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【57】夜空の星。−想来が残したもの− アオリ 06/11/30(木) 1:56

【57】夜空の星。−想来が残したもの−
 アオリ  - 06/11/30(木) 1:56 -
  
―― あなたには希望がありますか?


―― 夢がありますか?


これは白血病という病をもった一人の少女の、壮絶な闘いと愛の物語……


想来 「碧空……」

碧空 「想来、大丈夫だからな」

想来 「うん……頑張るから」


あたしは、碧空の家に引き取られた12歳。


今日、無菌室という部屋に入ったばかり。


想来 「絶対…元気になって外に行くから…」


看護師「想来ちゃん、点滴始めるよ」


想来「ねぇ……神様はいるのかな」

碧空「…いるよ」

想来「…神様なんていない」

碧空「え?」

想来「神様がいるって言うんなら、ここから出してよっ…」


無菌室生活、5日目。


もう、あたしは精神が壊れかけていた


碧空「骨髄移植……ですか?」

医師「えぇ。想来ちゃんの体を治す方法はそれ以外残されていません」


想来 「あー…!碧空…どこ…行ってたの?」

碧空 「ぃや……別に」

想来 「今熱あるから元気に喋れないんだ…ごめんね」

碧空 「いいよ、ゆっくり寝てろって」


まだ、想来に骨髄移植のことは秘密。


看護師 「碧空くん、検査室行こうか?」

碧空  「あ、はい」

想来  「え……?検査ってなぁに?」

碧空  「……想来は俺が守るから」

想来  「(…え?)」


もう無菌室から出ていたあたしは、碧空の後をついて行くことにした


十分後

碧空「…!!想来!」

想来「……あたしのために?」

碧空「ぇっ…あぁ…骨髄移植が出来るかもしれない」

想来「っ…あー…ん…」

碧空「ゎっ…ちょっとこんなところで……」


嬉しさのあまり涙が止まらなくなって、落ち着いたのは一時間後のことだった


そして運命の三日後。

1万分の1の確立と言われるくらいの奇跡がおきた


あたしと碧空の血液が適合………


想来「ごめんね碧空………あたしの病気のせいで……」

碧空「いいよ想来が助かるなら………」

想来「……っありがとぅ……」


手術が始まるまで、あたしはずっと手を握っていた


あたしの「歌手になる」という夢を一度は閉ざされたこの病に、勝てるかもしれない…

温かい健康な血液が、あたしの体内を温めた気がした

ゆっくり…血液が入ってくる………


想来 「碧空君のとこ……行きたいです」

看護師「…分かったわ  ちょっと待っててね」


――

想来「碧空っ…!」

碧空「そ……ら?」

想来「大丈夫っ…?ありがとうっ……」

碧空「あぁ……」

想来「新しい生命……ありがとうっ……」


トントン

想来「はい」

美衣「想来お姉ちゃんっw」

想来「あ、美衣ちゃん」

美衣「お姉ちゃん病気治ったの?お歌うたおー♪」

想来「うんいいよ、何歌う?」

美衣「さっきね、心ちゃんとチューリップうたった!!」

想来「じゃあもう一回歌おっか?」

美衣「うん!!」


ねぇ碧空……聞こえてる?

生命の声………


美衣「ねえお姉ちゃん、コンサート開こうよ!!プレイルームで、みんな呼んでお姉ちゃんが歌うの!」

想来「それは無理だょ……」

美衣「どうして?生きてるから出来ることなのに?」


……生きてるから……


想来「うん、やってみるよ美衣ちゃん」


数日後

看護師「想来ちゃん?一体何を………」

想来 「皆があたしに歌って欲しいって言ってくれたんです!!みんなに希望をあげたいんです」

美衣 「お姉ちゃんっ」

想来 「わっ美衣ちゃん」


看護師「白血病患ってたとは思えないですね」

看護師「まだ完治してないんですけどね……」


想来「君と居れる日々が限られてもまだ……」


あたしの思いを込めた歌……

セカイに一つの歌……


想来「この街の何処かで悲しみが生まれないように……」


夢を持ってたあの頃みたいに歌えるよ……


想来「…ありがとう……ございました…」

美衣「お姉ちゃん……ありがとう……きれいだった……」


これであたしは思いを届けることが出来たのかな……


三日後

あたしは今日、退院となった

そして……美衣ちゃんは無菌室に入った


想来「ごめんね……美衣ちゃん、先に行くことになって」

美衣「ううん……お姉ちゃんの病気が治ったんだもん……良かった」


どうして小さい子供達が苦しまないといけないんだろう………


帰り道――

想来「あのね、あたしは碧空のおかげで生きられて……近くにいられて、嬉しいけど……でもそれって、本当の幸せじゃないと思う………」

碧空「え?」

想来「あ…えと、あたしが不幸せって言うわけじゃなくて……自分も幸せで、他の人もみんな幸せって言えたらなぁ…って……。それが本当の幸せだと思うから……」




碧空「ゆっくりしてろよ」

想来「うん、ありがと」


………あたしは何に励まされてきたんだろう…


皆に歌で思いを伝えられたら………


――神様


――もう一度希望をください………


想来「碧空っ、あたしオーディション受ける!!」

碧空「え?…ちょっ…想来、体のことわかって…」

想来「わかってるよ!!再発するかもしれないって、分かってるよっ………それでも夢を捨てたくないのっ……」

碧空「ボランティア活動として…歌をうたって回ったらいいんじゃないか?」

想来「え…?」

碧空「想来の…その笑顔で」

想来「……。…うん!」


それから一ヶ月。

あたしは街の全ての病院で歌をうたった

感動と優しさで包み込めるように………


碧空「38.5……大丈夫、疲れが出たんだよ」

想来「うん……」

碧空「水持ってくるな」


再発してたらどうしよう……

もう……夢は終わりなの?


碧空「………」


--------------------------------------------------------------------------


朝7時……


想来 「……」

碧空 「…あれ…想来、早いな…」

想来 「…ううん……寝てないの」

碧空 「え?」

想来 「……寝たら…二度と目を開けられないような気がして」

碧空 「(ドクン……)」

想来 「………」

碧空 「大丈夫…俺が起こしてやるから」

想来 「うん……」

碧空 「…想来…ゆっくりでいいから……生きて……」


俺は……このとき初めて想来の前で涙をこぼした


想来 「……っ…あたしはっ……生きたいよ………」


そして想来は病院に戻った

医師 「再発の可能性が高いですね………。」

碧空 「そう……ですか」

医師「今は……出来るだけそばに居てあげてください……」


碧空 「想来、大丈夫か?」

想来 「碧空……大丈夫………!」


深夜12時――――

想来 「けほっ……けほっ………」


――助けて……


――想来を助けて……


医師  「想来ちゃん!」

看護師 「けいれん止まりません!!」

碧空  「想来!!」


―― 碧空の………声………


―― ごめんね碧空


―― せっかくもらった命なのに


―― ごめんなさい………


--------------------------------------------------------------------------
 
想来 「………」

――― あたし……生きてる………?


想来 「…ぁお…ぃ…?」


廊下

医師 「検査の結果ですが……」

碧空 「はい…」

想来 「あ…っ…碧空…」


医師 「…再発してます」


――― え?


想来 「きゃ…っ…」 ガタンッ

碧空 「想来…!?」

想来 「ぁお…い…」

碧空 「聞いた…か?」

想来 「ぅん……」


――― まだ苦しまなきゃいけないの?


碧空 「あ……っ想来!」


――― 嫌だ


――― もうここに居たくない


屋上――――


想来 「(死んだら苦しくなくなる………)」


――― もう頑張れないよ


――― 碧空 今までありがとう………


碧空 「想来っ……!!」

想来 「!……あっ…」

碧空 「死ぬな……」

想来 「やだ……生きてても良い事なんてないもんっ……」

碧空 「もう頑張らなくていいから……」

想来 「え………?」

碧空 「今は残された時間を……精一杯生きよう……」


その夜

想来 「ねぇ……お家帰ってきて良かったの?」

碧空 「あぁ……薬は飲まなきゃいけないけど」

想来 「ゃったぁ……!」

碧空 「良かったな」

想来 「ずっと一緒だょー♪」

碧空 「………」


――― 俺は……返事が出来なかった


それから想来は、どんどん体力が落ちていって歩くことすら不可能となった


碧空 「買い物行ってくるから待っててな」

想来 「や……あたしも行く…」

碧空 「熱あるんだから……待ってて」

想来 「あっ……待って…行かないで……!!」


―― 想来の手を振り払い、思わず飛び出してしまった


――― バタン


その瞬間のことだった

何かが倒れるような音………


――― まさか……


――― 想来……?


--------------------------------------------------------------------------
碧空 「想来………!!」

想来 「あ……お…」

碧空 「すぐ病院連れてってやるからな!」


――― この時俺はまだ……想来の体の深刻な状況を知らなかった


医師 「一ヶ月もてば良いほうですね………」

碧空 「そんなっ………」

想来 「ZZz………」

碧空 「ごめんな想来っ……」

想来 「……碧空」

碧空 「想来っ……!」

想来 「ありがとう……」


想来 「あたしは碧空から離れないよ…」

碧空 「あぁ…」

想来 「離れたくないよ……」


――― 想来の心の叫びが……聞こえる……


碧空 「おいで想来」

想来 「なぁに?碧空…」

碧空 「俺から離れるな…」

想来 「うん…碧空のこと大好き……」


―― この子に生きられる道はない……?


―― それならせめて楽しい思い出を……


三日後


想来 「わぁっ……すごーい!!病院の裏庭に、こんなお花畑あったんだぁ………」

碧空 「想来、花好きだよなw」

想来 「うん!ありがとう!!」


―― ポタッ……


碧空 「そ……そら?!」


突然の出血………


想来 「あお…い……」

碧空 「想来!!」

想来 「あたしが……離れないって言ったのに……ごめんなさい……」

碧空 「おい……っ……想来!!」


病室

医師 「酸素送って!! 想来ちゃん、大丈夫よ!!」


――― ドクン………ドクン………


――― 俺は……


――― 酸素マスクの圧力で赤くなった想来の頬を見ていられなかった


碧空 「もう……やめてください」

医師 「……え?」

碧空 「やめてください……お願いします」

想来 「ぁ……ぉ…………ぃ…」

碧空 「想来!!」


俺は想来を抱き上げた


想来 「あたし……今でも碧空のこと大好きだよ………」

碧空 「あぁ……っ…俺も…想来のこと好きだよ……」

想来 「生まれてきて……碧空のそばに居れて……楽しかった……」

碧空 「そ………ら…?」


想来 「ありがとう………」


――― 眠ったような想来の無力な体を………


――― 俺はずっと離さなかった


--------------------------------------------------------------------------

―― 想来は


―― 俺のもとへ戻ってこなかった


屋上


碧空  「………」

美衣  「あっ……碧空お兄ちゃんだぁー」

碧空 「美衣ちゃん」

美衣 「あのね、お姉ちゃんから貸してもらったリボン返しに来たの!」

碧空 「ありがとう美衣ちゃん」

美衣 「あれ?想来お姉ちゃんは?」

碧空 「…今…あの夜空の……星になった」


――それからの一年は


――色のないセカイで


――毎日の事はよく覚えていない


ピンポーン


碧空 「はーい」

美衣 「こんにちは!」

碧空 「あ、美衣ちゃん久しぶりw」

美衣 「あの、想来お姉ちゃんに挨拶しようと思って……」

碧空 「想来は………」

美衣 「はい!写真の想来おねえちゃんに………」

碧空 「…どうぞ」


美衣 「想来お姉ちゃんね、いーっぱい歌作ってたよーw これ残ってたの」

碧空 「歌……?」

美衣 「うん!すっごくいい歌だよ!」

碧空 「……っ……」

美衣 「お兄ちゃん?」

碧空 「あ……ごめん美衣ちゃん」

美衣 「泣いたら想来お姉ちゃん悲しんじゃうよ…?」

碧空 「うん、そうだよな……」


碧空 「また来てな」

美衣 「うん!!」


碧空「ごめんな想来、助けられなくて…つらかったよな…」

  (♪………)

碧空「歌……?」


――突然聞こえてきたその歌は


――想来の声と同じ音がした…………


――想来の


――全ての思いが込められた歌が………


       ☆★END★☆
引用なし
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