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【67】戦場に向かう者 上田・トリガー 07/4/16(月) 18:16
【68】戦場に向かう者 後編 上田・トリガー 07/4/17(火) 11:50

【67】戦場に向かう者
 上田・トリガー  - 07/4/16(月) 18:16 -
  
「おい、俺って最強の戦士なんだぜ」
 同僚のハードが変な事を言い出した。
「じゃあ、お前、あの勇者様にも勝てるのか?」
「ああ、もちろん!」
 ハードは確かに弱くはないが、うわさの勇者様ほどではないと思う。
「じゃあ、魔王も倒せるのか?」
「も、もちろん」
 一瞬言葉を濁したから、やっぱり自信がないのだろうか。
「まあ、この時代だ。いつ魔王軍がせめてくるか分かったものじゃない。ただ、俺たちはやるべきことをやるだけだ」
「いつ死ぬか分からないしな」
 つらい時代に生まれたものだ。
 魔王軍と戦えば、ただではすまないだろう。いや、きっと死ぬと思う。俺はただの一兵士、勇者でもなければ才能のある戦士でもない。この間ある場所で食用カエルと戦ったが、本当に死ぬところだった。
 食用カエルってあんなに強かったのか? ギリギリで倒す事はできたが本当に辛い戦いだった。そういえばその時ハードもいたが、戦闘不能になってたな。
「なあ、ハード。ゼナンの橋は大丈夫か?」
「大丈夫さ、なんってったって俺がいるんだからよ!」
「大変だ! お前ら!」
 その時、騎士団長が慌ててやってきた。
「なんすか?」
「ゼナンの橋に魔王軍が現れた!」
「なんですって!」
「はやくこい! 出撃だ!」
 魔王軍と戦って勝てるわけないでしょ……うちら、食用カエルに瀕死だっつーの。
「燃えてきたぜ!」
 ハードを見るとやる気まんまんになっていた。お前、食用カエル相手に戦闘不能だったじゃん。
 俺たちは覚悟を決めるとゼナンの橋へ向かい走り出した。
 骨になる事も知らずに……
<了>

中途半端な小説を書いてしまいました。ゼナンの橋で骨になって襲ってくる兵士達。そんな人たちにも物語ってあるのかなって思って書きました。
引用なし
パスワード
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【68】戦場に向かう者 後編
 上田・トリガー  - 07/4/17(火) 11:50 -
  
 ゼナンの橋に着いた。その光景に俺達は絶句した。
「あいつは……」
「ビネガーだ、まさか魔王直属の部下がくるとはな」
 食用カエルとは全然違うだろう。その遥か上をいくであろう実力をもつビネガー。
「俺達、勝てるのか? あの魔物に……」
 さすがのハードも震えている。
「大丈夫さ、勝てる。勝たなきゃ、俺達王国の未来はない!」
 騎士団長も気合が入っている。
「くるぞ! まずはあのスケルトンをなんとかしなくちゃな!」
 骨のモンスターがこっちに向かってきた。
 こいつもビネガーが連れてきたモンスターだ。食用カエルなんかよりもずっと強いだろう。
「よし、ハード! 行くぞ!」
 俺とハードはたくさんの仲間と共に前線に走り出した。
「うおお!!」
 目の前のスケルトンに渾身の一撃を与える。肩の骨が吹っ飛び、腕が落ちるが片方の腕で俺の方が攻撃してくる。
「あぶねえ!」
 すんでのところでそれをよけると俺は蹴りを一発入れるが、予想以上に奴は固く俺は転んでしまった。
「やば……」
 落ちた腕の剣を拾ったスケルトン、転んだ俺に向けて剣をふりかざす。
「おりゃあ!!」
 もうだめだと思った瞬間、ハードがそいつの頭をふっ飛ばしていた。
「おいおい、こんなところでくたばるんじゃねえよ?」
「ち、ありがとよ!」
 よく見るとハードはさっきのスケルトンの攻撃を受けていたようで怪我をしていた。
「だ、大丈夫か? ハード?」
「ああ、大丈夫じゃねえ。きっと致命傷だ」
 そういうとハードは倒れてしまった。
「お、おい! もう戦闘不能かよ! まじかよ!」
 俺はもっていたアテネの水をハードにぶっ掛けた。
「おおう!」
 天使がハードの周りを回り、目を覚ましたようだ。
「これでまた戦わなくちゃいけなくなったぜ」
「おい、もう水はないぞ! 致命傷は受けるな、ポーションでなんとかするぞ!」
 周りの兵士をみると、どんどんやられていく。
 こっちはどうみても劣勢だ。
「団長! まだはじまったばかりだけど敵が強すぎる!」
「分かってる! だが、ここを突破されるわけにはいかん!」
 団長は後方で戦況を見守っている。団長が死ねばここはおろか、国も全滅してしまうだろう。
「第二陣、進め!」
 国から援護にきた兵士がまた戦闘に加わる。
 だが、何か妙だ。スケルトンも何匹か倒しているのにいっこうに数が減らない。
「っけっけっけっけ」
「何!?」
 ビネガーが妙な魔法で兵士をスケルトンに変えてしまっていた。これでは埒があかない。まずい、俺達ここでスケルトンになるのか?
「ハード!」
「なんだ?」
「逃げろ! これはまずい、奴の思うつぼだ!」
「どういうことだ!?」
「奴は、死んだ兵士をスケルトンにしてるんだよ!」
「なんだって!?」
 もう大混乱だ。
 俺ももうポーションを使い果たそうとしている。
「ぐは!」
 隣で戦っていたハードが敵の一撃をまともにくらっていた。
「お、おい! ハード! ポーションだ!」
「だ、だめだ……」
 ハードから大量の血が吹き出てその場に倒れる。スケルトンはそのハードに容赦なく槍をさした。何度も、何度もさす。
「や、やめろー!」
 俺は怒りの一撃をスケルトンにぶつけ、奴を粉々した。
「ハード! 大丈夫か!?」
「だ……大丈夫にみえるかよ」
 奇跡的にまだ生きていた。アテネの水は、もうない。
 だめだ、ハードはもう死ぬ。
 いや、まだだ。この戦闘をはやく終わらせればなんとかできるはずだ!
「おらあああ!!」
 俺は剣を振りかざし、ビネガーの元につっぱしった。
「なに!? おい、お前ら! あいつをなんとかしろお!」
 ビネガーの命令を聞いてかそこらじゅうにいたスケルトンが俺の後をついてくる。
 この戦闘を終わらすにはビネガーを倒せばいいんだ。そしてその魔力からスケルトンが開放されれば……。
「ふん!!」
 俺はスケルトンを振り切り、ビネガーに一太刀をいれたはずだった。
「あ、あれ?」
 剣は真っ二つに俺、それはなんの役にもたたないものになってしまった。
「ありゃ? 残念だったね、さすがに焦ったけど魔法のバリアーはやぶれなかったみたいね」
 バリアー……ああ、だめだった。
「あ、いて」
 背中になんだか痛みを感じた。
 よく見ると腹から槍が突き抜けている。
 痛いというか、なんというか熱かった。そうか、痛みを越えると熱いんだという事がわかった。
 どんどん体を槍が貫いていくが、痛みが感じられなくてそこには絶望的な現実がまっていた。
「この、鉄砲が。お前も仲間に入れてやる」
 ビネガーが妙な魔法を唱えると、俺の肉体は消え去り、骨の体が現れた。
 ものすごい苦しさがどこで感じているのか分からないが俺を襲った。
「た、助けてくれ……」
 俺はその苦しさを消し去るために、かつての仲間に襲い掛かった。
 俺を殺してくれ。
 その時、死んでいるハードをみつけてちょっとほっとした。俺はハードを殺さなくてもいいから。
<了>

きっとゼナンの橋で戦っている男たちは骨になっちゃうんだろうなって思いました。
引用なし
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