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【147】強くてクロノTrigger まえがき Double Flags 08/8/12(火) 2:14

【198】-27- (第九章 魔の村の人々4魔女その二) Double Flags 10/9/20(月) 20:53
【199】-28- (第九章 魔の村の人々5異国の来訪者) Double Flags 10/9/20(月) 20:54
【200】:-29- (第九章 魔の村の人々6師匠) Double Flags 10/9/20(月) 20:56
【201】-30- (第九章 魔の村の人々7北の洞窟) Double Flags 10/9/20(月) 20:58

【198】-27- (第九章 魔の村の人々4魔女その二)
 Double Flags  - 10/9/20(月) 20:53 -
  
  風の洞窟。
 グランドリオンの刃を手に入れたカエルはその場でクレフォースという魔女から『エレメント』についての講義を乾いた地面の上で聴いていた。
 クレフォース、茶色の長髪を束ね、カエルを上回る長身、鋭いブルーアイ整ったら体型に、バックパック。身軽な格好であるがこれが彼女がいたるところで奇跡を起こし、何十年も生きていると知っていなかったら、魅力的な女性であっただろう。
(まあ、性格にも難ありだが)
 そんな視線に気づいたのかクレフォースのするどい眼がカエルを睨みつける。
「なんだ」
 裏声で脅すように、まためんどくさそうに発する言葉はすこし念がこもっているようにも感じられる。
 カエルは特に何もないといい、クレフォースは講義を続けた。
 その言い草からは、知らなくても知っていてもどうせどうせそう代わらないだろうということが暗に言われている様でもあった。
 何でも元々クレフォースは、エレメントについて教えるためにカエルを探していたのだと言う。
 このグランドリオンのある風の洞窟で二人が出会ったのはほとんど偶然だと言う話だ。
 クレフォースは講義が終わると、グランドリオンの刃を投げ渡した。
 それを斬らないように上手く受け取るカエル。
 もう慣れたことなので、「何をするんだ!」ということもいうつもりはなかった。
「それで、一体何が起きているんだ。こんなものは前はなかったぞ?」
 カエルは宙に浮かんだグリッドとエレメントを見る。
 まだ数えるほどしかグリッドの穴は開いていない。
 幾つかはクレフォースが選別としてもらっているが、まだ何か物足りない形はしている。
「それが歴史の改変の結果だ、といっていた依頼者の少年は」
「いいのか依頼者は明かさないんじゃなかったのか?」
「依頼が終わったからいいんだよ」
「そうなのか?」
(それにしても、少年か)
 カエルはマノリア修道院で出合った少年のことを思い出していた。
 恐らく同一人物だろう。
(名を確かフツヌシだったか)
「それで私はそいつに依頼されてお前を探していた。
 そのなかでお前らが何をやったのかも知っている」
「すべてを?」
「まあ、人から聞いた伝聞だ。どこまでが本当か私には判断が難しいがな」
「じゃあ、今オレがここにいる理由は……」
「まあ、伝聞の中で私がお前にいえることはそんなにない」
「……なぜだ?」
「それは私が関わるべき問題ではないからだ。
 私は本当はこの時期に君たちの前に現われることはない、そういう歴史だったはずだ。
 お前と私の関わり合いは、もっと前の時間に始まり終わっているはずだった。
 それに私もこの時期にゼナン大陸に寄るつもりはなかった。
 何らかの作用、この場合は少年であるがそれによってこの歴史は複雑になっている。
 これ以上複雑になれば、解決できるものも解決できなくなる。
 全ての始まりはなんだったのか?
 そんなことを気にしていては、この先の解決方法が見つからないんだよ。
 今を生きるものからすればね。
 問題なのは、時間と次元。空間と平面。
 世界はある一定の率で進んでいる」
「?」
 あまり理解してそうにないカエルの顔を見てため息をついた。
「簡単に言うと、一度起きた世界はその率が流れる。
 お前のように時間を跳躍するものに干渉されない限りは常に一定に保とうとしている。
 そして、お前達のようなものがいれば歴史は意外にも簡単に変わる。
 変わった事で様々な影響が現われる。
 しかし、歴史はその影響を最小限にするため、僅かな変化を作り出し、大きな変化を起こらないようにしている。
 あるときは記憶をかえ、あるときは物質をかえ、あるときは現象を変えてな。
 簡単に言うと星はその辻褄合せを行っているに過ぎないのだ」
「? ……」
「まだわからないようだな」
 クレフォースは手元から同じ型の十本のナイフを取り出した。
「例えばここに十本の同じ種類のナイフを突き刺す。
 そこでお前は歴史を登っていき、このうちの五本をとりお前はここに戻っておく。
 するとここには十五本のナイフが存在するわけだ。
 そして、お前が持ってきたナイフをそのままにここのナイフの内の五本を違う型のナイフにする。
 するとどうなる?」
「???」
「答えは簡単、歴史はお前が今もっている型のナイフを持ち出したことになる。
 違う型はそのままこの地面に埋まっているんだ。
 そこでお前は考える。
 抜き出したときは、無造作に取り出していた五本が全て同じ型のナイフである確率は100だ。
 しかし、今ではすべて同じ型である確率は50だ。
 だが、お前が同じ型のナイフを取る確率は100になる。
 なぜだか分かるか?」
「??」
 さらに混乱を極めるカエルに追い討ちをかけるようにクレフォースは説明を続ける。
「その歴史の矛盾を、歴史が書き換えているからだよ。
 お前の記憶の中では確かに全部同じ型のナイフだったかもしれない。
 しかし、実際は半分は違う型のナイフだ。
 ここでの矛盾を解消するために歴史はほんのすこし変化を起こす。
 例えば、途中の時代でこの半分のナイフの価値が上がり、誰かが盗んでいってしまったとか、嵐が起こり違う型だけが埋まってしまったとか、同じ型のナイフが取りやすい位置にまるでそれを取らんとするように置かれていたりとか。
 最後に、君の記憶違いだと言う思い過ごしを頭の中で書き換えられるわけだ」
「記憶を書き換えるだと?」
「考えられないことではないだろう? 世界のバランスを取るためにはそれはほんの小さな変化だ。
 誰が気にするでもないような、でも重要な違いだ。
 ふふ。
 まだ混乱しているな。
 答えはゆっくり探せ、私のような長く生きた人間は少しうがった見方をしてしまうかなら。
 自分ひとりで抱え込むことでもないからな、仲間にでも相談してみるといい。
 きっとその答えがこの世界で起きていることだと理解して欲しい。
 まあ、あくまでも私の見解だがな。
 カエルよ」
「なんだ」
 まだ、混乱と理解しようと考える中でせめぎあっているカエル。
「私はここで去るが言っておくことが一つある。
 この後、王が倒れ橋が襲撃され、お前はバッヂをタータ少年に渡す必要がある」
「そんなことまで知っているのか」
「大体はな、言っておくことは時間のバランスを崩さないことだ」
 カエルが何かを言い返そうとするが、クレフォースはそのままグレンの風に乗り洞窟から去ってしまった。
「時間のバランスを崩すな、か」
「でも、マスターはちゃんとやっていると思うよ。
 責められることはもう償ったはずさ」
 聖剣グランドリオンの精霊であるグランは姿を現しカエルに声をかけてきた。
 先ほどまでカエルがクレフォースに講義をしている間黙って聞いていたためにその存在を端の方に避けていた。
 ふわりと少年の姿でグランとリオンが姿を見せる。
「そうか?」
(こういうのは悩んでいてもしょうがないのよ。前を見て進むしかないんだから)
「「ドリーンねえちゃんん」」
「姉さん?」
 聞こえてきた第三の声。
 しかしその姿は見えず、ただただ声だけが残る。
 そしてその声に覚えがあった。
「エンハーサに居たドリーンか」
(覚えててくれてありがとうね。
 やっとグランとリオンのマスターに共鳴できたよ)
「今度は姉ちゃんもついてくるの?」
(ええ、そのつもりよ。
 カエル君が私の媒体を持っている限りはね)
「媒体?」
 考えるが、ドリーンの媒体となるものはもっていない。
 グランとリオンと姉弟と言うことだから、あの赤い石と同じもので出来ているものだろうと予想できるが、今のカエルには思う付かない。
(あなたが持っている『金の石』よ)
 言われてカエルは金の石を取り出した。
 すると目の前にグランとリオンに近い姿が現われる。
「フリーランサーから得た金の石か……」
 確かにこのデナドロ山で唯一挑んできたフリーランサーが落としたものである。
「何気なく持っていたが」
 確か前の周でも金の石を得たんだっけ。

 カエルはかつて、前の世界でサイラスの墓に行った後、しっかりと自分のケジメをつけるために新生グランドリオンと共に、デナドロ山を訪れた。
 そのときにもフリーランサーが襲ってきて、そこで受け取ったのだ。

(それでこれからどうするのカエル君?)
 ドリーンにいわれてしばし考えたカエル。
「タータにこのバッヂを渡すところからはじめようと思う」
(そう、じゃあグラン)
「何? ドリーン姉ちゃん」
(カエル君を山の麓まで風で送って)
「分かった」
 二つ返事でグランは風を起こし、その風はカエルを包み山の上に上昇し、ふんわりと麓まで降り立った。
 その間ほんの数秒。
 グランが調整しているためか、それほど気持ち悪くはならない。
 しかし、景色がいいとはいえ急激に高所から降り立つのはあまり体には良くはない。
 視覚的問題だ。
 いつもの通りカエルは降り立ったその場でうずくまり、自分の感覚を元に戻す。


 同刻 中世ガルディア城。
 さらに言うなら客人向けの寝室である。
 今は魔王軍と戦争中であるため、このガルディアに旅の客人が訪れることは少なく幾つかの部屋が使われずに残っている。
 その一室にはベッドが二つ、その一つのベッドには少女が静かな寝息を立ている。
 少女は半分以上が毛布に包まれているためによく分からないが、このガルディア王国ではめずらしい黒髪の少女であった。その黒髪は単髪で、簡単に結んでいた。寝ているためかまだ幼さの残る顔つき、まだ十代半ばといったところか。そんな顔の中はそれなりの歴史があるらしく、薄くだが傷跡が見られる。
 もうひとつのベッドで寝ていた主はすでに起き上がり、今寝ている少女を起こそうとしていた。これも黒髪の少女ではあるが、寝ている少女がすこし成長した感が見られる顔つき。すこしきつい印象をもたれるであろう細い顔に黒瞳。まだ寝起きらしく、髪の毛はぼさぼさであるが、長髪が上手く落ちている。その髪を直さずに少女はベッド揺すっていた。
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【199】-28- (第九章 魔の村の人々5異国の来訪者)
 Double Flags  - 10/9/20(月) 20:54 -
  
 中世ガルディア城 客人向けの一室
 黒髪の少女は、少女はベッド揺すっていた。
「お……起きなさい」
 ベッドに寝ている別の少女は、くぅくぅと寝息を立てている。
「もう少し寝かしてあげたほうがよろしいのでは?」
 この部屋の清掃などを行う女性が言ってくるが少女はそれを断る。
「いいえ、これほど立派な部屋。
 それはこの国でよほど主要な地であることが考えられます。
 これ以上長居することは出来ません」
 そういった少女。
 ほんのすこし前にこの隣のベットで目が覚め、そのとき清掃していた彼女から自分たちが誰かに助けられ、眠っていたことを知ったばかりである。
 女性から見れは多少は混乱しているだろうと考えてしまう。
「私たちは気にしませんよ」
 やんわりとやさしくいう。
「ですが、聞けばここ数日とはいえこの場所を占領した挙句、海岸を打ち上げられたところを助けられるという、感謝しきれない恩人に挨拶をしなければいけません」
 ゆっくりと、丁寧な言葉遣いで話す少女。
 長髪の少女は、一般の同年代よりはしっかりしていることがうかがえた。
「そんなに急がなくても大丈夫ですよ。
 ガルディア国王様やリーネ様はとてもお優しいですから」
「? 今なんと?」
「え? 今急がなくても言いと」
「いえ、その後です」
「? ガルディア国王様とリーネ様ですか?」
「!! 王様と言うことはここはガルディア城内ですか!?」
「ええ、まあ」
 突然声を高くされ、言葉にどもる女性。
 少女はすこし固まり、状況を把握するために頭を回転させた。
「……」
「あ、あの」
 女性が突然固まった少女を気に声をかけるが反応はない。
 それでも心配でずっと見ていたら、突然動いた。
「ならなおさら!
 早く起きなさいスティア!!」
 思わず怒鳴ってしまった。それでもスティアと呼ばれた少女は起きない。
  コンコンコン
 早い音で三回ノックされると、軽い木の扉が開いた。
「どうしたんだ!?」
 一人の兵士が入ってきたのだ。
 おそらく
 少女の声が大きかったために、良くは聞こえなかったが何事かと入ってきたのだろう。
「いえ、ちょっと……」
 女性が言おうとするが、少女たちが薄着なのに気づいて兵士の身体の向きをムリヤリ変えた。
「ここは私に任せて持ち場に戻りなさい」
「だが……」
「言い訳無用ですよ、新人兵士さん」
 新人兵士。
 戦争が激化する中で、ガルディア王国は苦肉の策として徴兵を行っていた。
 力のある青年、あるいは働き盛りの青年、少年たちは、有志ではあるがガルディアの兵士として国の前線で戦うことが、義務ではないが公然となされ始めてきた。
 そのため、ガルディア城内では、騎士団の兵士より現在は町などの有志の兵士、新人兵士が多くなっていた。
 彼らに、訓練をつませると同時に城内の見回りを行わせていた。
 もちろん、ヤクラの件があってから魔物や魔族が人間の姿をしていると言うことも考えられるので、素性が分からないものは前線へ行かされたりしている。
 また、王族に関しては騎士団が直属に守っているのが現状である、そのため王様はともかくリーネ様を見たことがない兵士も多々いるのも確かである。
 そのような背景もあり、城内では特にイベントらしいイベントもおきず、刺激や変化に敏感な新人兵士たちは、ちょっとした変化(今回の場合は大声)でも、ノックの後、確認せずに突然部屋に入り込むことがしばしばあった。
 城内ではそれほど大きなことは起きないはずだが、初めて持ち場を任されたり、魔物たちの恐怖になれていない新人兵士はこのように空回りをしてしまうのである。それを昔から城内で働いている侍女たちからすれば、確かに刺激はあるが仕事の邪魔になったりと苦労をしているのであった。
 新人兵士を部屋の外に追い出すと、その騒ぎでベッドに居た少女がやっと起き出す。
「んんんうんん」
 半身を起こし、眼を擦り現状を把握。
 自分の身なりを半分眼が閉じた状態で行い、自分できゅっと頬をつねる。
 その行為を一通り行うと、首を振り辺りを見た。
「ルア姉さんおはようございます」
 おはようございます、といいつつ部屋の窓からはもう陽が高く昇りきりおり始めている。
「ふう、やっと起きたわね」
「はい。
 姉さん、ごめん。わたしの……」
「気にしないでいいわ。船が落ちのは、あなただけのせいじゃない。
 わたしの状況判断のミスとあの嵐が非常に大きかったこと。
 でも助かったんだからいいじゃない」
「……」
 ルアと呼ばれた少女は、女性に向き直った。
「あの、私たちの持ち物は……」
「ちゃんとあるわよ」
 女性はゆっくりとした歩きでベッドの端の方へ行き、タンスから彼女たちの持ち物を出した。
「とりあえず、拾えるものは拾ってきたわ。
 失礼と思ったけどこんなご時勢だから中身を拝見しちゃったけど……」
「そのへんは構いません。助けていただいただけでも十分ですから」
「この書状。ここの文字じゃないみたいだから読めなかったけど、すごいわね。海の水にあてられても消えないどころか、にじまないなんて」
「ええ、それはロウによって特殊に書かれた物ですから」
「ロウ?」
「はい」
「ところであなた達は、いったいどこから来たの?」
 ベッドに寝ていた少女が答える。
「わたし達はここから西に位置するエスト大陸からとある命のために来ました」
「エストから来たんですか。
 たしか戦争が始まってから、交易が止まってしまったのでとく内情はわからないのですが、なぜ今? 私たちの手を助けてくれるのですか」
 気体を込めて女性が言うが、あまりその感じはしない。
「わたし達は種族間の戦争には手を貸しません。
 それが私たちエストの民が長い間築きあげてきた歴史ですから、わたし達はある目的のためにここに来ました」
「そう、それであなた達の目的とは」
「それは……」
 ルアはいいよどむが、スティアが代わりに続けた。
「四精霊教会からの命で中央大陸に伝わる聖剣グランドリオンの封印あるいは破壊です」
 女性は目を丸くした。
「グランドリオンの、破壊?」
「はい、詳しくは述べられませんが、そのためにはるばる西の大陸からここに来ました。
 このことで相談したく、中央大陸の覇者ガルディア王国の王に会いたく……」
  ガシっ
 ルアは女性に肩をつかまれた。
「?」
「急ぐのですか? 急いだほうが?」
「え、ええ、早いほうが……」
「分かりました。特別に王に謁見することを許しましょう」
「?」「?」
「すぐに用意しますから、あなた達も身なりを整えておきなさい」
 女性の突然の物腰の変化にとまどうルア。
「あ、あの、そんなに早く会うことが出来るのでしょうか?」
 現在は戦乱の中である。
 戦時に重要な、それこそ西の大陸が全面協力してくれるという話ならば、これほど早くの謁見も可能であろうが、ことがことである。
 正直ルアは、数日はかかると考えていた。
 それがこれほどまでに早く、しかも直接王に意見を通さず決定してしまうこの女性。
 いったい何者?
「あなたはいったい……」
「申し遅れました。ガルディア王国の王妃リーネです。今後ともお見知りおきを……」
 女性、リーネは恭しく、綺麗に挨拶を述べると部屋から出て行った。
 その様子を見て、ルアはものすごい国であると感じた。

「ありがとうございました」
 謁見の間にて、ルアとスティアは深々と頭を下げた。
 再び顔を上げると、かわらずガルディア王とリーネ王妃がいた。
 リーネ王妃は、さっきまで来ていた服装とは違い、青白いドレスを着ていた。気品溢れる物腰でこちらをにこやかに見てる。ガルディア王はここ少しの間戦況が変化したこともあってか少しやつれ気味である。それでも一国の王をしての重責をもつ威圧感が出ていた。
「以前、ガルディアは異国の者に救われた経緯があるゆえ、異国のものに対しては礼を持って接しておるだけ」
「そうなのですか」
 ルアは手ごたえを感じていた。
 この国は現在戦争中である。
 最悪、間者と間違われる恐れもあった。
 そのため出立時にはそれらしきものはすべて置いていった。怪しいと言ったら先ほどみせた書状であろう。
 ルアは続けた。
「わたし達は西の大陸エスタットから来たのですが、私たちの同胞が建てたマノリア修道院。
 修道院が悪用されたという話を聞いたのですが」
 ガルディア王は責めるべきところを先に言われてしまい、しばし思考した。
 その思考が終わらないうちにルアは続ける。
「わたし達はそのマノリア修道院の取り壊しを提言します」
「……真か?」
「はい、本山の方からの達しでもあります。
 本来、聖の主体となるべき修道院が悪しき物に利用され、その地に住むものに迷惑をかけたのであるならば、わたし達四精霊教の教義に反します。
 取り壊していただきたい。
 もちろん、四精霊教からも補助はします」
「そうか。
 しかし、そなたらも分かっての通り現在戦争中でな、緊急避難の地としてあの場所は使われておる。
 早急にというのは無理な話だ。
「分かりました。
 ならば戦争後ということでお願いします」
「覚えておこう」
「それにわたし達もあまり、城の迷惑をかけるのはまずいかと思うので、そこで寝泊りさせてよろしいですか?」
「それほど迷惑と言うわけではないのですけど」
 とリーネ。
「わたし達はあまり一つのところに寝泊りしていると、兵の士気にも関わるかと思うます」
「そうか? まあ、許可をしておこう。
 自由に修道院は使って良いぞ」
「ありがとうございます。
 そしてもう一つおねがいが……」
「……グランドリオンのことだな」
「はい」
「ねにゆえグランドリオンを?」
「それは数ヶ月前のことです。
 わたし達が所属する四精霊教会と言うエスタット最大の教会で定例の神議があります。
 そこで行われた占術によって、グランドリオンがいずれ悪しき力により滅びをもたらすという結果がでたのです」
「せんじゅつ?」
「いわば占いのようなものです」
「しかし、聖剣と名のついたグランドリオンが悪しき力持つというのか。信じられん」
「わたし達はその原因を探るために、そして探った後の対処として危険とみなせば封印、あるいは破壊を行うためにきました」
「原因を探るか。二人には残念ながら帰ってもらうしかあるまい」
「! どういうことですか?
 それは協力してくれないと?」
「そうではない。
 現在グランドリオンの行方が分かっておらん。
 数年前にグランドリオンの使い手はたしかにこのガルディアにおった。
 しかしそれも消息不明、もっていたグランドリオンとともにだ。
 それゆえ、情報があまりないのだ」
「大丈夫です。
 そのあたりは調査済みです。
 わたし達はグランドリオンを探し出し、占術が正しいのかどうか確かめるためにここに来たのです。
 グランドリオンはこの中央大陸では聖剣とよばれるもの。
 そうは破壊という選択肢は取りません」
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【200】:-29- (第九章 魔の村の人々6師匠)
 Double Flags  - 10/9/20(月) 20:56 -
  
 時代は現代、ボッシュの小屋。
 ボッシュの小屋の前で、『エレメント』を倒したクロノとマール、そしてクロノが師匠と呼ぶ三人と、小屋の入り口に居た老人――ボッシュとウサギに近い黒い羽の生えた亜人の少女が小屋の中にいる。
 さすがに、小屋の中に五人は窮屈に感じられる。
 そこに一人頭を下げ続けている者がいる。
「すみません。ありがとうございました。ありがとうございましたぁ」
 擬ウサギの亜人に頭を下げられクロノとマールは、あまりの必死さにまごついていた。
 クロノは普段人に頭を下げられるということに、慣れていないしマールの場合はこれほど真摯に頭を下げられるという場面に遭遇したことは少ない。
 それより何より、二人にとって亜人というのは珍しい種族であり、千年祭でもチラッとしか見たことが無いため、少々好奇の目が入ってしまっているといこともある。
「それよりターニィ怪我は無いか?」
 師匠の一言に顔を上げるウサギの亜人の少女。
「あ、はいぃっ!」
「それは良かった」
「いえいえ、こちらこそご迷惑をおかけしまして」
 形がけでなく心からそういっているように聞こえ、クロノ、マールは好印象を持つような言葉であった。
「それよりあの『エレメント』の出自を調べておいてくれ」
 ターニィと呼ばれた擬ウサギの亜人の肩に手をかけやさしく言う。ほほが少し赤くなりながからもターニィはうなずく。
「よろしく頼むよ」
「わかりました、超特急でやってきますよぉ」
 ターニィは家の主人であるボッシュに挨拶もそこそこ、飛び出していった。
 大きな音を立てて扉を開け閉めする様子に、老人はいやな顔をするでもなく見ていた。おそらく彼女がこの部屋を出るときはいつもあのような感じなのだろう。
 その目は微笑ましいものを見るようでもあった。その目ががらりと変わり、何かを思い出すようにクロノたちを見る。
「お主たちは確か……千年祭におった」
「クロノです」「マールです」
「おお、確かあの時はそこのお嬢ちゃんがなにやら困っておったようだが無事、解決したのかね」
「ええ、だいたいは……」
 と、言葉を濁すマール。
 と言うのも、ボッシュとは千年祭でマールがこの千年祭初日に戻っていることについて何か知っているかの知れないと相談したのだが、相談されたボッシュには自分達のように『前の周』の記憶が無く途方にくれていたことがあった。あれだけ必死に説明したのがから顔を覚えられても不思議ではない、途中『前の周』と同じくペンダントについても聞かれたし、印象としてはばっちりだったかもしれない。
「何だ、クロノはボッシュさんを知り合いなのか?」
「ええ、ちょっと」
 やはり言葉を濁すクロノ。どうも、師匠を前にするとなんともいい難い気分になる。緊張が走ると言うのだろうか? マールはクロノの微妙な雰囲気を感じ取りあまりクロノを刺激しないようにと内心考えていた。
「ほう、シェアさんと知り合いなのかい?」
「まあな、このクロノには数年間生きる術を教えたことがある」
「い、生きる術……ですか」
 なんだか大きな言葉で表現された言葉に、意味が分からないマールであったがクロノにとっては相当ダメージを与えられたらしく動きがかくかくとなっている、ように見えた。
「まあ、ほんの少し剣術を指南しただけだよ、マールディア様」
 言葉の後半をボッシュには聞こえない程度の声で発し、一瞬でマールを石化させる。
 と、マールは記憶を引き出していた。
 実のところ、マールはシェアというクロノの師匠とは『前の周』で出会っているのである。
 中世の時代に南ゼナン大陸の中央に鎮座する巨大な砂漠をロボと中世にすむフィオナがよみがえられせた巨大な森。この周ではまだ砂漠であるがその中に建てられた神殿に行くとき、森で迷ったクロノたちとであったのが彼女である。
 なぜかそのとき師匠さんは弓術の訓練をしていたが、あの時危うくカエルが射抜かれそうになっていたのであった。
 その後にもガルディアでヤクラ親子の登場で苦戦を強いられた私たちの前に現われたこともあった。ガルディアの名家であるシェアの親族がヤクラによって不遇の死を受けたことにあるという出来事もあった。
 そのときに彼女にはマールの家柄はバレていはいるのだが……。
「なぜここにいるのかわかりませんが、おとなしく城へ帰ったほうがいいですよ」
 シェアはそうつぶやいた。
 その言葉から、シェアがわたし達と同じように『前の周』記憶があるという可能性が少なくなった。
 もし『前の周』のことを知っているのであれば、マールがガルディア王と喧嘩して家出していることやクロノたちと共に何の旅をしているのか知っているはずであったからである、とマールは考えた。
 シェアに対して苦笑いを返すしかない。
 それを乾いた笑いで返すシェア。
「そうそう、クロノ聞いたぞ? 何でも捕まっていたそうではないのか。よく無事だったな」
 振られたクロノはやっと硬直が解けたところであるタイミングで来た。
「ええ、執行猶予というやつですよ」
 言葉では平気を装っているが言葉尻がかすんでいる。
「ほお、それでなんだお前達はこの魔族の大陸にいるんだ?」
「それは……」
 言葉に詰まってしまう。
 というのも、ゼナン大陸とこの魔族の大陸であるコルゴー大陸とには連絡船が存在していないのだ。
「ちょっとチョラスに行ったついでにクロノに無理を行って寄ってもらったんですよ」
 すかさずマールが助けにはいる。
 それに事実、このコルゴー大陸とチョラスのあるクテラ大陸には連絡船が通ってる。
 チョラスのあるクテラ大陸はこの中央大陸群でもっとも商業の発達した大陸であり、多くの地域と貿易が行われている。というのもクテラ大陸周辺の海流の流れが他の場所よりゆるやかであることが大きな理由である。かつて、ゼナン大陸とコルゴー大陸との間にも連絡船をつなぐ計画があったのだが、両大陸の住民と海流がひどく強いため海流を上手く越えられるような船を建造することが難しく、安定した航海できずまたその必要性が無かったために、いつの間にか計画が頓挫されてしまったのだ。現在ではパレポリあたりでは、海流を越すことが出来る船も建造可能であるが、その必要性の無さから再びその計画が前に出ることがなくなっているのである。
「ふ〜ん、マールさんがね」
 ニヤニヤとしている師匠に居心地がさらに悪くなるクロノ。
「と、ところで師匠さんはなぜここに?」
「師匠さんと言うのはやめてくれよ。私は確かにクロノの師匠かもしれないが、君の師匠ではないんだ。
 気軽にシェアと呼んでくれればいいよ。
 で、ここに来た理由なんだが、出来の悪いお弟子様がなにやら捕まったらしいから。
 しかも裁判のお相手があの悪名高いガルディアの大臣と言う話ではないか、これは今回を逃したらもう二度と顔を崇められなくなるってことでやってきた訳だな」
 なんとなく、クロノを脅している雰囲気があるのは、無事であるクロノを喜んでいると同時になにやら言わんとしたいことがあるのであろう。
 今この場には他人であるわたしがいるからあまり言うことが出来ないのであろう。
 それが逆に師匠の印象を悪くしているように思える。
「というは建前で」
 ほっ、息をつくクロノ。
「実際は、さっきの『エレメント』だよ」
「『エレメント』?って」
 対先ほどまでスペッキオから出てきたあたらしい言葉がすぐに現代で聞くのは不思議に雰囲気がある、そんなことを考えながらおもわずつぶやいてしまったマール。
「そうか、確かに『エレメント』はゼナン大陸ではあまり聞かない言葉だな。
 まあ、簡単に言うとこの大自然のエネルギーが蓄積された物体といったところかな」
 そういってシェアは服の間からエレメントを取り出す。
「ゼナンでも、火を生み出したり夜の電灯などに応用されている」
「えっ、あれも全部エレメントなんですか!」
「まあ、全部とは言えないが大体はエレメントが使われているな」
 スペッキオから現代でも応用されているとは聞いていたが、まさかそんなところまで使われていることに驚くマール。
「その便利な便利なエレメントが最近、この中央大陸で暴走したりモンスター化したりして事件になっているんだ」
「? 聞いたことがないよ」
「聞いたことないのは、しょうがない事だよ」
 シェアはまるで世間話をするように口調を変えた。
「事件と言ってもチョラスといった中央の東の方の話だ。西に位置するガルディアまで届かない可能性があるし、ほんの二回ほどしか起こっていない。
 もともと『エレメント』が暴走、モンスター化するのは、東や西の大陸はよく起こっていたが中央大陸群の中では聞いたことが無い。
 その調査もかねてここにいるんだ」
「そんなんですか」
 と、一呼吸置いてマールが言葉を口にした。
「そんなこと話してもいいんですか? 話を聞くと大陸レベルでの話じゃないですか」
「まあね。でも、君たちなら何か知っているのかと思ってな」
「!」
 不注意にも二人は反応してしまう。
 『前の周』でも勘のいい人であったことを念頭に置くべくであったと感じた。
「まあ、あまり勘繰りを入れるのはよくないことだと思っているが、最近私の回りが物騒で、ほとほと困り果てていたところなんだよ」
「物騒なことですか?」
「まあ、最近損な役回りが悪くてな」
 シェアは遠く、別の空間を見ていた。
 こんなときに虚空を見られても困るのだが、この人は。
「それでこれからどうするんだ? ゼナンに戻るのか?」
「ええ、そのつもりです」
「なるほど、それでボッシュに会いに来たのか。道を尋ねるために」
「そうなんです」
「だそうだ、ボッシュ」
 それまで黙っていたこの小屋の主である老人――ボッシュに声をかけると、黒眼鏡をゆっくり動かした。
 いつみても温和な印象を受けるボッシュである。
 この人がまた現代になじんだ雰囲気とまだ何か別の雰囲気をまとう、長い人生を歩んできたものがもつ独特の雰囲気を出しているのは、彼が先にあったガッシュやハッシュと共に古代の三賢者と呼ばれ、古代より現代に飛ばされてきたことが少なくともうかがえる。
 そんなボッシュは歳を感じさせない軽い口調で話した。
「ふむ、客というわけではないのは残念だが、久々の人間じゃからのお。
 祭りでの縁もあることだし、すこし荒っぽいがゼナン大陸に向かう手っ取り早い方法を教えよう」
引用なし
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【201】-30- (第九章 魔の村の人々7北の洞窟)
 Double Flags  - 10/9/20(月) 20:58 -
  
 ボッシュに教えられたのは北にある山のふもとの鍾乳洞。
 先を歩くシェアの剣技は鮮やかであった。
 無駄なく歩き、立ち向かってきたモンスターを有無をいわずに斬り去っていく。
 モンスターの習性なのかあるいは、シェアから何かが出ているのかモンスターは皆シェアに向かっていく。
 モンスターの近づく速さに合わせて、その歩調を微妙にずらし間合いに入った瞬間に金属の閃光と共に斬る。
 わずか一撃で瞬時に仕留めている。
 超人的技能と能力。
 この高いレベルであるクロノの速さが嘘のようである。
 その剣技に魅入りれながら安全な道をクロノ、マールが歩きその先を歩くシェア。
 歩いていながらシェアを見るとふと違和感に気づき、クロノが声をかけた。
「師匠。その剣は?」
 クロノが指したのは、シェアの腰にある黒塗りの鞘に納められたもの。
 見た目、剣そのものであるが、シェアが先ほどから使っているのはボッシュからもらった細い長剣。脇差の剣を抜こうともしない。
「これか」
 シェアは脇差の剣を黒塗りの鞘ごと片手で取った。
 正直、剣というのは金属のかたまりである。ふつうなら早々簡単に持てるものでもないのだが、シェアは軽々と持ち上げた。平均の筋力とはまた何はずれたものをもっていることがこの様子からもうかがえるが、それを口に出したら殴られるのは目に見えているのでクロノは単純な疑問の方を先に口を出した。
「武器を待たない主義の師匠がもっているんですから」
 昔から、シェアは武器というものをもたない。
 それはシェアの流儀はそこにある物を最大限に使い、ありとあらゆるものを武器とすることにある。
 足元にある石をはじめ、森の中でモンスターの退治を行ったときは、借り物の剣であったり木の枝だったりした。物に執着しないと始め思っていたが、そうでもないらしい。なんでも、固定の武器を持つことでの何かを防いでいるのだとか。
 真偽はクロノが直接聞いても教えてくれないために不明である。
 そんな師匠が大事そうに抱えている(ように見えた)剣があれば気になるものである。
「これは東の大陸でもらったものだ。この剣があるために……。
 クロノやマールさんは知っているか? 神剣の存在を……」


 同刻同時代 ボッシュの小屋
「え! ええ〜〜〜!!!」
 小屋の中に大きな声が響き渡る。
 声を出したのは少女――ルッカである。
 親切な魔族の家でクロノたちを別れ、一つしかないゲートホルダーのためロボを呼びに行き、再び現代のメディーナ帰ってきたのである。
 メディーナに着いたルッカとロボはすぐさまボッシュの小屋に向かった。のだが、クロノたちはもぬけの殻。思わず扉を開けるとき大きな声を出してしまったルッカからすれば、その恥ずかしさを含みつつボッシュに詰め寄り、話を聞いた。
「どぉゆうことよ。説明しなさいよ」
 ぐりんぐりんとボッシュの肩をゆらす。
「や、やめてくれ〜」
 言葉に出し、ほんの少しだけルッカの手が緩んだ。
「シェアという剣士とともにゼナン大陸に向かったよ」
 と、ルッカの手が止まった。
「シェア……シェアってあの有名な剣士の」
「そう、シェア・こん……」「なんでシェア師匠がここにいるのよ」
 ボッシュの言葉をさえぎるようにルッカが言葉を出した。
 あまりの勢いで思わずボッシュの言葉も止まる。
「それは知らんよ」
「……んん」
 ボッシュの顔を見るが、それは正直に知らないという顔を見せていた。
 そこでルッカは少し考えるが、思考を変える。
「ん? 別にシェア師匠の理由は知らなくていいよね。
 ボッシュ、それで彼らは北にある洞窟に行ったの?」
「ああ、このコルゴー大陸からのゼナン大陸への連絡船は出ておらん。
 北の洞窟から海の道を通って抜ける方法をとったんじゃが」
 ボッシュは一呼吸を置いた。
「確か、ヘケランが住んでおる。あやつを通り抜けてゼナンに抜けるのは一苦労じゃろう。
 まあ、シェアがおるから心配は無いだろうがおぬしらも行くのか?」
 それは、少し考えたほうがいいということなのだろうが、ルッカはそれに反してすぐに返答した。
「ええ」
 すっとルッカを見る。
「ふむ、そうか。ならこれを持っていくが良い」
 ゆっくりを何かを考えるように目を動かし、戸棚の引き出しから何かを取り出した。
 それをルッカに手を出させゆっくりを握らせる。ルッカに渡されたのは『エレメント』である。
 幾つかの『エレメント』がルッカの手のひらで見えている。
「これは」
 受け取ったルッカは、なぜこのようなものをと問うように聞いた。
 経験の浅いルッカにはそれがどれほどの『エレメント』であるか判断は出来ないが、そもそも『エレメント』自体早々見られるものではないことぐらい分かっている。
「彼らに渡そうと思っていたものだよ。彼らには世話になったからな、餞別と思ってくれていい」
「??」
「亜人の少女から渡されたものといえば分かってもらえるじゃろう」
 おそらくはここでクロノたちがやった何かであろうことに関係しているのだろう、ルッカは考えるのをやめ、にこりとしたボッシュから素直に受け取った。
「ええ、ありがとうボッシュさっきは失礼したわ」

 車両モードに変形したロボと共に北の洞窟の中を進むルッカ。
「ルッカサン、シェアサンハタシカ、ルッカサンの銃の師匠デシタネ」
 ガタガタと揺れるロボの車体上にしがみ付きながらその質問に答えた。
「ええ、私の銃の師匠であると共にクロノの剣の師匠でもあるわ。 おそらく現在にて単独においては最強といえるし、黒髪の英雄と呼ばれるぐらいの人。
 数年前にトルースの町にやってきて気まぐれに私たちに武器の使い方を教えてくれたのよ」
「ズイブンスゴイ人ナノデスネ。イゼンニ、お会いしたトキハ、ソノヨウナ感じはシマセンデシタ」
「ええ、師匠がこの話を人前でするの嫌がるからね」
「ソウナノデスカ」

   クォォォォォォォォォンンン

 奇妙な鳴き声が洞窟中に響き渡る。
「鳴き声??」
 そこへ緊急を告げるロボの声がする。
「ルッカサン、気をつけてください。冷風が近づいてきます」
 ロボが言葉に出した瞬間、目に白い波がこっちに向かってくるのがうつった。
  ”ファイア”
 瞬時に使い慣れた簡単な構成を紡ぎ、魔力を発動させる。
 赤い炎が冷風の進行を曲げる。だがわずかに冷風の方が強く暖風となって押し返される。
「くっ」
 生ぬるい程度の風であったため無事ルッカとロボはその場に留まった。

   フィユユユユユユュュュ

 さらに洞窟内で音が響きあい、奇妙な音を作り出していた。
「ダイジョウブデスカ? ルッカサン」
「何なの今の?」

   ガシャン ガシャン カシャン

 ルッカが周りを見ると、洞窟内の氷柱が少し大きくなっており、幾つかが落下する。
「魔法?」
「いえ、少し魔法とは違う波動パターンデス。おそらくエレメントなのでしょう」
「自然環境に関係しているとスペッキオが言っていたけど、影響範囲が広すぎるわ」
「クロノサンたちは大丈夫でショウカ?」
「シェア師匠がいるから心配はないと思うけど、進むわよロボ」
「ワカシマシタ」
引用なし
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