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▼megさん:
> マルコ、あなたは見てくれているかしら?
> わたしとあなた、そして彼とで暮らしたこの小屋の周りは、彼が来てくれたあの日よりもずいぶんと緑の多い所になってきたわ。荒野の固くなった土を耕して種をまき、砂漠化した土地には水をたっぷりまいて苗を植え、三人で手分けして手入れしてきたわよね。とても大変だったけれど、とても楽しかったわ。
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> 彼はいつもわたし達のことを気に掛けてくれたわね。わたし達の子どもが生まれた時、喜んでくれた。手が離せない時は代わりにあやしてくれた。あなたが亡くなった時、わたしや子ども達を一生懸命慰めてくれた。そして今、足が悪くなってあまり草木の世話ができなくなったわたしの代わりに、手入れをしてくれている。彼にはお世話になりっぱなしで、どれだけ感謝してもし足りないくらいだわ。
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> でも、最近は心配なの。彼は出逢った頃と何も変わらず、休みなく働いても少しも疲れを見せない。老いてしまったわたしはもうすぐ彼の前からいなくならなければならない。そこから先は、彼はたった一人でこの木々の世話をし続けなければならない。いくら彼が長く生きられるといっても、独りぼっちは寂しいと思うの。以前はよく訪ねてきた彼の仲間の騎士さんも、何年か前から来なくなってしまった。わたしの夢を叶えるために仲間の元から離れ、尽くしてくれる彼に、わたしは何をしてあげたらいいのかしら。
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> ああマルコ、わたしはもう彼とお別れしなければならないわ。結局彼には何もしてあげられなかったけれど、わたしは彼と出逢えてよかったと心から思う。彼に出逢わなければわたしの夢は叶わなかった。あなたもきっと、そう思っているわよね?
> マルコ、わたしもうすぐ、あなたの元へ行きます。そうしたら、彼が育ててくれている森を、二人で見守っていきましょうね。
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>「フィオナサン……」
> 人の気配が消えた小屋を整理していた彼は、彼女の書き残した文章を見つけ、長い間そこにたたずんでいた。
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