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第122話「第3次試験開催」(CPss2第38話)
第三次試験が始まった。
試験は円形の舞台から落ちたり、ギブアップを宣言すれば終了する。ただし、戦闘で相手を殺害することは許されておらず、死亡に至らしめた場合は反則として負けとなる。また、舞台に上がってから何もせずに時間を稼ぐ行為も反則で警告され、その警告を3回受けると反則負けとなる。戦闘方法は3人で自由に連携して攻撃出来るので、チームワークを駆使して如何に相手を舞台から落とすまたはギブアップさせるかで勝利が決まる。
メーガスかしまし娘。は試合開始早々にお得意のリフレクトフィールドを形成した。彼女達は持久戦に持ち込む気らしく、攻撃してくる様子は無い。…冷静に彼らは彼らで魔力差を計算したのだろう。まともに戦えば確実に攻撃力で劣る彼女達は、完全に防ぐ事で戦い抜く気らしい。
「…彼女達、見たところ魔力はそんなに多くないと思うから、力押しで叩けるとは思うけど、それにはあのフィールドを超える魔力供給を続けるってことだから、超えるまでは反射で私達がダメージ負う計算よ。持久戦と考えると面倒な相手ね。」
シズクの分析は正しいのだろう。あのフィールドを超える魔力供給はそう簡単に出来るものではない。ヒカルのシャイニングですら跳ね返したフィールドだ。そう簡単には行かないだろう。特に、以前の彼女達は不必要な魔力供給はセーブしている様に見えた。たぶんあの時、クロノの魔力供給が仮に無くとも、彼女達は自力で十分にシャイニングを防ぐ事は出来たに違いない。
クロノは突然構えると魔力を集中し始めた。次第に彼を中心に魔力が集中し身体が浮き上がり、その彼の足元には青白い輝きを放って魔法陣が形成され始めた。
「ちょ、クロノ!?あんた、私の話聞いてたの!!?」
「試す価値はある。」
「え!?」
「(シャイニング)」
彼を中心に莫大な魔力が吹き出すと、それが一斉にメーガスかしまし娘。に向かって襲いかかる。その出力はヒカルを遥かに上回り、闘技場全体に青い光の柱が立つほどだった。
だが、その魔力の流れは急速に反転を始める。
「(さすがにきついわね。)これでお仕舞な私達じゃないわけ。」
強力な魔力の流れは、まるでアミラがシャイニングを放っているかのように彼女を中心に魔力の流れが集約すると、一気に反転を始めたのだ。
「いや、マジ!?ちょ、クロノ、あんた、あんなのどうすんのよ!!!もう!」
シズクが慌てて天のバリアフィールドを形成して吸収を狙うが、その許容量を遥かに超えたシャイニングの魔力流には焼け石に水だった。クロノもあまり慣れていないフィールド形成を試みるが、失敗に終わり、手を前に構えて防御姿勢をとった。
しかし、覚悟していた痛みは一向に起こらない。
「大丈夫ですよ、お二人とも。」
ミネルバがマイティガードを発動していた。
シャイニングの反転流は全てマイティガードが受け止めて無傷で済んでいた。
「ふぇ〜、助かったぁ。」
「ちょ、なんであんたが安心してるのよ。元はと言えば私の話をきかないあんたの責任でしょう!!」
「まぁまぁ、助かったし良いじゃないか?」
「それは、私が言うセリフでしょう…。はぁ。しかし、シャイニングも駄目な奴を、どう戦う訳?」
「…私がやってみましょう。」
そう言うと、ミネルバがフィールドを操作して以前のようにボコボコと球体を宙に浮かせ始めた。ふよふよと浮かび上がった球体は、突如鋭利に突出してメーガスかしまし娘。へ向かって刃を向けた。だが、その刃もフィールドに触れる直前で勢いが止まると、ジリジリと後退を始めて、結局全ての突起は元の球体に戻り、ボコボコと吹っ飛ばされたかの様にポンポンとマイティガードフィールドに戻ってしまった。
「お宅らの技はそんなものなわけ?…もうちょっと楽しませて貰えるかと思ったけど、この程度なら恐るるに足らずなわけ。」
アミラが憎まれ口を叩く。
しかし、彼女の言う通り、手詰まり感は否めない。このまま何もしなくても時間切れで反則を取られ、戦っても跳ね返されてしまう。何か無いか。
その時クロノはふと思いついた。
先ほどシズクが放ったトラップフィールド。あの時はシャイニングの前に焼け石に水だったが、もし、シャイニングじゃなかったら違う結果が出たのではないか。だが、そんな小さな攻撃ではフィールドには傷すら付けられない。しかし、反射によるダメージを吸収出来れば、向こう側の魔力の限界まで戦い抜く事は出来る。
それでも、1人で器用に魔法を放ちながらフィールドを形成し続けるのは厳しい。同じ出力で常にフィールドを形成させながら攻撃する他に無いが、そんなことが可能なのだろうか。
「シズク、俺の出力に合わせてトラップフィールドを造れるか?その、完璧にシンクロさせるんだ。」
「………!、OK。良いわ。そういう事なら私がフィールドは引き受けた!」
「おし!なら、ミネルバさんはバックアップ!俺とシズクで攻撃するぜ!行くぜ!」
「はいな!」
二人が目を閉じて魔力を集中し始める。
魔力の上昇をシンクロさせるために、クロノがシズクの肩に手を触れた。すると、シズクにクロノの魔力が流れ始めるのと同時に、クロノにシズクの魔力が流れはじめる。
二人は試練の洞窟を思い浮かべていた。お互いの魔力を感じながら、互いの力を近づける。試練を超えた二人には難しい事ではなかった。
二人は同時に目を開くと、同時に構えた。
「は!」
掛け声も重なるほどシンクロした二人は、同時に魔法を放った。
シズクのトラップフィールドが形成されるのと時を同じくしてクロノのサンダーがメーガスかしまし娘を狙う。サンダーは当然のように跳ね返されて来るが、そこはシズクのフィールドが完全に吸収した。
それを確認すると互いを見て頷き、ニヤリと笑みを浮かべた。
二人は再び魔法を放った。だが、今度は一発ではない。連続で何発も同時に放ち始めた。しかし、その出力では案の定全く向こうには効いていないことも見て取れた。だが、二人は止めるでも無く、延々と魔法を放ち続けた。
「(あ〜、もぅ、セコイ攻撃で鬱陶しいったら何なわけ?シャイニングの連発ならともかく、こんなサンダーごときに負けるあたしじゃないわけ。ったく、こんなモノに貴重な魔力を使わせないでほしいわけ。…貴重な魔力、………しまった!向こうの狙いはそれ!?でも、まって、今の今まで気にしていなかったけど、これって本当にサンダー!?…ダメージがあたらないから分からなかったけど、この出力は既にサンダガを超えているわけ…。)…やってくれるじゃない。マルタ、リーパ、ちょっと場が天に流れ過ぎなわけ。OK?」
「はい、お姉様。」
「はい、お姉様。」
二人の妹達が魔力を集中し始める。
すると、リフレクトフィールドが黄金に輝き始め、なんと、クロノの放つサンダーを吸収し始めた。
「なんだ!?」
「随分舐めた真似してくれたわけ。あたし達も馬鹿じゃないこと忘れてるわけ?」
「忘れていません。この時を待っていました。」
そう言ってミネルバがマイティガードを発動させると、彼女はフィールドを形成するのではなく、そのまま大きな魔力を込めた刃として、一瞬でリフレクトフィールドを貫通した。
リフレクトフィールドがまるでガラスが破裂するかのように、キラキラと輝く破片をまき散らして崩壊する。その事態にクロノ達は勿論、アミラもまた呆然とその場に立ち尽くした。
「…私達のフィールドが……負けなわけ。」
「はい、お姉様。」
「はい、お姉様。」
二人の妹達の悪気の無い返事が、アミラの心に深く突き刺さった。
「試合終了!メーガスかしまし娘。チームの敗北宣言により、ポチョチームの勝利です!!」
会場が大きな歓声をあげた。
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