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遅くなっておりますが、徐々に取り戻して行けたらと思います…。
一挙掲載ですが、あんまり取り戻せてないなぁ。|-゜)
第117話「枠」(CPss2第33話)
「やられた。」
シズクは力なく言った。
その場に居た全ての者がそう思っていた。
これでメーガスかしまし娘。が抜けたことで、2チームが抜けたと考えられる。そして、たぶん、この試験はこれまで分かってきたことを総合すると、一つのチームが抜ける為には2つのチーム分の呪印を集める必要があるということであり、参加していた8つのチームの内の4チームは必ず敗退することになる。そして、より厄介な問題は「呪印を集め損なう」チームの存在があり、実際は4チーム未満しか通貨不可能だということだ。
これまでに確実に分かっている事は、ファイアブラストチームは火の呪印を入手することに失敗していること。他にも乙子組、フロノ・ノ・コリガー、腐れ縁の3チームは天の呪印の入手に失敗している。この段階ですでに2チーム分の枠は消えていることになる。
となると、今抜けたメーガスかしまし娘。チームの合格で枠が埋まったことになる。
「…さて、枠は埋まった。俺らは先行くで。じゃあな。」
バンダー達はそう言って静かにスタート地点へと歩いていった。
クロノもそれを見て歩き出そうとしたその時、シズクが言った。
「待って、ねぇ、ちょっと変じゃない?」
彼女の言葉に二人の足が止まる。
クロノが振り向いて尋ねた。
「何でだ?」
「考えてみてよ。今まであれだけルールだの言って強制してきた審判のカナッツが何も言わないのっておかしくない?普通に試験が終ったなら、何か放送で呼びかけても良い訳よね?じゃないと、まだダンジョンに居る人達はずっと彷徨い続けることになる。」
「…確かにな。でも、バンダー達が言った通り、計算上は枠が埋まってるだろ?」
「えぇ。でも、ハイド達の言っていた言葉が気になるじゃない。」
「まだまだ方法はある。…でしたわね。」
ミネルバがハイドの言葉を言った。
シズクがそれに頷く。
「えぇ。彼は方法があるって言ったわ。つまり、この試験には敗者復活の仕組みが隠されているってことじゃないかしら?」
「…しかし、そんな話は一度も聞いた事がありません。試験合格者は必ず呪印を持ち帰っているのですから。」
「そこよ!例えばよ、今ある呪印だけど、全ての枠が埋まった段階で二つ以上ある呪印を交換してくれるとかって窓口がどこかに出来るとか?」
「それは有りません。この試験はもう一度受けられる以上、そうしたサービスを設ける必要が無いので設置されていないはずです。」
「…それもそうよねぇ。普通に考えたら、何度も受けられるものなんだもんね…。うーん、でも、何か引っかかるのよねぇ。」
その時、シズクはふっと思い浮かぶものが有った。
それはコア・ガードチームの呪印がグリフィスチームのプレートへ、冥の呪印となってはまる瞬間のものだった。
「………あ!?」
「どうした、何か分かったか?」
「冥の呪印よ!」
「?」
「冥の呪印は4つの呪印が集る事で一つの冥の呪印が生まれるでしょ?ってことは、4つの呪印は冥に変換されたわけよね。」
二人がこくこくと頷く。
シズクは真剣な表情で話を続けた。
「変換できるということは、呪印のエネルギーは変異するものってことだから、こうは考えられないかしら?呪印はどれも元は一緒だってこと。…つまり、火の呪印は水の呪印にも変わるんじゃないかしら?」
「………、だとすれば、さっきハイド達がバトルしたっぽい魔力の動きは頷けるわけか。」
「そうですわね。彼らの行動がシズクさんの言葉通りだとすれば、残された呪印を集める行動の理由になる。ならば、急ぎましょう。私達の手元の2つの他にあと3つ集めれば、理論的には全て揃える事が可能になります。」
3人は頷くと、急いでダンジョンの奥深くへと走って行った。
3人が去ったのを見て、そこに静かに彼らの来た道を進む者があった。
「…ツー」
「きゅー!」
「…カー」
「きゅー!」
「…行くわよ。」
コツコツとヒールの靴音が響く。
そこにのしのしと二人の大男が彼女の背後に続く。
「(…へー、色々と考えるのね。ま、私の知った事じゃないけど。スイソ族の坊やの行動がそう繋がるとはね。…なら、上がってくるのはどちらかしら。…どっちが来ても、私の勝ちは揺るぎないけど。)…フフフ。」
グリフィスチームはまだゴールしていなかった。
だが、彼女達は遂にゴールした。
「おめでとうございます!グリフィスチーム、第二次試験合格を認めます。」
ここに完全に2チームが正規の手順で抜けた。
クロノ達は天の呪印の間へ走っていた。
そこには3チーム残っていたはずだ。ハイド達も3チームと総当たりで戦うことはないだろう。だとしたら、先ほどの戦闘反応での1チーム分を引いた2チームはまだ居ると見て良さそうだった。
考えを整理すると、現在2チーム16コの呪印が消えていることになる。残っている数は乙子組と腐れ縁とフロノ・丿・コリガーチームに推定で10コ程度残っていると考えられる。とすると、ファイアブラストが抜けている現在、ハイド達が仮に5つ入手しても5つ残り、クロノ達が入手出来る数は残る計算だ。
何より、現在の状況は普通に試験を受けていては「誰も合格できない」という状況であり、必ずどこかのチームと遭遇しなければならない状況下にある。勝手に抜けられる可能性は無いが、なるべく早く動く事に越した事は無い。
「もうすぐね。」
迷路の闇を明るく照らす白い四角が近づいてくる。
呪印の間に近づくにつれて視覚が戻ってくる。
暗い闇ばかりの迷路だが、光があるということはそれだけで安心できるのは不思議なことだ。
クロノ達は天の呪印の間に到着した。
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