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【147】強くてクロノTrigger まえがき Double Flags 08/8/12(火) 2:14

【162】-10- (第五章 王国裁判IV脱出) Double Flags 08/8/31(日) 23:58

【162】-10- (第五章 王国裁判IV脱出)
 Double Flags  - 08/8/31(日) 23:58 -
  
   カーーン、カン、カン

 クロノにとって気味の悪い音。
 金属音と床に響く音。
 愛刀の“あおぞら”が折れた。
 師匠よりもらった真剣。『前の周』で多くを共にしたカタナが二つに折れる。
 剣先が石床の上で、明かりの炎に揺れて光る。
「届かなかったか」
 さらにカタナを構えるジーノ。その腕には薄く長い傷ができていた。
 ジーノは二本のカタナを完全に押し切ることができなかった。クロノは上手く、カタナを一本失いつつもジーノの技を流したのだ、ただその代償は大きい。
 ジーノの技は斬るものより、武器破壊に近い破壊力があった。
 魔法の付与も使わずこれだけの力を発揮していたのだ。
 それだけでも恐ろしいことである。
 これが破壊の技というモノか。
 カタナの本来の形とは別のもののようにそれは感じられた。
「次は防げまい」
 ジーノはふたたび同じ構え。
 次は防げるか。
 否。
 そんな思いがクロノの中を埋めた。
 『前の周』ラヴォスと戦ったときとは別の、何かが襲ってくる。
 振り払うようにジーノを見る。

   ドォォォォォォォォォン

 部屋を揺らす地響き、忘れていたように残っていた机の上のコップが落ちる。

   カラン

 音は橋の方からであった。
 ジーノを見ると、バランスを崩し倒れていた。

   ごほっ!!こほっ!!こほっ!

 落ちた埃がのどに当たったのかセキをしていた。
 クロノは折れたあおぞらの先をもち、部屋を出た。
 せきが止まりジーノもその後を追いかける。


「マール、ルッカ」
 二人を呼ぶ。
 周りには機械の残骸が散らばっている。
 やはりドラゴン戦車を倒したようだ。
「クロノ、おそい〜」
「すなまかった」
 そんな一言を交わし、大臣橋を今回も渡り(マールは初体験)階段を下りる。
 その後、所長室からジーノが来る。
 騎士長は大臣の前に止まり、
「追いかけますか? 大臣」
 冷淡に話しかけるジーノ。
 その態度に大臣は苛立ちながら、
「その前にわしをたすけんかい!!」
 怒鳴り散らす。
 が、騎士長にはそれは全く効かず、大臣を兵士二人ともども助けた。
 助け出された大臣は穴の開いた橋の下と見ないように向きをかえる。
「どうせここから逃げ出せん」
 大臣は長く続く階段を見ながら、降りる音を聞きつつニヤリと笑っていた。


 階段を下りながらクロノは話しかけた。
「マール、やっぱりこの後警備官がいるのか」
「たぶんね。
 だけど今回は騎士長がいるから」
「……上手く逃げられるかどうか分からないか」
「うん」
「さっきも、なんの連絡手段もないあんなところでいきなり現われるなんて、
 かなり頭の切れる騎士長ね。
 ふたたびここに来るとき厄介な相手になるわ」
 そんなことを言ったルッカに、クロノは黙っていた。
 折れた刀の刃を鞘に包み階段を降りる。


 正面の入り口手前で、『前の周』のように囲まれたクロノたち。
「度が過ぎますぞマールディア様。
 囚人を逃がすなどとは」
「大臣!!」
 どこから現われたのか、それよりどうやってあの状態から抜け出したのか、大臣は騎士長と共に中央の入り口にいた。
「クロノは無罪よ!!
 あなたこそなんでクロノを死刑にしたのよ!!
 裁判では…」
「何のことを言っておりますか、マールディア様。
 そこのクロノ少年は反省のために独房に入っていたのですから。
 それを死刑とは。
 ふう、何を言い出すかと思えば……」
 そのとき一人の警護官が大臣に耳打ちする。
 フム、大臣はいきなり大声を出した。
「頭が高ーい! ガルディア王33世様のおな〜り〜ッ!」
 大臣と騎士長は左右に分かれ、中央に入り口が開かれると共に堂々とガルディア王、この国の王がでてくる。
 その姿は威厳のあるものであった。多くのものが彼に慕う。引き付ける。有無を言わさない態度、強固な姿勢をみせていた。
「父上……」
「いいかげんにしろマールディア。
 お前は、一人の個人である前に一国の王女なのだぞ。」
「ちがう、ちがう、ちがうもん!
 今の父上と話しても何も聞いてくれない、何も信じてくれない」
「何を言い出すか、信じないとは。
 城下になど出てから悪い影響を受けおって!」
「行こう! クロノ! ルッカ!」
 マールは二人を連れて外へ出て行った。
 呆然と見ている王をはじめ警備兵。
「何をしておる! 追えッ! 追え〜いッ!!
 大臣が叱咤して警護官がマールらを追いかけ始めた。
 すぐに大臣もその後を追う。
 騎士長のジーノも国王に一礼をして外へ出る。
「マールディア……」
 一人、国王は扉の先、ガルディアの森その先を見ていた。


 騎士長ジーノは大臣たちクロノのいった方向とはちがう場所にいた。
 一人、ガルディアの森の少しはずれたところにある湖に一人たたずんでいた。
 湖は澄み、城での騒動が嘘の様でもあった。
 ジーノはそのほとりに行き、座り込んだ。
  ごはっ!!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!
 どす黒く、変色した液体、血液を体内から吐き出す。
 血は辺りの草の葉、茎、花を変色させた。
(いつ見てもいやな色。しかしそれももう慣れた)
 胸に手を当て、片手から瓶を取り出し、その中に入っている粒――薬を二、三粒取り出す。
 そして西方で手に入れた薬を湖の水と共に体内の中に流し込む。
 現在の先端医療は西方が握っていた。
 西方で直せないものは、不治の病とされるほどに。
 心臓の鼓動が少しずつ平時に戻っていく、その脈動が分かる。
 ジーノは寝そべりながら先ほどのことを思い出していた。
「クロノといったか。面白い少年だ」
 おそらくその正体は、ジーノの予想するものであろう。
 自分は祖父アラン・プリースト・コンフォートの後を継ぎ、祖父に代わってガルディア王国軍の騎士長を任せられた。
 あの父たちがジーノの役職に、自分より上の役職に、嫌に思うことはあるまい、彼らはそういう人たちだ、長年のコンフォート家という役割が分かっている人たちだ。
 しかし、自分に剣技をすべて伝えられなかったことはどうだろうか。
 途中祖父は亡くなり、すでに第一線から離れていた父に会う機会も、軍としての忙しさから失ってしまった。
 妹は父が亡くなると放浪の旅に出て、たまに地方での武勇伝を聞くぐらいだ。
 彼らが、俺に伝えられなかったものを彼は手にしているのだろうか?
  ………
 そう考えてばかばかしくなった。
 軍の道に若くして入ってすでにそういったことは考えても仕方が無いことだと思っている。
 自分でこの道を選んだのだから。
 軍に入り、騎士長に上り詰めてからも剣技に関しては鍛えていた。
 それがガルディア軍の騎士長としての役目だと、部下になんと言われようともそう考えていた。
(王女も自分で道を決めることができるように育ったか)
 そう考えると外に出たことも悪くはない、そうジーノは思っている。
 ジーノは体の向きをかえて、湖とは逆に広がるガルディアの森を見、聞き、感じる。
 自然のざわめきが聞こえる。
 外交などから帰ってくると、いつもこうやって自分の護るものを確かめていた。
 今回は忙しく、久々の帰還であった。
(それにしても)
 よくよく考えてみると不思議なものはあの少年ばかりではない。
 マールディア様はどこに行っていたのか。
 帰ってくる前なので詳しくはまだ聞いていないが
 この大陸では行く場所に限りがある。秘密裏に国中を探し、有効性をみてパレポリやサンドリノ地方の砂漠民族にも捜索して回ったという話だ。
 それにもかかわらず、それこそひょっこり城に現われた。
 あれほど探したのに見つかることは無かったというのに。
  ………
 このガルディアで何かが起こり始めているのか? 建国千年祭の最中、歴史的事件が起こるには都合がよすぎる。
(まあどちらにせよ。
 ガルディアの一端を握る者としてこの行方を見届けなければならない。)
 心地よい風により意識の遠のく中、ガルディア軍騎士長。
 かつて、ガルディアの勇者と呼ばれた血を受け継ぐ者の中で、最後の、ガルディアの護り手となる男はしばしの休息を取る。
引用なし
パスワード
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