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【147】強くてクロノTrigger まえがき Double Flags 08/8/12(火) 2:14

【159】-07- (第五章 王国裁判I脱出) Double Flags 08/8/31(日) 23:51
【160】-08- (第五章 王国裁判IIドラゴン戦車) Double Flags 08/8/31(日) 23:53
【161】-09- (第五章 王国裁判IIIガルディアの護り... Double Flags 08/8/31(日) 23:57
【162】-10- (第五章 王国裁判IV脱出) Double Flags 08/8/31(日) 23:58

【159】-07- (第五章 王国裁判I脱出)
 Double Flags  - 08/8/31(日) 23:51 -
  
 目が覚めたら、バンダナをした少年――クロノのひたいのバンダナはにはうっすらと汗が浮かび上がっていた。
 バンダナをはずし、服の袖で汗を拭う。
 それからクロノは現状を確認した。
 周囲は見た覚えのある汚れた壁と鉄格子。
 机の上には薄く輝いている銀色のカップ、そして真新しい袋が置いてあった。
「? 起きたか」
 鉄格子の外には、鉄のよろいをしたガードがいた。
「ここは空中刑務所。 覚えているか?
 お前は王女様誘拐および国家転覆の罪でここに捕まったんだ」
 いわれてクロノは少しずつ思い出していく。


「マールディア様〜!
 ご無事でしたか? 一体、今までどこに!?
 何者かにさらわれたという情報もあり 兵士達に国中を探させていたのですぞ!」
 現代のガルディア城に入ると、顔をゆがませた長いヒゲと小さな背が特徴的な男――大臣が階段を降りてきた。
 大臣が近づいてきたのはクロノの前にいた少女――マールであった。大臣は後ろのクロノに気づき。
「 ム! そこのムサいヤツ! そうか、お前だなッ!
 マールディア様がさらったというのは!
 なるほど、自分から罪の意識でやってきたというのか」
「ちょっと、なに言っているの!!」
 クロノを値踏みするように見た後、にらみつけた。
「フム、そのカタナ。 この城の中で刃物を持ち歩くとは何たることじゃ。
 も、もしやそのカタナでわしらを脅すつもりなのじゃな」
「大臣!!」
「マールディア様。ささ、早く離れてください。
 脅されていたのでしょう。 ガルディア城に真昼間から乗り込んでくるとは大胆なやつじゃ
 警護官!! ささっと、ひっとられよ!!!」
 マールの制止も聞かず、大臣の命令で続々と警護官が集まる。
 しかしクロノは、前の時間軸(ルッカの言う『前の周』)でかなりの経験とともに力を手に入れている、早々やすやすと捕まったりすることはない。
 ましてや、生身の人間に対してそうそう気絶することはありえない。
 だが、クロノの気は一瞬にして失われた。
 急所を完璧に突いたその攻撃に反応すらできなかった。
「クロノっっっっ!!!」
 マールも何が起こったのかわからず、クロノの名を呼ぶ。
 が、クロノは床に沈み立ち上がらない。
 すぐに横の警護官から抜け出し、近づこうとするがある男によって止められる。
「マールディア様、危険です」
 低い声でマールを呼び止めた警護官、この男がクロノを気絶させた。
 その男を睨みつけると、マールの表情は驚きに染まった。
「ジ、ジーノ!!」
 マールがジーノといった男は、他の警護官とは違う衣服に身を包んでいた。
 その男、マールの記憶をたどれば一年ほど前大臣の命により、西の大陸エストの国家への外交のために出て行った男。
 ジーノはマールの前にひざまづく。
「遅れながら、 ガルディア王国騎士長、ジーノ・ノーティア・コンフォート。
 西の大陸より帰還したことを報告します」
「どうして…」
 歴史が違っている。
 マールは言葉をのみこんだ。
 彼は前の時間軸ではヤクラによってすでに殺されてしまったはず。
 ジーノは、マールの弓術は彼の祖父に教えてもらったものであり、兄弟子にも当たる。若く30代にしてガルディアの騎士長(昔からの通例でそういった呼び名が使われている)になり、マールが城の中で数少ない理解者であるとともに信頼できる人物であったはずなのだが。
「千年祭では何か起こるかわかりませんですからな。
 早々に西の大陸との交渉を引き上げて、戻ってきてもらったのですよ」
 マールに向かいそう言うと、振りかえる。
 クロノを見下ろす大臣。そこには少し憎しみがこめられているように見えた。
「案の定。 このようなムシがマールディア様に取り付きおって」
「大臣!!」
 抗議を言おうとするが、前にジーノが立ちふさがる。
「警護官!!
 この男を裁判にかける。 上に連れて行け」
「クロノーッ!!」
 足が止まる警護官。
「かまわん。連れていけ」
 ジーノがそういうと、警護官は二人がかりで床に倒れたクロノを運び出す。
 その様子を何もできずにマールはただ見ているしかなかった。
 そしてもう一つ。
 どうしてジーノが生きていたのか。
 それが不思議であった。
 あれほど悲しんだことが、不思議と現実になると不安でしょうがなかった。
 歴史は自分が知っているものと少しずつズレている?
 自分があの時、中世で消えることがなく現代に戻ってきたから?
 それが関係あるの?
 やっぱり私は一回消えなくてはいけなかったの?
 マールの不安は高鳴っていくばかりであった。


 そして裁判。
「せいしゅくに! せいしゅくに! 判決が出た! 10対0で無罪とする!!
 ……しかしだ。誘拐の意思はなかったにせよ、マールディア王女をしばらく連れ出したのは事実。
 よって反省を促すため3日間の独房入りを命ず!!」
「連れて行け」
 大臣は警護官をよんだ。
 弁護士のピエールはまだ納得のいっていない模様である、ぶつぶつと次の対策を考えているようだ。
 無言で連れてかれるクロノ。
 マールはその様子をただ見ているしかなかった、横にはジーノ。
 ジーノを出し抜いてまでむかうのは難しい、それは今までの経験から分かっていた、それに下手今行動にでたら、クロノの待遇が悪くなる、そんな気がした。
 そしてジーノの様子を見ていてマールにはどうも違和感を覚えた。
 いったい西の大陸で何があったのか聞いてみたかったが、なかなか切り出せず、時間が経ち結局クロノの裁判の時間になってしまった。
 クロノが送られていくところを見ると隣のジーノはすっと立ち上がり、裁判所から出て行った。
 声をかけようにも、なんと言えばいいのか思いつかなかった。
 それはクロノのことがあるからなのか、今のマールには分からなかった。


 クロノは『前の周』と同じく逃げ出すべきかどうか悩んでいた。
 ふと机の上を見る。
 それは、無罪にもかかわらず独房入りを命じられたことに同情して差し入れをいれてくれたものだ、中にはエーテルが入っている。『前の周』は有罪でこんな事はなかった。そのエーテルを見て決心が固まった。


 クロノは決心してから行動が早くすぐに脱出した。
 一回通った道なので早いということもあるが、『前の周』は誰かいるかもしれないと思い見て回ったのだが、結局残っていたのは骸骨や亡霊だけであった。そのため今回はすぐに脱出しようと考えていた。
 今考えると、大臣は事件が起これば検事として、片っ端から気に食わない奴、関係ない奴を連れてきて処刑したのだろう。


 唯一の生き残りフリッツを助けるルートで、一体のモンスターがあらわれた。
「ギア」
 『前の周』は一階層下にいたはずである。
「脱獄者はおめえか」
「……」
「無言は、肯定とみなす」
 ギアはすぐに戦闘態勢に入りトゲのついたこん棒を振り上げた。
 クロノの目には雑な魔法の構成がかすかに見えた。

  ”クエイク”

 魔力の干渉を受けた石の床が変形盛り上がる。
 クロノは後ろに下がると、床が槍のように飛んできた。
 確かギアはこんな能力は持っていなかったはず。
 ふたたび雑で少しさっきより大きな魔法の構成が見えた。

  ”クエイラ”

 直感的にその場を離れると、床が大きく抉られていた。
 クロノは体勢を整え、ナイフを手にした。
 そのナイフに「天」の魔力を加える。

  ”サンダー・ショット”

 クロノはあまり魔力を扱うことが得意ではないが、何かに力を加えることが少しだけできる。その応用で、サンダーレベルの電撃を手持ちのナイフに加えたのだ。
 こん棒を持ったギアが反応した、反応できた瞬間、電撃の力を得たナイフがギアに放たれる。

  ズダンッ

 ギアの体を突きぬけ、壁にものすごい音を立てて突き刺さる。
 そのとき、ギアの体から何かが見えたかと思うとそのまま恐怖の顔をしてギアは逃げてしまった。
「今のは…」


 疑問が晴れないまま、というか『前の周』もギアは途中で逃げてしまったのだが、フリッツを助け空中刑務所の出口まで来た。
 そこで所長はすぐに逃げ出すが、
  ポカポカポカポカ
 小気味よい音とともにメットをかぶり、いつもよりバッグが膨れている少女――ルッカが登場する。
「クロノ! 助けに来たわよ! ……っていってもまた自力で逃げ出せたのね」
 相変わらず無事なクロノを見て
「……、なんか、つまんないなあ」
「物騒なことを」
 と、二人でやっていると
「じゃ〜ん! クロノ! 助けに来たよ!」
 マールがやってきたのだ。
「何であなたもここに来るのよ!」
「いや、どうせ家出するなら早いほうがいいかなって。
 ダメだった?」
「……」
 クロノとルッカは顔を見合わせる。
「あ、ああ、もういいわ
 こんな所はさっさとおさらばしましょう!」
 ルッカを先頭に外へ出ようとしたとき、一人の男が現われた。
「そこまでです、マールディア様
 そして、クロノくん。君を逃がすわけには行かない」
「だれよあんた」
「……確かルッカといったか、クロノ君の幼馴染の。
 脱獄という犯罪者を逃がす手伝いをしたなら補助罪としてつかまえますよ」
「……ジーノ」
「さあ戻ってくださいマールディア様」
「彼は?」
 勝手に話を進められ気に食わないルッカがマールに聞く。
「ガルディア王国騎士長ジーノ。王国で最も強い警護官」
「……騎士長って」
 ガルディア王国は、100年ほど前に騎士団を解散させ新たに軍隊として再組織された。そのなかで旧来より親しまれている騎士という称号を設け、軍部最高責任者を騎士長と任命している。この騎士長という称号は、軍の最高責任者であるとともに軍最強の人物に与えられるものとして知られている。
 ゆえに大臣は騎士長を殺したはずだったのだが。


 クロノはそのジーノという男にいやな気を感じていた。
 少し前にこの男によって気絶させられたことはなんとなく分かっていた。
 ルッカやマールには向けられていないが、自分に対して向けられる殺気。
 どことなく師匠を思いだす強力な剣気である。
「ふたりとも先に行ってくれ、どうも俺の方に用事があるみたいだ」
「クロノっ!」
 すでに一回気絶させられているところを知っているマールからすれば、クロノが無事ですまないのではないかと心配する。
「ちょ、ちょっと、ルッカ」
 ルッカはクロノとジーノの様子を見て立ち入ってはいけないような気がして、マールを引っ張る。
「いくわよ」
 クロノの雰囲気からジーノもそれに受ける。というか、そういう風に仕向けたのはジーノ自身である。
 クロノからすれば、ジーノはドラゴン戦車が二人を止めてくれるのではないかと思っていると考えた。
 それともはじめっからクロノ一人が目的だったのかどうにもわからない。
 クロノは自分の体に浸透しつつある負の感情を押さえ込む。
 二本のカタナのうち、にじ、そして使い慣れた一本、あおぞらの二本を抜く。
引用なし
パスワード
<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR...@p7135-ipad308hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp>

【160】-08- (第五章 王国裁判IIドラゴン戦車)
 Double Flags  - 08/8/31(日) 23:53 -
  
  ドゴゴゴゴ

 石橋の先の方、空中刑務所の出口まで来て聞いたことのある音にルッカは止まった。
「さあ来なさい。」

  ドゴゴゴゴ
  ドゴゴゴゴ

 車輪の回る音と共に『前の周』よりひと回り大きいドラゴン戦車があらわれた。
 大臣はその後ろからひょっりと顔を見せる。その後ろにはふたりの護衛官がついている。
「マ、マールディア様。何でこんなところに、こっちにきてください」
 しかし石橋の上めいいっぱいに占められたドラゴン戦車の車体にはどこからも向こう側に移れるスペースはない。
 そんな中無理やり顔を出す大臣を護衛官は抑える。
「大臣、危険です」
 二人の護衛官は必死に大臣を抑えている。
「く、ぬぬぬ、王女様を人質にするとは」
「人質ではないわ! これから家出するんだもん!!」
「な、なんですと〜〜お! そんなこと許しませんぞ」
「許さなくたってもう決めたもん」
「マールディア様〜」
「大臣、危険ですって」
「分かっておる、ドラゴン戦車よ。マールディア様を傷つけるんじゃないぞぉぉ」
「大丈夫です。ドラゴン戦車には王族には傷つけないようしてありますから」
 そのまま護衛官に大臣は引きづられた。

  ”レーザー”

 いきなりドラゴン戦車が先制攻撃をはじめた。その後ろには「マールディア様〜〜」と叫んでいる。
「やっぱり強くなっているわね」
 ルッカはミラクルショットを構えた。
「いくよ」
 ミラクルショットのトリガーに力を入れる。

  ドォキョッン 

  コン

 弾丸はとも簡単にいとも簡単にはじかれた。

  ”アイス・ショット”

 「水」の魔力を加えた矢が戦車に当たる寸前に矢がはじかれるが、勢いのついた氷の魔法はそのままドラゴン戦車の車輪に当たる。
「物理攻撃に対しての完全防御みたいなものがあるのかしら」
 小さくつぶやくとルッカはスコープをつけた。
「ルッカ、矢も銃弾……」
「分かっているわ。おそらくは物理攻撃になにかしらのからくりがあるみたいだけど」
「どうする? 魔法は聞くみたいだから、魔法で攻める?」
「それはちょっと。あまり大規模な場合はこの石橋も壊れちゃうかもしれないわ」
「じゃあどうする」

  ドゴゴゴゴゴ

 ドラゴン戦車は車輪が回転し引っ付いた氷を引き剥がした。
 時間は刻々と過ぎていく。ドラゴン戦車自体の攻撃は単調なのでそれほど危険ではないので、十分に考える時間はある。基本はマールに攻撃を仕掛けてこないのでルッカ自身が気をつけていればよい。ただ大車輪にだけ気をつけていればいい。
 ただ、考える時間があるといっても時間がたてばそれがけこっちが消耗するし、扉外に警護官が集まってくる可能性もある。クロノの方も心配である。
「ルッカ、わたしが囮になるからその間に弱点を!!」
 ルッカの前にマールがでて、ワルキューレを構えなおす。
「でもマール」
「ルッカ……」
 マールは一回、後ろを振り向かずに答えた。
「……自分のできること、やることは、ねっ!」
 その言葉にルッカは言葉が出なかった。それは前に自分のいったことであった。
 ルッカはマールの決意に押され、すぐに新しく改良したスーパーサーチスコープをつけた分析を開始した。
 マールは、マールなりに色々考えていろいろな攻撃をし多くの情報をルッカに与えようとしている。それは、いままでずっと一緒に戦ってきたからこそのできるものであった。今までの戦いの中で、マールは確実に成長していた。(度胸は元々あったが)
 このスコープはいままではロボにつけていたサーチ機能を頼りにしていたが、ロボと分断されたときを考えて、構想だけはしてあったものだ。それをクロノが捕まっている間につくったもの。ちなみに今が試行中である。
 ルッカのあせる気持ちを何とか抑えるように、マールはなるべく落ち着いて戦っていた。
その気持ちが見ながら伝わってきてルッカも分析を続けることができていた。
 そんな中でスコープから、物理攻撃をはじき、魔法効果をわずかだが分散させる壁が存在し、瞬間的に発動し、ある変動が見られることが分かった。
「マール、戦車の弱点はアタマよ。
 前と弱点が変わっていないのは相変わらずあの大臣がやりそうなことね」
「でもどうするの? 物理攻撃が全部はじかれちゃうし、魔法も少しだけ分散させられるみたいだけど」
 やはりマールも魔法が少し分散させられていることに気づいていたようだ。これではアイス、ファイア級ではダメージを与えられないし、すぐに回復してしまう。
 ルッカは白い手袋をはめた。
「少しの間ならあの壁を消すことができる、と思う。
 だからその間にあの頭部を狙って、重点的に」
 さらにルッカはバッグからハンマーを取り出した。ハンマーはいつも近距離用にルッカが使っているものとは違った形をしていた。
 いままでルッカは近距離で銃が使えないときにハンマーを使っていたのだが、それは市販のハンマーをちょこっと合成したものであった。でも、それではどうにも威力が高くなく少しそれで悩んでいた。
 ルッカはいつも接近戦で役に立たなかった。そんな中、少年の言葉、そして中世でのヤクラのパワーアップ。今後強力な敵が現われたときに、あまり使わないからといってあの市販のハンマーを合成したでは十分な戦力にならない(実際にギガガイアで一度破壊されている)。そんななかで考え出されたのがこのハンマーである。また違う効果を持つマールの分も作ってある。
 ルッカはハンマーを手のひら小の弾丸状のものをハンマーの取っ手の付け根につけ、すぐにルッカは走り出した。マールを抜き、スコープで確認した壁ギリギリの場所で止まりハンマーを振り落とした。
「グラヴィティー・ショッ〜〜〜クッッッッ」
 ハンマーがドラゴン戦車の謎の壁にあたり、そこから光の粒子が放出する。それと共に壁が消失していく、マールはその光景に見とれていた。
 壁は少しずつ大きくなっていく。
 ふと我に返りマールはワレキューレを構えた。

  ”ヘイスト”

 狙いはドラゴン戦車の頭部。

  シュン シュン シュン

 十数発の矢は頭部を直撃し、壁が消えた。
 ルッカはそれを確認してすぐさまハンマーの効果を止め、左腕を上げ手をグー、ゆっくりと親指を出した。
 その合図にマールは簡単な魔法の構成を始める。
 ドラゴン戦車は頭部が破壊されたことにより処理能力が格段に落ち、動きが緩慢になっていた。
 魔法の構成が終わり、二人同時に放つ。
 狙いをつけるのはルッカ、範囲を指定するのはマール。
 お互いを補いつつ魔法を完成させる。

  ””反作用ボム―らいと―””

  ドォォォォォン

 ルッカの狙いで戦車の中心から少し上部へ吹き上げるように発動、マールの範囲指定で柱のように上空へ余分な破壊力が放出される。
 ドラゴン戦車の三分の一がつつまれ、巨大な車体は壊れ始めた。
引用なし
パスワード
<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR...@p7135-ipad308hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp>

【161】-09- (第五章 王国裁判IIIガルディアの護...
 Double Flags  - 08/8/31(日) 23:57 -
  
 部屋中が書類、木片などでぼろぼろになっていた。
 狭い空間で二人、カタナを構える二人。ともに息を切らし、それでも相手の隙を突こうと目を走らせる。
「……」
 二本のカタナを扱うクロノと中段の構えで向かえているジーノ。

(似ているな)
 ジーノはクロノの太刀筋を見て、自分に近いものを感じた。それは自分の師である祖父や父、妹のだれかがクロノという少年が関わり合いを持っているということ。たしかこの少年はトルースに住んでいると考えると、関わりや繋がりがないとは全くいえない。
 多くの相手をこのカタナで戦ってきたが、こうも自分の剣術とにていると、自分が弟子を取ってその稽古をつけているようだと感じられる。祖父をはじめ、父や妹などはこのようなものを感じていたのだろうか。早くしてガルディア軍の中に入りその役を負っていた自分ではあまり考えられないものである。マールにしても兄弟子としておきながら、祖父から習ったものはまったく別のもの、手合わせなどはなかった。
 あとは確たる証拠があれば…、もしそうであるならば、このクロノという少年、自分の家系に伝わる剣術をここまで使いこなせるという才能、いや努力のなせる技、それに感心する。
 そしてここまで自分なりに昇華させていることを。
(不思議な少年だ。確かめたいが、今は逃がさないことを優先にしなければ)
 ガルディアの騎士長として任命されてから、私事を切り離して考えてきた。自分の欲のために進んではいけないと。
 フッと気を入れる。
 クロノ少年もそれに気づき身構える。
 ジーノは自分から仕掛けていった。
 中段からの横薙ぎ。
 クロノはそれを受けるが、ジーノは突然右手をカタナの添える手からはずした。力の割合でクロノのカタナが、ジーノのカタナを押す。
 ジーノはそのあいた手で肩に手を当てる。

   ガクッ

 骨がすれる音。
 突然のバランスを崩したところに、その力を利用されてクロノの顔面は、地面に吸い寄せられる。だが、地面に打つ前にクロノは体を捻り、転がった。
 直接ぶつかるよりもダメージを減らし、散らばる書類に巻かれながら立ち上がる。
 手にはしっかりとカタナが握られていた。
「古武術?」
 クロノにほとんど回避不可能な技をかけたのに対してのこの対応、それは東の大陸で使われる武術の一つに近かったためにそんな言葉が出る。そしてこの中央大陸群、特にこのゼナン大陸で普通見られるものではない。いよいよもって、このクロノ少年の正体が見え始める。
 優先としておきながら、見極めてみたくなった。
(ここで揺すりをかけてみるか)
「お前の師は誰だ」
「!」
 とたんにクロノが固まる。
 ただそれも瞬間的なもので、すぐに隙のみせぬ構えを取る。
(かかったか)
 いきなりストレートに聞く、こういったやり取りは苦手と見える。まあ、それも演技だということも考えられるが。
「黙っていても分かるぞ。
 お前の師は私よりも強いからな」
 バンダナにわずかな汗がにじみ出ている。
 あせりなのか、それとも演技なのか。前者と判断したいものだ、あまり父親らの弟子とは戦いたくないというのが正直なところ半分、どんなものなのかもっと確かめたいと思うのが半分である。
 ジーノは力を緩め、半歩進む。
 たまらずクロノは動く。

  ”破”

 吐く息で力を強める。

  ”裂”

 その剣を迎え撃つ。
  ……
 金属音はなく、互いにすれ違う形となり、互いに服の先を奪っただけだった。
 これで確信が持てた。
 ジーノの使う剣術は元々人間外の、競技としてでなく戦闘を主眼と置いたものであった。そのため致命傷にならないのは『打たない』ことになっている。知能の低い魔物、人間を襲う魔物は、単純である。彼らは人間に対して力で見ると絶対的有利とおもっている。そのため、自分の有利を、人間から傷を受けることはないと思っているために、その自分で作り出した壁を崩されると逃げるか、余計に暴れだすことが多い。それを考えると、知能を持った魔物、魔族は、相手のするのが幾分か楽であるが、多くは知能の低くて人を襲う魔物、魔族を相手にするため、敵に対して致命傷にならない技は『打たない』ようになる、いわば独特の癖である。
 まあ、外へ教えるときは競技用に消化した剣術を教えているのだが、この少年は本来のものを学んでいるし、経験も多い。
「面白い」
 思わずつぶやく。
 そして付け加えるように言葉を出す。
「一刀、即断」

 クロノは自分の顔が険しくなったのが感じられる。
 『一刀、即断』というのは師匠がよく漏らしていた言葉だ。
 ジーノはさらにつづける。
「マールディア様が気にかけるのも納得がいく……だから危険だ」
 コンフォートは構えを取る。
 その構えを見てクロノは体が強張る。
 師匠がかつて漏らしていた、ガルディア軍騎士長ジーノの本気の構え、習えにそって『一刀、即断』を行うのだろう。
 いまのクロノにそれを抑えることは、できるのか。
 二本のカタナを握りなおす。
 ジーノが動く。

  タンッ

 咄嗟にそれに相対する攻撃の型を取る。

   キンッ
引用なし
パスワード
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【162】-10- (第五章 王国裁判IV脱出)
 Double Flags  - 08/8/31(日) 23:58 -
  
   カーーン、カン、カン

 クロノにとって気味の悪い音。
 金属音と床に響く音。
 愛刀の“あおぞら”が折れた。
 師匠よりもらった真剣。『前の周』で多くを共にしたカタナが二つに折れる。
 剣先が石床の上で、明かりの炎に揺れて光る。
「届かなかったか」
 さらにカタナを構えるジーノ。その腕には薄く長い傷ができていた。
 ジーノは二本のカタナを完全に押し切ることができなかった。クロノは上手く、カタナを一本失いつつもジーノの技を流したのだ、ただその代償は大きい。
 ジーノの技は斬るものより、武器破壊に近い破壊力があった。
 魔法の付与も使わずこれだけの力を発揮していたのだ。
 それだけでも恐ろしいことである。
 これが破壊の技というモノか。
 カタナの本来の形とは別のもののようにそれは感じられた。
「次は防げまい」
 ジーノはふたたび同じ構え。
 次は防げるか。
 否。
 そんな思いがクロノの中を埋めた。
 『前の周』ラヴォスと戦ったときとは別の、何かが襲ってくる。
 振り払うようにジーノを見る。

   ドォォォォォォォォォン

 部屋を揺らす地響き、忘れていたように残っていた机の上のコップが落ちる。

   カラン

 音は橋の方からであった。
 ジーノを見ると、バランスを崩し倒れていた。

   ごほっ!!こほっ!!こほっ!

 落ちた埃がのどに当たったのかセキをしていた。
 クロノは折れたあおぞらの先をもち、部屋を出た。
 せきが止まりジーノもその後を追いかける。


「マール、ルッカ」
 二人を呼ぶ。
 周りには機械の残骸が散らばっている。
 やはりドラゴン戦車を倒したようだ。
「クロノ、おそい〜」
「すなまかった」
 そんな一言を交わし、大臣橋を今回も渡り(マールは初体験)階段を下りる。
 その後、所長室からジーノが来る。
 騎士長は大臣の前に止まり、
「追いかけますか? 大臣」
 冷淡に話しかけるジーノ。
 その態度に大臣は苛立ちながら、
「その前にわしをたすけんかい!!」
 怒鳴り散らす。
 が、騎士長にはそれは全く効かず、大臣を兵士二人ともども助けた。
 助け出された大臣は穴の開いた橋の下と見ないように向きをかえる。
「どうせここから逃げ出せん」
 大臣は長く続く階段を見ながら、降りる音を聞きつつニヤリと笑っていた。


 階段を下りながらクロノは話しかけた。
「マール、やっぱりこの後警備官がいるのか」
「たぶんね。
 だけど今回は騎士長がいるから」
「……上手く逃げられるかどうか分からないか」
「うん」
「さっきも、なんの連絡手段もないあんなところでいきなり現われるなんて、
 かなり頭の切れる騎士長ね。
 ふたたびここに来るとき厄介な相手になるわ」
 そんなことを言ったルッカに、クロノは黙っていた。
 折れた刀の刃を鞘に包み階段を降りる。


 正面の入り口手前で、『前の周』のように囲まれたクロノたち。
「度が過ぎますぞマールディア様。
 囚人を逃がすなどとは」
「大臣!!」
 どこから現われたのか、それよりどうやってあの状態から抜け出したのか、大臣は騎士長と共に中央の入り口にいた。
「クロノは無罪よ!!
 あなたこそなんでクロノを死刑にしたのよ!!
 裁判では…」
「何のことを言っておりますか、マールディア様。
 そこのクロノ少年は反省のために独房に入っていたのですから。
 それを死刑とは。
 ふう、何を言い出すかと思えば……」
 そのとき一人の警護官が大臣に耳打ちする。
 フム、大臣はいきなり大声を出した。
「頭が高ーい! ガルディア王33世様のおな〜り〜ッ!」
 大臣と騎士長は左右に分かれ、中央に入り口が開かれると共に堂々とガルディア王、この国の王がでてくる。
 その姿は威厳のあるものであった。多くのものが彼に慕う。引き付ける。有無を言わさない態度、強固な姿勢をみせていた。
「父上……」
「いいかげんにしろマールディア。
 お前は、一人の個人である前に一国の王女なのだぞ。」
「ちがう、ちがう、ちがうもん!
 今の父上と話しても何も聞いてくれない、何も信じてくれない」
「何を言い出すか、信じないとは。
 城下になど出てから悪い影響を受けおって!」
「行こう! クロノ! ルッカ!」
 マールは二人を連れて外へ出て行った。
 呆然と見ている王をはじめ警備兵。
「何をしておる! 追えッ! 追え〜いッ!!
 大臣が叱咤して警護官がマールらを追いかけ始めた。
 すぐに大臣もその後を追う。
 騎士長のジーノも国王に一礼をして外へ出る。
「マールディア……」
 一人、国王は扉の先、ガルディアの森その先を見ていた。


 騎士長ジーノは大臣たちクロノのいった方向とはちがう場所にいた。
 一人、ガルディアの森の少しはずれたところにある湖に一人たたずんでいた。
 湖は澄み、城での騒動が嘘の様でもあった。
 ジーノはそのほとりに行き、座り込んだ。
  ごはっ!!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!
 どす黒く、変色した液体、血液を体内から吐き出す。
 血は辺りの草の葉、茎、花を変色させた。
(いつ見てもいやな色。しかしそれももう慣れた)
 胸に手を当て、片手から瓶を取り出し、その中に入っている粒――薬を二、三粒取り出す。
 そして西方で手に入れた薬を湖の水と共に体内の中に流し込む。
 現在の先端医療は西方が握っていた。
 西方で直せないものは、不治の病とされるほどに。
 心臓の鼓動が少しずつ平時に戻っていく、その脈動が分かる。
 ジーノは寝そべりながら先ほどのことを思い出していた。
「クロノといったか。面白い少年だ」
 おそらくその正体は、ジーノの予想するものであろう。
 自分は祖父アラン・プリースト・コンフォートの後を継ぎ、祖父に代わってガルディア王国軍の騎士長を任せられた。
 あの父たちがジーノの役職に、自分より上の役職に、嫌に思うことはあるまい、彼らはそういう人たちだ、長年のコンフォート家という役割が分かっている人たちだ。
 しかし、自分に剣技をすべて伝えられなかったことはどうだろうか。
 途中祖父は亡くなり、すでに第一線から離れていた父に会う機会も、軍としての忙しさから失ってしまった。
 妹は父が亡くなると放浪の旅に出て、たまに地方での武勇伝を聞くぐらいだ。
 彼らが、俺に伝えられなかったものを彼は手にしているのだろうか?
  ………
 そう考えてばかばかしくなった。
 軍の道に若くして入ってすでにそういったことは考えても仕方が無いことだと思っている。
 自分でこの道を選んだのだから。
 軍に入り、騎士長に上り詰めてからも剣技に関しては鍛えていた。
 それがガルディア軍の騎士長としての役目だと、部下になんと言われようともそう考えていた。
(王女も自分で道を決めることができるように育ったか)
 そう考えると外に出たことも悪くはない、そうジーノは思っている。
 ジーノは体の向きをかえて、湖とは逆に広がるガルディアの森を見、聞き、感じる。
 自然のざわめきが聞こえる。
 外交などから帰ってくると、いつもこうやって自分の護るものを確かめていた。
 今回は忙しく、久々の帰還であった。
(それにしても)
 よくよく考えてみると不思議なものはあの少年ばかりではない。
 マールディア様はどこに行っていたのか。
 帰ってくる前なので詳しくはまだ聞いていないが
 この大陸では行く場所に限りがある。秘密裏に国中を探し、有効性をみてパレポリやサンドリノ地方の砂漠民族にも捜索して回ったという話だ。
 それにもかかわらず、それこそひょっこり城に現われた。
 あれほど探したのに見つかることは無かったというのに。
  ………
 このガルディアで何かが起こり始めているのか? 建国千年祭の最中、歴史的事件が起こるには都合がよすぎる。
(まあどちらにせよ。
 ガルディアの一端を握る者としてこの行方を見届けなければならない。)
 心地よい風により意識の遠のく中、ガルディア軍騎士長。
 かつて、ガルディアの勇者と呼ばれた血を受け継ぐ者の中で、最後の、ガルディアの護り手となる男はしばしの休息を取る。
引用なし
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