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【88】OG二話目の2試作
 REDCOW  - 10/11/28(日) 19:27 -

引用なし
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    ジュドーは艦に戻ると大まかに整理し指示を出す事にした。
 今回の作戦の目標は、

 ・陽子魚雷の確保
 ・μシステムの確保
 ・敵部隊の殲滅

 …の3つであり、そのうちの「μシステム」と呼ばれる兵器は既に軍が防衛に成功していた。しかし、最悪なことに肝心の最重要機密兵器である「クリアブルー」は敵ゲリラ側に奪われているという悪い知らせが入った。
 司令部からの情報ではルナツーを襲った新撰組と同一と見られ、どうやらルナツーは陽動でこちらへの攻撃が目的だったのだろう。行動がとても迅速で早く、こちら側が対応を始める前に奪取を成功させた手際の良さは認めざるを得ない。
 実行部隊へはナンジョー中将の許可も降りている事から、どんな要求でも対応することを約束し委任し、ジュドー自身はコロニー外部戦力の指揮に注力する事にした。何より退路を断つ他に道はない。シスターフェアレディのブリッジより彼は、念のためフォースシールドを試験的にも搭載している艦のみに絞り領域から退避させる命令を出すと、ブリッジを出た。
 彼が向かった先は艦内のMSドックだ。マリアよりシナプスから呼ばれたのだ。彼が向かうと、彼女はspitfireの前にいた。その側にはこの機体のパイロットであるグレイと、艦内で特別に外部研究員として同行しているドーラ・イースター博士がいた。彼女はこの艦に搭載されたMSの開発主任者の1人で、主にシステム開発で主導的役割を果たして来た人物だ。その彼女がジュドーに対し機体戦闘データの解析結果を説明した。
 彼女の話では、前回の戦闘でオーバーロードを起こしたのは、機体システムが本来の許容限界であるNTレベル値である5を遥かに越えていた為に起こったと説明した。しかし、グレイの搭乗前の試験で記録されているNTレベルは最大2であり、その時の状況を詳しく聞かせて欲しいという。
 彼女の質問にグレイはこう答えた。
 
「シドーがやられそうになったから、無我夢中で闘っただけです。」
「本当に、それだけ?」
「はい。」
「そう。確かに過去にも気分でニュータイプ能力を変化させる例はあるわ。元々この力自体がその人のテンションやコンディションに左右される精神的なものだから。…協力、ありがとう。」
「はい。あ、あの、少佐、何故自分は作戦部隊に選ばれなかったのですか。」
 
 彼の唐突な質問に、ジュドーはしばしの沈黙のあと答えた。サングラスの向こうの眼光は鋭かった。
 
「…艦を守る事も重要な任務だ。君がここで守らずして、誰が我々を守る?」
「…愚問でした。申し訳有りません。失礼します。」
 
 グレイは静かに礼をしてドックを去って行った。
 彼が出た後、ジュドーは彼女らとしばし話していた。
 
 ジュドーより実行部隊として任じられたオルドーは、自身は予備機であるマーカスと同じF92-STに乗り、二人とともにコロニー内の戦闘地帯に入っていた。彼は敵側の光学遮蔽を破る方策を練っていた。幸いにして司令部より何をしても良いという許可もある。彼はそれを最大限利用する事にした。

「(セットだ。作戦アルファGO!)」
「(こちら司令部。アルファGO!)」
 
 オルドーの号令下、一斉に敵側へ向かって正面から大群のMS部隊が駆けてゆく。
 彼はこの攻撃による相手の行動から索敵することを考え、ワルツワンドに敵の攻撃元を探知させ、マーカスに対してはその情報をもとにNTモードで待機し狙撃する様命じていた。
 にわかに前方が騒がしくなったのを認めて、トヨトミは構えた。センサーからの情報では大量のヘビーガンやジェガンといった旧式のモビルスーツが一直線に突進して来る様だ。しかし、コロニー内での戦闘でもあり、ビーム攻撃はしてくる様子も無く、ただ突進して来るのみだった。とはいえ、この量に取り付かれては逃げ場は無い。
 
「ち、連邦も味な真似をしてきやがる。…まぁ、そうこなくっちゃな。」
 
 ファンネルを展開し狙撃を開始。こちら側の熱源反応を分散させることで攻撃ポイントを絞らせぬための対策だ。旧式のMSだけあり、反応速度は全く脅威にならない。次々にファンネルの餌食と消える。しかし、本来MSに搭載されている核融合炉を考えれば、大きく吹き飛んでもおかしくないはずだが、爆発は想定より小規模だ。考えられるのは予めパワーセル(バッテリー)搭載型に切り替えているということ。だとすると、この無謀な特攻には他の意図が隠されていると考えるべきだろう。
 
「…こういう物量で押して来るのは、連邦らしいといえばそうだがな。(サイバスト、モードチェンジ、NT)」
「(モードチェンジ、NT。シンクレベル3.5)」
「…上がらねぇなぁ。もっとテンション上がるネタをよこせ!(サイバスト、シンクエリア拡大。センサーサークル上の感応反応は?)」
「(センサーリンク…前方攻撃部隊の全てに微弱なNT反応を感知。シンクレベル1.0、データベースよりデスブルーと適合。)
「デスブルーだと!?っち、良い時に来やがる。お前の事は忘れないぜ。…エウロパの屈辱は、ここで晴らす!!(サイバスト、NTシンクビーコン射出)」
「(ビーコン射出完了。シンクレベル上昇、シンクレベル5.0)」
 
 敵の攻撃が大胆になった。先程までファンネルによる四方からのピンポイント狙撃だったものが、前方からも強烈な弾幕を張り始めた。突進するMSは次々に撃破されだすが、前方に敵が構えている事は間違いないだろう。
 ワルツワンドは敵の感応波が一時的に増大したポイントを感知した。
 それは瞬時にマーカスに伝達され、彼のアームビームガンが火を噴いた。
 
 チュン!!!
 
「あぁ!?」
 
 サイバストの右上腕をかすめた。しかし、それと同時にマーカスの右腕のアームビームガンが撃ち抜かれる。
 
「ちぃ、ひよこ共が!ぐ!?」
 
 トヨトミに休む暇はなかった。
 マーカスに気を取られていた隙に、前方の群れから急速に突進してくる機影があった。
 
 ブン!!!
 
 ビームサーベルが唸りを上げる。寸での所でオルドーの攻撃を受け止めたトヨトミは、遮蔽を解き、エネルギーを攻撃システムに集中させる。攻撃を仕掛けて来たオルドーの後方をファンネルによる狙撃を狙うが、マーカス機のファンネルによって相殺される。しかし、その時、
 
「(確保完了。速やかに撤退されたし。)」
「(了解!待ってたぜ。)ってなわけだぁ。って聴こえてねぇよなっ!!!」
 
 トヨトミがフォースシールドを起動する。シールドによって攻撃を弾かれたオルドーは執拗に攻撃を加えるが全く歯が立たない。その隙に余裕の構えで冷静に周囲のファンネルを撃ち落としながら、トヨトミは徐々に遮蔽し消えていった。
 オルドーは深追いを避け帰還命令を出した。
 
 事態は既に次のフェーズに移っていた。
 クリアブルーが完全に奪取された以上、こちら側の攻撃オプションはなんとしても破壊する他無かった。
 
「(全軍、シールド起動。主砲充填、総攻撃に備えろ。)」
 
 ジュドーの声がシナプスを通して全軍に渡る。ニューダブリンとドッキングしていた艦艇が遮蔽を解いて姿を現した。
 連邦軍司令部より警告通信が発信される。
 
「テロリスト諸君、君達を包囲した。速やかに武器、シールドを解除し投降せよ。投降者には命の保証をしよう。」
「(この期に及んで似非人道主義か。まぁ、良い。)俺達、実は悪い子なんですよ!」
 
 敵母艦から魚雷が発射された。
 それはニューダブリンへ向けて衝突コースを描いていた。
 誰もがその様をスローモーションで眺めている様に感じた。
 
 ドゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーー…
 
 眩い閃光が走り、瞬く間にその場は巨大な熱の塊と化した。発せられた魚雷はクリアブルーそのものだった。
 まさか、敵軍が奪取したものをそのまま使うなど想定外だった。しかし、この状況を冷静に見つめる眼差しがあった。
 
「(ルー、ガイアに自閉モードを)」
「(えぇ。ガイア、全艦隊へ別命あるまで自閉モード。)」
「<ガイア、全軍自閉モードへ移行しました。シナプスはP to PまたはSite to Siteモードで稼働中。>」
「どうなっている?」
 
 ジュドーの冷静な声に、エリーゼは慌ててスキャン結果を報告する。
 
「あ、あぁ…え!あ、はい。ロードアイランド、プルート、タイタロスが大破、ネレイド、マルーン、セレーネがシールド維持、その他シールド未搭載の退避艦艇は全軍で40隻中、ニューダブリンの爆発に巻き込まれ…確認不能です。」
「そうか。ルー、μの起動を始める。…いいか?」
「え、…出来るの?」
「四の五の言っている暇はない。良いな?」
「え、えぇ。良いわ。許可する。」
「よし艦長、ドウモト少佐と機関室のグレンハート大尉、それにセット大尉を借りますが、良いですかな?」
「むぅ、君の提案は我が艦のクルーを犠牲にするだけではないのか?ドウモト君、どう思う?」
「艦長、私はアーシタ少佐のお考えは悪くないと思います。使えるなら、あの火力は望ましいと考えます。」
「むぅぅ、良いだろう。私は知らん。」
「…なら、決まりだな。艦長、シートをお借りするがよろしいか。」
「…好きにしたまえ。」
 
 ドーンが席を譲る。ジュドーは持っていたロムスティックをスロットに差し込むと、シートの権限をジュドーに切り替えてNTモードに入った。
 タロウも急いでブリッジを出てMSデッキへ向かった。
 
 μとは、連邦軍の次世代拠点攻撃型大型MA開発計画のことを指し、一見するとフォーミュラ計画で放棄した重厚長大型の復活とも見えるものだが、この計画の機体はこれまで連邦が開発し続けて来たムーバブルフレーム搭載機の究極形態を目指しており、フォーミュラ型ビットを組み合わせる事で柔軟に攻撃性能を変化させられるのと同時に、量産効率を向上させる事を目指している。
 ビットはそれ単体では単なる飛行ユニットだが、複数が合体することでMSレベルの性能を獲得出来る事は勿論、将来的にはフォーミュラ計画で設計された機体との合体も視野に入れ、より汎用的なMAモデルの開発を目指して計画された。また、MAの動力炉の大型化を複数のモジュール化により分散し小型化するという意味合いもある。
 いわば、これまでのMA開発でのネックとなった高火力を求めるが故に大型化し高いコストを必要とした負の側面を、μは払拭するものと考えられて計画された。
 数時間前、
 
「システムの出来具合はどの程度だ?」
 
 ジュドーの問いかけに、尋ねられたドーラの顔色は晴れない。
 
「…正直、芳しくないわ。機体設計は確かに注文通りの内容よ。でも、悔しいけど現状の我々のOS開発力は、DSAに及ばないことを認めざるを得ないわ。」
「動かせないのか?」
「いいえ。動かせるわ。ただし、コンソール操作は一切不能。」
「…NTモードか。」
「えぇ。それもLv.7。………確かにあなたの能力なら動かせると思うけど、それが戦えるレベルかどうかの保証はできないわね。兵器として見たら失格よ。」
「…すぐに使える様にしてくれ。」
「今すぐ!?」
「あぁ。」
「こんな状態の………分かったわ。でも、現状のOSでコントロール出来るのは3つまで。」
「どういうことだ?」
「まだ開発は途上なの。現状で完成しているのは3つのビットだけ。7つ全部ではないわ。」
「…そうか。だが、カタログ通りのものは使えるのだろう?」
「保証は無いけどね。」
「それで充分だ。頼む。」
 
 ドーラは半ば呆れた表情だが、彼女なりに彼を心配している様だ。
 彼女は早速傍らで話を聞いていたマリアと整備の相談を始める。

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【87】OG二話目の1試作(10/11/28改) REDCOW 10/8/31(火) 2:48
【88】OG二話目の2試作 REDCOW 10/11/28(日) 19:27
【89】OG二話目の3試作 REDCOW 10/12/7(火) 9:47
【95】OG二話目の4試作 REDCOW 11/1/27(木) 16:24
【97】OG二話目が終わりました。 REDCOW 11/1/27(木) 20:13
【98】塗り絵してみました。 REDCOW 11/1/31(月) 1:22 [添付]
【99】塗り絵2 REDCOW 11/1/31(月) 1:22 [添付]

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