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現代のコルゴー大陸、北の洞窟
ゼナン大陸へもどる近道として海の道を通るためヘケランのいる北の洞窟に入ったクロノ、マール、シェア、そして途中から来たルッカ、ロボは、海の道を通るための道の前に塞がったヘケランと対峙しているところであった。
途中から来たルッカ、ロボによりヘケランを追い詰めることになった。
刃を向けているのはボッシュから(貸して)もらった細長い剣を突きつけた。
しかし、その手は止まっている。
「止めを刺さないノカ」
あと数ミリ動いただけでヘケランに刺さるような態勢であった。
「止めを刺して欲しいのか」
冷徹にヘケランを見下げた。
「……」
一同も思わず押し黙る。
「私たちはこの渦を通ればいいだけだからな」
ヘケランに向けられていた圧迫感が同時に消えた。
ヘケランは起き上がり、シェアを見下げた。
「カワッタニンゲンだ。
400年前、魔王サマガラヴォス神を封印シタカイガアッタモノダ。
ニンゲンもズイブン変わったモノダナ」
その言葉にルッカが食いついた。
「『ラヴォス』を封印した? 召喚したんじゃなくて?」
「『召喚』ダト。バカをいうな。
魔王さまハ命ヲかけてラヴォス神ヲ封印シタノダ。
もうサッサと行けニンゲンドモ」
ヘケランはそれだけ話すと、目を瞑りいびきを始めた。
「これ以上聞いても無駄のようね」
四人と一体は逃げるように渦の中に入っていた。
現代ゼナン大陸、ルッカの家
シェアは湿った紙をタオルでぎゅっと絞り上げた。雑多なところが男っぽいのだが、協調性のあるバストとヒップは女性らしさをよく現している。黒シャツに黒ズボンと、髪の黒さもあいまって全身黒ずくめであるが、それが逆にきちっとしたシックな大人の女性であること見せている。
失礼ではあるがまあ、正直こんなときでしかシェアを女性として認識しないであろう。
海の道を通ったことで、塩まみれになった体をシャワーで流したのだ。
さきに風呂に入っていたルッカは白いシャツとハーフパンツといったラフな格好をしながら、半田を片手に作業をしていた。その傍ではマールがなにやら難しそうな本の合間にあった簡単そうな本を見ていた。
「それでどうするんだ」
「当分はクロノ、マール、ロボは一緒にいてもらうわ」
「ルッカはどうするの?」
「私はまずこの『ゲートホルダー』の2号機を完成させてから、ガルディア城の森とでゲートを開いてから合流するつもりよ」
「よく分からんが、ルッカたちも色々大変なんだな」
シェアはすっと近くにあるソファーに座った。
「シェアさんはどうするんですか?」
「私はここにもどってくるのが久しぶりだからな。まずは情報収集だよ」
「ということは、しばらくは北ゼナンにいるってことですか」
粉末状の素をコップに2、3杯入れスプーンでかき混ぜた。
カラン からん
と音を立てながら、かき混ぜる。
「いや、南ゼナンの知り合いに会うのが先になる」
「パレポリに行くって事ですか」
「ん〜〜、まあね。半分以上は仕事のためだが……」
その目は黒鞘に収められている剣に向けられている。
手はカップを持ち、三分の一ほど飲み干す。
(甘いな)
カチッと置き皿の上にカップを収め、ルッカを見る。
手つきがらしく見え、ここに来ることが本当に久しぶりであることを感じていた。
(苦い)
本を片手にマールがコーヒーに口をつけ、ゆっくりをカップを置いたところで玄関が開く。
がちゃん
扉から赤いツンツン頭の少年――クロノが入ってきた。
マールはその姿を確認すると、本にしおりを挟み立ち上がった。
「ただいま、って言うのも変かな」
「ふふふ、確かにここはルッカの家だもんね」
クロノは一人自分の家に戻っていた。
裁判にて死刑宣告をされ、刑務所にいる中で一度も訪問を許されることが無かった母のジナを安心、無事であることを示すために帰ったのだ。ルッカが空中刑務所に侵入する前に、ジナに一言声をかけていたので『前の周』よりも大きな動揺が見られなかったが、喜んでいた。
こうしてクロノも合流し、再び今後の予定をゆっくりと話し合った。
「すっかり洗い流してもらったんだな」
調整作業も終了したロボが再び起動する。
手足の駆動部分を重点的に動かし、動作の確認を行う。
「ハイ」
「ちょうどよい機会だから、軽量化とかオプションとか付けたからね。はじめは、動作の修正とかで時間がかかるかもしれないけど、ロボのためにもなるとおもうわ」
「全部機械で出来ているのか?」
「ええ、すべて私の手ではないけど」
シェアはじっくりとロボの様子を拝見した。
「いやな、まだ他の大陸では完成なされていない全て機械でつくられたものを見るのは初めてだからな。さすがルッカといったところかな」
照れくさく黙るルッカ。
「じゃあ、私は先に出るよ」
シェアは黒鞘の剣を大事に持ち、ルッカの家を出て行った。
「さて、私たちも行くわよ」
各々が手持ちの装備を確かめたところでクロノが言った。
「ルッカはここに残るんだろ」
「いいのよ。私も間に合ったら駆けつけるつもりだから」
「そうか、じゃあ行くからな」
「頑張って!」
クロノたちは千年祭の行われている広場に向かった。
「こうやって歩いて『ゲート』に向かって歩くの考えたら、シルバードの存在の大きさを感じるね」
「タシカニ、移動して体力、エネルギーが消耗することを考えるト、移動キョリをタンシュクできるシルバードは大きいデスネ」
「でも、『前の週』多く歩いたから後々に体力面での心配が少なくッただろ」
「確かにね。はじめはあたしがいたからずっと休んでいたようなものだもんね」
「それはしょうがないだろ?」
「ソウデス。運動量がタリナイのは、アトデ付けていけばイイだけの話デス」
ガシャン、ガシャンと強弱をつけて動くロボにマールが笑う。
「さて……」
クロノたちはリーネの鐘をくぐり、ポットの前に立った。
中央には小さい『ゲート』が見られる。
そして、右側のポットが強く光っていた。
「コレハ……フタツの異常な重力場を観測していマス」
右側のポッド、すなわちラヴォスに直接繋がっている『ゲート』が強くなっていたのだ。
「また、新たな分岐か」
「? ドウイウコトナノデスカ」
マールは『ゲート』の影響が少ないところで、ロボに話した。
「前にここで少年、あの不思議な少年に出会ってね。
新しい未来が出来るとき、新しい未来への分岐のときに、ラヴォスゲートが光るっていう話なの」
「つまり、この時間帯が未来の分岐点と言うこと。
ここから先に進めば、その未来を選択すると言うことらしい。
正直、ルッカから説明を受けたけどサッパリ分からなかった」
マールも肯く。
「さて、どうする? このままラヴォスを倒しに行く?」
「はい」↓
<<<まだなし>>>
「いいえ」
「そうか、後悔しないな」
「するから、やっぱり行く」↓
<<<まだなし>>>
「ええ」
「じゃあ先に進むか」
クロノたちはゲートホルダーで『ゲート』を安定化しそのなかへ入っていった。
ルッカは一人、作業台にてゲートホルダーの2号機を製作していた。
材料は……何とかなった。
後は組み立てるだけ、といってもこの作業が一番神経を使うのだ。
ふう、と一息。
ルッカが立ち上がったところに、一冊の紙束が落ちた。
なんとなく拾ったルッカは、その紙束に見覚えが無いことに気づく。
タバンのだろうか、しかしそのなかで気になることがある。
それは表紙が白紙だということ。
ルッカは見やすいようにと最低限表紙をしっかりと書いて置く。
しかし、これにはそれが無い。
興味の中、紙束を一枚めくると驚愕の事が書かれていた。
思わず、最後のページを開く。
ルッカの予想通りだと、ここにあることが書かれているはずである。
「!!」
その事実はやがて、ルッカを含めてたクロノたちに大きな運命の流転を引き起こす。
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