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【87】OG二話目の1試作(10/11/28改)
 REDCOW  - 10/8/31(火) 2:48 -

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   内容を11月28日に更新しています。


第二話「ルナツー攻防戦」
 
「(そうか。目標は確保。なら、指揮はオキタ、お前に任せる。しんがりは俺がする。以上だ。)…カンファレンス終了…と。さて、敵さんは随分と大人しいじゃないか。こんなもので終わりなのか?」
 
 トヨトミは連邦がいやに静かな事が気になった。彼の部隊が確保した目標物は、確かに「そうしてもおかしくない」代物だが、それにしては静か過ぎるといえる。考えられるのは2つ。一つは単に手を拱いているだけ。そして、もう一つは援軍が来るまでの時間稼ぎ。
 彼からすればどちらだとしても、もはや意味は無い。だが、こんなにも簡単に行くのが腑に落ちない………彼の戦士としての感がそう思わせるのだろうか。
 連邦軍の攻撃は慎重なものだった。
 多くの部隊を持っていながらそれを出してくるわけでも無く、半ば腫れ物に触るような慎重さだ。勿論、連邦も最悪な事態は回避したいに違いない。だが、これは彼らの最重要機密であるはずだ。
 
「…気に入らねぇなぁ。」
 
 そこにニューロンがアラートを表示した。

「何々…(『貴婦人が到着した。各自舞踏会の用意。馬車がカボチャに変わる前に戻れ。』)」
 
 その時、突然攻撃が厚くなった。
 敵の増援が来たようだ。しかも、その数はかなりの多勢だった。
 彼は光学遮蔽を続けながらサイバストのファンネルで狙撃を開始した。
 
 数時間前…

 逃走した敵母艦のイオン航跡はルナツー方面へ向かっている事が確認された。
 シスターフェアレディは増援任務を兼ねて、逃がした敵艦を追撃することとなった。しかし、遮蔽した艦はそう簡単に見つからず、彼らは増援任務を優先しルナツーへ向かった。
 
「艦長、ルナツーより特1秘匿回線を受信。えーと、これは…准将閣下宛の様です。」
「え、わたし?」
「はい、どういたしますか?」
「(…この時期に私宛の回線…)スクリーンへ。」
「本当によろしいのですか?」
「えぇ。たぶん、どちらにせよ皆さんにお知らせする内容でしょう。開いて。」
「はい。では…」
 
「ナンジョーだ。ルカ君元気かね。現在、我が方は攻撃を受けている。どうやらどこかに穴が空いているようだが…先程、君の艦がこちらへ向かっている報が上がった。そこで、連戦で済まないが至急増援に回って欲しい。戦況は我が方に不利だ。主力はほぼユーロへ行ってしまっていてな。問題はμよりクリアブルーの方だ。頼む。」
 
 スクリーンのメッセージデータは自動的に停止した。
 ブリッジクルー達はメッセージの内容に動揺している様子だった。そのうちの一人であるドウモト少佐が准将に尋ねる。
 
「准将閣下…これは、」
「…皆さんお聴きの通りです。ルナツーへの攻撃は思ったより悪い様ですね。」
 
 彼女は表情を変えるでも無く、事も無げにあっさりと言った。
 彼女の反応に聞いている方が動揺を隠せない。
 
「あ、あの、μはともかく、その、クリアブルーとは?」
「ドウモトくんだったわね。良いでしょう。どうせいずれ分かる事だから。これは核兵器です。しかも、これまでの核なんか目じゃないくらい強力な核兵器。陽子魚雷。…いずれこの艦に搭載予定のものよ。」
「え”!?あ、あの核兵器は禁止されているんじゃ…?」
「…驚く事じゃないわ。それに核が禁止?誰が言ったのかしら。」
「いや、その、南極条約で…」
「それはジオン公国やジオン共和国との条約よね。今、その両国と戦争しているかしら?…違うわよね。それに、ジオンは連邦の領域に併呑され、既に締約国が存在しない現在、核を使用しちゃ悪いなんてどこにも書いてないわけよ。」
「いや、しかし…」
「DSAとの戦いにはそれが必要なの。彼らの物量に対抗するのは、正直それくらいの火力が無くちゃ倒せない。みんな知っているでしょう?…5年前に我が軍はどうやって帰ってきたか。…残念ながら、私達には核が必要なの。それもとびきり強力なものが。」
 
 彼女の決意はとても強固に感じられた。
 確かに0120年のエウロパ戦争でも、仮に核の使用が無くては連邦の撤退すら危うかった現実が有る。彼女の言葉は間違いなく否定できない現実的選択であった。しかし、人類史上、核の使用によって残される爪痕はとても大きく、それ故に持っていても使えない兵器として長い間その使用が憚られた。それはこの宇宙世紀の時代になっても変わらない。
 タロウは頭の中で彼女の出したキーワードを検索していた。当然シナプスでは見つかりはしないが、シスターフェアレディの武器システムバンクには空白が存在している。発射管は前後に2門有り、収容可能数が4と表示されている。単純に魚雷発射管だと思っていたが、彼女の言う通りならば、これが陽子魚雷発射管だろう。
 不意にアカデミーの頃の授業内容を思い出した。
 アカデミー在学当時、エンジン理論の授業で登場した将来のエンジンについての講義で、彼はこの陽子についての内容を聞いていた。授業では陽子物質反物質反応炉という名称だった。
 
「…陽子は反陽子との反応炉が提案されて、その爆発的なエネルギーが注目を集めた事もありましたが、そのエネルギーの巨大さが馬鹿にならず、また、生成可能量の少なさからSFの産物だと思っていました。」
「それが現実に出来上がった…というより、それの出来損ないかしら。確かに今の技術では本来の性能は出せないそうよ。それでもおよそ今まであった核が霞むほどのものらしい。あ、伝聞推定なのは、私は勿論、開発者も含めてテストした事が無いの。…失敗したら大事だものね。」
「閣下、ここまでオープンにお話しされていることを前提にお尋ねします。その陽子魚雷の想定破壊力はどの程度のものなのですか?」
 
 ドウモトの質問に、彼女はしばし間を置くと答えた。
 その眼光はスクリーンの向こうの虚空にある何かを凝視する様に。
 
「…そうねぇ。私が聞く所によれば、上手く出来ていればだけど…コロニーを蒸発させる程度の破壊力はあるそうよ。でも、その想定されている破壊力ですら、敵のシールドにかなりのレベルで阻まれる可能性がある。この破壊力は確かにオーバースペックだけど、確実に当てなければ意味が無い力でもある。」
「…そんな不確実な兵器を実践投入するというのですか!?」
「これは決定よ。それにね、私達はその不確実な兵器に頼らざるを得ないくらい厳しい戦いを強いられているの。5年前よりは我々もキャッチアップしてきたつもり。でも、相手にもまた時間が与えられた。…私達が向上した様に、相手も相当にレベルを上げて来ているということを忘れないで。そして、この兵器が奪われる事が有れば、敵もまたこれを搭載した兵器を投入して来る…悪夢ね。でも、それは阻止しなければならない。これでわかったでしょ?」
 
 彼女の言葉に一同が戦慄した。コロニーを蒸発させるほどの兵器は、歴史上に登場するこれまでのどんな兵器ですら不可能な破壊力であり、強力なレーザー兵器であるコロニーレーザーですら、そこまでの破壊力は無かった。しかし、それですら不確実な攻撃能力であるという首脳部の認識を聞き、改めて対峙する相手の巨大さを感じていた。
 
「…はい。」
 
 ブリッジでの話はその場のクルー達に動揺を広げたが、その事実を知ったからにはなんとしても奪還しなければならないことは理解された。
 ルナツーに入ったシスターフェアレディは、コロニー・オークランドへ寄港し作戦司令部へ佐官クラスが招集された。
 
「…計画はルカ君、君達に任せる。必要なものは遠慮なく言いたまえ。といっても、大したものは無いがね。」
 
 ナンジョー中将はそう言って指令書をルカ准将に手渡した。
 作戦計画「ノギス」はシスターフェアレディを中心に行動計画が策定されていたが、作戦計画とは名ばかりの全くの白紙に等しい内容で、内容の大枠は全てシスターフェアレディに一任するとだけあったのだ。これを受け取ったルカは矢継ぎ早に采配を開始し、この計画の遂行責任者としてジュドーを任命する。振られた方のジュドーは黙ってその命令を受け入れ、実行部隊を選定。オルドーを中心に、マーカスとワルツワンドで編成された。
 
「隊長、何故私はこの作戦に加われないのですか。spitfireには光学遮蔽も付いていますから行けます。」
「グレイ、勘違いするな。お前の任務は艦を守る事だ。」
 
 オルドーの言葉に不満を覚えつつ、グレイは大人しく従う他無かった。

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【89】OG二話目の3試作 REDCOW 10/12/7(火) 9:47
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【97】OG二話目が終わりました。 REDCOW 11/1/27(木) 20:13
【98】塗り絵してみました。 REDCOW 11/1/31(月) 1:22 [添付]
【99】塗り絵2 REDCOW 11/1/31(月) 1:22 [添付]

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