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【61】時の花 No,0 冥香 07/2/16(金) 19:10

【63】時の花 No,2 冥香 07/2/16(金) 19:29
【64】時の花 No,3 冥香 07/2/16(金) 19:32
【65】時の花 No,4 冥香 07/2/16(金) 19:37

【63】時の花 No,2
 冥香  - 07/2/16(金) 19:29 -
  
AD2288 ―種を蒔く者たち―


 部屋は暗い。広くもない空間を照らすのは、機械油に浸された「紙縒り」に火を灯しただけの粗末な光源だった。くすんだ色の壁にゆらゆらと影を躍らせながら、これまた粗末なデスクに臥して眠っているマール・ティア・ルディオを、哨戒から戻ったエイラ・ヴァン・スペーディアは見つけた。ヴァンが手にしていた物をデスクに置くと、ティアはぼんやりと目を開き、数秒の後、弾かれたように上体を起こした。

 「お疲れだね、ティア。でも、こんなところで寝ちゃあ風邪ひくよ」
 「……ん、大丈夫。ごめんね、ヴァンには大変なことしてもらってたのに、わたしばっか……」
 しおらしげなことを言いながらも思わずあくびが漏れてしまい赤面する妹分の頭を軽く撫でて、ヴァンは持ち帰った荷を解いた。銃器や固形燃料、保存の利く食料などに混じって、新旧の情報保存媒体がデスクの上に広げられる。

 「リュートはまだ帰ってきてないのかい?」
 ティアとともにデスクの上の物を仕分けしながら、ヴァンは訊ねた。こくりとティアがうなずく。
 「うん、まだ時間がかかると思う。情報センター跡、遠いよね」
 「だね。でも、今までにない大きな希望だよ。これに辿り着けたのもティアのおかげだ」
 荒廃したこの世界では貴重とも思える華やかな美貌をほころばせるヴァンに、ティアも微笑み返した。
 「うん、これからだね。がんばらなきゃ!」


********************


 この時代の人類は、統合された「歴史観」を持たない。AD1999の大災害に続く「大反乱」と呼ばれる事件以来、人類社会は細かに分断され、互いに情報や物資そして人材や技術の類をやり取りする術を失っていた。情報センターをはじめとするコンピュータ群に蓄積されてきた膨大な量の「情報」は、もはや人類が所有するところではなくなっているのだ。


 「大反乱」。AD2032、この時代唯一大災害以前から稼動していた情報センターのホストコンピュータ「マザー」が、突如内部と外部とを問わずアクセスを遮断したことに端を発する「機械群の人類に対する叛乱」を指す。

 AD1999、「ラヴォス」と呼ばれる謎の存在が引き起こした大災害により、人類はその数を激減させていた。「決起」以前にマザーが密かにアクセスしていた世界各地のコンピュータの官制下に置かれていた情報、流通、軍事に至るすべての設備、機能が「人類を抹消する」ことを目的として稼動したとき、それに抗するだけの力を人類は持たなかった。

 「実に65000000年に及び『万物の霊長』として君臨してきた人類の、憐れなる末路である」と記すのは、マザーと直結する「ライブラリ」と呼ばれるコンピュータだ。


********************


 「はっ!血も通わねえような連中に、人類の歴史がどーのとか言ってほしくないもんだぜ!」
 「……はあ、すみまセン」
 「あ、いや、なにもお前さんに言ってるわけじゃ」
 「……はあ、すみまセン」

 止むことのない砂嵐のなかを、奇妙な二人組が歩いている。

 口数の多いほうは極端に背が低い。子供とも見紛う小柄な体格だが口調や所作から察するに、どうやら立派な大人の男のようである。ただし人間ではないようだ。砂が目や口などに入り込むのを防ぐため、顔の下半分を何重にも布で覆い、目深にフードを被っているため判然としないが、その風貌は両生類のそれを想わせる。この時代、人類以上に見かけることの少なくなった「亜人」であるらしい。

 もう一人は、いや、「一体は」と言うべきかもしれない。大柄なほうは二足歩行型ロボットだった。砂嵐に溶け込む鈍い黄土色に塗装されたボディには、刻印されたばかりのシリアルナンバー「R-66Y」の文字。

 真新しい引っかき傷のようなその文字を見ながら、小柄なほうが訊ねた。
 「お前さん一体だけしか連れ出せなかったのは正直痛いが、残りの連中はどう動く手はずになってるんだ?その点も『彼ら』は考えていたんだろ?」
 「少しずつ……、マザーの官制をかわしながらになるので、本当に少しずつになりマスガ、地方のコンピュータにリンクしているラインをダミーにすり替えていく作業を行いマス。デスガ、『彼ら』には細かなプログラムを施すだけの時間が与エラレマセンデシタ。ワタシたちに与えられた命令は、実におおまかなものでしかアリマセン」
 「ははあ、まあしょうがないか。なにしろ300年近くも前に慌てて打った布石だもんな。ちょっとくらい大雑把だからって文句言っちゃ、バチが当たるってもんだ。……そら、見えてきた。俺たちのお屋敷さ」

 小柄なほうは親指を立てて、そこに在ると知らされていなければ見過ごしてしまうであろう岩くれのような影を指した。この粗末な建物が、人類に残された、おそらく最後で最強の砦だった。


********************


 マール・ティア・ルディオが「それ」を発見したのはいつごろだったか。マザーの侵入をロックできるコンピュータを確保するのが困難な状況で、しばらくのあいだそれは保管されるだけで、開封されることがなかった。埃まみれで一部熱で変形している耐衝撃素材ケース。そのなかから現れた、古い情報保存媒体。煤けたラベルには、丁寧な文字運びでこう書かれていた。

 「種を蒔く者たちへ」

 多忙で命がけの日々のなか、それでもティアがそのディスクの存在を忘れたことはなかった。なぜと訊かれても、ティア自身それを説明することはできないだろう。だが一見浮世離れした、文学的とも取れる短いタイトルのなかに、切実なほどに現実を見据える者の息吹を、彼女は確かに感じたのだった。
 自分の直感は正しかったとティアは確信している。まだ結論は出ていないが、それでも希望に繋がる細い糸口を確かにつかんだのだ、と。

 扉を叩く音が、ティアの思考を浮き上がらせた。傍らでヴァンが旧式のオートライフルを構えながら誰何する。馴染んだ声が帰還を告げるのを聴いて、彼女は銃を下ろし、扉を開いた。
 「お疲れ、リュート。野晒しガエルにならなくて何よりだったね」
 「哨戒ロボットに回収されて焼ガエルになるくらいだったら、お前に食われたほうがまだ『まし』ってもんだ」
 グレン・リュート・ナノは砂の積もったフード付マントを脱ぐと、「ケロロ」と咽喉を鳴らして笑った。

 「……いたの?『メッセージ』の通りに」
 扉の向こうを気にしながらティアがリュートに問う。紹介が済むまで待つようリュートに言われている「彼」が、そこにはいる。ティアもヴァンも承知はしていることだが、それでもこの時代に生きる者に「彼」の姿は抵抗があるだろうから。
 「おう、いたいた。連れてこられたのはヤツだけだったけどな。よう、入ってくれ」

 リュートの最後の一言は扉の向こうに向けられた。「お邪魔致シマス」と、丁寧な挨拶とともに現れたロボットを見出して、ヴァンの持つオートライフルの銃口がわずかに持ち上がったが、すぐに下がる。
 「はじめマシテ、プロメテスと申シマス」
 プロメテスの挨拶に人間たちはしばらく応えなかったが、やがてティアがひそめられた声で応じた。
 「えっと、はじめまして、わたしはマール・ティア・ルディオ。彼女は……」
 「エイラ・ヴァン・スペーディアだ」

 緊張を解かぬまま、ヴァンも名乗る。その後再び重い沈黙が落ちたが、ティアが一枚のハードディスクを見せながらプロメテスに質問した。
 「教えて、プロメテス。『彼ら』……あなたを生み出したひとたちのこと。彼らは、わたしたちに何をさせたかったの?」
 二人の人間と一人の亜人は、またも重い沈黙を以ってロボットに対した。先人が遺した記録と自分たちの置かれた状況の矛盾を埋める鍵を、彼が握っているはずだった。それを、何としても手に入れなければならない。プロメテスはくるくると首を回して何やら考える素振りを見せた。時折「ぴぽぽ」と鳴る電子音が、どうしても人間たちの負の感覚を刺激してしまうが、これはどうしようもない。やがてプロメテスは言葉を選ぶように語りだした。

 「……ワタシたち『Rシリーズ』のプログラマーたちが想定した『敵』は、マザーではアリマセン。自己のリプログラミングとアップグレードを繰り返し、かつて人間によって施されたプログラムを廃除してきたマザーから、ワタシたちが当初の予定通り生産されたのは、単に初期のセーフティープログラムが格段に優秀だったという理由に他ナリマセン。『彼ら』は当時、マザーこそ人類を守護する存在となると考エテイタノデス」
引用なし
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【64】時の花 No,3
 冥香  - 07/2/16(金) 19:32 -
  
 薄暗い通路を進みながら、プロメテスは連綿と語る。それは彼が「生まれる前から」探し続けてきた、死に瀕した星に蒔くための「種」にまつわる話だった。

 「マザーが……イエ、まだ情報センターと呼ばれる施設のホストコンピュータだった『彼女』が保有していた古い情報から、ワタシはある興味深い人物のデータを見ツケマシタ」

 L.アシュティア。AD1000ごろのガルディアという王国にいたとされる工学博士。彼女が長からざる生涯のあいだに遺した「時空と並行世界に関する研究」のファイルが、情報センターの膨大な電子資料のなかには眠っていた。

 「断片的で、しかも研究そのものが彼女の死によって中断されてしまったようで、実証されるには至っていないのですが、コレが打開策にはならないだろうかと、ワタシは考エテイマス」
 「具体的にはどうするんだ?」
 注意深く周囲を見回しながら、リュートはプロメテスに問うた。

 プロメテドーム。マザーとリンクするコンピュータの制御するドームだが、すでにRシリーズによるダミー回路への待避が完了しているため、ガードロボの攻撃を受けることはない。だが、この時代に生きる者の習性として、気を抜くことができないのである。時代がかった愛用のサーベルは、抜き放たれて利き手に納まっている。

 「時を、越えることはできないデショウカ?」
 ヒトのように表情を変えることのないロボットであるが、プロメテスの表情はこのとき昂揚する気持ちに輝いたようにも見える。
 「時を、越える?」
 「……どういうこと?」
 ヴァンとティアも、相次いで訪ねた。
 「ドリームプロジェクトからのメッセージにもある『ラヴォス』という怪物を、監視しているひとがいるノデス。実際にお会いしたことはないノデスガ、どうもこの世界の機械文明とは違った科学に精通した方らしく、あるいは……」
 「……やり直す、というのか?ラヴォスとやらが現れる前の時代から?」
 鉄兜のような頭部を、プロメテスは器用にうなずかせた。リュートが、金色の大きな目を瞬かせて嘆息した。
 「途方も無い話だな」
 言いながら、彼は仲間が一人歩みを止めたことに気づいて振り返った。

 「……?どうした、ティア」
 「うん。……うん!やろうよ、それ!」
 「え?」
 「歴史を、変えちゃおう!」
 「ほ…本気か?ティア」
 「本気だよ。生き物の世界を取り戻すためには、何でもするって決めたよね?だったら、やろうよ。ね?ヴァン!リュート!」
 頭の高さのずいぶん違う二人は斜めに視線を交し合ったが、やがてどちらからとなく苦笑した。
 「そうだね、他に目ぼしいネタがあるわけでもない」
 「ああ、何てこった。人間てヤツぁ追い詰められるととんでもないことを考えてくれる」

 弱肉強食の世界を、決して「強」ではない立場で生き抜いてきた者たちである。無鉄砲なばかりではないはずだ。彼らは、この突拍子もない作戦に確かに光明を見た。それは、本当に暗い闇のなかだからこそ判別できたような、小さな小さな光明だったのかもしれないが。

 「では、これを預けておきマショウ」
 プロメテスが、ティアに何やら小さなものを差し出した。
 「これは……、種?」
 「新型の情報媒体デス。このなかに、アシュティア博士の『時を越えるマシンに関する研究資料』のデータをダウンロードしておきマシタ」
 「えっと、じゃあ……」

 不意にドーム内に警報が鳴り響き、ティアの質問は遮られた。警報に続いてそこここの扉が開閉する音が重なり、ドーム内の静穏は一瞬にして破られた。
 『侵入者アリ!侵入者アリ!B-1.B-2ぶろっくノがーでぃあんハ、タダチニさーちと迎撃を開始セヨ!』
 「何だとっ!?マザーとのリンクは切ってあるんじゃなかったのかっ!?」
 リュートは反射的にプロメテスに疑惑の目を向けたが、当のプロメテスも狼狽している様子だ。
 「まさか!そんなハズは!?」
 困惑するプロメテスのサーチシステムが、このドームには異質な反応を捕らえた。彼が向いた方向に、ヴァンが素早く目を向ける。何度となくロボットたちと闘った経験のある彼女も見たことのないモデルの、小さな虫のようなロボットが単眼をちかちかと光らせていた。
 「新型の斥候ロボットか!」
 素早く照準を合わせ、ヴァンは装備していた愛用のオートライフルのトリガーを引いた。すばらしい精度でロボットの単眼を破壊する。だがすでに、自分たちを取り巻く状況はこれ以上無いほどに悪化してしまっている。

 「伏せて下サイ!」
 プロメテスが叫ぶ。だが間に合わない。
 「うわあっ!」
 「きゃあっ!」
 ガードロボが横様に放ったレーザービームが、四人の肌と装甲を灼いた。
 「ぐっ、くそうっ!」
 後ろの二人を庇う形で広範囲に負傷を追ってしまったリュートが、呻き声を上げる。
 「リュート!」
 「リュートサン!」
 駆け寄る仲間たちを振り解くように、リュートは立ち上がった。そして叫ぶ。
 「ティア!行け!」
 「……え?」
 「逃げろ!」
 「な…何言ってるの!?そんな、わたしだけ」
 「種を!」
 「あっ!」
 ティアだけでなく、ヴァンもプロメテスも、顔を上げる。周囲を警戒しながら、プロメテスも言う。
 「行って下サイ。ティアサン。南の大陸の、『死の山』の麓へ。そこにいる監視者に、その種を渡して下サイ。お願イシマス」
 言い終わると同時に、プロメテスは三人を抱えるようにして後方に押しやった。それとほぼ同時だった。
 「プロメテスッ!!」
 複数のレーザービームが、プロメテスの背に横殴りの驟雨となって命中した。ドーム内が一瞬、漂白されたかのような白い閃光に満たされる。
 「プロメテスーッ!」

 自らも重ねて傷を負いながら、二人の人間と一人の亜人は、血の通わぬ仲間の名を叫んだ。ティアの手のなかで小さな種が、こんなときだというのに奇妙に温かい感触を彼女に伝えていた。
引用なし
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【65】時の花 No,4
 冥香  - 07/2/16(金) 19:37 -
  
AD1000 ―花を咲かせる者たち―


 すっかり見慣れた星空だ。短くない眠りの間に星座の位置が変わったことなど、小さなことだ。自分が生まれたとき、空に星が存在することは知っていたが、それを見ることが可能であることを知ったのはずいぶんと後になってからだった。
 ふと、ロボはそんなことを思った。

 森は暗い。焚き火はまだ燃えていたが、弱々しい炎は周囲を照らす力をすでに失っていた。それでもロボには火を囲んで眠る仲間たちの姿が見える。

 “暗い世界で生きていかなくちゃならないから”

 彼を生み出した者のひとりが、そう言ってアイセンサーの集光装置のプログラムを入念に調整している姿を、今でも思い出すことができる。
 「思い出す」……?
 いや、それは正しくない表現なのではないか?なぜならその時、自分は未だ「生まれてはいなかった」のだから。
 それでもロボは知っている。会ったこともない、「生みの親たち」の想いを。

 微かな葉鳴りを、ロボの集音装置は拾った。火を挟んだ向かいで、「彼女」の面影を強く宿す少女が寝返りを打ったようだ。悪い夢でも見ているのか、時折煩わしげに首を動かす仕草が気にかかる。

 彼女の左隣で突然、くしゃみが上がった。周囲で眠る者たちの幾人かが、眠りながらもびくりと身をすくませるほど盛大なそれを放ったのは、硬質の赤毛を好き勝手に跳ねさせた少年だった。

 “こいつに全てを背負わせて……、もしかすると、おれたちはとんでもない酷いことをしてるのかもしれない”

 まだ生まれてさえいない、「生物」ですらない自分に、記憶のなかの「彼」は痛いほどの想いを込めて言ったのだ。

 “ごめんな。いっしょに闘えなくて……、ごめんな”

 何やらむにゃむにゃ言いながら手足を縮めて眠る少年に、ロボは「彼」の姿を重ねる。

 風が強くなってきたようだ。木々が茂らせた葉をざわめかせ、消えかかっていた焚き火は空気を孕んで再び赤々と燃え上がる。しかしそこで燃え止しを使い果たしたのか、風が再び落ち着きを取り戻したとき、それはひと筋の煙を残して今度こそ消えた。辺りを完全な闇が覆う。

 月のない夜だ。人の目はもはや役目を為さないはずだ。だが、ロボは確かに自分に向けられている視線に気づいた。星空の微かな光を集めて、獣のそれのように闇のなかで光る双眸がその主だった。
 「……余計なことを考えているようだな」
 双眸の持ち主が、闇の先から面白くもなさそうに声をかけてきた。彼の声もまた、ロボの最も古い記憶を揺さぶってくる。

 “心を与える……だと?つまらん。それこそ要らぬ苦痛を強いるだけだ”

 絶望の世界に生きることを生まれる前に定められた自分の行く末を、最も危惧した者。突き放すかのような声音の裏に、ひとの目の届きづらい心の奥に、自分自身で持て余すかのように不器用な優しさを抱いていた「彼」が、かつて自分に贈った言葉。

 「今は休め。せめて、赦されるあいだくらいは安らうことだ」

 ロボの返事を待たずに再び眠りに落ちた彼を、そして先の二人の少年と少女、さらに金の髪を束ねた高貴な面差しの少女、豪気ながら彼女と共通するけはいを持つ佳人、異形の剣士……、決戦を前にわずかな休息を取る戦士たちを順繰りに見回して、ロボは胸中に呟いた。

 ああ、自分は今再び、共に戦う仲間を得た。

 もう一度見上げる空は、相変わらずの星の海。この輝く夜空がいつの日か止まぬ砂嵐に閉ざされるとは、知っていても到底信じられぬ。
 いや、もう二度と、「この星を死なすこと」は赦されない。「土を耕した者たち」と、「種を蒔いた者たち」のためにも。

 今度は、自分たちがこの星に「花を咲かせる」番だ。

 「彼ら」との思い出は、遥か未来に築かれたものだ。まだ生まれてさえいない者たちとの思い出を抱くのは、おかしなことかもしれない。だが、
 「見てくれてイマスヨネ?ドン……、レイ……、アルノ……、リュート……、ヴァン……、そして、ティア……。アナタたちの育てた種は、もうすぐ花開キマス!」


                                    了
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