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第96話「第二次試験」
改札の向こうには再び100m程進んだ先が右折しており、右折したすぐ先には道がなく、係員らしき女性の他に、先に改札を通過した面々が立っていた。
係員の女性がクロノ達の姿を見て近づいてくる。
「ようこそ試練の洞窟へ。一次試験合格おめでとうございます。これから皆様を二次試験の行われる試練の洞窟へとご案内致します、カナッツと申します。」
カナッツという係員の女性は若く、桃色の肌に薄いピンクの髪をしている。どうやらミアンヌの血筋らしい。
シズクが彼女に質問した。
「試練の洞窟とはどういう場所なんですか?」
シズクの質問に対して、カナッツは微笑んで答えた。
「それは時期にわかりますよ。フフ。それより、もう暫くお待ち下さい。一次試験を通過されました受験生の皆様が、全てご到着次第移動致します。それまではここでお寛ぎ下さい。」
「わかりました。どうも。」
クロノ達三人は、隅の誰もいないスペースに移動した。
「…どれくらい来るんだろうな?ミネルバさん知ってる?」
クロノの問い掛けに、ミネルバは落ち着いた様子で答えた。
「そう多く無いはずね。魔族と言っても大半は普通の人間と変わらないから、私達のレベルに到達している人はいつも少ないの。今ここに来ているのはあそこの少年組と、向こうに見える女の子達と、あ、あいつは知ってるわ。炎術使いのバンダーよ。」
「炎術使いのバンダー?」
「えぇ、あいつは強烈な術を持っているのに………まだ合格してなかったのね。不思議。」
二人はミネルバの反応にガクっときた。
気を取り直して、シズクがミネルバに質問する。
「ねぇ、二次試験ってどんな感じなんですか?」
シズクの問いに彼女は微笑んであっさりと答えた。
「二次試験は宝探しよ。」
「宝探し?」
「えぇ。まぁ、詳しくはそこの係りの人が説明すると思うけど、洞窟の中から宝を探して戻ってきた人が合格。これからはチームで行動するわ。」
「へぇ〜。」
そうこう話している間に全員揃った様だ。
先程ミネルバが触れた炎術士バンダーのチームや少年達や女の子達、そして、ムサい男二人と一緒に一際目立つ、美人でクールなショートの黒髪の人間の女性、列車で見かけた学生達、カエル人の3人組や、厳つくいかにも屈強そうな男達3人組がいた。
カナッツが全員に呼びかける。
「さあ、皆さん!ようやく一次試験の通過者が揃いました。まずは皆さんの通過をお祝い申し上げます!では、これより二次試験に入りたいと思います。これから皆さんにチーム登録をして頂きます。既にこちらにいらっしゃる方はご存知の事と思われますが、二次試験はチームプレイです。予めメンバーが決まっている方達から順にご登録下さい。登録はあちらのテーブルで待機しております事務にてお済ませ下さい。」
カナッツの説明にどよめきの起こる一角も有ったが、大半は織り込み済みの様子で次々にリーダと思われる者が登録へ集まって行く。
程なくして登録が全て済んだ。
クロノ達の他に現れたのは、全部で21人、7チームの様だった。
チーム名一覧
ファイアブラスト
リーダー=バンダー・クラフト メンバル・カーメン ヤッパ・マイウー
コアガード
リーダー=ハイド・スイソ ティタ・チタ ランタ・ノイド
メーガスかしまし娘。
リーダー=アミラ・ゼー リーパ・ゼー マルタ・ゼー
乙子組
リーダー=フォース・キン パー・ヤネン パンチ・ラー
グリフィス
リーダー=ガーネット・スネークヘッド ツー・キュー カー・キュー
腐れ縁
リーダー=ヒカリ・イジューイン ベン・ゾガリ イーマ・ター
フロノ・ノコリガー
リーダー=カエゾー・カエ カエミ・ゲコ フログ・フォレスト
ポチョ
リーダー=クロノ・トラシェイド シズク・ユキムラ ミネルバ・ワイナリン
「…以上7チームが決まりました。それでは、これより二次試験会場となる試練の洞窟に移動致します。皆様、危ないですから壁の手すりにお掴まり下さい。」
カナッツは全員が手すりを掴んだのを確認すると、ポケットからリモコンを取出しスイッチを入れた。すると「ガタン」という音と共に揺れ始め、なんと、どんどん部屋が沈下し始めたではないか。クロノが驚いている間にもどんどん後方の入って来た通路が離れて行くのが見える。
降下はそれから5分ほど続き止まった。
カナッツは止まった事を確認すると言った。
「皆さん着きました。壁から離れて中央に集まってください。」
カナッツは集まった事を確認するとリモコンを再び操作する。
すると前方の壁が上がり、後方の壁が締まった。前方をみると通路が開けていた。しかし、明かりは無く、奥は真っ暗で見えない。辛うじて今までいる部屋の明かりが射して、通路だと確認出来る程度だった。
横の壁が開く。
すると、そこから台車を押して沢山の筒を運ぶ係員が現れた。台車の上には筒の他に小さな手で持てる大きさーーだいたい縦20cm横15cmくらいーーのプレートが複数置かれていた。
周囲がどよめいていると、カナッツはその台車の上にあるプレートを一つ手に取り説明を始めた。
「えー、皆さん。これから二次試験を開始致します。皆さんにはこれからお配りするプレートに呪印を集めてもらいます。呪印とは、魔法力を込めた魔法陣の文字です。
それぞれ属性を持ち、地水火天の4つの属性を示します。そして、これに加えて最後にもう一つ「冥」の呪印をこのプレートに移し、持ち帰って来てください。持ち帰り方は自由です。…尚、この試験はサバイバルレースでもあります。
これより受験生同士の戦闘も許可されます。しかし、この洞窟の内部では魔法以外の攻撃は使えません。また、どんな攻撃も魔法を利用したものでなくては効果はありません。
そして、これより基本的な戦闘のルールを説明致します。皆さんはこのルールに従って戦闘して頂くことになります。ルールに反した行動をとられましたら、即時停戦の勧告とともに、違反者に対するペナルティが発動します。
これに従わなかった場合は即時失格となりますので、皆さん確実に覚えておいて下さい。
1、この試験内での武器による人への攻撃を禁じます。
これは安全性の確保のため不測の事態を回避するためです。このため、基本的に使用できる有効な直接攻撃は、体のみでの攻撃に限定されます。しかし、人以外の物に対してはその限りでは有りません。この他、魔法力を高めるロッドなどの道具の使用は認めます。
2、他のグループから戦闘を申し込まれ場合、これに必ず応じて下さい。そして、勝負を決して下さい。拒否された場合はその時点で失格です。また、これは勝負を申し込む側も撤回が出来ないことを意味する事をお忘れなく。
勝負に負けた方は相手から呪印を一つ奪うことができます。しかし、差し出す物が無い場合は失格となりますのでご注意下さい。ただし、この戦闘を実行する側は最低でも既に呪印獲得のアクションを起こしていなくてはなりません。…これは呪印獲得をせずにチームの削り合いをすることを禁じる処置です。ご理解下さい。
以上が戦闘に必要なルールです。
この範囲内に沿って私ども審判は判断を下し、時に仲裁致します。審判の裁定には必ず従って下さい。
なお、これらの判断については、戦闘中に私の名前を御呼び下されば応答することも出来ます。判断に迷うことがありましたら、お気軽に私にお尋ね下さい。
では、私がこれよりプレートとこちらにございますたいまつをお渡ししますので、それをお持ちになられたチームから順次試験場へお入り下さい。では、ご健闘を。」
カナッツの最後の言葉に合わせて、係員達が台車の上にあるプレート一枚とたいまつーー先程の筒ーーを手に持ち、配る準備は万端という様子を見せた。
他のチームが次々に動き、プレートとたいまつを受け取っていく。
そして、プレートを受け取ったグループは順次暗闇の中に消えていった。
ミネルバが二人にいった。
「私達も行きましょう」
「あぁ。」
「うん。」
3人もプレートとたいまつを受け取り、暗い闇の中へと入っていった。
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