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部屋の中央ではスペッキオが踊っていた。
クロノたちは傷ついていないものの疲労の色が見える。
「どーした、もう終わりか? まだ始まったばかりだぞ」
スペッキオの手には、淡く光る石を持っていた。
(強い……)
クロノは今までにないほどの強さを感じた。
最後に戦ったときとは、終始こちら側の有利に進んでいたはずだったが、いまは全く歯が立たない。
「……あれじゃ、全くの別人ね」
疲労困憊ながらも喋るルッカ。
「使っているものは魔法じゃないし、なんなの」
そう、スペッキオは魔法ではない、何か物の不思議な力をつかいクロノたちを圧倒したのだ。
「魔法は、完全とはいい難いが使いこなしているようだな」
スペッキオは跳ね、踊るのをやめた。
「俺が使ってたちからは エレメント。
名前ぐらい、聞いたことがあるだろう?」
スペッキオの手には白い板をどこからか取り出した。
三人と一体は顔を見合わせた。
「知らないのか。まーいい。
エレメントを扱うにはグリッドがいる」
ポンッ と白い板を投げ渡された。
「それがグリッド。しばらく持ってろ」
するとクロノたちの持っていた白い板が次第に半透明になった。
「これって?」
「消えていったけど」
「それでいい。
エレメントはだいたい白、黒、青、赤、緑、黄の六つの属性の成り立っている」
「だいたいって」
「まー、その辺は気にするな。
ツンツン頭のおまえは『白』が強いな、他に『緑』、『黄』がやや強めだな。
このポニーテールのギャルは『青』と『白』。
こっちのメガネのネーちゃんは『赤』とやや『黒』が強めだな。
ロボットのニーちゃんは『黒』。
てな具合に、この星に存在するものには、ある程度の属性が備わっている。
その力はあまり変わらないが、環境や性格などで強めになったり、弱くなったりする。
それがエレメント。
昔の者が自然を操るために作り上げた、世界の循環システムの一部。
そして、世界を支配していた事のある力。
魔法とは質の違うちから。
じゃあ、身体を慣らすために今回も、『エレメントが使いたい〜』と念じながら、ドアの所からはじめて
この部屋の柵に沿って、時計回りに3回まわる!
あんまり回りすぎてバターにならないよう、気をつけろ」
三人と一体は部屋の周りを三回回った。
その様子をスペッキオはしっかりと確認した。
「よーし! ハニャハラヘッタミタ〜イ!!」
スペッキオが呪文を言うと
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
特に効果音は流れなかった。
「どーだ、新たな力わくだろ。試してみるか?」
「ええ、特になにが変わったか分からないけど」
「そうか、だったらこれ握ってみ?」
スペッキオはこぶし小の宝石をクロノたちに渡した。
「それがエレメント、少し魔法を使う感じで力を込めてみ」
言われたとおりに渡されたエレメントを強く握り、魔力を込めると淡く光り始めた。光り始めるとさっき渡されたグリッドが胸元辺りぐらいの宙に浮かぶ。
『おお』
歓声が上がる、ロボ以外。
ロボは魔法を使えなかったので、イマイチ魔力を込めるという使い方がよく分からなかったのだ。
そんなロボをみてスペッキオは一言。
「おまえは、もう少しグリッドを考えながら回ってろ」
「ハイ」
ロボは再び、一人で部屋の周りを回り始めた。
それを見つつルッカは言った。
「これは一体どんな原理なの?」
「グリッドをよく見てみろ。エレメントが入るぐらいの穴が入っているだろ?
そこにエレメントをはめ込んでみな」
空中に浮かんでいるグリッドの中にエレメントをはめ込む。
ガチ
それはちょうど納まった。
「これでツンツン頭はこのエレメントを使うことができる
これは魔法のように、詠唱や構成を組まなくても発動できる」
「へー、これだけでエレメントが使えるんだ」
「ちなみに他人にはこのグリッドが淡く光っているようにしか見えていない」
スペッキオは自分のエレメントを開いた。
すると、三人(と走っているロボ)にはほんのり薄い光が見えた。
「ただこれは意識してないと見えない。
まあ、この光が見えたら相手がエレメントを使っていると分かるけどな。
ツンツン頭、ためしに使ってみろ。
声と魔力にエレメントは反応する、自分でエレメントの音を聞いてみろ」
クロノははめたエレメントに手を添え、聞けといわれた音を聞く。
そして一言。
●レーザー(白)
一筋の光が、スペッキオの少し脇を通る。
「簡単だろ?」
肯く。
「さてグリッドを良く見てみろ、エレメントの輝きがなくなっているだろ?
こうなったらしばらくはエレメントは使えない」
「一発限りってこと?」
「ちがうちがう。
当分使えない使えないだけ、エレメントは自然エネルギーを使って発動させるもの。
一度使えばエネルギーを消費して溜めなくてはいけない。
まあ、自然に溜まっていくからそんなに心配しなくてもいい。
時間がたてば勝手に回復してる。特に周囲の環境が重要なんだ。
白のエレメントなら、光。
青のエレメントなら、水。
赤のエレメントなら、熱源。
黒のエレメントなら、影や高いところ。
緑なら、植物や風。黄なら、岩やイカズチ。
そういった要素が多いところでは回復力が高い。
場合によるが、早くて10分、長くて1日なんてものもある。強力なものほど回復する時間は長くなる。
まあ、でも」
カツン
スペッキオは器用に足を鳴らす。
「これで、エレメントは回復した。
この空間には全ての要素がある、とっても回復しやすい。
それとエレメントの力加減はグリッドで調整してくれ、グリッドのレベルはその穴にある横の列にいくほど高くなっている。
グリッドにはレベルがあるから、低すぎると使えないから気をつけろ。
エレメントを沢山使ったり、グリッドに力が蓄積されれば自然とグリッド数は多くなる
そうそう、もう走らなくてもいいぞ」
スペッキオはいまだ走り続けていたロボをとめた。
「使えば使うほど強くなっていくのね」
「強くなっていくというより、成長していくといったほうが正しいな」
「で、成長していく過程でエレメントの色と自分の色が関係していくのね」
「まあ、そうだな、グリッドの裏面を見てみろ。
それがエレメントバランス。
一番高い位置にあって強く輝いているのが、先天属性といって、もともとの属性。ほかに輝いているのはまあ、扱える程度だ。まあ、各々の属性には得手、不得手がある」
「アノ、ワタシには緑のエレメントが0%と描かれているのですが」
「それは全く扱えないってことだ。
もしかすると、特殊な経験をして消費したり、出てきたりしたのかもしれないな、今のところはガマンしとけ」
「ソウデスカ」
そこにマールが割って入ってきた。
「でもロボは、砂漠を緑の大地に変えたんだよ」
「よくわからないが、そのボディに蓄積されていないのかもしれないな」
「でも、納得いかないよ」
「大丈夫デス、マールサン。
緑のエレメントガ使えナクテモ、ミナサンガ居るので十分デス。
ソレニ経験を積メバ、可能性はアルノデショウ」
「そうだな。
それといい忘れたけど、グリッドにエレメントが入っていないと使えないからな。
それに一つのグリッドにエレメントをつけたら6時間ぐらいは外せないから、気をつけろ。
さて、長々と説明も終わったし、もう一戦するか?」
「どうするクロノ」
「ああ、でも、エレメント一つずつじゃあ、無理だな」
「おー、忘れていた。
選別だ、もらっとけ」
スペッキオはそれぞれ5つのエレメントをクロノたちに投げ渡した。
そして、再びスペッキオとの戦いが始まる。
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