良いところ見せないとね。」
 
 
 彼女の見事な活躍で開かれた道を進む三人。
 彼らは遂に光溢れる前方の呪印の間に辿り着いた。
 
 入った途端、視界があまりの眩しさにホワイトアウトしてしまうほど、そこは光でいっぱいだった。徐々に戻り出した視界の先には今までの部屋とはまるで違う空間がそこに展開されていた。
 全体は今までとは全く違う高さのホールになっており、白い壁全ての壁面に空と雲が描かれ、そこはまるで天国の様な雰囲気だった。
 
 
「何、ここ…、どうしてここだけ装飾が立派なわけ。」
 
 
 シズクの疑問はもっともだったが、それよりももっと厄介な問題があった。
 後方の扉が閉まる音がする。
 すると、同時に空間に複数の気配が現れた。
 
「待っていたわ!ゴルァアアアア!!!!」
「一緒に戦うゲロ」
「なんだ、君達か。」
 
 なんと、そこに現れたのは、奇妙なマッスル男3人組の乙子組、蛙族のチームであるフロノ・ノ・コリガー、そして、列車で同室だった少年と青年に少女が加わった腐れ縁チームが居た。
 
 
「もしかして、あんた達…負けたのね。」
 
 
 シズクのズバリな指摘に、3チームが一斉に反発する。
 
 
「そんなん、ズバリ言われたら、恥ずかしくてお嫁に行けないわ!ゴルァアアアア!!!」
「悪いかゲロー!!」
「…。」
 
 
 3人は彼ら3チームと否応なく共に戦わなくてはならない現実を複雑な心境で見ていた。そんな中、シズクが3チームに話しかける。
 
 
「ねぇ、とりあえずは共同戦線よ。分かってるわね!」
 
 
 彼女の問い掛けに3チームは同意した。
 そんな彼らのやり取りをしている間に、中央の台座が輝く。そして、黄金に光輝く光球が空へ舞い上がると、その光は黄金の羽をまき散らして拡散し、光球のあった宙を舞う一羽の鳥がいた。
 その鳥は輝く長い尾を持ち、黄金の羽毛に覆われた見事なクジャクだった。
 エンジェルバードが問い掛ける。その声は美しく透き通るような若い女性の声だった。
 
 
「私は天上人に仕えし者。人はエンジェルバードと呼びます。私に挑戦すると言うあなた方の力を、見て差し上げましょう。もし、私に勝てたならば、あなた方の力を認め、私の力を授けます。さぁ、どなたから始めるのですか?」
 
 
 エンジェルバードの問い掛けに、シズクが元気よく言った。
 
 
「全員よ!!!!」
 
 
 彼女の言葉に、他の3チームのメンバーは一斉に苦り顔になった。
 
 
「まじなのーーーー!?!」
「そ、そこは、普通1チームずつとかいうゲロよ?」
 
 
 そんな彼らの反発を他所に、シズクは勿論、クロノ達も臨戦態勢だった。
 それを見て渋々3チームもエンジェルバードに向かって構えた。
 
 エンジェルバードは、下の騒ぎとは関係ないと言わんばかりに優雅に宙を漂っていた。その神々しい輝きは、見ているものを惹き込む程のオーラを放ってさえいるだろう。だが、これほどの神々しさが有ろうと、下の者たちは理解とは程遠いポジションに立っている。いくらオーラが有ろうと理解しない下の人々の存在は、彼女にとって不愉快なことだた。
 
「(…どうせ皆私のことを理解しないのです。全ては力に溺れるが人の流れ。私を理解した人々と同じように…、ならばせめて私が教えて差し上げましょう。人の限界を。)
 
 彼女はその美しい翼を大きく広げると、魔力を集中した。
 彼女の翼から無数の羽が空を舞う。それは幻想的で美しい時がまるでゆっくりと流れ行く様な優雅さを醸し出していた。誰もが目を奪われ、意識を集中するに違いない。
 だが、その優雅さは一瞬で豹変した。

「な!?」
 
 シズクが驚き反応するが追いつかない。
 エンジェルバードの羽は無数の光線となって天より振り注ぎ、全ての者へ容赦ない攻撃を仕掛けた。巨大な天のエネルギーが空間を満たし、そのフィールド効果が光線のエネルギーを増幅させる。
 
 天国は一瞬で地獄と化した。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.9) Gecko/2...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【102】CPss2第19話「呪印解放」
 REDCOW  - 07/11/2(金) 9:54 -
  
第103話「呪印解放」
 
 中に入ると、火の呪印の間同様に入り口の封鎖が起こり、完全に閉まった音が聞き取れると、徐々に中心の呪印を守るモンスター像が光り輝き、視界が戻った。
 戻った視界に現れた空間は洞窟の岩肌そのもまのくりぬかれた空間で、一面砂が敷き詰められていた。
 中心に立つ蛇とも竜とも言い表せるであろう判別の付かない姿をしたモンスター像から声がする。
 
 
「我は地が呪印を守りし者。その力、全てを揺るがし、その拳、金剛を極める者。我に挑戦せしは己らか?」
 
 
 モンスター像はぼんやりと明滅を繰り返しながら問い掛けてきた。
 代表してクロノが答えた。
 
「あぁ、俺達だ。」
 
 彼の声を聞くと、モンスター像は突然輝き、表面にヒビが入るとピシピシと音を立てて表面が崩れ始めた。そして、剥離した表層の下から屈強な肉体が現れた。
 
「我が名はミドガルズオルム。大地を揺るがし、全てを震わせる者。お前達が我が前に震え泣くのを楽しみにしておる。」
 
 そう言うと、モンスターは突然オーバーモーションで尾を振り上げると、そのまま地面に無かって急速に叩きつけた。
 
 巨大な衝撃が走る。
 
 その力は一瞬で空間に広がり共振し、三人は身動きが出来ぬほどの振動に襲われる。咄嗟の受け身もとれずにいると、次の瞬間、地面に急速にめり込みだし、三人に巨大な重力のプレッシャーが襲いかかる。
 
 モンスターはしたり顔で見ていた。
 最早この者達に抵抗する術などない。
 このままリタイヤを宣言し、彼の仕事は勝利に終わるに違いない。だが、彼としては気が抜けなかった。なぜなら、ここ最近の試練の挑戦者の中には、彼の予想外の力を持った者たちが増えていたからだ。しかし、何としても負けるわけにはいかない。彼には勝たねばならぬ理由がある。
 
 
「(あと6チームだ。それで俺は自由になる。こいつらをやれば、あと5…)………!?」
 
 
 モンスターは目前の状況に驚いた。
 彼がアレコレ考えている間に、三人は体の自由を取り戻して普通に立っているではないか。しかし、あの状況でどうやって。
 
 
「驚いたかしら?でも残念ね。私達、この手の攻撃には慣れてるの。これよりもっと強烈な奴を受けた事があるんだから。」
「…そういうことだ。観念してもらうぜ。っといっても、お前に攻撃しても無駄なんだよな。」
 
 
 そういうと、クロノはシズクに目配せする。
 彼女はクロノの意図を理解すると自分の魔力の影響範囲を広げ、クロノとミネルバをその影響圏に入れた。すると、三人の体はすうっとゆっくり浮き上がった。
 彼はそれを確認すると魔力を集中し始める。次第に青白い輝きが全身から湧き出し、彼の足下に無数の魔法陣が描き出され、その支配を広げた。
 
 
「(なんだこいつは!?これは…天の法陣!…しかも、こいつは最高位の天空陣!?この時代にこんな化け物がいるなんて!?!)…ちょ、おい、待て、そんな力を使われたら、この空間その物が!」
「問答無用。はぁああああああ!!!!!!」
 
 
 ゴォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
 
 
 クロノの周囲に敷かれた魔法陣が爆発的に支配を広げる。
 その力は一瞬で地の重力を崩壊させ、全ての物体に浮力となる斥力を発生させた。
 突然の力の転換に耐えられず空間にヒビが入る。
 
 
「ま、まて!くそ、なんで俺様が!?!」
 
 
 モンスターはそう言うと、全魔力を注いで空間を繋ぎ止め始めた。しかし、クロノの魔力は途方もなく膨大で、半ば無謀にも思えた。だが、このまま放置しては自由どころの騒ぎではない。
 
 
「くぅ、管理者!印の解放を要求する!我が印の力を解き放て!」
 
 
 彼の言葉に呼応するかのように、モンスターの額に輝く呪印が青白く一際強く輝いた。
 そして、
 
 
「うごぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!」
「!?」
 
 
 咆哮とともにモンスターの体からの魔力が突如膨れ上がる。
 その魔力は巨大な引力となって空間に浸透し、それまで崩壊しようかという程に空間を満たした斥力フィールドを力押しで制し始める。
 クロノはそれに負けじと魔力を放出し続けるが、時既に遅く、瞬間的に増大してしまった力を抑えることは容易ではない。じりじりとクロノの劣勢が濃厚にになりだした。だが、ここで負けては先に進めない。
 しかし、そこに放送が入る。
 
 
「現在戦闘をしているチームぽちょに戦闘の終了を通告します。直ちに戦闘を終了して下さい。この戦闘の結果はチームぽちょの勝利として決着はついています。」
 
 
 突然の放送に戸惑う3人。
 シズクが理由を尋ねる。
 
 
「本当に勝利なの?どうして?」
「既に呪印獣は印を解放しています。本来呪印獣はその印の力の中で活動しなければなりません。しかし、現在の状態は異常事態です。よって緊急時対応として不戦勝と処理し、この戦闘を終結させるものとします。」
「それって、これはやばいってこと?」
「いいえ。あなた方の戦闘を終了すれば、呪印獣も不必要な魔力の行使をやめます。」
 
 
 カナッツの言葉にシズクはクロノの方を振り向き頷いた。
 彼はその合図を見て戦闘態勢を解いた。すると、確かに呪印獣は攻撃をやめて空間の維持に向けて魔力を注ぎ始めた。
 
 
「…ぐぅぅぅ、お前達のせいで俺はこんな作業までしなければならんのだ。少しは反省しろよ。くぅぅ。」
 
 
 そう言うと呪印獣は一気に魔力を放出した。
 その力はがたがたに歪んでいた空間を一瞬にして見事に修正した。
 
 
「お前達の勝利は放送の通りだ。我が呪印をお前達に授ける。受け取れ。」 
 
 
 彼はその言葉の後、光の粒子となって一点にその光が収束すると呪印球になった。その色は茶褐色をしており、黄金の輝きを放っていた。呪印球はゆっくりと降下してシズクの持つプレートに収まった。
 
 
「これで3つ目の属性を通過した。次は天だな。」
「えぇ。」
 
 3人はなんとか無事に手に入った呪印球に安堵しつつ、次なる天の呪印の間を目指して歩き始めた。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.8) Gecko/2...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【101】CPss2第18話「ルール」
 REDCOW  - 07/10/26(金) 10:23 -
  
第102話「ルール」
 
 クロノ達は仕方なく火の呪印の間に戻った。
 すると、今度は道も閉ざされずに中央まで進むことが出来た。
 呪印獣のいた中央の祭壇に近づき、クロノが呼びかけた。
 
 
「なぁ、呪印はもう一つ出ないのか?」
 
 
 彼の呼びかけは、虚しく空間に響きわたる。
 
 
「なぁ、誰か聴いてるんだろ?」
 
 
 そこに天井から若い女性の声がした。
 
 
「審判を務めてますカナッツです。チームポチョの請求にお答えします。呪印は1チーム1試合一つのルールとなっており、今回の試合で獲得できる呪印の数は一つです。しかし、この試合に参戦したチームは二つとなっています。この場合、どちらか一方が先に獲得したものの勝ちとなります。」

「おい、1チーム1試合一つなんだろ?なら、ファイアブラストは2度目だから反則じゃないのか?」
「いいえ。呪印獲得試合時に複数のチームが参戦することは禁じていません。しかし、2つのチームが双方とも初めての試合の場合はこの限りではなく、どちらか一方をまず選択して試合をさせ、次のチームへ交代させます。」
「つまり、失敗したチームは、他のチームの試合に加わって奪う権利があるってことか?」
「そうなります。今回の試合結果により、火の呪印の総数は一つマイナスであることをお知らせします。では。」
「お、おい!!まだ聴きたいことが!!!」
「………」
 
 
 カナッツの反応はこれ以降無く、仕方なく3人はこの結果を甘受するしかなかった。
 シズクがそっとクロノの肩に手を置いて言った。
 
 
「クロノ、私、今度バンダーに会ったら…失格になるかもしれないけど許してね。」
「…お、おい。」
 
 
 シズクの凄まじい怒りのオーラを感じる。
 チームメイトの他二名もその気持ちは分かるが、さすがにこの勢いにはたじろいでいた。
 
 3人は火の呪印はどこかでバンダーから取り戻すことにして、次の呪印の間をめざすことにした。現段階でこの場所から一番近い場所で強い反応を示しているのは地の魔力だった。彼らは地の呪印を目指すことにした。
 
 相変わらず洞窟は真っ暗だった。だが、だいぶこの感覚にも慣れ、魔力で空間を把握しながら歩くという行動が身に付き始めていた。出だしの頃は色々と戸惑いながらだったが、火の呪印までの流れを経験した事で流れを把握した事も有り、心の余裕も出来てきていた。
 しかし、地の呪印の方向に向かうと、何故か急激に体が重くなり始めた。
 
 
「なんなの、この重力は!?」
 
 
 シズクは体全体が吸い付けられる様に強力な力を感じていた。
 最初はほんの僅かに手足に痺れるような感覚を感じるだけだった。しかし、それは次第に強くなり、徐々に徐々に痺れは重みに変わっていた。強い重りを足枷のように付けて歩く感覚で済んでいた辺りまでは、まだ良かった。今では…
 
 
「だ、大丈夫か!?二人とも。」
「私は大丈夫です。私は地属性をESに含むので影響が少ないですが、お二人は天属性ですから大変でしょう。」
「俺は大丈夫。…もっとスゲー奴を知っているからな。」
 
 
 クロノにとって、この重みは拭えない痛みだった。
 この重力にすら勝てなくて、自分の達したい目標など夢に過ぎない。そう思うと余計に腹立たしく、この程度の力に負けるわけにはいかなかった。

 
「わ、私も大丈夫よぉ。でも、おかしいでしょ!こんな重力。」
 
 
 大丈夫とは言ったものの、さすがにこんな状況を長く続けていくのは体力の消耗が大きすぎる。
 シズクは二人に尋ねることで、出来れば色よい答えが返ってこないかと期待した。
 
 
「…そうですね。これは地の呪印のフィールドパワーの影響でしょう。大地に結びつける力が地属性の本来の姿。だから、地の呪印に近づくにつれて重力が増すんです。」
「へぇー…。」
「しかしよぉ、なんかまるで地面に吸い付けられるような感じだぜ?タコかここは。」
「…タコって。」
 
 
 期待したのが馬鹿だったと自分を反省するシズク。
 そんなことは全くお構いなしにマイペースに進む二人の後ろを、彼女はとぼとぼ力なく歩く…ところだが、実際は踏ん張りながら歩くのだった。だが、突然前の二人の歩みが止まる。いや、進めなくなったと言った方が正しいだろう。
 彼女も二人のもとに近づいた時、今までとは比較にならない巨大な重力が足を縛りつけた。
 
 
「な、何、これ!?」
「…さ、すがに、進めねー、な。」
「困りましたねぇ。」
 
 
 前方からは一際強い重力波動を感じる。紛れも無く地の呪印の間は近いはずだ。だが、このままでは一歩も進めそうにないことは確かだ。
 何か方法が無いかと考えていると、天の魔力で飛翔することで対抗出来ないかと考え始める。火の呪印でもそうだったが、ここはフィールドパワーが大きな意味を持っている。ならばとばかりに、クロノは試しに刀にサンダガを込めると、一気に地面に突き刺した。すると、空間内の重力が一気に無になり、ふよふよと体が浮き始めた。
 
 
「お、やりぃ!俺って天才!」
「天の魔力で中和したのですね。なるほど、こうして空間のフィールド効果を変える事がここでの目的なのかしら。クロノさん、お手柄ですね。」
 
 
 ミネルバに褒められて満更でもないクロノの魔力の揺れを感じて、シズクはより一層呆れていた。しかし、彼女もクロノの行動からようやくこの洞窟の謎が解けてきたようにも感じた。
 この洞窟の呪印を守るモンスターも、空間属性を中和もしくは逆転させることで突破することができた。ここでは魔力の質のコントロールが問われており、空間属性を如何に上手く利用できるかが大きな鍵となっていると思われた。
 
 三人はクロノを先頭に、彼が魔力を中和しながら呪印の間への最後の通路を通り抜けた。そして、遂にその後は何事も無く無事に地の呪印の間に入る事が出来た。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.8) Gecko/2...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【100】大地の鼓動:追記
 シルヴィア  - 07/10/19(金) 20:51 -
  
にゃふ……
どうも、この物語掲示板では2年ぶりぐらいですね。

えと……
なんて言えばいいのやら。
間違えて投稿してしまいました(汗

成り行きは語りませんが、間違い投稿です;
ご迷惑お掛けしました;;
ですから、連載する気など更々無かったため題名も仮のものです。
ですが、このまま放置するのも悪い気がします。
ですので、ゆっくりゆっくり、話は連載しようと思います(笑
本当にその気は無かったのですが、プレビュー二回目の時、チェックを入れ忘れてしまい、投稿してしまったのです;

なので、一番上のツリーは「一話」に当たります。
長い目で見守ってください。笑

ちなみにこのお話は、作る前のアバウトな設定では、「エイラたちが原始に戻り過ごしている→氷河期を向かえる」ということになってました。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<sage> <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.0.3705; .NET CLR...@60-62-111-98.rev.home.ne.jp>

【99】大地の鼓動
 シルヴィア  - 07/10/19(金) 20:04 -
  
彼女らは、再び平和を取り戻した。
いとおしく鼓動を打つ、この大地の平和を。
宿敵であったニズベールはもちろん、ラヴォスは滅んだのだ。
クロノと、ルッカと、マールと、カエル。そしてロボと魔王。
全ての仲間と共に戦い、別れを告げ、この地に戻ってきたのだ。
後悔の念は何も無い。
たしかに別れの辛さはあったのだが、自らの使命を背負うにはそんなことは捨てなくてはならなかった。
生い茂る木々、聳える山々、不定期に噴火する火山、静かな洞窟………
これらを守り、未来を守る使命。


「ヌゥ!!いるか?」
狩りの森の奥深く、ヌゥの居る草むらに向かいエイラが叫ぶ。
だが、あたりは鳥の鳴き声しかしない。
草の音がなったと思えば、それは小動物だった。
「エイラだ!ヌゥ!どこいる?」
相変わらず応答は無い。居ないのだろうか。
エイラは仕方なく、狩りの森を後にしようと方向転換をして走り出す。
最近、ヌゥは姿を見せなくなっていた。
イオカの村民は心配していたので様子を見に来たが、ヌゥは居なかった。
一体、どこへ姿を消したのだろう。
エイラは自分のテントへ戻った。


「じじ ヌゥ、いない」
エイラはテントの入り口の布を持ち上げ、中に居た老人に話す。
『じじ』と呼ばれた老人は、真っ白で長い髪と髭で覆われていて、顔は識別できない。
大きな壷に火をかけ、なにやら煮込んでいる。
「そうか………。
エイラ よく聞け。
昔から、ヌゥ居なくなる 不幸の前触れ、言う。
何か、よくないこと 起こる!
早く、ヌゥ 探す!」
老人は興奮気味に語った。
エイラはたまらず問う。
「不幸、なに起きる?
ヌゥ、どして居ない!?」
そんな問いかけに、老人は一度手を止める。
そしてエイラのほうへとゆっくりと向かう。
「ヌゥ、危険あると、逃げる。
なに 起こるか、わからない。
ラルバの酋長、何か 知ってるはず!」
「ラルバの酋長だな!
ラルバ 行ってくる!」
エイラは老人の答えも聞かず、そのまま走り出してしまった。

………ラルバ、移動する民。
どこいるか 分からない。
ラルバ、勘 鋭い民 たくさん。
ヌゥと 一緒に、逃げたか?


エイラはまず、火事で焼けてしまった村の跡地を訪ねてみた。
ここには以前、ヌゥも居たし数名のラルバの民が居た。
焦げ臭い匂いが漂ったままの村の跡地は、いかにも危なげな雰囲気を醸し出していた。
だが、エイラは戸惑うことなく村跡地の奥へ進んで行く。
濃い霧が、行く手を阻むが嗅覚と聴覚の優れるエイラには大した障害でもなかった。
空には多数の吸血蝙蝠が舞っていた。

「ラルバの民!いるか?」
エイラは一度立ち止まって叫んだ。
その声は不気味にこだまする。
「イオカの酋長、エイラだ!誰か いるか?」
しかし、反応は無かった。
ここにはラルバは居ない。
すでにどこかへ移ったのだろう。

あきらめて、引き返そうとしたとき、たしかにエイラの耳には声が聞こえた。

「……誰だ!?どこにいる?」
エイラの叫びに小さな声で答える何者か。
エイラはその声の主を探すために、耳をすませる。


………こっちだ………
エイラ、こっちだ………………


「わかった!今、行くぞ!」
エイラは確かに声の主の居場所を掴んだらしく、さらに奥へと進んでいった。
周りの木々は恐ろしい形相でエイラを見つめている。
奥へ奥へと進んで行き、エイラはある場所で止まった。
それは焼け跡の一番奥の大木の根元だった。
そしてエイラはしゃがみ込み、声の主だと思われる人物の居場所を確認し、その手を握る。
「エイラ………?」
声の主はまさに虫の息だった。
若い若い、女性だ。
寝たきりのまま、起き上がれない。
エイラはその女性をを抱きかかえ、立ち上がる。そして、
「テント、行くぞ!
元気の水 飲んだらきっと、よくなる!」
エイラはそのまま走り、テントへ向かう。
一刻も早く、水を飲ませなければ。
その気持ちしか、エイラには無かった。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.0.3705; .NET CLR...@60-62-111-98.rev.home.ne.jp>

【98】CPss2第17話「ファイアブラスト」
 REDCOW  - 07/10/19(金) 10:58 -
  
第101話「ファイアブラスト」(CPss2第17話)
 

「バンダー!?…どうしてあなた方が。」
 
 
 ミネルバの問いに、バンダーと呼ばれた赤い髪の青年はニッコリ笑って言った。
 
 
「そない驚くなや。まぁ、俺かてなんも意味なくここにおらへん。どや、共同戦線と行こうや?」
「どういうこと。」
「どうもこうも…おぉっと、話してる暇はねぇよって!前見ぃ!」
「え!?」
 
 
 中央の台座の炎が巨大な獣の形に整形され始める。
 その形は体は四足動物の様な体つきをしているが二足で立ち上がっており、頭は大きな角を二本生やし、額に水の呪印同様に火の呪印がはめ込まれていた。
 
 
「我が名はフレアビースト。フィールドは閉じられた。空間に存在する者は全て、我が炎の前に灰となるがいい。」
 
 
 その瞬間、轟音と共に炎が吹き出す。
 ミネルバは即座にフィールドの水属性を強化し防ぐ。しかし、その出力が追いつかない。もはや防ぎきれないと思った瞬間、突然ミネルバのフィールドは炎を押し返して安定を始めた。これは自分の力ではなく、明らかに他の人の力が加わっていた。
 驚いたミネルバが力の出所を見ると、バンダーのメンバーの女の子が魔力を注いでいる事に目が止まった。
 そこにバンダーが言う。
 
 
「あんたらだけじゃ無理だ!わかったろ?俺らと一緒に合わせがけすれば耐えられる!!」
 
 
 悔しいが、確かに彼の言う通りだった。
 ミネルバがクロノを見ると、クロノも頷いた。
 
 
「わかったわ!で、どうするの!」
「おぅ、ほんまか?ほな、俺んとこのメンバルがあんたらのフィールドと直結するさかい、少し待っときぃ!」
 
 
 バンダーの言葉の後、空間を包み込む炎を切り裂くように道が現れ、炎術師バンダー率いるファイアブラストのメンバーが、クロノ達と合流した。
 
 
「ほな、よろしくな!」
 
 
 バンダーが笑顔でクロノに握手を求める。
 クロノはそれに快く手を差し出した。
 
 
「君たちは一度ここを知っているんだな。」
「おぅよ!ここの炎は厄介やでぇ!俺は炎術師やしな。まぁ、メンバルの氷には自信あんねんけど、さすがにこれはなぁ…。せやから、誰か強ぇ奴が来んか待ってたっちゅうわけや。」
 
 
 そう言ってぽりぽりと苦笑いして頭を掻くバンダーに対し、いかにもうさん臭そうという表情でいるシズクの姿があった。
 彼女はじろりと横目にみると、彼にいった。
 
 
「策はあるの?」
「策?策………策、サクサクサク、ん!?この菓子旨いなぁ!」
 
 
 シズクの問い掛けに彼は懐から唐突に菓子を出して食べた。ウエハースの様な菓子をさくさくと軽快な音を鳴らして食べる彼の表情は、とても旨いと訴えているかのようだ。だが、彼女の質問の答えにはなっていない。
 
 
「無いのね???」
「………はい。」
 
 
 彼は彼女の無表情な冷たい一言に凍りつき、しおしおしおと萎れるように小さく隅に縮むと正直に答えた。
 彼女はその答えに呆れたように溜め息を一つ吐くと、魔獣の方を向いて構え、手に魔力を集めて一気に放出した。
 
 
「えい!!!」
「火ぃぃ!?!」
 
 
 バンダーは思わず目玉が飛び出しそうなほど驚いた。
 彼女が放った魔法は、水でも氷でも風でもなく火。自分が使う魔法と同じならば、フレアビーストの属性とも同じ。どう考えても回復させているとしか思えない。
 案の定、シズクの放ったファイアは、フレアビーストの体にボシュっという音と共に吸収されてしまった。
 
 
「…やっぱり駄目ね。」
「当たり前や!んなこと、どないなアホでもわかるわ!!」
「…やかましいわ!黙ってて無策野郎。」
「なっ!?」
「無策じゃないなら言ってみなさい!」
「………はい。無策です。」
 
 
 バンダーは何も言えず、再び隅で小さくイジイジ体育座りをして彼女の言葉を肯定した。彼女もまた再度溜め息を吐くと話始めた。
 
 
「えっと、良いかしら。私は水の呪印から推測して、この魔獣もフィールドと一体化していると見たわ。でも、単なる水属性で圧倒しただけでは焼け石に水って言うぐらいだから、多分倒せない。だから、もう一つの火の消し方を実践してみようと思う。」
 
 
 彼女の提案にクロノが問う。
 
 
「もう一つの消し方?」
「そう。クロノ、火はどうやって燃えるかしら?」
「どうやってって、燃えるものがいるだろ?あと、火種と、空気か?」
「そうね。燃えるものと火種と空気。これで彼の弱点は明らかよね?彼が唯一作り出せない物が弱点と見たわ。」
「作り出せないもの?………空気か?」
 
 
 彼女はにやりと微笑み言った。
 
 
「…私が天のフィールドでみんなを宙に浮かせるから、その後クロノ、空間にカマイタチ宜しく。そして、ミネルバさんとメンバルさんで出来るだけ強力なシャボンアイスを作って保護して。その間、バンダーさんは一瞬水のフィールドを解かないといけないから、わかるわね?」
 
 
 彼女の問い掛けに一同がフムフムと頷いていると、隅の方で体育座りしていた青年が、突如わが世の春のごとき勢いで彼女の前に現れた。
 
 
「おぅ!火で相殺やな。相殺なんやな!?そうか!そういうことか!…んで、真空なら燃えない。その手があったわ!!頭ええなぁ!嬢ちゃぁん!」
 
 
 彼は彼女の頭を笑顔で撫でようとした…が、それは一瞬で顔面が蒼白になった。彼の目前の女性は、この世のものとも思えない形相で彼の行動を片手で丁重にお断りしていた。
 
「嬢ちゃんじゃないわ。私はシズク。そう。でも、真空は私達にとっても諸刃の剣。真空から私達を保護しなくてはならないわ。更にこの空間の炎もある…そのためにカマイタチに負けない水と天のバリアが要る。」

 シズクの作戦に一同が同意すると、その作戦は実行される事となった。
 各自が準備に入る。
 
 
「用意は良いわね?、行くよ!」
 
 
 シズクの体から天の魔力が放出され、全員が徐々に宙に浮かび始める。そして、うっすらと天のフィールドが球状に形成された。
 それを確認すると、クロノ・ミネルバ・バンダー・メンバルの4人がそれぞれの顔を見て確認する。そして、次の瞬間ミネルバとメンバルの水のフィールドが解除された。そして、それを合図にクロノがカマイタチを地面に向けて思いっきり放つ。
 
「行っけぇぇぇえええ!!!!」
 
 巨大な真空波が地面に衝突すると、その衝撃が空間全体を激震させる。すると空間の火のフィールドが不安定になり始めた。
 それと時を同じくしてバンダーは火のフィールドを張り、ミネルバとメンバルのフィールド形勢を待つ。
 
 
「うぅ、くぅぅ!こ、こないな炎…そうそう出ぇへんでぇ!」
 
 
 地面に刻み込まれた真空の傷跡から、天の力が輝く刃となって空間全域に急速に染み渡り始める。遂に真空のフィールドが生じようとしていた。
 
 
「ま、まだか!!はよぉ、せぇぇえええいいい!!!」
 
 
 バンダーが叫んだのと時を同じくして、遂に彼の待ちに待っていた効果が現れた。
 まずミネルバのシャボンフィールドが張り巡らされると、その水をメキメキと水晶の様に透き通る氷のフィールドが染み渡った。
 氷のフィールドが完成した。
 
 
「はひぃぃ!?………ふぅ。へっ!、無茶させるよって…。…ほっ。」
 
 
 へたるようにその場に構えを解き崩れるバンダー。
 クロノ達も空間の推移を見つめた。
 
 空間が急速に冷えて行く。
 真空は空気の供給をカットするとともに、空間を冷却し始めた。その力は並の氷の魔力を遥かに越える驚異的なパワーとなり、フレアビーストの体は徐々に冷気が支配を広げ、足の先から始まった侵食は、頭の先までに至り、遂に完全に空間が冷却された。
 
 
「ぐぅううぅぅぅぅ…、見事な連携だ。…力を認め、オーブを授けよう。」
 
 
 ミネルバとメンバルはバリアフィールドを解いた。フィールドはキラキラと輝く雪の粒となって地面に舞い落ちる。そこに魔獣の体が粉々に砕けると光子の粒に変わり、その光は一点に集束すると球となり固まった。その情景は芸術的ですら有り、クロノ達は輝き舞い落ちる雪の中に光る火の呪印球がゆっくりと落ちてくるのを見つめていた。
 すると前方の壁が開いた。 
 
 
「頂き!!!」
 
 
 その時、全く予想外の事が起こった。
 なんと、バンダーはジャンプして火の呪印球をキャッチすると、そのままの勢いで3人とも示し合わせていたかのように前方の出口から素早く逃亡を始めたのだ。
 
 
「待ちなさい!!!!」
 
 
 シズクが叫ぶ。
 3人は慌ててバンダー達を追いかけた。
 だが、それは突然襲った。
 
 
 ブバッ!!!!!
 
 
 それはクロノがあと少しで追いつく瞬間だった。
 人一倍肥満男のヤッパの放った毒ガスは、瞬殺といっていい程の激臭をまき散らした。
 3人はその場に悶え苦しみ、追跡を断念せざるを得なかった。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.7) Gecko/2...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【97】CPss2第16話「揺らぎ」
 REDCOW  - 07/10/12(金) 10:18 -
  
毎度クロノプロジェクトをご覧下さいまして有り難うございます。
拙い文章ではありますが、2000年の計画開始から7年目を過ぎて、ようやく連載100話目を達成することができました。

長いなが〜〜〜〜い物語ではありますが、それでも徐々に今後も頑張って行きますので、感想とか暖かい励ましとか頂けたら有り難いです。

皆さんの中にクロノ達の未来の一つの姿として残れたら幸いです。

作者REDCOWより


第100話「揺らぎ」(CPss2第16話)
 
 
 水の呪印の間に現れた新しい通路も、また闇の中。
 闇の中を進む3人。
 
 ただ、さすがにもうこの環境へは体が慣れてきた様で、感覚的に魔力を感じて空間を認識する事が出来た。それによって多くの情報が再び入ってくる。いや、これは目で見ている以上の情報量だ。特に呪印の間への道がわかることは勿論、人の動きさえも感じられることは発見といえた。目で見ていては感じられない人の動きが、魔力という力を通してある程度わかる。これに面識があれば誰が動いているかすらも特定できるかもしれない。
 だが、同時に力の限界も感じた。空間認識もこの迷路が特別に魔力を発するように出来ているからわかるのであって、これが通常の洞窟などでどの程度認識できるのかはわからなかった。それに、空間認識限界範囲感じられ、この洞窟の全体像を全て把握することは無理なようだ。ただ、それでも細かく内部の状況を感じる事が出来るようになってきていた。
 それは先程までいた呪印の間では分からなかった事だが、どうやら誰かが呪印の間にて勝負をしていると、呪印の魔力を感じる事ができないようだった。そして、呪印の間の中に入ると、逆に外部の魔力を感じる事が出来なくもなるようだった。
 何故そのような処置が施されているのかは分からないが、なにやらまだまだこの迷路には様々な謎が隠されているのかもしれない。
 
 クロノを先頭に後方を二人が歩く。
 彼は初めのうちは空間認識に集中し過ぎていてよく分からなかったが、次第に慣れと共に落ち着いた事で、今まで気にしていなかった感覚に気付く。それは、魔力は人の感情などといった人間の精神にも関係する力だけあり、僅かに後方を歩く二人の魔力の動きを感じる様になった。
 勿論、これは別に今初めて分かったわけではない。過去にも魔力自体は感じてきていた。しかし、魔力から感情の様な物を感じたのは初めてのことだった。
 今までは常に視覚や様々な五感が人を捉えて認識していたが、ここは言わば第六感のみで全てを把握しなければならない空間。故にその六感に全てを集中する。すると、今まで漠然と感じてきた魔力に人それぞれの色や形が有るように感じられ、そして、その動きは人の感情すら表しているようにも感じられる。
 二人は対照的な感情を持って歩いているようだった。
 シズクはいつもの自信たっぷりな感覚とは違い、まだこの空間に慣れていないことや視覚の喪失による不安があるのだろう…、
 
 
「おい、シズク、」
「な、何?」
「俺達はちゃんといる。安心しろ。」
「え、えぇ。って、もぅ、何その余裕!むかつくー!」
「ははは、わりぃわりぃ。」
 

 クロノに反発する言葉とは裏腹に、シズクの心の揺らぎが止まった。
 彼女からはずっと揺らぐ心が感じられた。しかし、もうこれで大丈夫だろう。
 
 そして、一方のミネルバは、シズクとは対照的に静かで穏やかな感情を感じた。
 彼女はさすがに過去にこの迷路を経験している事もあり、余裕は勿論、自信すら窺わせるほどに鋭敏で知性的なものを感じる。
 しかし、それでいて優しさがある。
 
 
「クロノさん」
「え?」
「……私の心は如何でしたか?」
「いぃ?」
 
 
 突然の問い掛けに驚くクロノ。
 あまりのズバリな言葉に、何を言って良いのか頭が真っ白になった。
 そんな彼の反応に彼女は悪戯っぽく笑うと、彼にやんわり諭すように話しかける。
 
 
「ふふふ、あまり女性を隅々まで舐める様に覗くのは感心しませんよ。」
「うぅ!?……ごめんなさい。」
「はい。良いお返事です。ふふふ。」
 
 
 二人のやりとりを聴いて、不思議そうに思うシズクが彼女に尋ねた。
 
 
「どういうこと?さっきのクロノといい、今のミネルバさんと良い。」
「それはね、魔力から心を感じ取っているからよ。」
「心?どうやって?」
 
 
 シズクは二人だけ分かって、自分が分からない事に大層不満という声だった。
 そんなシズクにミネルバは優しく答える。
 
 
「魔力には揺らぎがあります。それは人のバイオリズムに沿って魔力が揺らぐからです。そして、揺らぎは感情の起伏によって変化します。怒った時は激しく、哀しい時は静かに…そんな当たり前に私達が持っている感情は、魔力にも表れるんです。」
「…揺らぎ…?」
 
 
 シズクが二人の魔力に集中する。
 すると、先程までは空間を把握する為に全神経を集中していたために分からなかったが、確かに二人の魔力には揺らぎがあり、そのパターンは一定ではなかった。
 
 
「…なんとなくだけど…そうね、そう言われれば…そうなの…かな???」
 
 
 まだ半信半疑なシズクではあったが、仮にそうであったとすれば、先程のクロノの言葉にも納得がいった。何よりクロノは自分のことを心配して声を掛けてくれた…ちょっと嬉しかった。
 
 
「そ、そろそろ火の呪印が近いよ。」
 
 
 シズクは赤面していることを紛らわすかのように言った。実際に見えないのだから分かるはずが無いのに、思わずそうしないではいられなかった。
 二人はシズクの可愛い反応に微笑みを浮かべながら、火の呪印への道を歩いた。

 3人は集めやすい呪印から集めることにしていた。
 彼らのいた場所から比較的近くて集めやすいと思われるのは地と火だが、火の方が使い手もいることから難易度は低く感じられた。
 特に地の場合は地の術を無効化するフィールドを張れる術士が一人もいないため、先に火を取っておいてから地を回った方がロスが少ないと思われた。
 
 火の呪印の間が近づくにつれて徐々に空間に熱が帯び始めた。
 先程の水の呪印同様、どうやら呪印の間の近くの空間には呪印の持つフィールド属性効果が漏れ出している様だった。しかし、その方が魔力だけではない空間認識を得られて確実さを感じられた。
 この辺は主催者側のサービスなのだろうか…クロノはそんなことを感じつつ先を急ぐ。
 
 どんどん上がる気温。
 最初は少し肌寒いくらいの温度の迷宮だったが、今は既に摂氏30度を越え、40度を越えようとしている。だが、それでも熱は上昇する気配を見せ、当たり前といえばそれまでだが、一向に下がる気配は無い。
 
 額から落ちてくる汗を拭いながら、遂に3人は目的の火の呪印の間に出た。
 入った瞬間に後方の入り口が塞がれ、その瞬間にボウッと大きな音を立てて中央の台座から緋色の閃光を放って炎が吹き上がる。すると空間に突然視覚が戻り思わず目を覆った。
 
 気温は摂氏80度。とても普通の空間ではない。
 思わず火傷するほどに熱いが、ミネルバは即座に水のフィールドを造り、3人を熱から保護した。
 その時、突然声が上がる。
 
 
「はっはっは!待ってたぜチームポチョ!!!」
 
 
 発せられた声の主は、クロノ達のすぐ横にいた。
 なんと、どういうわけか他のチームがその場に一緒に居合わせていたのだった。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.7) Gecko/2...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【96】CPss2第15話「水の呪印」
 REDCOW  - 07/10/5(金) 10:51 -
  
第99話「水の呪印」(CPss2第15話)
 
 呪印の間への道は、魔力の質を辿って進む。
 この迷宮は魔力を読み解くことが出来る者に道を示すかの様に、壁面にも微弱な魔力が発せられている。この微弱な魔力がどうやら先程のカナッツの言っていた「魔力しか使えない」という状況を作り出す監視システムの役割も果たしている様だ。
 いわば、この空間は魔力を持つ者に光を与え、魔力を持たぬ者を闇が閉ざす様にできていると言えた。
 
 3人はミネルバを先頭に水の呪印の間を目指している。
 そこへの道は面白い事に、水の魔力が風の様に通路から流れてくることから「感じる」ことが出来る。魔力はまるで五感を刺激する様に様々な情報を彼らに伝え、それと同時に五感では知り得ない広域の様々な情報をも知ることが出来る。これはなんとも不思議な感覚と言えた。
 
 そんなことを考えていた時、クロノは水の呪印の間に近づくにつれて寒気を感じ始めた。
 悪寒?…それにしては魔力は安定している。どうやら本当に空間全体から冷気を感じているらしい。
 
 
「なぁ、なんか寒くねぇか?」
 
 
 クロノの言葉にシズクが震えた声で答えた。
 
 
「ううぅ、寒いってもんじゃないわよ。どうしてそんなに平然と言えるわけ?信じられない。」
 
 
 シズクの反応に苦笑気味にミネルバも答える。
 
 
「…そうね。私は先天属性が水だから耐えられるけど、普通の人の感覚ではこの冷気は…マイナス20℃って所かしら…」
「そうなのか?」
 
 
 クロノは首を傾げながら腑に落ちない感覚もありつつも足を進めた。前方からは一際強い冷気の風が立ち込める。次第に空間全体に冷気が満たされていくのが感じられ、足元から強烈な寒気が押し寄せてくる。それはまるで姿は見えないが靄(もや)のように伝わり、3人の足を強く凍てつかせる。
 シズクはたまらず立ち止まり、魔力を集中するとファイアをフィールドに打ち込む。しかし、あまりの巨大な冷気の前に、彼女のファイアはーー表現は逆転しているがーー焼け石に水であった。
 
 
「さむーーーい!!なんなのぉーーーー!?!」

 もはや発狂とでも言うべきだろうか、彼女の限界はとうに越えた恐ろしい寒気の来襲に体の震えが止まらない。そんな彼女をミネルバが気遣い彼女の前に立ちそっと抱き寄せる。

「シズク、ファイトよ。」
「うぅうう、も、もー、こんなとこさっさとクリアしてやるぅぅうぅぅ。」
 
 
 震えの止まらないシズクだが、彼女は半ば意地になってミネルバの抱擁から離れると、冷気に耐えてヒステリックにつかつかと進んだ。
 すると、突然空間認識が拡大した様に感じた。
 
 
「え…、これって。」
 
 
 シズクの背後から二人も追いついた。
 ミネルバが静かに答える。
 
 
「ようやく到着ね。」
「ここが水の呪印の間…すげぇ冷気の出元って奴だな。」
「えぇ。」
 
 
 空間からは巨大な冷気が立ち込めていた。
 それは魔力を持たぬ者を一瞬で凍り付かせてしまうだろう。まるで3人を威嚇している様にもとれる力が体全体で痛い程感じられ、動く事すら大儀なことに感じられた。
 
 その時、前方で突然青い閃光が走る。まぶしい光に目を覆う3人。恐る恐る目を開けると、空間をほのかに青白い光が照らしていた。
 突然の視界の回復に驚く二人に対し、ミネルバは冷静に前方を見つめていた。彼女の視線の先は、部屋の中央の円形の台座の上に据えられた氷のオブジェ。このオブジェこそが光の主の様だ。
 よく見ると、この部屋は円形のドーム状の構造をしており、壁面には沢山の文字と紋様が描き込まれている。文字は魔法の呪文だろうか。古代ジールで見たような文字や紋様も見受けられる。
 
 3人はクロノを先頭に台座へと近づいた。
 そして台座の前に立つと再び青白い閃光が走り、氷のオブジェは粉々に砕けると光の粒となり、それは次第に巨大なモンスターの姿を形成した。
 その姿は一角の角を持ち、緑の鬣を生やした動物の姿をしていた。体長は2mほどだろうか。胸元にはブルーの球体がはめ込まれ、それが青白く時折輝いている。その光はまばゆく神秘的なオーラが感じられ、見る者の心を吸い寄せる様な力を感じる。
 体全体から巨大な水の魔力を発散させている様は、主と言うにふさわしかった。
 
 
「…試練を受けし者、良く来た。我が名はアーヴァンクル。呪印を欲する者は我に挑戦し、勝利せよ。」
 
 ガラガラガラガラガラガラ!!!ドン!
 
 アーヴァンクルはクロノ達に語りかけるとすぐ、後方の入り口を塞いでしまった。
 クロノとシズクは突然の出来事に驚いて後方を見たが、ミネルバは冷静にアーヴァンクルを見据えると構えた。
 
「クロノ、シズク、落ち着いて構えるのよ!」
「え!えぇ。」
「お、おう。」
 
 ミネルバの言葉に慌ててモンスタ−の方へ向き直る二人。
 彼女は魔法でロッドを出現させると、それに魔力を込め始めた。
 
「来る!!!」
 
 アーヴァンクルの胸元の宝石が一際輝く。
 空色の閃光が走ると強烈な冷気が吹き出し、周囲の壁が次々にぺきぺきと音を立てて氷で敷き詰められ始める。
 
 シズクがすぐさまファイガを放つ。
 しかし、アーヴァンクルに向けて放たれたファイガは、そのまますり抜けて後方の壁に衝突し爆発してしまった。爆風が一瞬冷気を和らげるが、その爆風すらあっという間に冷却され、ガラガラと音を立てて地面へと落下して行く。
 
 
「な、なんなの!?これじゃどう戦えばいいわけ!?!」
 
 
 シズクの驚きは当然だった。
 この試練の洞窟では魔法でしか戦えないという話だった。しかし、その魔法がすり抜けてしまったのだから動揺しないはずが無い。だが、そこに冷静にミネルバが動く。
 
 
「お願い!!!」
 
 
 ミネルバのロッドから青い光線が地面へ向けて放たれる。
 光が放たれた地面には瞬時に魔法陣が描かれ、その上に立つ3人を円形の陣が垂直に光を放ち保護し始めた。すると、部屋を覆っていた冷気から解放され、常温並みに保温された。
 彼女が二人に言う。
 
 
「いい、みんな。ここでの戦いは敵を倒すのではなく、如何にこの魔力を手名付けるかを考えて。」
「手名付ける?どうすればいいの!?」
「私達が扱いやすい力に変えるのよ。例えば、この空間の魔力を中和すること。」
「中和する…あ、そうか。フィールドパワーね。フィールドエレメントを中和すれば、魔力も中和される…」
 
 
 シズクは彼女の言葉に納得すると、まだチンプンカンプンといった締まりのない表情をしたクロノに向けて言った。
 
 
「クロノ、これから私に力を貸して!」
 
 
 突然振られて、クロノは困惑した表情で尋ねた。
 
 
「お、おう、で、どうするんだ?」
「私のファイアを空間全体に放つの。」
「ん!そうか、火炎車輪か。よし!」
 
 
 クロノは刀を抜き放つ構えた。
 シズクは魔力を集中すると、通常より高い魔力を込めてクロノへ向けてファイアを放った。
 クロノはファイアの炎を刀で受け止める。魔力が上手く刀に吸収されたことを確認すると、一気に跳躍して水平に円を描く様に魔力を解き放った。
  
 水平に放たれた炎の魔力は爆炎に変わり、激しく部屋一面の壁面に衝突し吸収された。そして、その後瞬時に氷が熱せられ蒸発し、空間が常温程度に保温された。
 すると…
 
 
「…見事な連携だ。力を認め、我がオーブを持つ事を認めよう。」
 
 
 アーヴァンクルは話し終えると青白い閃光を発して輝き、そして見る見るうちに小さく縮むと、胸元の宝石の中に吸収されてしまった。
 宝石は静かに降下を始めると、クロノの手の中にゆっくりと収まった。
 
 
「へへ、これで一個目ゲット!」
 
 
 クロノはそういうとオーブをかざす様に仰ぎ見た。
 球の中には文字が封入されていた。だが、何かがおかしい。よく見るとそれが不思議なことに、どの方向へ回してみても必ず自分の見ている方向へ文字が向いているのだった。
 
 
「おもしれぇなぁ。どっちに回しても必ず俺の方を向くぞ、この文字。」
 
 
 クロノの言葉にミネルバが微笑んで言った。
 
 
「その文字は幻の文字なの。」
「幻?」
「魔力を持たない人には見えない特殊な力が働いているの。だから、見えている人の方に必ず文字が見える。」
「へー…」
 
 
 クロノは感心してしばし見ると、シズクに球を手渡した。
 シズクは受け取るとすぐにプレートへ球をはめ込む。すると、オーブは光を失ってはめ込まれた。
 その時、突然前方の壁が動き、奥へ続く道が現れた。
 
 
「あ、道!?あら、呪印も光らなくなっちゃった。」
 
 
 シズクが驚いて前方とオーブを交互に見ているのに対して、ミネルバは冷静にオーブを
見て言った。
 
 
「フフ、主催者も余程視覚を使われるのが嫌な様ね。」
「えー、そういう理由なの?」
「さぁ。」
 
 
 ミネルバはそういうと、ロッドを仕舞って服を直した。
 
 
「さぁ、次へ行きましょう?」
 
 
 彼女の呼びかけに、クロノとシズクは笑顔で答えた。
 
 
「おう!」
「えぇ。」
 
 ミネルバが歩き始める。
 クロノもその後を行き、シズクも慌ててプレートを仕舞うと二人の後に続いた。


●あとがき。
※来週でCP通算100話です。
 細々とやってきた割に100話って我ながら凄いと思いました。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.7) Gecko/2...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【95】CPss2第14話「目覚めたそこは」
 REDCOW  - 07/9/28(金) 16:30 -
  
第98話「目覚めたそこは」(CPss2第14話)
 
「ーーう、うぅ、…………ここは、………私?」
 
 目を開けると、目前には低い天井が見えた。
 部屋は薄暗く、仄かに明かりを灯す電気スタンドが見える。
 
「……なんで、寝てるの。」
 
 彼女はゆっくり起き上がる。
 それまで寝ていた場所が柔らかな布団の中で、低い天井に感じたのは天蓋付きのベッドだからということがわかる。それ以外にも高価で歴史的価値のある調度品の数々…どこかの屋敷の一室には違いない。
 
 彼女はそっとベッドから足を出した。
 そこにはご丁寧にもスリッパが置かれており、とても細かい刺繍の施されたレース付きの可愛いデザインに思わず目が輝く。だが、そんなことに心奪われているわけにはいかない。彼女は気を引き締めるようにパチリと頬を両手で叩くと、しゃっきりと立ち上がり辺りを見回した。
 
 部屋の広さは40畳ほど。白い壁に美しい木製家具が並び、重厚な雰囲気を醸し出していた。窓は厚いカーテンで閉められている。
 彼女は窓辺へ行きカーテンをそっと開いて外を見た。

 外は何も無い遠い闇と、眼下に散らばる宝石のような夜景が広がっていた。彼女はこの窓から脱出することは絶望的であることは勿論、窓自体が割らない限り出られない作りになっていることを知った。しかし、考えたくは無いが、全ての選択肢が閉ざされた時は、この窓も一つの選択肢である事も考慮に入れざるを得ない現実も感じた。
 窓の外に見える宝石達は何処の街だろうか。とてもカラフルに輝く光はトルースの夜景とは全く豪華さが違った。相当に栄えた美しい輝きを放つ街並み…ふと胸が痛んだ。
 
 その時、窓とは反対側にあるドアが開いた。
 彼女が振り向いた時には、一人の男が入ってきていた。その男は赤い顎髭を生やした年配の男性だった。しかし、彼女はその男性を前に戸惑いを感じていた。
 彼女の心の準備なんてお構いなく、男は静かに歩きながら話しかけてきた。
 
「…よく、眠れたかな。」
 
 その声は聞き覚えが有った。
 それは忘れもしない、彼女を追いつめた張本人。
 
「…お陰様で。」
 
 彼女の返答に、男は微笑むと歩みを止めて言った。
 
「…そう、構えなくて良い。命を狙っているわけじゃない。」
 
 彼の言葉に、彼女は冷静に言った。
 
「そうね。それが目的なら、私はあなたとここで話す機会はなかった。信じましょう。でも、ボランティアで政治は動かない。あなたの目的は何かしら。」
 
 彼女の凛とした表情と言葉に、いくら没落しようと、その品位は失われないことに笑みが漏れた。
 
「ふふふ、はっはっはっ。いや、ボランティアではないことを認めよう。大したものだ。私が望むものは…なぁに、簡単な話だ。『静かに暮らしてくれればいい。』それだけだ。」
「それは私も望むこと。しかし、その為に民を見殺しにするという愚挙を犯すは恥ずべき事。あなたからすれば、私は老いたる王国の亡霊でしょう。でも、亡霊であるからこそ、私は静かにしている気は無いわ。」
 
 彼は彼女の言葉にしばし間を置くと、彼女とは離れた窓にむかって歩き始めた。そして語りかける。
 
「…見たかな。」
 
 彼がカーテンをそっと開き、眼下の都市に目を落とす。
 
「…世界は本当に君の信じた幸せを謳歌していたのかね。それが本当であるならば、この街はこうも輝いたであろうか。」
「何を言いたいの。」
「我が国はどうかね。君の知る姿とは大きく変わってしまったが、紛れも無く君の知るあの街の未来の姿だ。」
「………。」

 彼女は薄々感づいていた。そして、彼の言う現実というものも、こうして実際に目の当たりにして、実感とでも言おう感想が浮かび上がろうとしていた。しかし、それを認めてどうしようというのだろう。認めて見殺しにした民を尻目に安穏と暮らせと彼は言う。だが、確かにこの街がこれほどの発展を見せたのであれば、千年の歴史を誇る王国というものは、同時に千年もの繁栄のチャンスを奪ってきたのだろうか。…戸惑いは止まらない。
 
 彼はそんな彼女の葛藤を知ってか知らずか、微笑んで言った。
 
「深刻に考える事はない。歴史は流れ、いつしか君が望もうと望むまいと変わる時が来る。君が見ているものは、それが遅く現れたか、早く現れたかの違いに過ぎない。」
 
 彼の言葉は確かにその通りなのかもしれない。
 時代はいつかこのような道を流れたかもしれない事は、彼女自身が既に気付いていた。それは未来に王国が消え、全く違うシステムの中で人々が生活していた事実を実際に見ていたからこそ、彼の言葉の意味がよく分かる。いや、それはまるで彼もこの事実を共有していたかの様な話でもある。不意に疑問が湧いた。
 
「…随分慣れた口ぶりね。」
「口だけではない。私は、事実を話しているまでだ。」
 
 そう言うと彼はカーテンを戻し、ゆっくりとドアに向かって歩き始めた。
 
「…すまないが、しばらくはこの部屋のみで暮らしてもらう事になるだろう。何か必要ならベッドの横の電話から連絡するが良い。連絡方法は電話横のガイドブックに出ている。…何度も言うようだが悪いようにはしない。お姫さまらしくお淑やかに宜しくな。」
 
 静かにドアを開くと、彼はそのまま振り向きもせず部屋を出ていった。
 彼は無防備といっても過言ではないほど、一度も振り向かず彼女に背中を見せて歩いていた。いつでも彼女には彼を攻撃する隙はあったはずだった。しかし、彼女はしなかった。いや、それをしようがなかった。
 あまりにも大きなプレッシャーを前に、彼が去った後も足を動かす事ができなかった。足だけではない、怒りとは裏腹に怖れで押しつぶされていた彼女は何も動けず、ただ彼が去るのを見守る事しかできなかったのだ。

 それはあまりにも屈辱的な間だった。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.7) Gecko/2...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【92】CPss2第13話「闇」
 REDCOW  - 07/9/22(土) 11:54 -
  
第97話「闇」(CPss2第13話)

 チリチリ。
 
 クロノの持つたいまつの明かりが辺りを照らす。
 道にある明かりはたいまつの明かりのみ。
 
 5番目に出発したクロノ達の前方には、既に気配はなく、どうやら奥深く先に進んでいるらしい。また、途中幾つかの分岐点が有った事から、それらのどこかへと分かれたのだろう。
 後方から来るチームも、どこかで分かれたのか既に迫る気配もない。…迷路の様に入り組んだこの試験場は全てのチームを飲み込み、何処へ導くというのだろう………?
 
 クロノが後方を歩くミネルバに問いかけた。
 
 
「なぁ、ミネルバさん、これからどうしたら良いんだ?…宝探しはわかるが、こう手がかりが無いと、さっぱりわかんねー。」
 
 
 彼の問いかけはミネルバの隣を歩くシズクも感じていたことだった。彼女もミネルバの方を向いた。ミネルバは微笑んで前方を見据えて歩きながら答える。
 
 
「この迷路は私もクリアした事は無いわ。でも、途中までなら。今向かっているのは水の呪印の間よ。」
「水の呪印の間?」
「基本的には、呪印の間には呪印を護るモンスターがいるわ。この試験ではそれらのモンスターに勝たなくてはダメなの。さもなければ呪印は得られず、そしてクリアも不可能になってしまう。」
「強いのか?」
 
 
 彼女はその言葉に初めて振り向くと答えた。
 
 
「…そうね。強いかもしれない。でも、私達なら大丈夫よ。自信を持って。」
 
 
 彼女はそういうと二人を先導した。
 しかし、その時急に光が弱くなり始めた。
 クロノが慌ててたいまつを見ると、火の勢いがどんどん弱くなり始めた。
 
 
「任せて。」
 
 
 シズクはそういうと、たいまつに向けてファイアを放った。
 だが、炎は強くなるどころか一層弱くなり、遂に消えてしまった。
 炎が消えた事で、3人は互いの姿を完全に見失ってしまった。
 
 
「ちょ、みんな慌てないでね。今明かりを出すから。」
 
 
 シズクが再びファイアを小さく出してお互いの姿を確認すると、クロノの持つたいまつに火を灯そうとした。だが、火はつかず、完全に燃料が尽きているようだった。
 困惑してミネルバに尋ねる。
 
 
「どうしたら良いの?このままじゃ真っ暗じゃない。」
 
 
 ミネルバはシズクの言葉に微笑んで言った。
 
 
「フフ、なら目を慣らすだけよ。さぁ、消して。」
「え…」
 
 
 ミネルバはそういうと、そっとシズクの指を手で覆った。すると、彼女の手から冷気の風が立ち込めて、彼女の炎は静かに消えてしまった。
 
 
「どうして?」
「この試験はこれが狙いなのよ。」
「え…」
 
 
 二人は彼女の言葉に驚いて言葉を失った。
 彼女は続ける。
 
 
「みんな、良く思い出して?この試験が何のために行われているかを。」
 
 
 彼女の言葉にいち早く反応したのはシズクだった。
 
 
「…魔力。そうか、魔力を探るのね。」
「正解。」
 
 
 ミネルバが優しく答える。
 そこにクロノが尋ねる。
 
 
「んじゃ、このたいまつどうすりゃ良いんだ?もう要らないなら、放置しても良いのか?」
「あ、それはそうね。ガス欠だし、壁の隅にでも邪魔にならない様に置いておけば問題ないはずよ。」
「そうか。なら…、」
 
 
 クロノは道の側壁にそっとたいまつを寝かせ置いた。
 
 
「よし!んじゃ、ぼちぼちサーチするか!どれどれ、おーいるいる!魔力を探るとごっそりわかるんだな。」
「えー、もう慣れたの?…つまんないわ。」
 
 
 ミネルバの言葉に3人はお互いにくすくすと笑うと、闇の中を再び力強く歩き始めた。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.7) Gecko/2...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【91】遅くなりました〜〜〜!!!
 REDCOW  - 07/9/15(土) 16:01 -
  
>お久しぶり・・・というのは自分だけですかね;
遅くなりましたぁ。m(__)m

>クロノ・センターの掲示板で活動を続けていたとは知らなかったもんで、
>すっかり足が遠のいてました・・・;
>しかもCPss2もそちらでスタートしてたという・・・
>7ヶ月以上も気がつかなかった自分逝ってよし; |i|i| ○| ̄|_
いや、私自身、開始が延び延びになりながらのスタートだったので、本当に皆様にはご迷惑お掛けしました。この場を借りて改めてお詫び申し上げます。m(__)m

>そういう訳で、1〜3話は今通しで読んだところです。
>なので、感想も3話まとめてで勘弁して下さい;
有り難うございます。

>1話では、懐かしい登場人物が出てきましたねw
>2人のうちどちらなのかはこの際問題ではないとして、
>それでも覚えてるってのはよほどあの時の印象が強かったんだろうなぁ、と(w
出会いが普通じゃないですからね。www

>2話はかの爺様の偉大さが伝わる話でしたね。
>至る所同じ名前だらけ、郵便屋さんはさぞ大変だろうなぁ(苦笑)
>・・・でもあれ?彼って確か先行版で・・・(以下、ネタバレ禁止で略
時世については、先行版が必ずしも順序立っているわけではないですよ〜。

>3話では・・・物好きな人もいるなぁ、と思ったら、
>なんかゆかりのありそうな人だったようで。
>どんな役どころの人なんでしょう・・・
物語中では色々な方が絡んできますねぇ。
縁もゆかりもない方もいらっしゃいますが。w

>全体的に、これからどうなるのかが楽しみです。
頑張ります。(^^)

>ちなみに誤字脱字は、見たところ1〜3話のどこにもなかったようです。
後で一つだけ見つけて修正していたりします。www

>では、これからは時間を見て来るようにしますね。
はい、有り難うございます。m(__)m

>追伸:勝手に感想スレ立ててすいません;
あぁ、そこはお構いなく。
まぁ、感想掲示板の方に頂けたら幸いです。(^^)
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.6) Gecko/2...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【90】CPss2第12話「第二次試験」
 REDCOW  - 07/9/15(土) 10:56 -
  
第96話「第二次試験」
 
 改札の向こうには再び100m程進んだ先が右折しており、右折したすぐ先には道がなく、係員らしき女性の他に、先に改札を通過した面々が立っていた。
 係員の女性がクロノ達の姿を見て近づいてくる。
 
「ようこそ試練の洞窟へ。一次試験合格おめでとうございます。これから皆様を二次試験の行われる試練の洞窟へとご案内致します、カナッツと申します。」
 
 カナッツという係員の女性は若く、桃色の肌に薄いピンクの髪をしている。どうやらミアンヌの血筋らしい。
 シズクが彼女に質問した。
 
「試練の洞窟とはどういう場所なんですか?」
 
 シズクの質問に対して、カナッツは微笑んで答えた。
 
「それは時期にわかりますよ。フフ。それより、もう暫くお待ち下さい。一次試験を通過されました受験生の皆様が、全てご到着次第移動致します。それまではここでお寛ぎ下さい。」
「わかりました。どうも。」
 
 クロノ達三人は、隅の誰もいないスペースに移動した。
 
「…どれくらい来るんだろうな?ミネルバさん知ってる?」
 
 クロノの問い掛けに、ミネルバは落ち着いた様子で答えた。
 
「そう多く無いはずね。魔族と言っても大半は普通の人間と変わらないから、私達のレベルに到達している人はいつも少ないの。今ここに来ているのはあそこの少年組と、向こうに見える女の子達と、あ、あいつは知ってるわ。炎術使いのバンダーよ。」
「炎術使いのバンダー?」
「えぇ、あいつは強烈な術を持っているのに………まだ合格してなかったのね。不思議。」
 
 二人はミネルバの反応にガクっときた。
 気を取り直して、シズクがミネルバに質問する。
 
「ねぇ、二次試験ってどんな感じなんですか?」
 
 シズクの問いに彼女は微笑んであっさりと答えた。
 
「二次試験は宝探しよ。」
「宝探し?」
「えぇ。まぁ、詳しくはそこの係りの人が説明すると思うけど、洞窟の中から宝を探して戻ってきた人が合格。これからはチームで行動するわ。」
「へぇ〜。」
 
 そうこう話している間に全員揃った様だ。
 
 先程ミネルバが触れた炎術士バンダーのチームや少年達や女の子達、そして、ムサい男二人と一緒に一際目立つ、美人でクールなショートの黒髪の人間の女性、列車で見かけた学生達、カエル人の3人組や、厳つくいかにも屈強そうな男達3人組がいた。
 カナッツが全員に呼びかける。
 
 
「さあ、皆さん!ようやく一次試験の通過者が揃いました。まずは皆さんの通過をお祝い申し上げます!では、これより二次試験に入りたいと思います。これから皆さんにチーム登録をして頂きます。既にこちらにいらっしゃる方はご存知の事と思われますが、二次試験はチームプレイです。予めメンバーが決まっている方達から順にご登録下さい。登録はあちらのテーブルで待機しております事務にてお済ませ下さい。」
 
 カナッツの説明にどよめきの起こる一角も有ったが、大半は織り込み済みの様子で次々にリーダと思われる者が登録へ集まって行く。
 程なくして登録が全て済んだ。
 クロノ達の他に現れたのは、全部で21人、7チームの様だった。
 
 チーム名一覧
 
 ファイアブラスト
 リーダー=バンダー・クラフト メンバル・カーメン ヤッパ・マイウー
 
 コアガード
 リーダー=ハイド・スイソ ティタ・チタ ランタ・ノイド
 
 メーガスかしまし娘。
 リーダー=アミラ・ゼー リーパ・ゼー マルタ・ゼー
 
 乙子組
 リーダー=フォース・キン パー・ヤネン パンチ・ラー
 
 グリフィス
 リーダー=ガーネット・スネークヘッド ツー・キュー カー・キュー
 
 腐れ縁
 リーダー=ヒカリ・イジューイン ベン・ゾガリ イーマ・ター
 
 フロノ・ノコリガー
 リーダー=カエゾー・カエ カエミ・ゲコ フログ・フォレスト
 
 ポチョ
 リーダー=クロノ・トラシェイド シズク・ユキムラ ミネルバ・ワイナリン
 
 
「…以上7チームが決まりました。それでは、これより二次試験会場となる試練の洞窟に移動致します。皆様、危ないですから壁の手すりにお掴まり下さい。」
 
 カナッツは全員が手すりを掴んだのを確認すると、ポケットからリモコンを取出しスイッチを入れた。すると「ガタン」という音と共に揺れ始め、なんと、どんどん部屋が沈下し始めたではないか。クロノが驚いている間にもどんどん後方の入って来た通路が離れて行くのが見える。
 
 降下はそれから5分ほど続き止まった。
 カナッツは止まった事を確認すると言った。
 
「皆さん着きました。壁から離れて中央に集まってください。」
 
 カナッツは集まった事を確認するとリモコンを再び操作する。
 すると前方の壁が上がり、後方の壁が締まった。前方をみると通路が開けていた。しかし、明かりは無く、奥は真っ暗で見えない。辛うじて今までいる部屋の明かりが射して、通路だと確認出来る程度だった。
 横の壁が開く。
 すると、そこから台車を押して沢山の筒を運ぶ係員が現れた。台車の上には筒の他に小さな手で持てる大きさーーだいたい縦20cm横15cmくらいーーのプレートが複数置かれていた。
 周囲がどよめいていると、カナッツはその台車の上にあるプレートを一つ手に取り説明を始めた。
 
「えー、皆さん。これから二次試験を開始致します。皆さんにはこれからお配りするプレートに呪印を集めてもらいます。呪印とは、魔法力を込めた魔法陣の文字です。
 それぞれ属性を持ち、地水火天の4つの属性を示します。そして、これに加えて最後にもう一つ「冥」の呪印をこのプレートに移し、持ち帰って来てください。持ち帰り方は自由です。…尚、この試験はサバイバルレースでもあります。
 これより受験生同士の戦闘も許可されます。しかし、この洞窟の内部では魔法以外の攻撃は使えません。また、どんな攻撃も魔法を利用したものでなくては効果はありません。
 
 そして、これより基本的な戦闘のルールを説明致します。皆さんはこのルールに従って戦闘して頂くことになります。ルールに反した行動をとられましたら、即時停戦の勧告とともに、違反者に対するペナルティが発動します。
 これに従わなかった場合は即時失格となりますので、皆さん確実に覚えておいて下さい。
 
 1、この試験内での武器による人への攻撃を禁じます。
 これは安全性の確保のため不測の事態を回避するためです。このため、基本的に使用できる有効な直接攻撃は、体のみでの攻撃に限定されます。しかし、人以外の物に対してはその限りでは有りません。この他、魔法力を高めるロッドなどの道具の使用は認めます。
 
 2、他のグループから戦闘を申し込まれ場合、これに必ず応じて下さい。そして、勝負を決して下さい。拒否された場合はその時点で失格です。また、これは勝負を申し込む側も撤回が出来ないことを意味する事をお忘れなく。
 勝負に負けた方は相手から呪印を一つ奪うことができます。しかし、差し出す物が無い場合は失格となりますのでご注意下さい。ただし、この戦闘を実行する側は最低でも既に呪印獲得のアクションを起こしていなくてはなりません。…これは呪印獲得をせずにチームの削り合いをすることを禁じる処置です。ご理解下さい。
 
 以上が戦闘に必要なルールです。
 この範囲内に沿って私ども審判は判断を下し、時に仲裁致します。審判の裁定には必ず従って下さい。
 なお、これらの判断については、戦闘中に私の名前を御呼び下されば応答することも出来ます。判断に迷うことがありましたら、お気軽に私にお尋ね下さい。
 
 では、私がこれよりプレートとこちらにございますたいまつをお渡ししますので、それをお持ちになられたチームから順次試験場へお入り下さい。では、ご健闘を。」
 
 カナッツの最後の言葉に合わせて、係員達が台車の上にあるプレート一枚とたいまつーー先程の筒ーーを手に持ち、配る準備は万端という様子を見せた。
 他のチームが次々に動き、プレートとたいまつを受け取っていく。
 そして、プレートを受け取ったグループは順次暗闇の中に消えていった。
 
 ミネルバが二人にいった。
 
「私達も行きましょう」
「あぁ。」
「うん。」
 
 3人もプレートとたいまつを受け取り、暗い闇の中へと入っていった。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.6) Gecko/2...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【89】花の町〜温もりの色〜
 麻澄  - 07/9/8(土) 19:57 -
  
--------------
古林 千早コバヤシ チハヤ♀(13)
槙野 さくらマキノ サクラ
小玉 環コダマ タマキ
吉河 麻友ヨシカワ マユ♀(14)
旭川 簾アサヒガワ レン♂
隈井 優希架クマイ ユキカ♀
珠枝橋 咲タマエバシ サキ♂
----------------
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; FunWebProducts-AskJeev...@baidcd037d4.bai.ne.jp>

【88】CPss2第11話「絶対防衛主義」
 REDCOW  - 07/9/8(土) 10:16 -
  
第95話「絶対防衛主義」(CPss2第11話)
 
 翌朝
 
「おはよう。」
「おはよう!ミネルバさん。」
「昨夜はよく眠れました?」
「えぇ、そりゃもう!」
 
 ミネルバの問いに元気よく答えるクロノ。
 彼女はその表情に思わず笑う。
 シズクが異様な元気のよさに怪訝な顔をして言った。
 
「随分元気ねぇ。もう、女の人だったら誰でも良いのねぇ。」
「うへぇ〜〜!?なんでそうなるんだ!」
 
 シズクは自分の言葉に慌てる彼を見て、にやりと笑う。
 そのやりとりをみていたミネルバはニコニコと微笑んでいた。
 
 程なくして列車は試練の洞窟駅に到着した。
 洞窟駅というから地下にあるのかと思っていたクロノだが、実際は森の中だった。
 
 時刻は朝七時。
 自分でもよく起きれたなと内心思いつつ、ドアが開くのを待った。
 
 3人は列車の出口に集まっていた。
 
 
 ドアが開く。
 そこには警備員の様な男達が、まるで乗客が降りるのを拒むように立ち並んでいた。
 車内放送が入る。
 
「…乗客の皆様、まだ降りないでお静かにお待ち下さい。今からお一人ずつ降りて頂きますが、その際にドア前の係員が一人一人チケットを拝見させて頂きます。乗客の皆様は係員が告げるゲート番号のゲートへ向かってください。なお、指定のゲートと違うゲートに入った時点で試験は失格となりますので、お間違いなくお進み下さい。では、お一人ずつ降りてください。」
 
 車内放送が終わると、列車を一人一人おり始めた。
 皆言われた通りにチケットを手に持ち係員に差し出すと、係員は事務的に素早く背後にいる数人の係員の一人にチケットを渡して何かを告げる。受け取った係員はチェックして受験者に指示を告げ、それを返却した。その間にチケットを受け取る係員は次の受験者からチケットを受け取り、また背後の空いている係員に渡して何かを告げチェックさせた。
 その流れは次第に幾つかの列となり、沢山の人の流れがホームを満たし始める。
 
 クロノ達の順番が回ってきた。
 彼らはまずクロノから降りた。
 
「チケットを拝見します。」
 
 警備員がそう告げると、クロノは予め出せる様に準備していたチケットを手渡す。すると、警備員は背後にいるもう一人の警備員に何かを小声で告げてチケットを渡し、クロノに前に進む様促した。そして次のシズクが降りてくるのを待っていた。
 クロノは前に進むと先程の背後にいた警備員がチケットを渡し、行き先を告げる。
 
「あなたは2番ゲートへお進み下さい。二番ゲートへは床のピンクのラインをお進みください。」
 
 クロノはチケットを受け取ると少し進み、二人が来るのを待っていた。程なくして二人も降りてくる。
 
「どうだった?俺は2番ゲートだったぜ。」
 
 クロノの言葉に、二人はニッコリ微笑んで同じだと言った。
 3人は一緒にゲートへと進む。途中に4番や3番などのゲートへ進む人の列が見える。2番ゲートの前にはあまり人が居ないので、スムーズに進んだ。
 その先に見える一番ゲートへは一際多くの人が並んでいた。
 
「凄い数が並んでるんだな。」
「ゲートの違いって何かあるんですか?」
 
 二人の発言にミネルバは苦笑いし言った。
 
「ゲートを出れば分かるわ。」
 
 そういうと彼女は先を急ぐ様に進んだ。
 二人もその後をついて行った。
 
 2番ゲート行きの通路は入ってすぐに下に降りる階段があり、そこを降りるとすぐに右側へ伸びる通路があった。通路は突き当たりまで200mほど有り、そこを左に曲がると再び200m程続く通路があった。そこも突き当たりがあり、右に曲がると改札らしき物が100m程進んだ前方に有った。
 改札は4つ有るが、開いているのは2つだけ。しかも、こちら側から出る一方しか開いておらず、向こうから入ってくるゲートは無い様だ。改札口には大きな青いドアのついてない囲いが立っており、少々駅の改札にしては他とは違い、なんとも異様な雰囲気である。
 そこには4人の先程ホームで見た警備員の様な服を着た係員が立っていた。ホームと違うのはこちらは皆女性だということだ。それぞれの改札口に二人組みで立っていた。
 まずミネルバが先に進んで改札をした。
 
「チケットを拝見させて頂きます。」
 
 まず前方に立っていた係員がチケットを受け取ると、先へ進む様に促される。その間にチケットは後方のもう一人の係員に手渡され、何らかの機械にスキャンされる。ミネルバがゲートを潜り終わると、係員はチケットを手渡した。
 
「おめでとうございます。一次試験合格です。二次試験頑張ってください。」
「えぇ、ありがとう。」
 
 ミネルバはチケットを受け取ると少し前に進み、振り返ると微笑み二人に来る様促した。
 二人はそれを見て頷くと、一緒に二つあるゲートにそれぞれ入っていった。ミネルバ同様にチケットを渡し青いゲートを潜ると、突然ベルが同時に鳴った。
 
「お、おい、なんだ!?」
「何か問題有るのかしら?」
 
 二人の不安な表情に、係員は苦笑しつつ言った。
 
「いえ、一次試験合格です。おめでとうございます。ただ、お二人の魔力レベルがですねぇ…」
「何よぉ、勿体ぶらずハッキリして頂戴よぉ。」
 
 詰め寄るシズクに、係員は困った表情でたじろぎながらも答えた。
 
「このゲートで計測不能な魔力が検出されまして、機械がエラーを出したんです。この機械で計測不能の数値を出した人はそういません。お二方は凄いですねぇ。」
「え?へ、へぇ〜?そうなの。あは、あはは、あは。」
 
 二人は頭を掻きつつチケットを受け取り、ミネルバのもとに合流した。
 ミネルバは微笑んで言った。
 
「おめでとう。一次試験合格よ。」
 
 彼女の言葉にも二人は不可解に感じていた。
 クロノが思わず尋ねる。
 
「しかし、どこで試験があったんだ?」
 
 クロノは自分の頭の中でこれまでの行動を回想していた。列車に乗って、食事をして、寝て、駅に着いて………思い当たる試験らしきものは無かった。

「試験なんて見なかったわね。」
 
 シズクも同様の結論の様だ。 
 二人の疑問にミネルバは簡単に回答した。
 
「食事よ。」
「食事!?」
 
 二人は思いも寄らない答えに驚いた。
 ミネルバはそんな二人の反応に微笑んで続けた。
 
「思い出して?あの食堂では魔力使わないと注文出来ない仕組みだったわよね?」
「えぇ、そういえばそうね。でも、食事なんかで何が分かるの?」
「この試験では基本的に食事込みのチケットを使い、食堂車利用が義務づけられているの。だから、まず食堂で食事をしなかった人はアウト。次に、食堂を利用した人は出現させたディナーの内容によって振り分けられるわ。一番下は軽食程度、次は簡単な一品料理、その次に定食セット、最後が私達が食べたフルコースよ。」
「へぇ〜、俺たちって成績優秀?」
「フフフ、そうね。お二人はかなり優秀よ。あのゲートで計測不能の魔力反応が出たのなんて、私が知る限りはボッシュ様やルッコラ博士、それにビネガーくらいね。」
 
 クロノは最後の名前に驚いた。
 
「いぃい!?ビネガー???」
「どうしたの?」
「いや、その、ビネガーってどんな人なんだ?」
「ビネガー8世第二代共和国大統領よ。この国が今あるのは、ボッシュ様は勿論、彼の存在無くして語れないわ。」
「どうゆうことだ?」
 
 そこにシズクが言った。
 
「ビネガー主義ね。」
 
 彼女の言葉にミネルバは頷くと、話し始めた。
 
「この国の外交戦略のことよ。ビネガー8世は王国歴で言う1004年に来襲したパレポリに対して、ボッシュ様が纏めた共和国の初代防衛大臣として対峙した人物よ。パレポリに対して独特の防衛戦術で共和国を鉄壁の防御で守り、ガルディアでさえ後に屈したパレポリの軍勢を退却させた手腕の持ち主。外交でパレポリとの同盟を樹立すると、彼は後に2代大統領に就任した際、ビネガードクトリンを発表。人間の軍事への無干渉絶対防衛主義を打ち立て、現代に続くこの国の行くべき道を定めた人よ。」
「ビネガー主義…、つまり、メディーナは同盟を結びながら、パレポリと同盟軍を結成したことは無いのか?」
「そうよ。この国は飽くまで人間との直接的争いへの干渉を避ける事を第一に外交をしているの。でも、それは自分達の平和が脅かされなければという前提においてね。もっとも、最近の私達の様な若い世代の中には、このビネガー主義を臆病主義と揶揄する人もいるわね。」
 
 クロノは自分の記憶では落ちぶれているはずのビネガーが、この国では再び権威を誇っているという事実は勿論、自分が知っているつもりの歴史とは確かに違うことを感じる話だった。何より、彼女の話が本当であるならば、ガルディアへ来襲したパレポリの軍勢の中にいた魔族達の背景が変わってくる。
 メディーナ共和国と言う不思議な国の不思議な事情は勿論、この国の置かれた特殊なポジションは、まだ色々な話が隠れていそうだった。
 
「平和を当然と思えば、戦が恋しくなる。特に玩具が揃っていたらな。」
 
 クロノは自分で言葉を発しながら自戒するように思っていた。
 ガルディアが戦争を止められなかったことは、長く続いた平和故の出来事だったのではないかと。
 
 当時の元老院や貴族院の非現実的な認識の上に立った外交観や、まだまだ未整備だった国民から直接選挙で意見を聴く仕組みなど、人々の気持ちと議会の気持ちは大きく離れていた。確かに予兆はあり、幾らでも動く余地があった。
 あの当時にこの国で表立って立ち上がったボッシュの様に、もし自分達がもっと真剣に世界中を眺めて政治に取り組んでいたら、あるいは…。
 
 こうして過去を回想して、本当は違う未来があったはずだと思っている安易な認識は、過去に歴史を変えた自分達の力を過信していた面から起きたことは否めない。ボッシュが立ち上がったのは何故だろう?…それは、彼がこの時代に「生きる」ことを選択したからなのではないか。そして、自分自身はボッシュとは反対に、この時代に生きていることをどこか他所の事に思っていたのではないか。
 
 彼女の話を聞いて、早くボッシュに会い、彼のとった行動の理由を聞きたいと感じていた。
 ミネルバは彼の言葉を聞いて、静かに言った。
 
「そうね。」
 
 クロノが先を進んだ。
 二人も後を追った。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.6) Gecko/2...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【87】クロノ・トリガー オリジナル・ストーリー
 世界変態の時  - 07/9/6(木) 16:05 -
  
ども。初めてきました。クロノ・トリガーの物語が書きたいな〜と思いつつ此処をたずねました。よろしくおねがいします。

∞「プロローグ」
千年祭の夜
クロノ達は別れる。
カエルは中世へ。
エイラは原始へ。
ロボは未来へ。
魔王はサラを探す旅へと出る。
これで全てが終わった。
クロノ達は少し寂しい気もしたがこれで未来も平和になった。
そして、クロノ達も家へ帰ろうとしたとき・・・
ミャーオとクロノの猫がゲートの中へ。
「クロノ!あんたがちゃんとエサやらないから逃げちゃったじゃない!」
ジナもゲートの中へ。
「しまった!母さん!」
クロノも追いかけようとしたがもうゲートは閉じている。
「そんな・・・」
クロノが絶望しているときルッカが笑い出した。
「あれがあるじゃない!タイム・マシーンが!!」
クロノ達はシルバードへ飛び込んだ。
しかし、マールがある異変に気付いた。
「あれ?そういえば未来が変わったんでしょ?シルバードは無くならないの?」
しかし、なぜかシルバードは消えていない。それにラヴォスにトドメを刺した時にもシルバードそしてロボはまだ消えていなかった・・・
そしてクロノ達は考えながら未来へ最後の時間移動をした・・・

I「本当の未来」
クロノ達は薄暗い倉庫の中で目覚める。
シルバードは壁に激突し大破している。
「いたた・・・ここは?」
少し見覚えのある所。とりあえず扉を開けて外に出た。
「ここは・・・そんな。バカな・・・」
クロノ達は平和の未来に変えたと思っていた未来が変わってない・・・いやもっと酷くなっているのを見て絶望した。
「だ・・・だからシルバードやロボは消えなかったのか・・・」
クロノがそう言う。
「でも、とにかく歩きましょう・・・シルバードも大破しちゃったし・・・」
マールはそう言いながら小さなドームを指差した。

II「再会」
クロノ達は一つのドームへと辿りついた。
「なんだ?この板は・・・」
クロノが不思議そうに足元の小さな板を取った。
そのときだった。大きな音で
「ヨウコ・・・!アリ・・・ムヘ!!」
所々ノイズが入っていて聞きにくかった。
(ラヴォスを倒す前にアリスドームがあったから多分ここはアリスドームだろう)
そして扉を開け、中に入った。
中はもぞもぞと何かが動いている。
人だ、人だ!とマールが言う。
「!?誰だ!」
「なんだ?人・・・か」
「馬鹿な生存者がいるわけないだろ」
中の人がそう言う。
「オレ達は1000年前から来たんだ!」
クロノが大きな声で言う。
「・・・モシヤくろのサンデハアリマセンカ?」
「その声・・・ロボ!?」
「ヤハリるっかサンデシタカ!」
そこには人にまじってロボがいた。
「ロボ!会いたかった!!」
とルッカがロボに抱きつく。
「スイマセン。るっかサン。未来ヲ平和ニスルコトガデキマセンデシタ」
「どういう事?」
「るっかサン達ガラヴォスヲ倒シタコトデ未来ハ変ワリマシタ」
「シカシ、イイホウニハ変ワリマセンデシタ」
「ラヴォスハ死滅シテイマシタ。シカシ、ラヴォスノチカラヲリヨウシヨウトシタ人物ガラヴォスヲ復活サセタノデス」
「・・・・ジール・・・」
「どうして生きていたの??」
「黒の夢で倒した筈だ・・・・」
「イエ、じーるデハアリマセンデシタ・・・」
「じゃあ誰なんだ!」
「イイニクイノデスガ・・・さらサンデシタ」
「ど・・・どうしてサラさんが?!生きていたんだ・・・」
「さらサンノめカラハ生気ガカンジラレマセンデシタ」
「そんなサラさんが・・・」
未来を変えたがサラが未来を滅ぼしたことになってしまった。
とんでもない事になってしまったがクロノ達は立ち向かおうとしていた。
引用なし
パスワード
・ツリー全体表示
<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322; .NE...@121-82-215-79.eonet.ne.jp>

  新規投稿 ┃ツリー表示 ┃一覧表示 ┃トピック表示 ┃検索 ┃設定 ┃PCホーム ┃使い方 ┃携帯ホーム  
6 / 10 ページ ←次へ | 前へ→
ページ:  ┃  記事番号:   
38440
(SS)C-BOARD v3.8 is Free