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セイラ・マス名誉会長
地球屈指の一大財閥グループ「マス」家の前総帥。養父ハンフリー・マス伯爵の残した酒類販売企業グループを、地球の一地域の規模から宇宙規模の巨大サプライヤーに発展させる。宇宙の酒類販売におけるマス家のシェアは実に72%とトップシェアを誇り、殆どの企業がマス家と何らかの資本関係を結ぶに至っている。
彼女の手腕はまるで神が舞い降りたかのように的確で、確実に物事の先を見通す預言者とも評される未来視能力で知られる。
現在は経営の一線からは手を引き、慈善活動を主に進めている。後継者は彼女の養女として育ったリィナ・マスが継ぐ。
リィナ・マス総帥
マスグループ現最高責任者。マス家は彼女の代になり、政治世界でも隠然たる影響力を行使するに至る。養母であるセイラからありとあらゆる経営学や哲学を学んだ彼女は、大方の予想に反して、セイラが築いた巨大グループを見事に引き継ぎ、更に発展させる。
マス家が投資する大企業の中にはアナハイム・エレクトロニクスの名前もあり、政界は勿論、軍部においてもマス家の勢力が存在する。
ジュドー・アーシタ大尉(51)
本来なら佐官級になっていてもおかしくない戦歴と功績を持つが、本人が責任を負う事を拒否し辞退。大尉だが軍内部でも様々な評価で見られており、敬う者もあれば蔑む者もいる。しかし、その類いまれなNT能力は一目置かれており、NTの士官候補生を訓練する訓練教官として活動している。
オルドー・セット小尉(19)
木星軍のジュドーの部下として配属される新兵。類い稀なNT適性を持ち、一度に沢山のビットを正確にコントロール出来ることが評価され配属される。彼の両親は海賊によって殺害されており、肉親は妹一人。その妹のミリアもまた軍へ入隊し、パイロットの道を進む。
ランディ・カリスト中尉(22)
木星軍のエース級のパイロットとしては既に名の通ったパイロット。どんな機体でも自在に操縦できるパイロット適性の高さは、軍部でもトップと評価されている。
アケーシア・スペンサー曹長(20)
医療系の部門に配属されているが、予備パイロットとしても声が掛かるNT適性を持つ。ヨーロッパの名門スペンサー家出身の才色兼備の彼女は、エリート士官候補生の道もあったが、あえてその道を断り医療の道へ進む。
カイル・グレンハート少尉(19)
オルドーと同期の新兵。しかし、元はアナハイムのサンフランシスコ精神科学研究所の試験パイロット出身で、幼少の頃からニュータイプ能力を開花させていた。機関部志願の彼だが、その類い稀なNT適性によりジュドーの部隊に配属される。同じアナハイム仲間として堂本太郎がおり、堂本は幼なじみ的存在。
ミリア・セット中尉(19)
兄よりも高いNT適性を持ち、NTの申し子といっても良い天才ぶりは入隊直後から軍部でも話題に上る。天真爛漫な性格だが、とても冷静に見つめる目も持ち、兄の復讐心を心配している。彼女は兄が暴走しないよう止めるために同じ道を進む事を決意する。
War Europa.
地球圏グラナダを出港した地球連邦軍は、目的地である木星圏エウロパへ向けて大艦隊を編成した。旗艦パトリオットを中心に、ラー・カイラム級のインディペンデンス、エンタープライズ、エクセルシオールが脇を固め、前衛には最新鋭NT試験艦であるフェアレディ号を中心に、ラー・グスター級が8隻という布陣だった。近年、これほどの大艦隊を編成したことはなく、連邦史にも残る大型遠征と言えた。
連邦軍はエンロール提督の指揮下でアクアロード防衛計画を策定。長い間連邦軍は宇宙への感心が低く、海賊行為に対しても黙認してきた面があったが、今回の遠征はそうしたグループの一掃も兼ねた牽制の意味合いも持ち、特に近年頭角を現しつつある勢力であるディープスペースアライアンス(DSA)を叩くことで、これに協力する諸勢力を鎮圧しようという計画であった。
長らく戦争が無かったために、MSの開発は大きく滞った。しかし、この間にも着実に技術の進歩はあり、長い間扱いの難しい高価な兵器と見られてきたニュータイプ向けの装備も一般化しつつあった。そのために海賊達の兵器の中にもこうしたニュータイプ向けの装備を持った機体が見られるようになり、それらへの対応を含めて連邦軍も大きく見直さざるを得ない時期に来ていた。
しかし、肝心のニュータイプパイロットの確保は難航しており、連邦軍は疑似ニュータイプ技術に着目。ニュータイプ感応波を人工的に作り出して制御するバイオコンピュータ技術の開発を進めた。それは既存兵力構成を維持しつつ、全体にニュータイプ能力を付加する選択肢として、慢性的財政難に悩む連邦にとって魅力的な技術といえた。
だが、現実はそう甘くは無く、海賊達の間でもニュータイプ能力者が増加している現実の前に、疑似ニュータイプがどこまで効果があるのかは未知数だった。提督はこの懸念に対する保険として、0117-New hybrid計画に着手。当初計画には無かった「ニュータイプのみ」で新型疑似ニュータイプ兵器を運用した場合の運用試験計画を実行に移す。
この計画には3つの目的があった。一つは公へのアピールとして、研究結果がどれほどのパフォーマンスを持つかを一般に知らしめるため。二つ目はDSAを殲滅し、アクアレーンの海賊達にクサビを打ち込むため。三つ目はニュータイプ人員が集らない場合の保険として、人員の数ではなく、機体の数で押し切れるように規格量産化に目処をつけるためであった。
システム開発はサナリーを中心に進め、アナハイムに組立をアウトソースする体制をとった。これは最近の連邦の開発体制で、連邦の技術開発の内製化と秘匿化による開発計画のフリーハンドを増やす目的があった。
実際、以前の連邦ではアナハイムに高い依存をしたが為に技術が漏洩し、海賊達にアナハイムを通じて高度な技術が渡ってしまうという問題を抱えていた。サナリーの登場とアナハイムへのアウトソース化は、コアテクノロジーの秘匿化の上で大きな役割を担っていた。
New-hybrid計画では疑似ニュータイプ技術の一つである「junction(ジャンクション)」が開発された。このシステムは有線接続型ビットコントロールを進化させ、よりバラエティに富んだ兵器を柔軟に展開させることは勿論、機体間の連携や様々なモジュールとのワイヤー接続を疑似ニュータイプリンクにより確実に接続させることを主眼に開発された。
このシステムが完成すれば、将来的には無線接続による柔軟な可変MSなどの開発に目処がつき、少ないリソースで大きなパフォーマンスを引き出す様なシステム開発に道が開かれる。しかし、疑似ニュータイプリンクは安定せず、若干のニュータイプの素質を持つパイロットが利用しないと、その性能は安定しなかった。故に開発計画は量産に至らず、まだ研究開発段階を抜け出せずにいた。
政治的には、長らくの平和の時代がもたらした軍事力否定の動きもあり、地球連邦軍の開発計画におけるフリーハンドは年々小さくなってきていた。その中で連邦軍首脳は苦心して低コスト・ハイパフォーマンスを見いだせる可能性を模索していたにもかかわらず、開発計画が思うように行かないことに焦りを感じ始めていた。
特に、連邦政府は軍事予算に占める研究開発費の抑制を年々厳しく要求してきており、軍部の開発計画の有効性を立証する必要に迫られていた。
連邦軍としては、DSAは保険であった。
長らくその存在を知りつつも黙認を続けてきたのは、連邦軍としても存在理由を保存しておく必要性があった
敵のいない軍隊に、高い税金を浪費させる余裕を持つ国は無い。
UC0093年に起きた第二次ネオジオン紛争が終って以降、連邦軍全体が動く必要性に迫られる事件は起きていない。もはや大きな予算の獲得が可能な程の戦争は、それこそ異星人との戦争でも起きない限りは有りえない状況と言えた。軍部中枢の中ではこの状況に対して二つの動きがあった。
一つは連邦政府の方針に従い軍縮路線を推し進め、少数精鋭ながら強力な艦隊を整備する方向を進む一派。
もう一つは表向き連邦政府の方針に従う様に見せかけ、軍縮路線を進みながら徐々に敵を作り育て上げようとする一派。
前者はロンドベルに始まる少数精鋭部隊の個別育成を経ながら、徐々に艦隊全体を必要最低限の形態へ変化させる表の流れとして表れ、後者は前者の勢力に与しつつも既得権益を温存するための方策を画策する裏の流れとして存在した。
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