●Project O BBS
  新規投稿 ┃ツリー表示 ┃設定 ┃ホーム ┃使い方  
8 / 12 ツリー ←次へ | 前へ→

【62】O-本編の試作も掲載 REDCOW 08/3/20(木) 15:22
【63】O-本編の試作も掲載2 REDCOW 08/3/20(木) 15:43

【62】O-本編の試作も掲載
 REDCOW  - 08/3/20(木) 15:22 -

引用なし
パスワード
    まぁ、参考程度にOの本編も制作中のものを出しておきます。
 
 プロローグ
 
 時はユニバーサルセンチュリー0120年。
 既に戦争は遠い過去になろうとしていたその時代に、突如として咆哮が鳴り響いた。
 
 ディープスペースアライアンス(以下略DSA)…新宇宙同盟と名乗る一団は、木星圏エウロパを拠点として地球連邦軍に反旗を翻し、エウロパ戦争が勃発した。
 その戦いにおいて、地球連邦軍は当初の予想とは全く正反対な勝負を演じる。
 
 それは連邦の一方的な敗退。
 
 DSAは彼らの知る戦術の次元を越えた兵器を武器に、半ば過去の時代の産物となりつつあった「ニュータイプ」という存在の恐怖を植え付けることに成功する。
 
 宙域には実に100万を越えるファンネルが浮かび、一瞬にして全軍の4分の3を失った地球連邦軍は、旗艦パトリオット以下フラッグシップ艦を4隻も失い、あわや全滅と思われた。しかし、地球連邦にも、まだ彼らが失いつつあったニュータイプがいた。
 遠い時代、第一次ネオジオン紛争を勝利に導いたと言われる伝説的ニュータイプ能力者であり、連邦軍の試験艦フェアレディ号に搭乗していたパイロットであるジュドー・アーシタは、全軍が敗退する中、試験技術ジャンクションを利用し、戦術核兵器を遠隔操作使用してDSAの猛攻に対抗。
 地球連邦軍を辛うじて撤退に導く事に成功した。
 
 その後、地球連邦とDSAは休戦協定を結び、5年間の不可侵協定が規定され、一定の平和が訪れる。しかし、それは嵐の前の静けさと言え、地球連邦はDSAに対抗すべく本格的にニュータイプの研究に全力を投じた。
 …残された時間は、僅か5年。
 
 
 UC0125年7月…
 
 
 地球連邦軍はDSAに対抗すべく作戦計画「ツナミ」を発動。
 提督ヨハン・イスマ・グラハムはこの作戦計画にあたって、ケント・ナンジョー中将指揮下の東京計画部隊を組織。最先端のニュータイプ技術を装備した最新鋭艦「シスターフェアレディ」号の運用を開始した。
 
 
 月、フォンブラウン地球連邦軍基地。
 
 
「閣下、これが噂の新造艦ですか。」
「そうよ。」
 
 
 通路を歩く二人の上級士官の姿があった。
 一人は身長は170cm、中肉中背の黒髪にブラウンの目をした男で、年齢は52歳になる彼の名はドーン・ミハイル・マスカルポーネと言い、苦節30年にしてようやく上り詰めた新造艦の艦長にして中佐。
 そして、その隣を歩く女性は、容姿は30代に見えるが、実年齢は隣の彼よりも上で階級も上という、ルナツー方面軍総監にして地球連邦軍准将。名をルー・ルカという。
 彼らはこれから新しく建造された艦に乗り、初の任務に挑もうとしていた。
 
 
「…全長220m。インパルス9を誇るわが軍初のGUTドライブ艦ですな。美しい。」
「アマテラス級の設計は素晴らしい。ハー博士には宜しく伝えておいて下さい。」
「はい。必ず。…しかし、これですぐにルナツーへ?」
「時間が無いのよ。μは勿論、あれをばらされるわけにはいかないの。」
「…例の新型戦略兵器という奴ですか。」
「…軽々しく口に出さないで。」
「あ、失礼しました。あのぉ、准将閣下はご搭乗で。」
「当たり前よ。もう少し頭を使いなさい。あなた、よくそれでここまでこれたわね。」
「愚問を申し訳有りません。」
 
 
 二人は搭乗橋から船内に入った。
 入り口では下士官が敬礼して二人を迎える。
 彼らはそれに軽く手を振り応えると、通路を進みリフトに乗った。
 そこに若い士官の顔があった。
 
 
「艦長、それに准将閣下。お久しぶりです。」
「あら、お久しぶり。元気かしら。」
「はい、それはもう。」
 
 
 笑顔で気楽に話す彼は、アナハイムエレクトロニクス(以下略AE)社のエリートパイロットとして軍でも一目置かれた存在であり、アカデミーをトップで卒業したとも伝え聞く天才。その名はタロウ・ドウモト少佐。
 彼はこの艦の戦闘システムオペレータとして配属が決まっていた。
 
 
「艦長、既にブリッジにはカリスト少佐がドライブシステムのチェックを始めているそうです。ミシャールマ中尉がシナプスごしに艦長への接続許可を求めておりますが、艦長、その…シナプス起動してますか?」
「ん?あ、おぉ!すまん、忘れていた。今起動する。」
 
 
 ドーンは耳の裏にあるインプラントに触れて、シナプスと呼ばれる装置を起動した。
 シナプスとはニュータイプ通信を実現するシステムである。
 
 
 その昔、ニュータイプと呼ばれた人々がいた。
 
 
 彼らはミノフスキー粒子による電子ネットワークが不可能になった近年、超能力的な力で人と通じ合ったり、機械と同期することで多大な戦果を上げてきた。彼らの存在が言わば勝敗を決する程の影響力を持ち、連邦は勿論、敵対する勢力も多くの研究資源を投じてきた。しかし、その技術研究はとても乱暴な歴史を繰り返し、薬物による強引な「強化」と称する人体実験を繰り返した結果、人道的にも恥ずべき歴史を残す結果となった。
 だが、技術が進歩し研究が進んだ現在では、より現実的な手法が編み出されるに至る。
 
 
 それは、インプラント。
 
 
 サイバネティックインプラントを頭に埋め込むことで、ニュータイプ能力者と同様の脳電子波コントロールを実現し、ニュータイプ同士のみが行えると言われていた通信ネットワークを確立する事に成功した画期的な技術。
 ニュータイプという存在を語る時、今までの普通の人々をノーマルタイプと呼ぶが、インプラントはノーマルタイプを手軽にニュータイプの仲間入りをさせることが出来る道具と言える。
 そして、この装置によってニュータイプ能力を得たものをインプランターと呼ぶが、このシステム自体はまだ軍など一部の機関でのみしか採用されていない。
 
 インプラントを埋め込むと、「シナプス」と呼ばれるニュータイプ通信システムが頭の中の視神経を通して映像化され、様々な情報を柔軟に処理できるようになる。
 シナプスは様々な人と人は勿論、人と機械をも橋渡しする中継器の役割を果たし、過去の大戦とは全く違う情報処理を実現すると言われている。しかし、連邦ではこの戦争での投入が初のため、実装自体は速い段階から進めていたが、まだ活用は試験段階といえた。
 
「(艦長、マリです。船体システムについては整備状況が現在80%で推移しています。エネルギー充填が遅れているので、至急司令部に要請して頂きたいのですが…)」
「(うむ、伝えておく。ときに、…そこにアーシタ少佐はいるのかね?)」
「(はい。現在アーカンソー軍曹のオペレーションシステムについて、設定制御の説明をされています。お呼びしましょうか?)」
「(い、いや。呼ばなくても良い。私も向かっている所だ。ありがとう。)」
「(はい。では、失礼します。艦長。)」
 
 
 ミシャールマ中尉がシナプス通信から消えた。
 ドーンは一息入れると、隣の准将閣下を見た。
 彼の上司である准将閣下は木星帰りの生粋のエリートであり、彼の嫌う先程のマリとの話にもでてきた「アーシタ少佐」とも縁のある手強い女性といえた。
 彼としては気の重い航海だが、この作戦で新造艦の艦長に抜擢されたのは栄転中の栄転であり、この任務に堪えてマスカルポーネ家初の提督となりたい野望への道を考えると、逃げるわけにもいかないという個人的な事情もあった。
 
 ブリッジに入ると、そこにはほぼ全員が揃っているようだった。
 ルカ准将、それに艦長の入室にクルー達が一斉に入り口の方を向き起立し敬礼した。
 ルカはそれを下げさせると言った。
 
 
「さぁ、皆さんお揃いですね。これから本艦はルナツーへ向かう事が決定しました。皆さんもご存知の通り、最近は海賊の動きも活発化しています。ここでわが軍がこれらの小物に足をすくわれているわけにはいきません。皆さんの活躍を期待します。あとのことは、艦長にお任せしますが、私もルナツーまで一緒に同行いたします。短い間だけど、宜しく。」
 
 
 ルカ准将の挨拶の後、総員が持ち場につき作業を始めた。
 タロウは席につくとすぐにシステムを起動し、武器システムのチェックを始める。
 
 そこに40代くらいだろうか、深いブラウンのサングラスをした精悍な顔つきの男が近づいてきた。彼の服は佐官クラスであることを示している。
 
 
「ジュドー・アーシタだ。宜しく。」
「あ、タロウ・ドウモトです。お噂はかねがね。伝説的なあなたとの航海が出来ることを楽しみにしていました。」
「はは、昔の話だよ。アナハイムでも一目を置く君の活躍を期待している。」
「有り難うございます。ですが、私の経験不足はあなたのお知恵を拝借させて下さい。」
 
 
 ジュドーはそれに笑顔で軽く手を上げて応えると、入ってきた二人の方へ歩いて行った。
 
 
 2
 
 
「くそぉ、お前がなんでガンダムなんだよぉ!」
「うへへ、おれにしか合わないって言うんだもん。仕方ないだろ?」
「ちぇ、F92良いなぁ。」
 
 
 少年達の視線の向うには、多くのモビルスーツの姿があった。
 パイロットルームで待機する事が命令され、ドックの機体を見ながら待機しているのは、先程羨ましがった少年とそれを自慢する少年、その他にもう一人の少年と少女の姿があった。
 羨ましがっていた少年はシドー・トクガワ少尉といい、アカデミー在学中だがエリート士官コースを進む生粋のニュータイプ。そして、もう一人の自慢していた少年もニュータイプで、名をグレイ・スタインバーグと言い、彼もまた階級は少尉だ。
 二人がじゃれていると、そこに冷静にもう一人の少年が忠告する。
 
 
「グレイ、シドー。君らは機体システムのチェックを済ませたのか?もうすぐ大尉が来る。その時に済ませてなかったら…知らないぞ?」
「あ、やっべー!?」
 
 
 二人は慌てると、すぐにドックの方に走って行った。
 二人に忠告を与えた長いプラチナブロンドの髪の少年はマーカス・サンディベルトと言い、階級は中尉で二人より一つ上の階級にあり、彼らの中ではリーダーの様なポジションを任されている。だが、普段の彼らとの関係もどちらかというと兄と弟の様な関係だ。
 彼もまたニュータイプで、アカデミーをトップの成績で在学中の生徒だ。
 彼に言われて慌てて二人が走り去ったのを見て、マイペースに椅子に座って読書をしていた少女がマーカスに言った。
 
 
「あなたも意地悪ね。自分で分かっているなら、さっさと教えてあげればいいじゃない。」
「ワルツワンドこそ、知っていたんだろ?」
「知っていたら教えてるわ。ベーだ。」
 
 
 彼女は悪戯っぽく舌をだして返答すると、メガネを外してライトブラウンの髪を掻上げた。彼女はワルツワンド・ヘンリークと言い、彼女もまた他の3人と同様にニュータイプの才能を持っている士官候補生だ。
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.12) Gecko/...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

【63】O-本編の試作も掲載2
 REDCOW  - 08/3/20(木) 15:43 -

引用なし
パスワード
   「しかし、ヘンリーク総監もよく君をここへ出したね。今もって不思議だよ。」
「良いのよ、あのベタ可愛がりの父には良い薬。子は旅をしたいのに、馬鹿な父を持つと大変なのよ。だーかーら!ジュドーには感謝してるのよーだ。」
「君くらいだよ。ジュドーって呼び捨てにできるのは。」
「そう?そんなに階級に縛られてちゃ、生きて行けないわよーだ。」
 
 
『はっはっは、相変わらずだな。』
 
 
 そこに現れたのは、端正な顔立ちをした大人の色気も漂う彼らのチームリーダーである、オルドー・セット大尉。
 彼はこの少年たちで構成されたパイロット見習いを率いることを任された、言わば教官兼務の上官だ。しかし、先のエウロパ戦争ではトップの撃墜成績を残し、軍の撤退に大きく貢献したことが知られており、撃墜王という異名も持つ。
 だが、そんな異名を持たずとも、彼の黒髪に桃色のメッシュを入れ短く刈り込んだ頭は、遠くからでもとてもよく目立つ。
 
 マーカスとワルツワンドはすぐに姿勢を正して敬礼した。
 彼はそれに軽く礼を返して直すと、笑って言った。
 
 
「どうやら、あの悪戯小僧二人は慌てて調整に向かったようだな。」
「…大尉、申し訳有りません。自分の監督責任です。」
 
 
 マーカスが深く礼をして謝罪した。
 オルドーは苦笑しつつ礼を戻させ、頬をぽりぽりと掻きながら応える。
 
「…おいおい、お前が謝ることじゃないだろ?セットアップは、まあ、自分の責任だ。死にたくなかったらしっかりやる!…それが軍ってもんさ。はぁ、あいつらはまだまだ青いな。」
「ねぇ、隊長。」
 
 
 そこにワルツワンドが目をうるうると輝かせて彼に尋ねた。
 その目を見たなら、並の男なら誰もがぐっと来るに違いない…が、当の相手はと言えば、どうやら前にもこの目を見たことがある様だ。
 
 
「…なんだ。」
「その…いつ見ても綺麗なピンクですね!」
「…お前の褒め言葉は聞きたくないぞ。」
「えー!どうしてですか〜?その、あたしの機体カラー、隊長のステキなメッシュと同じピンクにできないんですか〜?」
「…はぁ〜、まだ拘っていたのかぁ。」
「だってぇ〜、F92じゃないんだから、それくらい〜。」
「お前なぁ。コックピットをピンクにしただけで十分だろ?塗装も大変なんだぞ。」
 
 
 彼の視線がドックの彼女の機体のコックピットに、まるで光学1500倍ズームでもしたかの様に飛んだ。
 そこには他の機体とは明らかに違う全面桃色で、殺伐とした雰囲気の対局にあるだろうファンシーな雰囲気が漂う、おおよそ戦術兵器としての軍の機体とは思えないコックピットの姿が有った。その内装は単なるピンクではなく、ご丁寧にもパンダとハートの模様が描き込まれてる念の入れようだ。
 
 
「ビームコーティングのカラー変更でなんとかならないんですか〜?」
「あのなぁ、お前の機体って光学遮蔽対応じゃなかったか?」
「…はい。」
「色なんて見せる必要無いじゃないか。金の無駄無駄。」
「え〜〜〜!ブゥーブゥー!!!。」
 
 
 彼らがそんな話をしていた頃、ドックへ駆けて行った二人は各自の機体の調整を始めていた。
 
 
「…スタインバーグ少尉」
「あ、マリアさん。」
 
 
 グレイに呼びかけたのは、この艦のメカニックチームのリーダーである、マリア・フォンテーヌ大尉。階級上は大尉だが元々は民間人で、特別にAEから派遣されてきているこの道のプロだ。
 彼女はこの金髪碧眼の少年が乗る機体である連邦軍最新鋭MS「F92NT-Spitfire」の調整を手伝っていた。
 
 
「OSの最終調整は済んだかしら。」
「あ、待ってください、もうすぐ終わります。」
「そう、私の方の作業は終わったわ。」
「どうも、有り難うございます!」
「どういたしまして。」
 
 
 グレイの元気な返事に、彼女が微笑む。
 彼女は期待を優し触れながら、何か感慨深げな表情で機体を見ていた。
 
 
「…しかし、この機体をあなたが操縦するとはね。あ、別に腕のことを言っているんじゃないわ。ただ、思っていたよりずっと若いパイロットで驚いたわ。」
「そうですね。俺、あ、自分も驚いてます。でも、凄く嬉しいです。」
「そうね。私もこの機体の面倒を見れて嬉しいわ。これは私も開発に加わっていたから、他の誰よりも詳しいって思ってた。だから、配属先が決まった時は驚いたけど嬉しかった。」
「へぇ、そうだったんですか!いやぁ、それならめちゃくちゃ安心ですね!」
「そう?ありがとう。」
 
 
 そこに、突然シナプスがアラートを表示した。
 二人の視線の宙空にアラート表示が現れる。そこにはブリッジオペレーターのエリーゼ・アーカンソーの顔が映っていた。
 
 
『緊急警報を発令します。総員、第一戦闘配備。直ちに各自の任務を遂行し、作戦に備えてください。モビルスーツパイロットはすぐに出撃準備を整えてください。』
 
 
 シナプスが全員に緊急警報を伝える。
 艦内が非常照明に切り替わり、クルー達が慌ただしく動き始めた。
 グレイはシナプスを部隊長であるセット大尉に合わせた。
 
 
「(大尉、何が起こったんですか?)」
「(攻撃だ。俺も今機体に乗る。詳しくはブリッジのエリーゼから来るはずだ。それまで俺達はコックピットで待機だ。)」
「(はい。)」
 
 
 ブリッジではフロントビュースクリーンに、基地外部での攻撃の様子が映し出されていた。
 この状況に冷や汗をかきつつもドーンは艦長シートに座っていた。
 彼のシナプスには多くの情報が次々と報告として入り、彼はそれを処理するだけで精一杯だった。そんな彼の様子に半ば呆れつつ、ルカ准将はアーシタ少佐の隣に座っていた。
 
 
「ジュドー、間違いないかしら。」
「…あぁ。」
「(基地の情報によると、ゲリラ組織の新撰組ね。…面倒な時に。)」
「(奴らが来たということは、内部の問題か。)」
「(…考えたくないわね。さて…)」
 
 
 基地を攻撃しているグループは新撰組と言い、この地球圏内で近年活発にゲリラ攻撃活動を繰り返す過激派組織だ。彼らの主張は旧世代のコロニー至上主義と同一であり、半ばカルト的な人気を誇るシャア・アズナブルを崇拝している。
 
 短く刈り込んだ黒髪に鋭い目をした男は、視線の向うに映る月面基地を見ていた。
 連邦軍を攻撃する彼らにもニュータイプ通信技術があった。
 その名を「ニューロン」という。
 

「(…ヒジカタ。お前達はお宝を探せ。俺達が引きつける。)」
「(…わかった。トール、しっかり引きつけてくれよ。以上。)」
 
 
 通信を終了すると、トールと呼ばれた男は、他の隊員達にも次々とニューロン越しに命令を与えると、自身はブリッジを出ていった。
 
 
 無数の光線が真空中から月面を狙う。
 どこからともなく走る光線は基地をピンポイントに攻撃し、次々に施設を破壊してゆく。その動きは掴めず、まるで意志を持ち生きているかのようにふらりふらりと軌跡を変えて攻撃をしかけた。
 連邦月面防衛軍部隊は圧倒的攻撃を前に、次々に撃墜され一方的に押されている様な状況だった。
 
 
「艦長、基地への攻撃による損害は甚大です。このままでは基地と一緒に埋まりかねません。」
 
 
 戦術システムオペレータのドウモト少佐が、基地からの損害情報を報告した。
 艦長であるドーンは苦々しい表情で問う。
 
 
「むぅ、トルストイ大佐からは何もないのか?」
 
 
 通信システムオペレーターであるアーカンソー軍曹が答える。
 
 
「月軍本部からは、まだ何も…。」
 
 
 そんなやり取りをみて、オブザーバーシートに座るルカ准将が立ち上がった。
 
 
「…私が許可します。本艦はこれより強行出港致します。…皆さん良いですね。」
 
 
 ルカ准将の一言で艦内が出港でまとまる。
 ドーンはすぐに全クルーに対して出港を指示。出発オペレーションが始まった。
 シナプス内部でクルーの確認承認が始まる。
 
 
「船体整備100%、エネルギー充填率65%、通常エンジン機動を承認します。」
「通常エンジン機動確認。操舵承認。」
「攻撃システム起動します。主砲、副艦法、両舷ミサイル発射艦オンライン、後部ファンネルオンライン、全攻撃システムオールグリーン確認。」
「船体サブシステム起動。オールレンジスキャンを開始します。」
 
 
 ドドドォォォォォォォォォォォン!!!
 
 
 艦内に強い衝撃が走る。
 ドーンが叫ぶように言った。
 
「報告!」
 
 彼の命令に戦術オペレーターのドウモト少佐が答える。
 
「ビュースクリーン、…基地前方800kmより攻撃を確認。前方ドックポート被弾。入り口が塞がれました。」
「ドウモト少佐、ファンネル射出。攻撃目標前方ゲート、並びにポート周辺の敵攻撃機を破壊せよ。これより、本艦は強行出港を開始する。ミシャールマ中尉、ファンネル射出後基地内部ではシールド50%起動、脱出後100%出力。」
「ファンネル射出、先行開始。」
「シールド50%出力、オンライン。」
「カリスト少佐、基地脱出まで微速前進4分の1インパルス、脱出後インパルス3で月軌道上の敵と対峙する。」
「後部、底面、両弦スラスター起動、4分の1インパルス。」
 
 
 全員の出発操作が完了した。
 ドーンは姿勢を正し、前方スクリーンに向けて力強く指さし宣言した。
 
 
「アマテラス級強襲揚陸艦、シスターフェアレディ、発進!」
 
 
 ファンネルが射出される。
 先行したファンネルが宙を舞い、前方のドックポートの瓦礫を瞬時に破砕した。
 その後をシスターフェアレディは威風堂々、それは貴婦人が社交界デビューを果たす様な眩いシールドの輝きに包まれて宙域に出撃した。
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.12) Gecko/...@Ta1.V9385d3.rppp.jp>

  新規投稿 ┃ツリー表示 ┃設定 ┃ホーム ┃使い方  
8 / 12 ツリー ←次へ | 前へ→
ページ:  ┃  記事番号:   
9113
(SS)C-BOARD v3.8 is Free