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【43】真っ黒と真っ白
 REDCOW  - 06/8/17(木) 12:46 -
  
「…ヴヴヴ、何故我らに逆らう。」
「…我が痛み、お前も分からぬはずは無かろう。」
「…誤りし生命の道を正すは我らの定め。お前は見たくないのか、夢を。」
 
 夢…、何を言っているんだ?
 
 僕は真っ暗な闇の中にいた。
 そんな闇の中にとても低い嫌な声が響いてくる。
 何が何だか分からないことをぶつぶつ呟く様に。
 
「わからないよ。何が言いたいの?」
 
 僕は思い切って声を発してみた。
 でも沈黙が波紋の様に広がって行くように吸い込まれて消えた。
 
「…グレ。」
 
 え?何??
 突然先程とは違う僕を呼ぶ声が聞こえる。
 
「シグレ。シグレ!!!」
 
 僕は目を開けた。そこには僕の名を呼ぶカイルの見下ろす顏があった。
 視線の先には天蓋の白い天井が見える。…アスファーンだ。
 
「あの、どうしたの?」
「どうしたも何も、もう朝だ。」
「…え、あ。」
 
 彼の言う通りだった。窓の外はちょっと陰って見えるが朝日だろう。
 山々がキラキラと光り輝いている。
 
 僕は起き上がりベッドから出た。ふとカイルの方を見ると、昨日とは違ってとっても軽装の服を着ていた。これが彼の普段着なのだろうか?…そんなことを考えつついると、カイルが口を開いた。
 
「お前、風呂でも入っとけ。」
「あ、うん。」
 
 そう言うと彼はベルを鳴らした。するとドアが開いて執事の人が現れたかと思うと、彼と小声で何やら話した。そして、執事の人がテレビとかでも見たこと有る使用人を呼ぶあのパンパンという手を叩く奴をやった。
 うへー、さっすがお城だとか思っていると、早速ぞろぞろと使用人の服を着た屈強そうな男達が現れた。スゲーとか思って見ていると、なにやら僕の方に近づいてくる。
 
「え、え!?えぇええええ!?!」
 
 男達は僕をひょいとまるで胴上げでもするかのごとく担ぎ上げると、ずんずんと部屋の外へ歩き出した。その足は徐々に早くなり駆け足と言っても良い。
 
「うわぁああああ!?おい、どうしちゃったわけ!?ねぇ、待ってよ!誰か止めて〜〜〜〜!!!」

 僕がそう叫んだ時、急にピタッと止まったかと思うとひょいっと投げ出された。
 
「え!」
 
 バッシャーーーン!!!
 
 僕は一瞬何が起こったのか分からなかった。
 …いやぁ、でも、良い湯加減。って違う!!!!
 あぁ!?何、風呂だけど、どうしてこうなんの!?…しかも服のまんまだし。
 僕が混乱していると、執事のおじさんがゆっくり恭しく現れた。
 
「猊下。着替えをご用意させていただきましたので、上がられましたらそちらにお着替えください。今お召しの服は私めがしっかりとクリーニングして後程お部屋の方へお運び申し上げますので、脱衣室にそのままお置きください。」
「は、はぁ。」
「着替えの服のサイズは猊下に合う様にお選びさせて頂きましたが、もしも合わぬようでしたら外に待機しております者をお呼びくだされば、すぐにご用意させて頂きます。では、ごゆっくりお寛ぎくださいませ。」
 
 な…、そんなことのために僕を担いで湯に放り投げちゃうわけ!?っていうか、何であんなに丁寧に話ながら猊下とか言いつつ放り投げちゃうわけ!?!って、僕そこに怒るべき!?………はぁ。
 
 あぁ、流されてる。色々な意味で流されてるよ僕。
 僕は仕方なく着ている濡れた服を脱いだ。まさかこんな広い風呂の中で服を脱ぐとは思わなかったけど、いや、ホントに広いなぁ。なんかどっかの観光地の1000人入れる風呂もビックリな感じ。っていうか、これ、温泉なのかな。なんとなく硫黄の香りがする。
 
「ぐぇぇぇぇ〜〜〜…。」
 
 温泉ってどうしてこんな声が出ちゃうんだろう。
 もう本能的に出てくるこの変な声。でも、なんか温泉って感じがするよな。
 
「まぁ!誰かと思ったら、あなたが噂の猊下ねぇ〜!」
「え”!?」
 
 突然女の人の声がしたかと思ったら、僕の目を後ろから両手で塞がれてしまった。
 
「いやぁ〜ん、可愛いお・は・だ!やっぱ若いって良いわねぇ〜♪」
「あ、あの、その、こ、これは何かの間違いで、あ、えーと、その、手を離してくれませんか。」
「ウフフ、駄〜目♪」
 
 その女の人はあろうことか僕に体を密着させてきた。僕の背中に温もりが伝わってくる。何よりアレやコレやあんなところが僕の背後で密着していると思うと、さすがに健康な男子である僕には刺激が強過ぎて…
 
「あ、あら、猊下!?」
 
 …あぁ、頭真っ白。
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【42】奇跡
 REDCOW  - 06/8/16(水) 23:19 -
  
「う〜ん…」
 
 目が覚めた僕の前には、いつもの部屋が有った。
 何も変わらない僕の部屋。
 
 どうやら本当に眠っていたらしい。
 それにしても…凄くリアルな夢だった。
 何であんな夢を見ちゃったんだろう。
 
 僕は起き上がると背伸びをして窓の外を見た。
 外は明るく快晴でいい天気だ。…いい天気…アスファーンも天気が良かった。
 時計の針は7時を回っていた。あぁ、学校行かなくちゃ。
 
 部屋を出ると良い匂いがした。朝飯の匂い。母さんは早起きして料理をいつも作っている。
 
「あら、時雨。寝ぼすけのあんたにしては随分早いわねぇ。」
「おはよう。」
「えぇ、おはよう。」
 
 僕は居間のソファーに腰掛けた。寝起き特有の気怠さがまだ残っている。頭をぽりぽり掻きながら目前のガラステーブルの上に置いて有る新聞を手に取った。既に母さんは目を通したようで、折り目が変わっていた。 
 昔から本を読むことは苦にならなかった方だけど、新聞を読むってわけじゃない。でも、何故か今日は新聞を手に取りたくなった。何気なくぱらぱらと見てみる。
 
 政府は新たに見つかった関東新人遺跡について、正式にあたらしい遺跡と認定。新しい遺跡は紀元前1万年以上前のものと見られ、この発見は歴史を大きく書き換えることが確実視されており、今後の発掘調査が期待される。
 
 遺跡。
 その内容は妙に引っかかるものを感じた。
 
 いや、それだけじゃない。新聞そのものに何か違う違和感を感じる。もっと、なんだろう、こんなに簡単で良いんだろうか。凄く面倒なことが書いて有るのが新聞じゃないのか…とか。
 
「あら、あんたそれわかるの?」
「なんだよ、僕だって新聞くらいわかるよ。」
「ほんとぉ〜?じゃぁ、なんて書いてあったのか言ってみなさいよ。」
 
 母さんは料理をテーブルに出しながら疑惑の眼差しを僕に投げかけていた。たかが新聞ごときでそこまで見下される僕って一体。癪に障るからしっかりと説明してやった。
 そしたら母さんは目を丸くして、まるでぽかーんという書き文字が入っていそうなくらい呆気に取られた顔をして言った。
 
「あんた、凄いわね。いつのまに英字紙読めるようになったの。」
「へ?」
 
 アレ?…そういえば、ウチの新聞って母さんの仕事の関係もあって英字誌だよな。僕、英語読めたっけ???………いやいやいや、自慢じゃないが、英語ぺらぺらの親に育てられて15年!まともな英会話は勿論、英語の読み書きだって満足にできないぞ!!!
 うわ、僕、なんで分かるんだろ。すらすらと読める。いや、なんか新しいスイッチ入った!?まさか、今頃母さんの英語教育効果覚醒!?……つか、なんで僕戸惑ってるんだろ。これって素直に喜ぶべきじゃん。でも、喜んで良いことなのか?…あぁ、小心者な自分が嫌だ…。
 
「あ、うん。そりゃ僕だって英語くらいは。」
「まぁ〜〜〜〜!あんたが英語使える様になるなんて夢のようよ〜!やっぱり私が小さい頃から一生懸命に英語を教えた甲斐があったのね〜♪うふふ、じゃ、今日は奮発して夜はステーキ買っちゃお!あは。」
 
 母さんはとってもご機嫌で、食事後は鼻歌交じりに出勤した程。そりゃ、僕だって嬉しい。今まで苦手だった英語がわかるんだから、テストだって楽勝だし、何より沢山の洋書を見る楽しみを得たわけだし。でも、本当に何故読めたんだろう。
 僕はそんなことを思いつつ家を出た。
 
 学校への道はいつもの用水路公園の遊歩道を通り、突き当たりの県道沿いを進んで陸橋を渡れば僕の通う高校が有る。丁度陸橋を渡っている時、背後から僕の名前を呼んで肩に触れる手があった。
 
「よぉ、時雨!」
「あ、田中。おはよう。」
「うぃっす!」
 
 僕を呼び止めた奴は田中 光治(たなか こうじ)といって、僕の小学校の頃からの友達。彼は僕と違って活発な奴で、部活はサッカーをしている。背は僕と同じくらいの170cmくらい。性格も明るく明朗快活というのを絵にかいた様な爽やか小僧。
 でも、こいつには裏が有る。それは超がつくほどのゲームオタク。普段は女子にモテモテな癖に意外や意外というキャラの男だ。田中はいつも笑顔でウキウキって感じだけど、今日は一際嬉しそうだ。
  
「なぁなぁ!今日何の日かわかる。」
 
 唐突な質問に、僕は全く見当がつかない。適当に答えを羅列してみる。
 
「え、何の日って、誕生日じゃないし。う〜ん、彼女でもできた日?」
「それはそれでオッケーだけど…って違うって!今日はアレの発売日だろ?」
 
 なんとなく予想はしていたけど、やっぱりゲームか。
 田中の超ゲームオタク振りを考えれば答えは明白だったかもしれないけど…。
 ただ、発売日といわれてもピンと来なかった。いや、いつもなら浮かんでいても不思議じゃないけど、今日の僕は昨夜の夢に今朝のアレ。…正直、ゲームどころじゃなかった。
 適当に合せようと答えを探す僕。
 
「う〜ん、アレ、アレアレアレ…何だろ。」
「まだわからないのか?超大作RPGクロノ・リングだ!」
「あぁ、なんか超豪華メンバーで作られたゲームだっけ。そういえば今日発売日だっけ。」
「うんうん!たぶん今日帰った頃には届いていると思うんだぁ。なんか、そう思うと嬉しくて嬉しくて、マジさっさと放課後にならないかなぁ〜!あー、でも部活もあるし。くそぉ、さぼりてぇけど、先輩厳しーし。うがー、この俺の苦しみわかる!?」
 
 …相変わらずのテンションの高さに半ば呆れつつ、でもコイツのこんな所は結構好きだ。やっぱ世の中じめじめって感じよりは、コイツみたいに明るい奴の方が好かれるのは分かる。
 
「あはは、相変わらずだね。でも、それなら僕も買ってるから、うちにも放課後には届いてるかな。」
「あれ?お前買わないとか言ってなかったっけ?」
「うん。でも、この前店のデモムービーみたら格好良くてさ。」
「あー!やっぱり?俺もそうなんだよぉー。はぁ〜マジやりてぇ〜!」
 
 どうでも良いけど、大声で話すのは止めて欲しいと思う僕。コイツって結構モテるのに飾らないから良いんだけど、最後のマジやりてぇ〜だけ聞いたら女子が泣きそう。
 そんなこんなで話しているウチに校門も潜り、いつものように教室に入って授業を受ける。
 
 僕の席は窓側の後ろから2番目で、教室は二階にあることから階下のグラウンドで体育をしている別のクラスのサッカーの試合が見えた。よくよく見れば田中のクラスの奴みたいで、やっぱアイツの動きは別格と思うくらいに目立ってた。…楽しそうだな。
 
「あー、この定理について、車、解いてみなさい。」
「え!?あ…はい。」
 
 唐突に僕が指名された。
 …滅多に指名されたことないのに。

 あまりに突然過ぎて、僕は何の準備もしていなくて焦った。でも、指名されたからには出て行かないわけにも行かないし…まぁ、分からなければ分からないでいっか。そう思った僕は、とりあえず黒板に向かった。
 黒板にはいつもなら頭が痛くなるような数式が並んでいた。でも不思議とすらすら理解できる自分がいた。なんだか分からないけど分かる僕は。公式通りではないけど、たぶん合っていると思う答えを書いてみた。正直自信はないけど、僕の頭がこれしかないと言っている…気がする。
 
「これでいいですか?」
 
 僕の問い掛けに先生は暫く沈黙してメガネ前後に動かしながら眺めていた。
 
「…公式通りではないが…確かに合っている。戻って良い。」
「…はい。」
 
 なんか分からないけれど、難を乗り切ることができた。
 でも、この奇跡はこれだけに留まらなかった。
 
 僕はこの後の英語も国語も科学でも同様に全てを理解出来てしまうことに気がついた。それも当たり前の様に答えが頭に浮かび、本当に自然にその答えが導き出された。
 さすがにこんなことが続くと自分としてもおかしいと感じる。原因は…あの夢がやっぱり関係しているのだろうか?
 
 昼休み、僕は裏庭の植物園に来ていた。この学校には校長の趣味で植物園が有り、ガラス張りの温室の中に南国の木とか様々な植物が植えられている。もっとも夏の今時期は窓を開けて開放されていて、学生達は設置されているベンチで昼食を摂ったりしている。
 僕はというと、いつも植物園の裏手にある大きなメタセコイアの大木の下で食事をするのが日課みたいな感じ。ここは植物園ほど人がこない静かな場所で、昼休みを寝ころんで過すには丁度いい場所だ。ここにいると暑さもなんとなく和らいで感じる。
 
 昼食を食べた僕は、その木の幹を背に座り目をつぶった。
 瞳の奥には昨夜の風景が蘇った。
 
 そう、それはまるで本当にその人がそこにいたと錯覚するほど、あれはリアルだった。
 僕の空想が作り出したにしては、突拍子無さ過ぎて自分でも苦笑しちゃうほど変な夢。…誰かに話したら絶対おかしいって言われるのがオチだよな。
 
 あぁ、眠い。
 なんでこんなに眠いんだろう。

 僕は強い眠気に負けて眠ってしまった。
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【41】Re:感想スレ
 冥香  - 06/8/16(水) 13:57 -
  
▼REDCOW様:
うわッ!びっくりした!(笑)
ええと、コメントありがとうございます!(^^
ではレス返しをさせていただきます。

> えっと、作品の表現がやっぱり上手いです。
> やっぱ文章をやろうと頑張ってきた人と比べると、私の場合は流れ着いてやっちゃってるからやっつけ仕事感覚なんで。(おい)特に三番目の作品の文章表現が凄いなぁって。同じようにやれといわれるとかなり辛いです。w

い、いえ、お恥ずかしいです;
自分はどうしても響きを重視して文を作ってしまうんですが、REDCOW様のようなテンポのいい、全体的なバランスのとれた作品も書けたらなぁ、と思っております。

> ロボはそうですねぇ、400年という歴史を乗り越えたキャラクターなので本当に重みでは違いが有るのですが、彼は再開時に故障しているので400年きっちり生き抜いたわけでも無いんですよね。そこら辺がハッキリしていない辺り、もしかしたら謎が埋まっているんじゃないかなとか思ったりするんですけど。

以前に他の作品にいただいたご感想にも答えましたが、ロボというキャラの抱えているものの「重み」は、他のメンバーの比ではないように思えます。
お恥ずかしい話ですが、彼に関しては自分の器量では書ききれないなぁ、というのが正直な感想ですね(^^;

> カエル関係はCPシーズン1で扱っているので色々と感じてくれた方も多かったりだったんですが、実際にロボも今後扱うんですけど、これはこれで楽しめるネタを用意していたりもします。w

ロボも登場するということは、未来やはたまた原始の時代にも今後スポットが当てられるということでしょうか?
うーん、楽しみです〜(^^

ところで、こちらに書いてしまって恐縮なのですが、REDCOW様の「即興もの」、続きを楽しみにさせていただいております。
いえ、完結していない作品に感想を寄せるって、ちょっと苦手なもので(^^;
CPのほうは興奮のあまりやたら感想書きつけてますが(笑)

ではでは、ご感想ありがとうございました!(^^
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【40】感想スレ
 REDCOW  - 06/8/15(火) 22:56 -
  
 えっと、作品の表現がやっぱり上手いです。
 やっぱ文章をやろうと頑張ってきた人と比べると、私の場合は流れ着いてやっちゃってるからやっつけ仕事感覚なんで。(おい)特に三番目の作品の文章表現が凄いなぁって。同じようにやれといわれるとかなり辛いです。w

 ロボはそうですねぇ、400年という歴史を乗り越えたキャラクターなので本当に重みでは違いが有るのですが、彼は再開時に故障しているので400年きっちり生き抜いたわけでも無いんですよね。そこら辺がハッキリしていない辺り、もしかしたら謎が埋まっているんじゃないかなとか思ったりするんですけど。

 カエル関係はCPシーズン1で扱っているので色々と感じてくれた方も多かったりだったんですが、実際にロボも今後扱うんですけど、これはこれで楽しめるネタを用意していたりもします。w
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【39】兄弟
 REDCOW  - 06/8/15(火) 22:42 -
  
「まぁ!あなたが噂の猊下!きゃー!どうしましょ、あたしの好み〜♪」
 
 僕がカイルのもとに戻ると、そこにはとっても綺麗な女の人がいた。でも、声がどう考えても…男。スタイルも服装もルックスも完璧なのに、あれは絶対男!!
 その女もどき男は僕に駆け寄って力任せに抱きついてきた。
 
「ちょ、ちょっと離してください!僕はそんな趣味ありません!!!」
「まぁ〜、照れちゃって、素直にあたしの美貌に一目惚れって仰いなさい!」
「うわ〜〜!ちょ、ちょっと、顏近づけない!ぎゃー、か、カイル!助けてくれー!!!」
 
 その時僕の体はふわりと浮いた。
 いや、ひょいと持ち上げられたというのが正しい。
 僕の体は誰かの手によって軽々と持ち上げられたかと思うと、すぐ近くにそっと降ろされた。
 
「ダーグ!おまえはもっと静かに出来ないのか。」
 
 僕を軽々と持ち上げた人は、長身のメガネをかけたとってもインテリー!な感じの、いわゆる流行のメガネ君なにーちゃんって感じだった。髪は9:1分けで短く揃えられているサラサラとした濃紺で、見たことの無い毛色なのに違和感が無く自然だった。それより、彼の瞳の色もまた綺麗な青で、神秘的な輝きをたたえていた。
 
「いやん、クウォルツお兄様。あたしが可愛いものに目が無いのは知ってるでしょん♪」
「猊下に向かって何を言っている。」
 
 呆れたふうにクウォルツと呼ばれたメガネにーちゃんは言うと、僕の方を振り向いた。
 
「申し訳ありません。我が弟達の無礼をお許しください。特にそこで寝ているカイル!!!」
 
 クウォルツの声は、一発で長イスでグースカ眠っているカイルを起こした。
 
「あ、兄上!?俺眠ってません!!!」
「…猊下がもう少しでダーグの毒牙に襲われるところだったぞ。」
「え!?あ、ダーグ!!てめぇ、また趣味の悪いことを!!!」
 
 そう言って立ち上がると素早くダーグの胸ぐらを掴みかかる。
 ダーグはというと、そんなことにも動じずマイペースに、

「あら〜、良いじゃないのよぉ〜♪減るもんじゃないんだしぃ〜♪」
「減るもんだ!お前の薄汚い手をシグレに向けるな!!」
「まぁ、つれないわぁ。そう、あたしは悲劇の乙女。こんな哀しい瞬間は…可愛いモノに癒されたいと思う複雑な乙女心を理解出来ない弟を持って、あたしってホントに不幸ね。しくしく。」
 
 一連の男達の行動に半ば引きつつも、僕は彼らが兄弟であるという事実に妙な納得を覚えていた。いや、だって、カイルと良い、ダーグと良い、すげぇマイペースじゃん。それにこんな弟達を持っていても動じないクウォルツさんも相当に…。
 
「あ、あのぉ、皆さんはご兄弟なんですね。」
「そうよぉ!不本意だけどこの馬鹿カイルとクウォルツお兄様とは兄弟なの〜♪」
「お、お前なんかアニキじゃねぇ!!」
「あらぁ、あたしをお姉さまと認めてくれるの!まぁ!嬉しいわぁ〜♪」
「認めない!断じて認めん!!!」
 
 …あぁ、だめだこりゃ。
 僕は二人の掛け合いに付いていけないものを感じながら、まだ新たに現れた兄弟達に挨拶をしていないことに気付いた。ここはやっぱり暫くお世話になるわけだし、しっかりと挨拶をした方が良いだろう。
 
「あの、もうご存じかもしれませんが、しばらくこちらにお世話になります、シグレ・クルマと申します。宜しくお願いします。」
 
 僕の言葉に耳をピクつかせると、すぐにカイルとのじゃれあいをやめてダーグがまず反応した。
 彼は突然キリリとすると、イメージとは裏腹にまともに挨拶をしてくれた。

「私は、ダーグスタ・ブレニム・ドーリア。このアスファーンの第二王太子です。普段はドーリアの領主として働いておりますが、本日は用事できております。我が領地へ立ち寄られました際は是非お呼びください。」
 
 そう言うと片膝を付いて、よくある貴族の礼って奴?あれをしてくれた。実際に目前でやられると、なんか妙に照れ臭い。つか、恥ずかしい。
 
「では、私の番か。私はクウォルツェル・リード・スタインベルト。この二人の兄です。普段はこの国の執務をしています。何かあったら私に仰ってください。猊下。」
「あ、はい。お気遣い有り難うございます。」
 
 しかし、ここはこれで分かったことだけど、真面目に王国ってやつみたいだ。専制君主制って奴?…イマイチよくわからない世界だけど、暫く住むってことは…この人達と上手く付き合っていかなきゃならないんだよな。
 僕がそんなことを考えていることを知ってか知らずか、彼らの長兄であるクウォルツさんはダーグさんの腕を掴むと僕の方を振り向いて言った。
 
「では、猊下。私達は仕事がありますのでこれにて。」
「あ、はい。」
「さぁ、行くぞ、ダーグ!」
「いや〜ん。もぅ〜。」
 
 クウォルツさんはダーグさんを強引に引っ張って書庫を出ていった。いや、実際の見た感じはとっても軽々としているんだけど、ダーグさんの体格を考えると…あれは絶対普通の力加減ではないはず。その証拠にダーグさんは最後まで未練たらたらで、もうホントに渋々といった感じだろうか。
 カイルはそれを見届けると僕の方を振り向いた。
 
「シグレ、本は決めたのか?」
「あ、はい。」
「ははは、そう畏まるなよ。シグレ。」
「え、うん。」
「行くぞ。」
 
 カイルはそう言うと、颯爽と前を進む。
 その姿は本当に堂々としていて、僕とは大違いだと思う。
 
 なんであんなに自信たっぷりなんだろう。
 やっぱり王子様として生まれたからかな。
 
 彼が通るとみんな端に寄って礼をしたり、そうじゃなかったら会釈をしている。宮廷に務めている人ってのもカイルに負けず劣らず品が良いけど、やっぱオーラの差なんだろうか。
 僕がそんなことを考えていると、不意に彼が振り向かずに話しかけてきた。
 
「シグレは、本当に何もわからないのか。」
「え、…うん。この世界のことはわからないよ。」
「…そうか。なら、どこなら分かるんだ? 父上に話した二ホンという国のことか?」
「…そうかもね。」
 
 彼はその後は何も聞かずに歩き続けた。
 そして、僕らは城の三階の西側の部屋の前に来ていた。
 
「シグレ、この部屋がお前の部屋だ。」
「え、僕の部屋。」

 彼は頷くと鍵を開け扉を開いた。
 開かれた扉からは夕日が差し込み、白い壁は黄金に染め上げられていた。その広さは学校の教室の二つ分くらいありそうだった。
 カイルは中に入ると窓を開きテラスに出た。僕もいそいそとそこに続く。
 
「どうだ、綺麗だろ。」
「うん。」
 
 山の上にある城の三階という眺望は本当に息を飲むほど綺麗な景色だった。沈み行く赤方変異した大きな太陽は黄金のオーラで世界を包み込み、街は勿論、全ての野山の緑を金色に輝かせていた。
 都会に暮らしていた僕からすれば、確かにここは異世界であると同時に秘境と言えた。
 
「なぁ、お前の知っている日本という国は、こんな景色が見られるのか?」
「…僕の住んでいる世界は、ここにも負けないくらい沢山の人がいるけど、こんなに綺麗じゃないよ。」
「はは、そうか。なら、アスファーンの勝ちだな。」
「えー、勝ち負けの問題なのー?」
 
 僕の疑問に彼は答えず、静かに室内に戻っていった。
 僕は仕方なく彼の後に付くしかなかった。
 カイルはその後簡単に僕に城の人の呼び方とかを教えてくれた。…こうして接してみると、最初は「俺が絶対」って感じだったけど、案外良い奴なんだなって思った。
 
「さて、明日だが、シグレに会わせたい人がいる。」
「会わせたい人?」
「そうだ。俺の母上だ。」
「あ、お母さんか。うん分かった。」
「じゃあな。」
 
 カイルはそういうとまたまた颯爽とずんずん歩いて出ていった。
 扉が閉まった後、僕は思わず一息溜め息を吐いた。
 
 眠りから覚めたら変な田舎にいて、そこに現れたのは中世貴族のハリウッド張りなにーちゃん。そして、初馬乗り、王様、おかま、紺色髪のおにーさん。…有り得ないよなぁ。普通。

 僕は望んでいたはずの非日常を味わいながら、それを受け入れるなんて気持ちになれず、ただ脱力感にも似た疲労感に襲われてとぼとぼとベッドに足を運んだ。さっき、ホントは食事も誘われていたんだけど、正直食事もする気になれなかった。兎に角疲れたってのが本音だ。
 だが、休もうとベッドを見て僕は棒立ちになった。
 
「………あるんだな。まじで。」
 
 そこに有ったのはお約束とでも言うべきか、天蓋付きの大きなキングサイズの純白のベッドが置かれていた。なんか見ているだけで圧倒されるというか、自分が寝ている姿を想像するとおぞましいものを感じつつ、でも眠ってみたいとも思う好奇心をどう言い表したら良いのだろうか。
 それでも疲れというものは凄いもので、それはもう吸い寄せられるように僕の本能はベッドを欲し、ベッドもまた触れた僕を掴んで離さないような心地よい肌触りを伝えてくる。
 
 僕は程なくしてベッドの誘惑に落ちた。
 
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【38】感想用スレw
 REDCOW  - 06/8/15(火) 18:17 -
  
何か感想ございましたら、宜しくお願いします。たまに独り言も書くかもしれません。w

えっと、この物語について簡単に説明します。

この物語は即興で作った完全オリジナルストーリーです。

「え?ここってアンソロしかだめなんじゃないの!?!」
 って思っていたそこのあなた!オリジナルもオッケーなのです!

 SIDE-Aでは語られない側面の物語で原作オリジナルの小説化は扱わないという方針でやってます。だから、未発表の独自作品の公開までは制限しておりません。というわけで、こちらにそういった作品も投稿頂けます。ただ、内容が「タイムトラベル」的内容を含む必要があるというだけです。

 SIDE-Aではタイムトラベル小説のライブラリーにしていこうとも思っておりますので、クロノシリーズアンソロは勿論、時間と関係した作品を楽しく読める場になっていけば良いかなと考えておりますので、是非皆様の作品をご投稿頂ければと思います。

 同人作家さんには書籍の販売情報ページへのリンクとか、そういう販売関連情報も網羅していけたらと将来的には考えています。

 この作品についてですが、世間一般的な女性向け小説的な雰囲気<?>を持ちつつ、男でも見られるラインを目指して書いている即興で創っているものです。殆ど考え無しでインスピレーションでやっておりますが、こういう作品も作れるんだという例として見ていただけたらと思いますし、これはこれで応援や感想とか頂けたら嬉しいです。(^^)
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【37】書庫
 REDCOW  - 06/8/15(火) 3:24 -
  
 僕は賢者になった。
 …いや、マジ唐突に。
 
 RPGとかでよくある回復も攻撃も抜群のアレ?いや、その前に魔法使えるのかな。
 カイルのお父上である国王様のお許しも有り、僕はとりあえず帰る方法が見つかるまではこの城で暮らせることが確定した。ここは素直に彼に感謝した方が良いんだろう。
 
「有り難う。カイル。」
「なんだ?唐突に。」
「いや、色々と助けてもらったし。」
 
 彼は僕の感謝の言葉に、先程と同様に笑顔で答えてくれた。
 
「ハハハ、そうか。困った時はお互い様だろ。それよりシグレ、お前賢者だったのか。」
「いや、僕にはさっぱり。この目は生まれつきだけど、別に賢いわけじゃないけど…」
「だよなぁ。どう見ても賢そうって顏じゃないもんな。」
「ぇえ!?普通そこ嘘でも良いから頭良さげとかいわない!?」
「へ、間抜けヅラを間抜けと言わん奴はいないな。」
「ブー!ブー!」
 
 僕の抗議のブーイングをよそに、彼は黙々と歩き続けた。
 僕らが向かっているのは書庫。何故書庫に向かっているかというと、単純に僕が見たかったから。
 まだ帰り方が分からないことは勿論、この世界のこともよくわからない。RPGの基本は情報収集っていうでしょ?で、情報の集まる場所は大抵図書館って決まってるじゃん。だから僕は王様とカイルに書庫への入室許可を貰ったんだ。
 王様は僕を賢者と思い込んでいるから、さっそく賢者らしい要求にすぐにOKを出してくれた。で、今カイルの案内で書庫に向かっている。
 
 しかし、この城は広い。今は一階の通路を歩いているんだけど、通路からは中庭にも出ることが出来て、中には沢山の木々と花が綺麗に手入れをされて植えられていた。
 全体をみれば西洋のお城の庭って感じがあるけど、庭の雰囲気だけを見る限りは日本庭園にも通じるものを感じる。そういえば今頃気付いたんだけど、カイルの腰に下げている剣もソードというよりは刀に思える。
 ここはよくよく観察していると、どうやら西洋と東洋の文化が折衷された様な場所に思えた。
 
 書庫は地下にある。
 地下というとこんな古い城だと湿気が凄そうな感じがするけど、ここの空調技術は進んでいるのか湿気を感じることは無かった。それより外の空気より少しひんやりとした風が吹きと通る静寂の空間という感じだ。
 
「ここが書庫だ。」
 
 扉を開いた向こうには意外なほど明るい空間があった。
 地下といってもここは山の上の城。構造的に地下となっているだけで、天井付近に窓があり、そこから斜めにまるで後光が射す様に床に光を落とし、その光は良く磨かれた大理石の反射と天井に張り詰められた鏡によって室内全体に光を行き渡らせていた。
 
「凄い。」
「おいおい、書庫に感激してどうする。本を見ろよ。」
「あ、うん。」
「読みたい本があったら持ってこい。あとは部屋で見れば良いからな。」
「うん。分かった。」
「じゃ、俺はそこで寝てるから、決まったら起こせよ。」
 
 そう言うとカイルは近くの長イスにどんと腰を据えたかと思うと、横になって足を伸ばして寝てしまった。しかも、ドラ○もんののび○もビックリな程の瞬間的な寝入り具合。有り得ねぇ。
 
 僕はとりあえず書庫を巡ることにした。
 不思議なことに、ここの書庫の言葉は何故か分かった。色々な本があるけど、手にとってみるとこの国の記録であったり、作家の詩集であったり様々なものがあった。でも、それらはそんなに面白そうなことは書いてないし、特に別段変わったことがかいてあるわけではなかった。
 よくよく棚を見ていると、一応コーナー分けされているらしい。
 僕が今見ている所は天候の記述で、歴史は向こう隣にあった。
 
 試しにアスファーン史の本を僕は開いてみた。
 
「漆黒の瞳持つ賢者様は言葉を託された。
 いずれ来る我を継ぎし者、世界を導く光となりて道を示さん。
 漆黒の瞳持つ者、邪悪なるものを沈め、世に光溢れる道を示さん。漆黒の瞳持つ者、英知を運び、風を踊らせ、天高く舞い上がり、世を幸福に導く。やがて世界は大いなる災厄から救われ、共に歩み始める。」
 
 先程のカイルの言葉の本文だろう。なんか本当にRPGチックな文だ。でも、これがここの歴史書の1ページ目に出ているってことは、相当重要なことなんだろう。僕は次のページを開いた。
 
「12神の怒り。
 古の12の神は遥か4万の日月の先に世界の時を止めた。世界は時の止まりと共に崩壊し、我ら人間の傲慢を厳しく罰した。
 時流れ人の世が再び時を刻み始めた頃、眠りを迎えていた神は再び目覚める。だが、人の子は黒き瞳の賢人を生む。漆黒の瞳の賢者は、世界を再び破壊せんとする神を罰し、固くその力を封印する。
 かくして世界は再び安定を迎え、平穏なる世界を築き始める。
 
 創世記」
 
 創世記…?
 この世界は賢者によって作られた世界…?
 
 それよりもっと気になることは、この本の破壊された世界として出ている絵の地図だった。
 僕は息を飲んだ。そこに描かれた図柄は、間違いなく僕の住んでいた世界の地図だった。
 
 どういうことだ?
 この世界は僕の世界の未来?
 
 いや、その前に12神ってなんなんだ???
 そいつが世界を破壊して、でも、賢者はそいつを封印して………あぁ、わかんないよ。
 
 僕はよく分からない不安を感じつつ、幾つかの本を取ってカイルを起こしに向かった。
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【36】アスファーン
 REDCOW  - 06/8/15(火) 0:09 -
  
 カイルは近くの街道に馬を待たせていた。
 僕は彼の後を仕方なく付いてゆくことにしたけど…
 
「さぁ、乗れ」
「え?」
「なんだ、馬にも乗ったことがないのか。よし、まず乗せてやる。」
 
 彼はそう言うと僕を先に馬に跨がせた。丁寧にまず左足から鐙(あぶみ)に足を掛けて、勢いをつけて弾むように鞍の上に跨がるように教えてくれた。彼は初めてにしては上手いと褒めてくれた。…ちょっと自慢できる?
 その後はカイルも後ろにまたがり、僕の後ろから手綱を引くと、馬をゆっくり歩かせ始めた。
 馬の上から見る景色は面白い。
 僕の背の高さより高いってのもあるけど、長い首がフラフラと揺れ動いて、まるで喜多方ラーメン屋とかに置いてある福島の民芸品の赤べこの首が動いている様な感じ。そう思うと、あぁ、昔の人って凄いんだなぁとか今更意味不明な感心をしてみたり。
 
 何より気持ちいい。
 心地よい爽やかな涼風が吹きつけ髪をなでる。
 
「しっかり掴まってろよ!」
「え”!?」
 
 カイルは唐突にそう言うと、手綱をしっかりもって足で馬の腹を叩いた。
 
「うあ、おぉぉおぉぉおぉおおおおおおお!?!な、な、は速いってぇ!!!」
「はっはっはっはっはっは!」
 
 僕が動揺しているのを楽しむかのように、奴は笑いながら街道を道なりに走らせていった。
 
 
-----------------
 

「うぅ、マジかよぉ。」
「おい、見えてきたぞ。」
「え、あ!街だ…っつか、街!?!」
「あれが、アスファーンだ。」
「…アスファーン。」
 
 前方に見えてきた街は四方を城壁で囲んだ城塞で、周囲は緑豊かな山で囲まれていた。
 城は奥に有り、その下が城下町って感じだろうか?…でっかい門があって、その前には堀まである典型的なお城って奴?
 
「あ、あの、カイル、ここが君の家?」
「はっはっは、あの奥に見えるだろう?あの城が俺の住む城だ。アスファーンは緑豊かな国だ。こんなに豊かな国は他に無いぞ。きっとお前も気に入る。」
 
 彼はそう言うと微笑みを浮かべて馬の足を再び速めた。でも、どうやら彼には気付かれているらしい。僕のお尻がちょっちやばい状況なのを察してくれたのは…よしとしよう。
 
 近づいてみるとめちゃくちゃデカイ街だった。
 門は平時は開かれている様で、行商人とかが自由に行き来できるっぽい。一応検問はあるみたいだけど、カイルは王子様だからか顏パスOKだった。
 街の中に入ると沢山の商店が並び、多くの家がひしめいていた。そして、何かを焼く匂いや油臭い匂いとか色々な生活臭って言うんだろうか?…独特の匂いを感じて日本とは違うんだと改めて思った。
 特に…ここは産業革命前って感じだろうか。電線も無ければ自動車も無い。交通手段は馬や馬車や荷車。人々は歩き、自転車さえも無い始末。どうやら本当に中世って感じ。
 でも、カイルが言う通り、街は豊かそうで人々の活気で溢れていた。確かに悪い感じはしない。でも、そんなことを考えているうちにどんどん街も通り過ぎ、城の門前に着いた。
 
「カーライルだ!開門!」
 
 彼がそう言うと、ごとごとと門が開かれた。
 彼は完全に開かれたのを確認すると、馬をゆっくり進めて門をくぐった。そして、潜り終えると手綱を引いて馬を止めた。
 
「降りるぞ。」
「あ、はい。」
 
 そう言うと颯爽と格好良く彼は馬の背から下り立った。
 僕はおっかなびっくりそぉっと静かに降りるので精一杯なのに。
 そこに兵士らしき人が近寄ってきてカイルに尋ねた。
 
「殿下、こちらの方は?」
「俺の友人だ。」
「おぉ、ご友人の方ですか。」
「あぁ。馬を頼む。」
「は!」
 
 兵士はカイルの命令に敬礼して従うと、すぐに馬を引いて厩舎の方へ連れていった。
 カイルが僕の方を振り向く。
 
「…ふむ、付いてこい。」
「あ、はい。」
 
 僕は彼の後を付いて歩いた。
 さすがに長身なだけに歩幅が長い。あっという間にさっさと歩いていってしまうので、半ば小走りに僕は彼を見失わないようにぴったりと張り付くというと変だけど、置いて行かれないよう歩いた。
 城内へは裏口から入った。裏口は城の側面の台所にあり、たぶん食材とかを倉庫から取寄せたりするために使っていると思われた。
 中ではフランスのシェフみたいなコック帽をかぶったおっさんと、それに従う若い衆って感じの人達がいて、カイルが入っても気にせずに気楽に挨拶をかけて仕事に専念している感じだった。まぁ、この城の働く人全ての胃袋を考えると…確かに構ってられないよな。
 
 カイルが歩くとどんな人も道を開ける。
 さっすが王子様。やっぱ「俺が決めるオーラ」は伊達じゃない。
 でも、その後に僕に対する不可解そうな視線がちょっと痛いかも。…まぁ、仕方ないけどさ。
 
 カイルは何処にも立ち寄ることなく一つの部屋の前で止まった。そこには爺やっぽい人が前に立っていて「お待ちください」と威厳たっぷりに言っていたんだけど、そんなことお構いなしに彼は扉を開いた。
 その扉の向うには大きな広間が広がり、その奥にRPGとかでもお馴染の玉座に座る人の姿があった。そう、ここは王の謁見の間。ただ、何やら準備中だったらしく化粧直し中の様だった。
 それでもお構いなくという風に、カイルはつかつかと僕をつれて彼の父の前に立った。
 
「おい、カイル!入る時は事前に爺を通せと言っておろうに。人がこんな無様な格好の時に。」
「父上、お話があります。」
「なんだ?」
「この少年を住まわせたいのです。」
「住まわせたい少年?」

 国王は僕の方を見ると、とても驚いたような顔をした。
 
「黒い瞳…伝説に聴く導く者の目。君は何者だい?」
「え、僕はシグレ・クルマ。日本という国から来た高校1年生のごく普通の少年というか…」
「二ホン?コウコウイチネンセイ?…わからぬ。だが、その漆黒の瞳はとても高名なる賢者の証。おぉ、我が国を神はお導きくださるというのか。」
「父上?」
「伝説に伝え聞く漆黒の賢者の話は知っておろう?」
「はい。書物によれば、漆黒の瞳持つ者、邪悪なるものを沈め、世に光溢れる道を示さん。漆黒の瞳持つ者、英知を運び、風を踊らせ、天高く舞い上がり、世を幸福に導く。」
 
 二人の話はさっぱり理解不能だったが、彼らにとって僕は特別な何からしい。
 僕の目を見てからの国王の反応はとても丁寧で、なんか僕が王様にでもなったような程の丁重な扱いになった。
 
「では、シグレ殿。我が城を我が家と思いごゆるりとお寛ぎください。このアスファーン王、ガメイレフ・ストラ・アスファーンがあなたの身の安全と衣食住を保障致します。」
「あ、は、はい。宜しくお願いします。」
 
 何だかよく分からないけど、僕は唐突に賢者になってしまった。
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【35】目覚め
 REDCOW  - 06/8/14(月) 22:57 -
  
 う〜ん、寒い。
 寒過ぎる。布団…布団………あれ?
 
「…え。」
 
 僕は目が覚めた。そして、目を疑った。
 慌てて目を擦って辺りを見回す。でも、見間違いではなかった。
 そう、僕は知らない所にいた。
 
 一面に茂る草原。
 青い空と白い雲。
 建物なんて無く、見えるのは自然の山や緑だけ。

 僕は立ち上がった。
 服は昨日着ていた服のままだった。
 あの時、僕は着替えることなく眠ってしまったっけ。

 でも、なんだこれ。何がどうなってるんだ?
 …そうだ、これは夢か!
 
「痛っ…いてぇ、スゲーリアルな夢。」
 
 頬をつねってみたが、そこにはとてもリアルな痛みがあった。
 おい、マジ。これ、本で見たことあるよ。
 テレビでも聴いたことあるけど、いわゆる夢の中で夢と自覚しながら好き放題やれるっていう、あの明晰夢ってやつ???………なら、思った通りになるんだよな!?よーし、
 
「出でよ!シェンロン!」
 
 僕の思いとは裏腹に、世界は虚しく僕の声を響き渡らせた。
 
「あは、あははははは…………、言葉が不味いのかな。ここはやっぱナ○ック語じゃなきゃ、いや、その前にドラ○ンボールないし、つかドラ○ンボールじゃないし。いやいや待てよ、このネタがダメなのか。」
 
 僕が独り言をいっていると、突然後方から声がした。
 
「おい、お前!そこで何をしている。」
 
 僕は思わず振り向いた。
 その声の主は、中世ヨーロッパの騎士って感じだろうか。歳は…僕より年上だと思うけど若い。つか、長身で金髪碧眼のハリウッド俳優っぽい美青年って奴?…すげーって思うけど、なんか癪に障る感じ?あと、とんでもないコスプレだけど、似合っているのが少しウケる。
 
「あ、あの、あなたは?」
「俺の質問に答えるのが先だ。」
 
 その男の声はとても威厳があって、なんか従わなくてはならないオーラがあった。
 
「え、あ、僕は眠っていたらここにいて、あの、何処にいるのか…さっぱり。」
「なんだ、記憶喪失か。その服装、見たことないな。流れ者か。」
「いや、記憶喪失ではなくて、あの、見たことない場所で、ほんとここ日本ですか?」
「二ホン?なんだそれは。ここはアスファーン王国だ。第一そんなふざけたほど短い名の国は聴いたことが無い。やっぱり流れ者で記憶喪失な様だな。」
 
 ふざけたほどってのはあんたのそのコスプレだろ!それに、そんな王国の方があるわけないじゃん!ここはどう見たって地球だろ!コスプレは世界に広がるってニュース見たけど、冗談キツイよ。
 僕は内心そんなことを思いつつ、そこは言葉に出さずに男の詳細を探ることにした。
 だって、もし本当なら…、僕は…、
 
「あ、あの、それであなたは?」
「俺か、流れ者なら仕方ない。俺はカーライル・シュテファン・バルムドゥール。アスファーンの第三王太子だ。」
「かーらいる・しゅとはん…ば、ばるむんく???」
「シュテファン・バルムドゥールだ!!」
「あ、はい、すみません。バルムドゥールさん。」
 
 突然教えられた名前が西洋貴族のような長たらしい名前。わかるわけないじゃん。あんなの一発で。僕は世界史でこのヨーロッパ貴族の名前を覚えるのが一番苦手だった。だって、カルヴァンだのカルビンだのって古典の活用形みたいに呼び方変わるしさ。
 だけど、カーライルは僕が記憶喪失の流れ者と納得すると、何故か突然優しい口調になった。
 彼は彼なりに心配してくれているらしい。
 
「お前の名は?覚えているか?」
「あ、僕の名前は車時雨。」
「クルマ・シグレ?聴いたことの無い響きだ。…ふむ。ならば、お前の名は、クルマと呼べばいいんだな?」
「え!?あ、違います、逆逆!あー、すみません、こっち風に言うならシグレ・クルマですね。シグレって呼んでください。」
「なんだ、違うのか。分かったシグレ。俺はカイルと呼ばれている。しかし、そうか。記憶喪失とは不憫よの。よし、俺の家に来い。記憶を取り戻す間、わが家に住むが良い。きっと父上も快く迎えてくれるだろう。」
 
 おいおい、どうしてそうなるんだよ。
 なんでそんな勝手に「俺の決定は絶対だ!」オーラ出しながら言うんだよ。
 僕は慌ててその申し出を断ろうとした。
 
「え、あの、僕は別に、そんな気は、」
「なに、気にすることは無い。部屋は空いている。その代わり、一つ条件がある。」
「え、あの、条件って、その、まだ答え決めてないのに…」
「条件は…俺と友達になる。それだけだ。」
「…あ、はい!僕で良ければ!!!…って、え?何で勝手にそうなっちゃうわけ!?」
「さぁ、帰るぜ!シグレ。」
 
 僕は彼に言われるがまま、ただなんとなく付いていってしまった。
 いや、内心それを望んでいなかったわけじゃない。
 今起きていること、そしてそこに現れた想像もつかない世界の住人。
 
 僕は何が何だかわからないけど、今はとりあえず彼に従っておくことにした。
 …別に悪そうな人にも見えないし。
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【34】序章
 REDCOW  - 06/8/14(月) 21:56 -
  
 僕は車 時雨(くるま しぐれ)15歳。
 どこにでもいるごく普通の高校生。
 
 成績も良くないし、運動神経だって抜群じゃない。部活もしたいって気がしないし、恋愛って感じでもないし、ルックスは自分で言うのもなんだけど中くらい?…そんな平凡な何処にでもいるような奴だと思う。
 別に人は嫌いじゃない。それどころか人並み(?)にお人よしで、たまに貧乏くじを引いている気もしなくないけど、頼まれたら最後までやるってのは礼儀だし。
 
 好きなことは漫画を見たり、本を読んだり、音楽聴いたり、たまに友達と遊んだり、あとは意味も無くぶらぶらして…。
 
 別に何も期待なんてしていない。
 
 突然分からない世界に旅立って、僕にしか出来ないことをやり遂げる…そんなのは夢であって、ホントに起きたらとんでもない。
 でも、そんな非日常を望んでいる自分もいる。
 
 両親は僕が2歳の頃に離婚していて、父親と暮らした記憶は僅かしかない。別に父親がいなかったからと、僕は不自由も無ければ恋しいとも思ったことは無い。実際に会ったことあるけど、別に彼も僕を必要としているわけでも無いし。
 母さんは女手一つといっても、温かく僕を育ててくれた。何も不満なんてない。
 
 見上げれば青い空があって、この空はいつも同じ空じゃないのに、僕の見ているこの道はずっと変わることが無いんだろうな。家の近くにある公園の遠くまで続く防風林の向こうには、ただの出口があって道路には車が走っている。遊歩道には人がつかつか忙しそうにあるいていたり、小さな子どもが自転車をキコキコとこいでいたり…変わらない日常がそこにある。
 
 学校の放課後はいつもこの公園を通る。
 公園は元々は用水路だったんだ。でも、土地開発やら危険防止やらで埋められていって、今では郊外に出て行かないと水路は見れない。それはつい2年前の出来事なんだけど、今では当たり前になっている。
 
 用水路ではお盆になると、毎年町内会で鐘楼流しをやっていたけど、もうそんな姿はここには無い。ただひたすら長い公園の遊歩道が続き、それには青い空と白い雲が流れていくだけだった。
 
 この空は何処へ続いているのだろう。
 この雲は何処へ行ってしまうのだろう。
 
 ゆっくりと、でも着実に、あの雲は東の空へ消えていくのだと思う。
 東の空の向うには隣町があり、その隣町を越えて海があり、太平洋を越えてアメリカまで行っちゃうのかもしれない。
 
 いいよな。雲って。


 -----------


「おかわり。」
「あら、あんたは昔から美味しいものとなると食が太いわね。」
「食べちゃ悪いの?」
「…かわいくないわねぇ〜。自分で盛りなさい。」
「へ〜い。」

 母さんは6時には帰宅して、しっかりと飯を作ってくれる。
 母さん曰く「鍵っ子にしても、ご飯だけは譲れない。」だそうだ。ま、そのおかげで、確かに毎日温かい飯にありつける。何処の家にもある風景なんだろうけど、こういうのって危ういのかもな。

 ずっと無理をしている。
 恋愛している風でも無いし、僕の大学進学の資金を稼ぐって頑張ってる。
 別に僕は大学に行きたいって言ったことは無い。正直自分が何をしたいのか、何に向いているのかなんてのもわからない。なんとなく、漠然と生きちゃっているって気がする。でも、母さんは今どき大学に行かなくて一人でしっかり生きていくなんて出来ないわだって。…そう言われても、実感ないよ。
 だって、母さんも大学行ってないけど、僕のことしっかり育ててるじゃん。勿論、苦労は多いと思う。大変なのには違いない。でも、生きていけるじゃん…。

 ご飯を食べた後、僕は部屋に入った。
 30年ローンで買った3000万弱の3LDKのマンション。
 母さんは昔語学留学して英語を覚えていた関係もあって、貿易会社で事務員として働いている。普通一般のおばちゃんの給料よりは良いそうだけど、このマンションを買ってからは自分でも独自に仕入れをしてネットを利用して商売しているらしい。
 元々商売はしたかったって言っていたけど、明らかに無理をしている。帰宅してから飯を作って、食べ終えてからは自室にこもって商売。それでも売れているから良いけど、これで売れなかったらローンどうしたんだろう。
 
 炊事以外は僕の仕事。
 掃除や洗濯とかはさすがに面倒掛けられないし、その前にやれって命令されてるし。(汗)
 
 何もすることがないから、僕はベッドに寝ころんだ。
 ベッド横の窓からまばらに見える星と、街の明かりが輝く。
 静かな家。
 遠くを走る車の音。
 
 変わらない。
 何も変わらない僕の日常。
 
 僕はいつの間にか眠っていた。
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【32】Re:大地の命
 シルヴィア E-MAIL  - 06/7/26(水) 20:18 -
  
冥香様!感想ありがとうございます!
すごく嬉しかったですww

実は自分、小説を書くのは好きなんですよw
自分の世界を持つというのはいいことですよねぇ。
どういうわけだか、ノートに書くのは進まないのですがパソコンだと進みますよね!
実は5年生のころにノートにトリガーの続編を書いていたのですが、途中のまま「行方不明」(笑

エイラちゃんは「強く」同時に「優しい」という素晴らしい人だけども、それが災いすることもあるだろうな・・と思って書いてみました。
「争うのはイヤ。だけれど殺らなきゃ殺られる。」
悲しい運命ですよね・・。
エイラちゃんにとって、辛いことと思います。
だから、アザーラたちは許せない敵だったのだと。
けれど、あのアザーラ戦の時、いさぎよく負けを認めたアザーラを見て、酋長という立場からみて「恐竜人の誇り」に心が揺れ、アザーラを助けようとしたのだと思います。
エイラちゃんは優しいですから・・・。


あ〜なんか、シリアスですねぇ!!
たまにはいいですよねぇ。こういうのも。
ぜひまた書かせてください!そして感想お願いします(笑

冥香様のアザーラサイド。ぜひ読みたいです!書いてくださいww

それでは!お付き合いどうもありがとうございます☆
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【31】Re:大地の命
 冥香  - 06/7/25(火) 16:07 -
  
おおー!!いらっしゃい、シルヴィア様!
ついに小説デビューですね!(^^

エイラの美しさと毅さが、上手に表現されていると思います。
彼女はとても強いひとですが、それと同じくらい優しいひとです。
「大地の掟」を絶対とする彼女も、争わずにすむのなら恐竜人たちと争い、殺し合うことなどしたくないと思ったのではないでしょうか。

「倒すなら、エイラを倒せ」

彼女らしい言葉ですね。
優しさ、毅さ、どちらが欠けても言える言葉ではありません。

ではでは、レス失礼致しました!
ぜひまた書いて読ませておくれ(笑)
今度、冥香がこれの「アザーラサイド」を書いてみようかな。ふむふむ。
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【30】大地の命
 シルヴィア E-MAIL  - 06/7/23(日) 15:54 -
  
その「炎」は力強く燃えていた。
暗闇をそっと照らし、消えることなく、
まるで誰かに守られているかのようにー。

原始。
立派にそびえる山、大陸を囲む壮大な海。真っ紅に染まるマグマの海。
緑は豊かで実にのどかな風景だ。
そこに“彼女”は居た。酋長として。

「エイラ!元気の水、いっぱい取れたぞ!」
ある原人の女が興奮気味に言った。
「元気の水、恵み。大地の!エイラも大地の恵みだ!お前も、お前も。みーんな、大地の恵みだ!」
彼女こと、エイラは太陽に両手を翳して言った。
そう。彼女は大地の恵みだ。
とても強く、とても心が純粋で、奇跡のように美しい。
彼女はまさしく恵みなのだ。
艶やかな髪は綺麗なブロンド。
しっかりとした輪郭に、形のよい顔立ち。
すらりとした身体(からだ)は素晴らしいと言える。
現世にだって、めったにいない。

「エイラ!!恐竜人が村を襲ってきたぞ!!」
「炎」が静かに揺らいだ。
村の男たちが斧やらこん棒やらを持ってエイラの所へ走ってきたのだ。
「恐竜人?!また来たのか・・!今、エイラ行く!」
恐竜人が村を襲いに来たようだった。
またいっぱい、殺される。
エイラは思った。
アザーラ、許さない!
皆、この大地の恵み!この大地の命!なのに、なぜ殺す?

村の広場に着いた。そこには既に子供やお年寄りの死体があった。
「炎」は強く揺らいだ。エイラは怒った。
「恐竜人!エイラ、来た!エイラ、相手だ!」
「ギェェッ!!」
恐竜人たちはエイラに飛び掛った。が、エイラはそれを振り払い、いっきに倒していった。
逃げていく恐竜人もいたが、エイラは許さなかった。
「お前ら、なぜ殺す?!皆、大地の命だ!!」
叫ぶように言いながらエイラは戦い続けた。
恐竜人の血が辺りに飛び散る。もはや恐竜人にはなすすべがない。
そして、最後の1匹を殺した。

「・・・アザーラーッッ!!!」

エイラは叫んだ。
悔しかった。いくら生きるための戦いだといっても、小さな子供やお年寄りを狙うことが。
倒すなら、エイラを倒せ。
エイラを 倒さないでなぜ子供倒す?
まだ なにもできないんだぞ!

その戦いで、子供やお年寄りが、死んだー。


「炎」は揺らぐのをやめ、また静かに燃え始めた。
恐竜人への戦いに勝ち、生き残るためにー。


*************

あとがきみたいなモノ

初の小説投稿!
やっぱりエイラちゃんをメインにシリアス線で書いてみました。
が、
意味不明ですね;
まとまりが無さすぎなのでしょうか?
う〜む。次はもっと内容を軽くします!
さすがにもっとシリアスだと恥ずかしいんで;;

それでは!失礼しました!
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【29】短文No,3
 冥香  - 06/6/20(火) 9:03 -
  
 瞳の美しさを宝石に喩えた詩(うた)は、いったい何千篇あるだろうか。
 この眸(ひとみ)の美しさは、それに当てはまらない。と、彼女は感じた。

 それは、強いて喩えるならば金属のようだ。

 宝石が、たとえどれほど深い色合いのものであっても己の奥底まで透かし見ることを赦すのに対し、金属は決してそれを赦さない。

 彼の眸は、紅い鋼のようだ。

 縦に裂けた瞳孔はあまりにも細く、何人にもその奥を覗くことを赦さない。
 人のものとは異なる眸は、否定できぬ恐怖と、そして悲しみを、持ち主の意志とは無関係に見る者に強いる。

 耐えかねたように眼を逸らしたのは、彼自身のほう。
 あらぬほうを見やる紅い眸が、気まずげに、悲しげにさまようのを彼女は見たが、それさえも、すぐに瞼の下へと消えてしまう。

 ああ、やっぱり。

 確信が、彼女の心を冷やす。
 彼は、自分の眸は「見る者に恐怖の念を植え付けるためのもの」だと、そう思い込んでいる。
 それもまた事実。
 彼自身が望んで、手に入れたはずのもの。

 すべてを圧し拉ぎ、ひれ伏させる「力」の、象徴ともいえるそれ。

 かつて、煮えたぎるさまざまな負の感情を湛えた眼を、真っ直ぐに、彼女に……彼女たちに、彼は向けてきた。
 それは「威嚇する」というほど、あからさまなものではなかったけれど……、
 だが、自分の眼の持つ力を、都合のよいものであると思ってはいただろう。

 ここに至って、おそらく初めて彼は己の眼光を疎ましいと思い……、
 だが、それを抑えることはできず、せめて彼女から顔を背け、瞼を下ろすしかなかった。
 己の眼が、彼女を傷つけてしまうことを恐れて。

 「……弱虫」

 囁かれた言葉に、彼は思わず眼を戻す。嵌められた、と思う間もなく両手で頬を挟まれる。

 この世のあらゆる穢れを映してきた、己の眸の紅と対を成すような、一点の曇りもない、彼女の瞳の蒼。

 見てはいけない。覗いてはいけない。……穢してはいけない。

 だが、

 「ちゃんと見て」

 咎めるような、愛しむような彼女の声は、否やを赦さない。

 「ちゃんと見て。わたしはあんたの眼を、怖いなんて思わないから。……だから」

 戦きを滲ませた彼に、痛みに耐えるかのような笑みを彼女は向けた。

 「……だから、あんたも怖がらないで」


。。。。。
三本目でございます。
「短文」というにはギリギリの長さかもしれませんね。
相も変わらず「冥香設定」の「彼」と「彼女」でした。
もう説明いらないですよね?(笑)
では。
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【28】短文No,2
 冥香  - 06/5/26(金) 12:14 -
  
 それが初めに聴いたのは声。

 うっかり傷つけて、失くしてしまうことのないよう、厳重に封印したはずの記憶を呼び覚ます、懐かしい声。

 時が……、至った?

 百年も昔に動くことをやめてしまった大きな身体を、声の主たちは苦労しながら運ぼうとしているらしい。

 目を……、開かなくては。

 自分が「開く」形状の眼を持たぬことを、それは知っていたが、そんなことは関係なかった。

 それ……いや、「彼」は、目を開いた。

 泣き笑いの顔でこちらを見ているのは、遥かな記憶と寸分違わぬ姿のままの少女。

 「お疲れさま。……遅くなって、ごめんね。……ロボ」

 震える言葉を紡ぎながら、彼女は血の通ったものにするように、彼の鋼の手を擦った。


。。。。。。
こんにちは。二本目の枝を挿しにまいりました。
自分のなかで、ロボは魔王様に次ぐ印象的なエピソードの多いキャラとなっております。
彼のお話もいっぱい書いていけたらいいなと思っておりますが、
……彼の背景にあるものの「重さ」は、魔王様のそれに匹敵するのも事実でして、それをかたちにするのは、なかなかたいへんであります;;
では、これにて。
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【27】短文No,1
 冥香  - 06/5/22(月) 16:16 -
  
 変わってゆくことに、恐怖は伴わない。

 終ることがないとさえ思われた苦しみから解放されることへの、安堵……あるいは、彼にそう思い込ませるために巧みに仕組まれた何かが、男を捕らえる。

 抵抗らしい抵抗もなしに人であることを棄てた彼はしかし、決して棄て去ることの赦されぬ記憶を、異形となり果てた我が身に刻もうと、牙口を喘がせた。

 「……セ、……セル、ジュ……」

 牙口から零れたとき、言葉は憎しみの破片となって、闇に溶けた。

 男はその言葉を、愛を込めて放ったはずだったのに。


。。。。
いつまでも「棒」では寂しいので、まずは一枝挿してみました(笑)

お絵描き板のほうで描かせていただいたヤマネコの絵に付けた、即興SSの直しです。

……と、こんな感じで、少しづつ少しづつ増やしていきたいと思います。
よろしく。
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【26】SSSの樹
 冥香  - 06/5/21(日) 16:05 -
  
こんにちは、冥香でございます。

こちらのスレッドには「SSと呼べないほど短い作品」を挿していこうかと考えております。

壮大なお話にはならないけれど、見てみたい、読んでみたい、そして書いてみたいエピソードが、クロノシリーズのなかにはたくさんあるように思います。

そういったものを書き散らしてゆくと収集がつかなくなりそうなので、ここにまとめて収納してしまおうという魂胆であります(笑)

「SSSの樹」……タイトルは「樹」ですが、今のところ、まだただの「棒」です。
立派な「樹」になるように、がんばって「枝葉」を茂らせていきたいと思います。
スレ主以外の方の作品も大歓迎です!どんどん挿して下さい!
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【25】Re:感想〜
 冥香  - 06/5/10(水) 15:46 -
  
▼REDCOW様:
うわわっ!!?
管理人様、ご感想どうもありがとうございます!
すみません!このところお絵描き板のほうにばかり入り浸っておりまして、こちらの書き込みに気づくのが遅れてしまいました!
ええと、ではレス返しをさせていただきます!

> やっぱ付け焼き刃の私よりしっかりした文章で楽しかったです。

いえ!自分はまだまだ「付け焼き刃」です!
特に「ノートにペンで書く」のと、「Web上に書き込む」のとは、こんなにも違うものかと戸惑っています。(ネット暦、かなり浅いです)
管理人様をはじめ皆さんの作品を読んで、勉強させていただいている最中です。はぁ〜。

> 決戦前夜に「彼」が悩んだのだろうかどうかでは、物語内部での母親の扱い方は人ではないって感覚で割り切っている感がありましたが、普通の人の感覚で判断するならば親を自分の手で殺害するというのは葛藤があって然るべきですもんね。(^^;

……これは、話を練っているときも実際に書き始めてからも、自分には荷の重いテーマでした。
ロボでも同じような話を考えていたのですが、あまりの重さに頓挫してしまったくらい……。こちらの作品は、魔王様に対する「愛」の強さ故に書き上げましたが(笑)

> ただ、その縛りが消えた時…彼は自分の人生に満足するかといえば、たぶん沢山の不満が残るのかもしれないと思います。それを受け入れてくれるかどうか、が、今回の話のポイントの一つだったのかもしれませんね。しかし、彼が望む相手は彼女じゃないのかもしれないですが。でも、その望む相手は彼を望みはしないでしょうね。

このご意見は、自分にとってはとてつもなくショッキングであり、また興味深いものでした。
「魔王がサラを望むほどには、サラは魔王を望まないだろう」(という意味であってますよね;;)
自分の知る限り、これほどキッパリと言い切った方はREDCOW様しかいらっしゃらないです。
そうなんです。
自分もそう思います。でも、それを認めたくない気持ちが強いことも、また事実です。
この姉弟(特に弟)のファンとしては、「彼らには再会を果たして共に生きてほしい」と思ってしまうので……。
でも、魔王はすでに「そのこと」に気づいているのではないかと思います。それでも、影を追わずにはいられない……。彼女を見つけたら見つけたで、喜び勇んで名乗りをあげたりせず、相手からは見えないところから、そっと力添えをするのみ……、なんじゃないか、とか。
あああっ!!なんか書いてて悲しくなってきた!(妄想爆発、スミマセン;)
この話題はこのへんで。しくしく…。

> まぁ、消化不良な彼を誰が受け入れるのかは…とても興味深い部分かもしれません。
 ただ、持っているものが重いから、その重みに耐えられる精神の持ち主って限られますよね。(^^;

ヤバイです。この話題に関しては、何ページでも語れそうです(待っ)
蛇足のごあいさつでも白状致しましたが、自分は「魔王ルッカ」の信者でございます(笑)
このふたりは、抱えているものが似ているような気がします。
かたや魔王は、抱える「後悔と痛み」を周囲の皆に知られてますが、かたやルッカの「後悔と痛み」は一部の仲間しか知らない……。
でも似たものを抱える魔王は、ルッカの抱える「それ」を、なんとなく感じ取るのではないかと……。
「傷の舐め合い」じゃないけど、そしらぬふりをしながら、互いの脆い部分を支え合えるんじゃないかなぁ〜、とか。
ゴメンナサイ!妄想の坂を転げ落ちそうなので、この話題はここまで!

> 色々に勝手に妄想しちゃいました。w

これはもう、作者冥利に尽きるうれしいお言葉です!どんどん妄想して下さいませ!
ってゆーか、このコメントを書いてる時点で、自分のほうが妄想爆(止)

> 他の作品にも近日感想を書けたらと思いますが、とりあえずはこの辺で。

ご多忙中のなか、本当に本当に、ご感想ありがとうございました!
近日でなくても、お時間のあるときでぜんぜんOKです!

> あ、そうそう。クロノプロジェクトへの署名有り難うございます。m(__)m

「Webで公開する小説」という形式を学ぶ上で、自分がいちばん参考にさせていただいた作品が、「CP3シーズン1」でした。
「学ぶ」ために読み始めたのに、いつの間にか物語に引き込まれてしまったものです。
先行公開版も楽しく読ませていただきました。シーズン2も待ち遠しいです!

……はぁぁ〜。随分と語ってしまいました。お絵描き板ではとっくにバラしてますが、自分「レス魔」でございまして……(笑)

ご感想どうもありがとうございました!
それでは、このへんで。
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【24】感想〜
 REDCOW  - 06/5/7(日) 0:56 -
  
 どうも、沢山の作品の投稿有り難うございます。
 なかなか読む時間をとれなかったのですが、今回じっくり読ませて頂きました。

 いやぁ、話の進め方が上手いなぁ。
 やっぱ付け焼き刃の私よりしっかりした文章で楽しかったです。

 決戦前夜に「彼」が悩んだのだろうかどうかでは、物語内部での母親の扱い方は人ではないって感覚で割り切っている感がありましたが、普通の人の感覚で判断するならば親を自分の手で殺害するというのは葛藤があって然るべきですもんね。(^^;

 で、魔王は思うより行動するタイプなのだろうとは思いますが、行動に値するほどに強く思うタイプでもあるんだろうと思います。故に、突き進む力が強い分だけ、自分が被る様々な壁を越える痛みを半ば強引に受け入れることで正当化している感はありますね。
 彼が正当化した様々な痛みや重いが何処かで吹き出すんじゃないか?っていうと、実はそこら辺は割り切りもかなり早い人ではないかと思いまして、キーワード「皿(何)」と関係しない限りの問題はかなり容赦なく切り捨てられる、まぁ、問題を消去法で片づける能力の持ち主だと思います。

 ただ、その縛りが消えた時…彼は自分の人生に満足するかといえば、たぶん沢山の不満が残るのかもしれないと思います。それを受け入れてくれるかどうか、が、今回の話のポイントの一つだったのかもしれませんね。しかし、彼が望む相手は彼女じゃないのかもしれないですが。でも、その望む相手は彼を望みはしないでしょうね。

 まぁ、消化不良な彼を誰が受け入れるのかは…とても興味深い部分かもしれません。
 ただ、持っているものが重いから、その重みに耐えられる精神の持ち主って限られますよね。(^^;

 色々に勝手に妄想しちゃいました。w
 他の作品にも近日感想を書けたらと思いますが、とりあえずはこの辺で。

 あ、そうそう。クロノプロジェクトへの署名有り難うございます。m(__)m
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【23】黎明 (後)
 冥香  - 06/4/21(金) 15:22 -
  
 「これを見てみろ」
 膝に抱いた荷を、彼は示した。顔のわりに大きな目が、不思議そうにそれを見つめる。
 「……苗木?」
 命の賢者と呼ばれた者が遺した、比類ない生命力を宿した苗木。
 未だ狭く小さなこの街が、人の世界のすべてであるようなこの時勢に、何を思ったか金銭目当てにこれを盗みだした者がいた。街の長らに頼み込まれ、彼はこれを取り返してきた帰りだった。
 「ただの苗木ではない。この小さな苗が、やがて不毛の大地を森に変える。もっとも、それは一万年以上も未来の話ではあるが」
 「へえ、すごい!」
 男の子は、実に子供らしく驚きを表した。話の内容よりも、むしろ初めて彼の「予言」に触れたことに興奮したようだった。だが当の予言者は、表情をより厳しいものに変えて子供を見やる。
 「だが、不毛の地に巣食う魔物を斃さねば、苗を植えることすら叶わぬ。自分が正しいと信じるものを、ただ耐えて守ることも大事ではあるが、ときには戦うことも必要なのだ。解かり合える相手と、そうでない相手を、見誤ることのないようにな」
 それは、彼自身の苦い経験から出た言葉であったが、そこまでは幼い聞き手に汲み取れるはずもない。
 それでよい。と、彼は思う。
 前途ある者には、希望だけを見てほしい。やがて必ず訪れるであろう苦難に立ち向かう糧となるものは、絶望ではなく、希望であるべきなのだ。

 話に聞き入る男の子の瞳を、彼は覗き込んだ。かつて見た青空を想わせる、澄んだ、美しい瞳だ。蒼天の下を、彼が共に旅した者たちの瞳とも共通する力強さを、それははっきりと宿している。
 「お前は、戦うことができるか?」
 力強く、少年はうなずいた。

 ならば託そう。未来から受け継ぎ、また未来へと繋いでゆくべき「想い」を。

 「持ってゆけ」
 「……え?でも」
 苗木を押しつけられて、男の子は困惑した様子で押しつけられた物と押しつけた者を見比べた。偉大な予言者さまは、すでにベンチから腰を上げ、マントの埃を払っている。
 「かまわない。持つに相応しい者に渡したと、長どもには伝えておく。……日が暮れる。今日はもう帰ったほうがいい」
 さっさと背を向けて、彼は去ろうとする。

 「おじちゃん!」
 不意に、マントの背に声が弾けた。満面に不満と不機嫌を浮かべて、彼は振り向いた。その様子に頓着することなく、声の主は手を振っている。
 「また、うちにも来てよ!おじちゃんが来ると、アルが喜ぶんだよ」
 その言葉に、微かに彼の表情が緩む。
 「そうか、アル……は、元気か?」
 「うん。でも、なんでかなぁ。アルはボクにしか懐かなかったのに」
 悔しそうに頬を膨らませる男の子を、くすぐったい気持ちで彼は見つめた。
 「では、近いうちにお邪魔させてもらうとしよう。……アルによろしく」
 そういい残し、今度こそ彼は歩み去った。「またね、おじちゃん!」という声には、聴こえないふりを決め込んで。

 かつて、彼があの子と変わらぬ歳の頃、唯一心を許せる存在だった友は、新しい主のもとで、新しい名を与えられ、新しい生活を、おそらくは幸福に送っている。
 幾ばくかの寂しさと、それを上まわる嬉しさを人知れず噛みしめながら、彼は本来の目的地へと急いだ。

 いつの間にか空は晴れ渡り、滅多に見ることの叶わぬ見事な夕焼けが、雪の街を照らし始めた。街長の家が目視できる頃には、彼の瞳と同じ色の紅い空が、彼の髪と同じ色の銀世界を、燃えるような薔薇色に染め上げていた。

 夕焼けは、天に浮く大陸にも訪れた。
 銀世界は、遥か往古から変わらない大地の姿だ。

 光と地、どちらが欠けても創り出すことのできぬ、それは芸術であると、彼は思った。
 「題を付けるならば、『共存』……というところか」
 呟いて、柄にもないと思ったのか、彼は鼻で笑った。街長の家の番が、その様子に首を傾げたが、彼は意に介さず門をくぐった。


                              了


ごあいさつ

こんにちは、懲りずにまた来ました。
冥香です。

さて、ここまで読んで下さった方はお気づきでしょうが、このお話、タイトルは「黎明」なのに、場面は「黄昏」です。
どうしても「大崩壊」後の古代の、夕焼けの美しさを描写してみたかったのですが、紅の日が雪の大地を照らすという現象に、二つの民族の共存する「新しい時代」=「黎明」というニュアンスを感じ取っていただけたらなぁ……、というわけでして。実はちょっと表現力に自信がないのですが……。

このお話、実は管理人REDCOW様の「CP3シーズン1」を読んでいるときに思い浮かんだものです。
魔王による争乱が収まった後も、わだかまりを解くことのできぬ人間と魔族。それに翻弄されながらも、共存の糸口を探ろうとするカエルやフィオナたち。
「大崩壊」後の古代にも、光の民、地の民のあいだには簡単には解けないわだかまりがあり、それを解きほぐそうと奔走する者たちがいたのではないか……。
などと考えるうちにできあがったものが、この「黎明」であります。
REDCOW様の足元にも及ぶものではありませんが、共通するものを少しでも感じ取っていただけたら、うれしいかなぁ……なんて(恐縮)

異常にあとがきが長くなってしまい、申しわけありません。(悪い癖です)
それではこのへんで。
またお会いしましょう。お絵かき版のほうにも、出没するかもしれません(笑)
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