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【147】強くてクロノTrigger まえがき Double Flags 08/8/12(火) 2:14

【165】-11- (第六章 廃墟を越えて……1.) Double Flags 08/9/24(水) 2:11
【166】-12- (第六章 廃墟を越えて……2.バンゴド... Double Flags 08/9/24(水) 2:12
【167】-13- (第六章 廃墟を越えて……3.アリスド... Double Flags 08/9/24(水) 2:29
【168】-14- (第六章 廃墟を越えて……4.ガードマ... Double Flags 08/9/24(水) 2:37
【169】-15- (第六章 廃墟を越えて……5.革命家.) Double Flags 08/9/24(水) 2:42
【186】-16- (第六章 廃墟を越えて……6ガードマシ... Double Flags 10/9/20(月) 19:56
【187】-16- (第七章 不思議の国の工場跡 一レジス... Double Flags 10/9/20(月) 20:11
【188】-17- (第七章 不思議の国の工場跡 二 古代... Double Flags 10/9/20(月) 20:13
【189】-18- (第八章 時の最果て@古代の賢者ハッ... Double Flags 10/9/20(月) 20:15
【190】-19- (第八章 時の最果てAエレメント) Double Flags 10/9/20(月) 20:17
【191】-20- (第八章 時の最果てBグリッド) Double Flags 10/9/20(月) 20:22

【165】-11- (第六章 廃墟を越えて……1.)
 Double Flags  - 08/9/24(水) 2:11 -
  
 ガルディアの森からゲートを通ってバンゴドームに抜け出した三人、クロノ、マール、ルッカの三人。
 三人はこれからのことについて話し合いを始めた。
「許せないわね」
「いきなり、どうゆうことなのルッカ?」
「なんかさあ、全部あの少年の手の上で動かされているような気がして」
「??」
 ルッカの言いたい事が、わかっていない様子のクロノとマールに向かって言った。
「つまりは。この現象を引き起こしているのはあの少年の仕業っていうことよ」
「この現象って、俺たちが二周目に存在しているってことが?」
「おそらく、おそらくよ。あくまで仮説の域を出ないけど」
 ルッカは息を置き、二人をあらためて見直してから話し出した。
「……あの少年は言ったわ。
 私たちにやってもらいことがあるって、そして経験も積んでもらいたいとも。
 つまり今の私たちじゃ足りなくて、それでも私達に何かをやってほしいってことよ」
「今のわたしたちに足りないもの?」
「あるいは見逃しているもの、ね」
 ルッカはその指を何も無い宙でくるりと回す。
「想像がつかないな」
「そうよねぇ、今の私たちじゃ想像がつかない。
 だから、あの少年が現われて私たちの進む方向を直していく、間違った道を行かないようにしているんじゃないかっておもうのよ」
「別にかまわないじゃないか、進むべき道が分かっていることは楽で」
「構うわよ!!
 つまり私たちの行動は全部少年によって誘導されているってことよ!!
 あの少年のやりたいことが何なのか聞かされていないことから考えると」
「わたし達が操り人形になっているってこと?」
「そう、少年が何を考えているか分からないのに、知らない間に片棒を担ぐのはいやよ」
 ルカが拳をぐっと握った。
「つまり、あの少年は悪い奴かもしれないってこと?」
「……ええ、まあ……でも悪い奴っていうことも見方によるわ。
 悪いなんて判断はその人の立場によって違うもの。
 例えば、ジールや恐竜人にとって私たちは悪だったといえるでしょうね」
「でもジールはこの星を……」
「マール、これはあくまでも見方によってちがうってことよ。
 ジールもはじめはこの星を滅ぼそうとしていたわけではないはずよ。
 単に永遠の命を求めて、力を求めてしまったから、ああなってしまった。
 のかもしれない」
「ラヴォスに利用されたってことか」
「そうともいえるわ、それに恐竜人もあの大陸から追い出した私たちは、彼らにとって悪だったでしょうね」
「でも解決したんじゃないか? 『前の周』で、これ以上何を望むっていうんだ?」
「確かに、言い過ぎかもしれないけど恐竜人は私たちがいなければ滅亡していたのは確かね」
「あの少年が何が目的で私たちの前に現われたのか……」
「意外とあの少年がすべての原因で、最後に自分を倒して欲しいってパターンじゃないかしら」
「それは……」
「そうね……、言ってしまってからなんだけど、あまり想像したくないわね」
「ああ、でも……まさか、また未来はこのままなんてな」
 そこはすでに捨てられたドーム。
 人だけでなく、ロボットやミュータントさえいない。
 灰の空気が漂う空間。
 それはクロノ達が見た、希望が閉じてしまった未来だ。
「あの救った未来はどこに、未来のロボはどうしたんだろう?」
「また壊れているかもしれないわね……」
 マール、ルッカは少し沈んだ気持ちになった。
「にして一体何があったの?
 この未来で、あの少年の言うことを信じるなら、ラヴォスは私たちが倒すことは確定済みなはずなのに」
「何かがあったってことだろ」
「その何かが重要なのはわかっているけど」
 そこでマールはすっと立ち上がった。
「わたしたちはこんな野望に屈してはいけないのよ」
「へっ?」
「野望よ、野望。
 こんなの許せないよ! せっかく救った未来を!!」
「マール?」
 クロノもルッカも呆気に取られている。
「だって、こんなのおかしいよ、こんなのってあんまり、あんまりだよ」
 肩を落とし崩れた。
「マール……」
 それを呆然と見ていたクロノは、ふと何かが繋がった。
「野望か」
 低く、確かめるようにクロノは言った。
「クロノ?」
 マールを見ていたルッカは顔を上げた。
「『前の周』の世界では、オレたちが過去に何かやるとその後のすべての時代に何かしら影響がでていた。
 メディーナの村、パレポリ、黒の夢、すべてオレたちが何かをやってきた結果つくられたものだよな」
「ええ」
「それはオレたちが巻き込まれたから起きた結果なんだよな」
「巻き込まれたって言う表現が正しいかどうか分からないけど。
 まあ、そうなるわね」
 ルッカには今だクロノが何を言いたいのか分からない。
「でも、オレ達の記憶は変化する前の物が残っていた、これはなぜなんだ」
「変化の前の記憶?」
「つまり、『前の周』だけでなく、『今の周』の記憶も持っているってこと」
「それは、私たちがその変化を目のあたりにして……ってあれ?」
「それっておかしなことだよな。
 オレ達の頭の中にはメディーナの村がまだ人間と友好的ではないときの記憶と友好的な記憶が混在している。
 一見見逃しがちで、そのときはラヴォスを倒せば世界が救えるって思っていたからあんま考えなかったけどな」
「確かにヒトの記憶って曖昧なところがあるから、そういう風に二重に記憶があることに何の疑問も浮かばなかった」
「でもそれの何がまずいの、クロノ」
 クロノは二本のカタナの鞘を腰から抜きだし、目の前に二本の鞘のまま手に持った。
「この武器は共に『前の周』の世界で鍛えられたもの。
 マールの弓やルッカの銃も同じだろ?」
 肯く二人。
「オレたちは取り残されているんだ、世界の変化に」
「取り残されているって、それは逆じゃないの?
 私たちの方が進んでいるんでしょ?」
「世界が変化しているのに、変化前の記憶が残っているのに?」
「あっ」
「二重の記憶を持つこと、本来そこにあるはずのないものを持っていること。
 変わった側から見ればオレ達は過去の遺物をいつまでも引きずっている存在だってこと」
「!! それって私たちの存在の否定じゃない!」
 その言葉にマールはびくっとした。
「でも、オレ達はここにいる」
 なだめるような声でやさしく言う。
 クロノは再び腰に二本のカタナをさした。
「これはオレ達が世界から否定されているとは思えないよ」
「確かにそうだけど」
「逆に二周目があるってことは、必要とされているって事なんだろ?」
 まだルッカは納得のいっていないようだった。
「だったら、あの少年はなんでわたし達の前だけに見えるのも……」
「そういうことなんだろうな、必要のある人間にしか見えない」
「なんか選ばれしものってかんじね」
「まあ、『前の周』での冒険は偶然だった。
 それでも戦い、生き残った俺たちだから選ばれたのかもしれない」
「わたしは偶然でもよかったと思う、それでクロノやルッカ、それにみんなに会えたから」
「私もマールに会えてよかったわよ? たぶん私じゃ、未来を変えようなんて思わなかったから」
「アリスドームのことね」
「そうよ、あのとき、ここぞってときなのにクロノッたらどもるんだもん」
「しょッしょうがないだろ!! 驚いていたんだから」
 そう、あの時クロノは未来であるということに少し絶望していた。
 この未来のあまりの悲惨さに。
 だからあの時、自分がラヴォスを倒すなんていう、あんなすごいものを倒すなんていうことは思いつかなかった。
「で、今回はもうラヴォスの心配はしなくていいんだよな」
「たぶんね、あの少年の言う通りなら」
「少年……。ほんと何者なんだろう」
「未来を見せてくれる少年、それは少年が未来を知っているってことかな?」
「たぶん、あの少年のやってもらいたい何かっていうのは、過去の遺物を持っているオレ達だからこそできることなんだろ。
 この過去の遺物を使ってもらわないとこの星は救えない。
 今度も何があろうとやってやろう」」
  ほおぉぉぉ
 という声がマールとルッカの口から洩れる。
「今度はどもらずに言えたわねクロノ」
「ルッカ!!」
「うん、すごい決心だよ」
「マールもそこまで驚かなくてもいいだろ」
「あはははは、ごめんごめん、ついね。
 でも、私達だからできることか、なんかそう思うと、なんかいいほうに向かっているって気がするわ。
 私達のやっていることは、まだ間違いじゃないって。
 その辺はさすがクロノね、前向きぃ〜前向きぃ〜」
 それは愛刀”あおぞら”を失ったクロノ自身の一つの結論だった。
 失ったものに意味がなければクロノは今、ひどく混乱していたどろう。
 自分に対しての区切りをつけるための結論でもあった。
 そんなミュージックが流れる中、突然ドームの出入り口が開いた。
引用なし
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【166】-12- (第六章 廃墟を越えて……2.バンゴ...
 Double Flags  - 08/9/24(水) 2:12 -
  
 ガルディアの森のゲートからバンゴドームに出た少年少女――クロノ、マール、ルッカの前の扉―バンゴドームだた一つの出入り口が開いた。
 振り返る三人の目の前には長身の灰色のローブを着て、フードによってマスク代わりに顔を隠した体格から男らしい人物が、銃、のようなものを構えていた。
 男の視線が三人を捉えるとすぐにそれをしまった。
「いや、すまん、まだロボット達がいると勘違いしてな」
 頭の方に手をあげ敵意のないことを示すその男は明るい口調で話し出した。
「でもここはずいぶん前に重力変動が起こって廃棄されたはずなんだが、まあもともと倉庫だって話だけど」
 そこでルッカが前にでて。
「そう、なんだか分からないけど私たち気づいたらここにいて」
 後ろでおお、とルッカにギリギリ聞こえるぐらいの歓声を上げる二人。
「そうか、重力変動にね」
 そういいながら男は鑑定するかのように三人を見る。
 この時代のアンティークにも残されているかわからないカタナを二本下げた少年とここでは見かけない元気のよさがにじみ出ている少女と妙に探るような感じで話す少女、明らかに怪しいことこの上ない。
 第一、格好がこの時代にそぐわない気がした。
 それでもその男は話を進める。
「ふ〜ん。
 重力変動に巻き込まれてきたのか、最近多いね。
 となるとあんたらも他の大陸から来たってわけか」
「他の大陸?」
 まだ少し気になる表現もあったが、あえてルッカはそこだけ聞き返した。
「なるほど、あんたらまだ外に出ていないな? ちょい外に出てみ?」
 そういって三人は、その男に連れられるように外へ出た。


 バンゴドームの外は三人にとって、『前の周』で見た光景とほとんど同じであった。
 瓦礫の山と空中を舞う灰。
 土はパサパサとして砂漠化手前。
 あたり一面を灰のほかにスモッグのような煙が世界を包んでいる。
「これは……」
 とすこしワザとらしくいってしまうルッカ。
「あんたらがどこの大陸から来たか分からないが、だいたい同じようなもので違う。
 ここはあんたらがいた大陸とは違う。
 つってもふつーは分からないよな、ここの人間の多くもそうだった、当然か」
「??」
 三人はいまいちこの男の言うことがつかめなかった。
「まあ簡単に説明すると、過去の世界地図によればこの大陸を中央大陸あるいは中央大陸群と呼んでいた。
 先にいっておくがなんでここが中央大陸って付けられているのかは知らないぞ。
 それでここを中心に、南北東西に大陸が存在していたらしい。
 そのあと名称が確定した後も大小さまざまな大陸が発見されていったけど、この大陸を中央大陸、北の大陸は少し呼び名が違ったらしいが、西の大陸、東の大陸、南の大陸という名前は固定されていた。
 時代は流れ、これら大陸間の交流やなんやらで巨大組織を成立させていったわけだが……」
 この辺りの知識はいくつかの移動手段を持った現代人の三人は知っていた。
「知ってるかどうか、あんたらの歳じゃわからないが、大崩壊が起こり、ロボット達が暴走を起こしたりなんかして大陸間交流とその手段は失われてしまったらしいんだ。
 そううち人の記憶から他の大陸のことが消えていった。
 なんせ大崩壊とロボットの暴走があったから、他の大陸との交流手段がなく、地形も変形していたからなしょうがないことだがな」
 わかったか? といって三人の様子を見る。
 まあ、あまり疑問符が浮かんでいないのである程度は理解したと思う。そう考えるとこの大陸の人間よりもずいぶん豊かな大陸にいたことが分かる。
「で、この大陸に来て調べたことなんだが。
 この星はまだいくつかの大陸が残されている、あんたらの来た大陸や、俺の来た大陸色々だ。
 あんたらはそこからポッとここに落ちてきてしまったわけなんだな」
「聞いてるとあなたはこの中央大陸の人間じゃないみたいだけど」
「ああ、東の大陸から跳んできた」
「とんで? どうやってとんでくるのよ。交流がなかったんじゃないの?」
「それが最近、内の大陸で空間移動装置っていう、長距離を瞬間的に移動できる装置を直すことができてな。
 大陸間の交流を始めようって話だったんだ」
「だったんだって、どういうことなんか問題でもあるの?」
「それなんだが、あんたらはどうやってここに来た?」
 逆に聞かれてルッカが戸惑うところにクロノが助け舟を出した。
「分からない、気づいたらここについていた」
「じゃあ、あんたらはどこから来たんだ? なんか主要な都市とかドーム名とかあるだろう、地域名でもいい」
「それはガルディア……むぐ……もご…もご」
 ガルディアと言ったクロノをルッカとマールで抑える。
「(ちょっとなにいいだすのよ、バカじゃない、バカ、バカ、バカ)」
 小声でクロノに言い放つ。
「ふごふご……もごご」
 マールに口を押さえられてて反論もないクロノ。
「ええっとね」
 クロノをマールに任せ、考え出す。
「(ああ、クロノ、あんまり喋らないで、あと手かまないで)」
 といってもクロノはルッカによって一瞬に手首を紐で結ばれ動かせず、マールが手で口を止めているので息苦しいだけなのである。
 そんな二人を置いてルッカは言った。
「ア、アシュティアドームよ」
((うわっ、自分の名前をドームにしちゃったよ))
 ふたりはそんなルッカに驚き、さらに内心ドキドキであった。
「アシュティアドームか……」
 ルッカは二人にもまさる冷や汗ものであった。
 この時間だとても長く感じられた。
「近いな」
(((あるのかよ!! しかも近いのかよ!!!)))
 三人は心の中で突っ込みをいれつつ、この後どう撒くか頭をスロットのごとくフル回転させた。
 そんな三人の様子を知ってか、知らずか男は続ける。
「確か中央大陸の監視者ドームの分館がそんな名前だったか? あのとき見かけたかな」
 なぜかさらに窮地に陥る三人、ドツボの奥に入りかけたところ、マールがクロノの手を離した。
 とたんにクロノは前に倒れるが無視。
「本当ですか? 実は私の母が何年か前にアシュティアドームに行くといったきり帰ってこなくって。
 はじめアシュティアドームって言うのがどういうところなのか分からなくって。
 二人に手伝ってもらって、他の大陸にあるって聞いたからどうにかして他の大陸にわたる方法を探してやってきたんです」
 マールが一気に捲くし立てると、少し間が開いた。
 内心マールは上手く辻褄合せができたかなと思った。
「ということは、君のお母さんはあの団体の人なのかな」
「あの団体?」
 正直なに言われても相手が勝手に勘違いしてくれることを祈りながら
「……知らないのか。
 アシュティアドームなら私も知っている。道案内もかねて同行しようか?」
「結構です」
 ルッカはきっぱりと断った。するとその男はにやりとした。
「心配するな。共に人間。機械の恐怖にさらされてきた者同士。
 機械共の勝手な考えで死んでいくものを見過ごせはしない」
 そう強く言う男だが、ルッカにとってはあまりよくはない考えであった。
「あなた一体……」
 その自信はどこから、と続けようとするが男によってさえぎられる。
「人は私のことを革命家と呼ぶ。
 革命家リュト・サペル。
 機械が支配しつつあるこの世界を機械から解放するために活動している」
「革命家?」「機械の支配?」
 クロノとマールは疑問の声を上げた。
「ああ、彼らは人口の調整という理由から、自分達に不都合な人間、機械のことを研究していた者、オレのような思想の持ち主、力を持ったものを捕らえ殺している。
 こんな事許されるはずはないと思った。
 オレはこの機械の支配から人を解放するためにドームの人に声をかけている」
 リュト・サペルの話でクロノとマールは不思議な感覚に包まれた。
 それが何のか分からないが、それとは別にクロノたちはジェノサイドームでの光景を思い出していた。
「それはここに支配する機械が現れたってこと?」
「いいや」
 リュト・サペルは否定した。
「ここの大陸の人々は機械に恐怖し、倒す力を持とうとはしない。
 何人のも仲間が、知り合いが捕らえ、殺されてしまったのを知っているからな。
 だから臆病になるのは分かる。
 しかし、それでも戦わなくてはいけないとき時がある。
 大崩壊から数百年。
 それで疲弊した人間に手の裏を返したように暴走した機械。
 恐怖によって支配する世界は我慢できない。
 それに突然ここの大陸の機械が、ヒトと共存して、このボロボロになった世界を共に歩まんとしていた機械がなぜ我々ヒトに敵意を持ったのか知りたい。
 勘違いしないで欲しい、オレの目的は機械の排除ではなく、機械からのヒトの解放だということを」
 ルッカは少し考えた言った。
「残念だけど私達はあなたを支持することができないわ。
 私達にはかけがえのないロボットの知り合いがいるの。
 彼はとても大切な友達だから、あなたの意見には賛同できないわ」
 それはルッカだけでなく、クロノもマールも同じであった。
「そうか、まだ正気を保った機械がいるとは、貴重な機械だ。
 大切にするんだな」
 リュト・サペルはそういってあっさりバンゴドームから去っていった。
 クロノたちは感じていた。
 このリュト・サペルという男は機械の排除ではないといっているが、実際は機械に対しての憎しみがあるのではないかと。
引用なし
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【167】-13- (第六章 廃墟を越えて……3.アリス...
 Double Flags  - 08/9/24(水) 2:29 -
  
 革命家と名乗るリュト・サペルと別れたクロノ、ルッカ、マールはトランドームへ向かった。トランドームでは、『前の周』と同じく食糧不足で悩んでいた。
 未来はわずかに違っていても抱える問題は変わっていないこと。それはやがて来る未来において食糧という問題は重要な位置を示すことを認識させられた。
 一行は32号廃墟を抜けてアリスドームへ向かった。

「お前達は一体何者だ、どこから来た」
 アリスドームの入り口で若者、といってもクロノたちよりも年齢は上でぐらいの男に聞かれた。クロノは「旅の者だ、トランドームから来た」と答えると、男は続いて言った。
「革命家とかいうものじゃないんだな」
「革命家?」
 三人の頭の中にはバンゴドームで別れたリュト・サペルが思い浮かんだ。
 クロノがその名を言おうとするとルッカが引っ張り黙らせた。
 トランドームでもクロノたちは似たようなことを聞かれていた。そこではドームの人たちに聞くとリュト・サペルに対する良い印象を持っていなかったのだ。
「誰ですか、それは?」
 マールが初めて聞いたかのように、聞き返すと若者がクロノとルッカの二人を奇妙に見ながらも答えた。
「名前は知らん、俺達にロボットを倒すのを手伝ってくれっていってきた奴だ。
 俺達はロボットには手を出さないって決めたんだ。あんなのに勝てるはずがない
 特にこのドームはロボットが沢山いる。
 そんなとこでロボットを倒そうなんて思う奴はいないよ」
 そうはき捨てた。
 その言葉の端々から、余計な真似はするな、よそ者は関わるな、そんな気配が伝わってくる。
 その空気に飲まれないように言葉を出す。
「私達は食料を探しにトランドームから来たの」
 若者は三人を軽く見定める。
「食料を探しにか、ご苦労なこった」
 そういって若者は後ろに下がっていった。
 その背は、お前らに期待はしていない。
 そんなことがありありと感じられた。
「ちょ、ちょっと」
 ルッカが若者に手をかける。

  パサ

 若者は軽くその手を払いのけると言い放った。
「どこのドームも一緒さ、ここでも食糧不足は変わらんさ」
 ルッカの目にはその男が少し諦めているように見え、若者は少し周囲を見て様子をうかがっているようだった。
 ドームの中から一つの塊が動いた。
 のそりのそり動くものは近くに来ると人間であることがかろうじて分かるものだ。
 姿は老人、ドンであった。
 かつて、『前の周』でこのアリスドームの人をある程度まとめていたこのドームの長老格の人物であり、マールの子孫でもある男だ。
「しゃべってもいいだろ」
 しゃがれた声で若者にそう話した。
「いいのか?」
「ああ、ここに来た。
 トランドームやバンゴドームから来たという。
 それはこの者たちは32号廃墟を抜けてきたということではないか。
 あそこのミュータントを倒すことができたのなら何とかなるかも知れん」
「しかし…」
 しぶる若者。
「わしらも限界なんだ」
 老人ドンは強く三人を見た。
「食料庫はそこの階段を下りたところにある。
 そこにはガードロボがいてな我々ではどうにもならんのじゃ」
「大丈夫よ、わたしたち強いから」
 胸を張ってマールは言った。
 ドンはにこりとわらいもとの場所に帰っていった。
 よろしく頼む、ということなのだろう。
 クロノたちが階段を下りる所で若者に止められた。
「少し前に同じことを言ってドームの食料庫にいった奴がいるが帰ってこない。
 あいつは自分だけ生き延びようなんて考える奴じゃない、それが帰ってこないということはロボットにやられたんだろ。
 気をつけろ、死ぬなよ」
 それだけ言ってまたドームの入り口の方へ歩いていった。


「よう! また会ったな」
 階段を下りると再びあの軽い声が聞こえてきた。
「「「!!!」」」
 見たことのある男が、操作パネルの前に立っていた。
「どうした? そんな驚いた顔をして」
「リュト・サペルっっ!! どうしてあなたがここに」
 灰色のローブをした、正直顔があまり見えない男がそこにいた。
「ん〜そうだな。その前にリュト・サペルって言うのは呼びにくいだろ? 
 なんかかっこよく、アーベルシュタイツァーなんて…」
「よけい呼びにくくなっているよリュトさん」
「そう! そんな感じでいい」
 革命家リュト・サペルはそれを聞くとすぐに操作パネルの方に向き直った。
「だから、何であなたがいるのよ」
「ん〜、やっぱり何か障害があるな」
「聞きなさいって」
 ルッカが再び声をかけようと近づくと、いきなり振り返った。
 ルッカは瞬間的に後ろに下がる。
 リュト・サペルのローブから見える目はまっすぐな黒瞳をしていた。
(!!!)
 するとリュト・サペルは、通路のない右側の扉を見た。
  はっ!
 力をこめて吐いた息をあげるとリュト・サペルは跳ね上がり、右側の扉の前に飛び移った。
「マジか」
 クロノも思わず呟く。
「じゃあ、用事があるんで」
 リュト・サペルはすぐに扉の先に進んでいった。
 呆然としている中、ルッカがいち早く回復した。
「私、追うわ」
「は? 何言ってるんだ」
 クロノに返事をせず、すぐに段差のある通路のない道に
「とああぁ」

  タンッ タンッ タンッ

 装置パネルを利用して上手く駆け上がる。
「三段跳び?」
「ちょっとルッカ、どうするのよ」
 登りきったところでやはり少し段差があり、あまりこちらの方へ寄らず壁側にしがみついているような形のルッカへ聞いた。
「マールとクロノは先に食料庫に行って…」
「なに言ってるの!」
「私じゃ、登るので精一杯だからとっとと操作パネルを使えるようにして…」
「じゃあ、何で登るのよ!!」
「ちょっと気になることが……よろしく……、マール、新兵器を使うときなんだから」
 ルッカは左の扉の中に消えていった。
 マールはクロノに向き直った。
「どうしようクロノ」
「ルッカなら大丈夫さ、いまはガードロボを倒して進むことだけを考えよう。それにあっち側はそれほどの敵もいなかったし」
 クロノはマールの手を引き左側の扉に入っていった。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」
 声をかける相手は聞こえているのないのかどんどん先に進んでいく。
 襲いかかる昆虫型のミュータント(それとも昆虫?)を素手で倒している。
 両手を合わせて握り、それを襲いかかるバグに当てるだけでバグは蒸発したように倒される。
(素手で甲虫を! 一体どうなっているの)
 すぐに灰となる虫を呼吸を整えてみると焼き焦げたような痕が見える。
 しかしバグはすぐに灰となってしまうためにあまり観察できない。
 どうやって甲虫を倒しているのか考えているうちにリュト・サペルは先のドアに入ってしまう。


 ルッカがドアを抜けるとリュト・サペルが立っていた。
「ここまで来たのか」
 言葉の中に呆れが入っている中で、さらにはしょうがないという感じが出ていた。
「あんたが人の話を聞かずに……どんどん進むからでしょ」
 途中、今おかれている状況に気づき声量を小さくする。
「これから先は危険なロボットがいるんだが……」
「大丈夫よ!!」
 ルッカは再び声を大きくしてしまい一体のロボットが近づいてくる。
「気づかれたか、少しはなれていろ」
 リュト・サペルは再び両手を合わせて、ちょうど、クロノが一本のカタナを持つような持ち方でロボットを斬り込む形で突進する。
「よけて」
 そんなリュト・サペルに後ろから声がした。
 左によけた瞬間、銃声が

  ドォキョッン

 弾丸は一気にロボットを貫き、心臓部をえぐるだけではなく二分の一ほど装甲を持っていった。
「なんと」
 驚きの声を上げた。
「このルッカ様が作った特別製のミラクルショットの敵ではないわ」
「自分でつくったのか?」
「そうよ」
「……見たこともない材質だな、あれほどの威力が出るのは内部に何かあるのか」
 リュト・サペルがミラクルショットに触れようとするが、ルッカはすぐに手を引っ込めた。
「それは企業秘密よ。
 それよりあなたこそ素手でミュータントを倒すなんてどんな鍛え方してるのよ」
「素手で倒した? 何を言ってるんだ、そんなこと出来るわけないじゃないか」
「でもさっきこうやって」
 先ほど見たリュト・サペルの動作をなぞるように繰り返す。
 両手を合わせて握る。
「あ、あ〜あ、それかそれは見ていれば分かる」
 リュト・サペルはそういうと次のフロアに入っていってしまった。

   キュィィィィィィイン

 けたたましい音と共にロボット達が向かってくる。
 先に進んだリュト・サペルを小走りで向かっていき、ロボット達に対しての臨戦態勢を取る。すぐに手元のミラクルショットを構えるルッカをリュト・サペルは手で制した。
 見てろ、ということなのだろう、狙いをつけるのは止めたがミラクルショットからは手を離さずリュト・サペルを見た。
 リュト・サペルは同じように手を合わせて握り、近づくロボットに向かった。
 その速さはクロノに劣るがそれでも早く、階段で見た高い身体能力がうかがえる。
 巧みにロボットのタックルなどをかわし。
 数体のロボット達はそれにほんろうされる。
 そのうちの一体がリュト・サペルから少しはなれて止まった。
 ロボットの目?のようなものが光る。圧縮レーザーである。
 リュト・サペルはその一体に瞬時に近づき、そのロボットに対してレーザーが発射さえる前に手を振り下ろした。

   グァァン

 何か赤白い光が見えた。
 ロボットは振り下ろされた握ッた両手により焼き焦げ、停止した。
(なに!! いまの)
 ルッカはスコープを掛けさらに詳しく見る。
 その後のリュト・サペルの動作は早かった。
 仲間が倒れたことを認識したのか、他のロボットも動きが止まる。
 これではリュト・サペルにやってくれといっているようなものである。
 リュト・サペルのはなつ赤く白の混じった光によってほとんど瞬時に機能停止にロボット達は追い込まれる。
 まるで踊りのステップを踏むかのように動いたと思うと、あっという間にこの状況。
「すごい」
 その鮮やかさに思わずこぼれた。
 かなり弱いロボットだが、これほど鮮やかに破壊するとは、リュトには十分な余裕が残っているというこのなのだろう。
「これが俺の武器だ」
 差し出したのは黒い手のひらに収まる球体。
「強力なエネルギーを凝縮させた兵器」
「まあ、兵器っていうと結構、恐ろしいものだが、凝縮と電磁場の方向性を調整することができる、エネルギーブレイド。
 昔の武器の名にちなんで、ファイアシャベリンと俺は呼んでいる。
 東の技工士が作ったのもだ」
 技工士という言葉をルッカは聞いたことがないが、おそらく現代でいうボッシュのような鍛冶屋のことだろうと想像した。
「なんで一瞬しかブレイドを出さないの? 節約?」
「節約のためってこともあるが、これは凝縮させて高熱をもったレーザーを放出するだけの武器だ。
 ロボットの中には光学システムの他に、熱源センサーを持っているロボットもいる。
 それらをごまかすために一瞬しか出さないのさ。
 ほらさっき、一体をこれで倒したら他のロボットの行動パターンが変化したように見えただろ? それは全部この熱源に反応したからさ」
 確かにルッカのスコープにも強力な熱源が見られたからその正体が分かったのだ。
「わかったかい?」
 それでもあまりルッカは納得していなかった。
「まあ、十分この場所のロボとに対応できるから、もうついてくるな、とは言わないさ。
 先に行くぞ」
 リュト・サペルは再び歩みをはやめた。
引用なし
パスワード
<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR...@p8181-ipad45hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp>

【168】-14- (第六章 廃墟を越えて……4.ガード...
 Double Flags  - 08/9/24(水) 2:37 -
  
 クロノとマールは鉄筋の上を渡り問題のガードマシンの部屋の前に来ていた。『前の周』と同じなら、あと数歩でガードマシンのセンサーに引っかかるだろう。
「ルッカになにをもらったんだ?」
「うん、なんかふくろを渡されて」
 ごそごそと出す。
 取り出したものは手甲とペンチであった。
「ペンチ??」
「どっかの工具みたいだな」
「一つは太陽石とにじの貝がらを利用した攻撃力強化の手袋、命名ライフショットと空間を湾曲させることができるペンチって説明書には書いてあるけど」
「どういう仕組みなんだ」
「さあ?」
「じっくり読む時間がないから本番で確かめるしかないかな」
「大丈夫なのか?」
「緊急時マニュアルには、セーフティがかかっているから大丈夫だって」
「……」
「………」
「心配は残るが、急いでルッカを追わないといけないからな」
 クロノは一歩踏み出した。

   ピーピーピーピー

 警告音が部屋中に鳴り響く。
 同時に巨大なガードロボが出現する。
 姿かたちは『前の周』のものと同じであった。
 大きな図体に地面につかずにわずかに浮いている。その横にビットが浮いている。
 戦闘開始。
 クロノはすぐに壁を使い大きく跳び上がった。
  凍れる・・・
 マールは唱えた“アイスガ”の呪文をクロノのカタナに絡みつかせる。

  “アイスガソード”

 魔力でカバーした氷のカタナは一体のビットを直撃し

   ダアァァアアン

 瞬時に爆砕した。

  ”サンダー・ショット”

 右手により『天』属性の魔力を込めたナイフをガードロボに放つ。
 ナイフはガードロボ本体に直撃し大きく震わした。
 クロノはナイフが直撃したのを確認し、カタナを構えると、

   ドフゥン

 クロノが衝撃波で吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
 クロノはどこからの攻撃か気づく前に、マールの声が聞こえた。
「ビットを……」
 最後まで聞こえるまえに、クロノは体を少しずらした。

   ピュン

 ビットを見ると何か光るものが見え、肩に何か熱いものが通り過ぎるのを感じた。
 左肩に少し火傷のあとができた。
 ビットの攻撃は『前の周』ではこの圧縮ビームは軽くかただが痺れる程度だが今回はそうも行かない威力らしい。

  ”サンダー”
  ”サンダー”
  ”サンダー”

 連続雷撃、『天』の属性を持つ魔力の塊がガードマシンに直撃した。

   ドフゥン

 再び衝撃波がクロノを襲った。

  ”アイスガ・カルン”

   クルウゥゥゥン カン

 冷気はビットを包み、浮力を消し去り床に落とした。
 ガードマシンに注視しながらクロノの方に近づくマール。
「イマイチ能力が掴めないな」
「ビットの行動を停止しても、なんかすぐに復活しそうだけど」
 凍らせたビットは氷の塊に包まれながらもがたがたと揺れている。

  ”ケアル”

 マールの回復呪文はクロノの火傷を癒し、マールはクロノが立ち上がるのに手を貸す。
「大丈夫?」
「ああ」
 例え回復呪文で傷を治癒させたとしても痛みは残る、まだクロノの肩は痺れていた。
 クロノが再びカタナを構えるとマールは離れた。
 沈黙を続けるガードマシンに近づく。

  ”らくよう”

 わざの発動するまえに腕が伸びきったところで、重くなった。剣先はガードマシンにわずかなところで力及ばず止まった。
 クロノはその重さに何とか踏みとどまり、無理に横薙ぎに力を加えるため、カタナを傾けるが重さが増し、それが体全体に広がっていく感じがする。
 わずか数秒の間で体が動かないほどになり動けなくなっていた。

  ”ライフ・ショット”

 マールの声に呼応するかのように魔力の矢がガードマシンの中心に突き刺さり、消える。
 マールはさらに弓を引く。
 同じところに矢は刺さり。さらに弓を引く。
 強化された魔力の矢を放ったところで途中で消え去った。
 重さから逃れることができたクロノはその場をはなれ、マールの近くに行く。
「たすかったよ」
 クロノはガードマシンの能力に気づいたことを話した。
「たぶん、空気を操るとみた」
「空気?」
「衝撃波や近くに行ったとき、なんか空気が薄く感じた」
「どうするの?」
「サポートしてくれ」
 なにも言わずにマールは呪文の構成を始めた。

  ”ヘイスト”

 クロノの体がわずかに赤みをおびる。
 クロノはカタナを構え、ガードマシンに近づいた。
 体がだるくなる。
 そのときビットが動き出す。

  ”サンダガ”

 雷撃の波がガードマシン、ビットを巻き込み爆裂させる。

  ドゴォォォォォン

 体に感じていた気だるさが一気に抜ける。
 ビットはその機能を停止した。
 ガードロボの方は一時的に機能を停止していたが、クロノを認識し動き出す。

   ピーピーピーピー

 ガードマシンの警告音がなる。
 同時に冷気が辺りを包んだ。

  ”アイスガ”

 無数の氷がガードマシンを襲う。
 続いてマールは呪文を発動させる。

  ”アイスランス”

 人二人分の大きさの氷の刃が一気にガードロボを貫く。
 そこへクロノがカタナに『天』属性の魔力を込めたカタナを振り下ろす。

  ”サンダーブレイド”

 カタナに纏った”サンダー”の力が貫かれたガードマシンの装甲から中身をえぐるように斬り込む。

  ”かいてんぎり”

 追い討ちをかけるようにガードマシンを斬った。


 クロノはガラクタとなったガードマシンを見ていた。
 その表情は神妙でありマールは声をかけるのを戸惑った。
「……クロノ?」
「やるせないな」
 クロノは食料庫へ歩いていった。
引用なし
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【169】-15- (第六章 廃墟を越えて……5.革命家.)
 Double Flags  - 08/9/24(水) 2:42 -
  
「ここがアリスドームの中心部だ」
 居住区から離れたドームの中心部、中央制御室。
 かつては人の手で管理されていたであろうその場所はロボットによって管理されている。巨大なディスプレイにパネル、意外と綺麗にまとまっていた。いや、綺麗にまとまっているというよりもそれ以外ほとんど無かった。
 そこはルッカは懐かしい場所だった。
 クロノ、マールと共に世界を救おうと決めた、決意した場所である。
 そのルッカに前にはボロボロのローブを来た長身の男がいた。
「で、リュトはここに来てなにを知りたいの」
 リュトの黒瞳がルッカを見た。
「アリスドームの秘密だ」
「秘密?」
「ルッカ、だったか?
 このアリスドームでおかしいと思ったことはないか?」
「? いやなにも」
「そうか、まあこの大陸に来て日が浅いというのなら分からないでもないが。
 なら、ここ以外に人のいるドームに行ったことがあるか?」
「トランドームに」
「トランドームに比べてこことなにが違う?」
「ここの方が大きいって事?」
「確かにアリスドームの方が大きいが、トランドームとあまり人口は変わらない」
「そうだけど、それはロボットに支配されているからで…」
「ロボットに支配されているというが、トランドームにロボットはいたか?」
「……見かけなかったけど。
 それはトランドームがここと違ってこの中央制御室があるから…………あれ?」
「考えてみたか?
 中央制御室でなくてもトランドームには居住区の環境を一定に保つ制御室があることに、そしてそこはロボットが管理していない。
 でもここにはロボットが制御室を支配している」
「でもそれはここが大きな施設だから」
「知らないかもしれないが、ここと同じ程度の施設はどのドームにも存在していた」
「それってどういうこと」
「ここの制御室はその中央制御室と言うように他のと少しだけ設備が違う。
 その一つに通信用のシステムがあるわけだが……」
「通信システムって、それが生きていれば……」
「そう、他のドームと交流を可能とすることができる。
 だが、この大陸のどのドームも通信システムだけ破壊されている。
 だから俺はこのアリスドームは他のドームと違ってロボットがドーム内、といっても居住区以外を支配している理由がここにあるのだと考えた。
 そしてそこから、一つ浮かんだのが、ロボットは完全に人を滅ぼそうとはしていないということ。
 もし滅ぼそうとしているなら、なぜ環境制御室を破壊しない? 俺はこの大陸のほとんどのドームを見て歩いたが制御室はほとんどすべてのドームの中に生き残っていた。中には新しく直されているところもあった」
「誰かが直したとは考えられないの?」
「そんな奴はこの大陸にはいないよ。俺が見て回った限りは」
「でも、ロボットなら通信システムだけを破壊することができるんじゃないの? 
 それとも、ロボットにはこのアリスドームを守る理由があるって言うの?」
「それは俺も考えた。
 だから、その理由を知りにここまで来た。
 まあ、ここに入り込むだけでも苦労したんだがな」
「苦労? あなたの実力ならばこの辺りのロボットにはそう簡単に負けはしないと思うけど」
「問題はロボットじゃなく人間さ。
 さっきも言ったがこのドームにはロボットがいる。
 そのためここの住人はなにがロボットの気に触るかビクビクしているのさ。
 そんなんじゃ、俺の言う反乱や反抗なんてとても無理、そんな気にはならない。
 それを促そうとする俺は厄介ものってわけになる。
 あんたらも似たようなものだろう?
 違うか?」
 確かに、ルッカはさっきのドンの様子を見ているとそんな感じがしていたのは事実だった。
「確かに下手に刺激してこっちが巻き込まれたんじゃどうにもならんからな。
 ここの人間はもうほとんどロボットに支配されている状態さ。
 抜け道探すのに一苦労だったな」
 リュト・サペルはパネルを操作しはじめた。
「それでな。なぜそこまでロボットがこのアリスドームを残す理由を、といっても仮説はあるんだがな」
「仮説?」
「まあな」
 それ以上続けず、パネルを操作した。
 ルッカもなんとなく歯切れが悪いがこの男とそれ以上喋らないというような雰囲気が出ていた。
「なるほど、このアリスドームはずいぶん古いんだな。昔の資料がたくさん入っているな」
「昔の資料?」

  カチカチ ポチ

「擬人ロボットや人造人間、対戦闘用ロボット、家庭用ロボット、昔の人は色々やったんだな」
「擬人ロボット?」
「ああ」
 ディスプレイに人間そっくりの構造をしたロボットが映し出される。
「大陸によっては近代になっても戦争をしていてな、そこで人間に姿かたちが似ている擬人ロボットって言うものが戦場を動かしたって話だ」
「人造人間となにが違うの?」
「人造人間は人間が素体となっているんだ。
 失った腕とかを機械に変えた人のこと、これはロボットが開発された初期にもっとも盛んだったていう技術らしいな。
 逆に、擬人ロボットは元から全て人工知能で補っていたものに、人間の姿かたちのからだを与えたもの。
 これが大変そっくりに作ってしまってな、戦争時、それは大変だったらしい。
 いま、擬人ロボットがいないのはその時の教訓から、擬人化の技術を廃棄したってらしい。
 まあ、このときにも色々と問題が起きていたらしいが……ロボットの歴史にも色々あるんだな。
 ロボットは人間が作り出した文化だ、これは否定できない事実だ。例え今がどんなものであろうともな。
 かつてはヒトとロボットが作り出したのが今の文明。
 かつては協力し合っていた時代もあったというのにこの始末。一体でどこで間違ったのか」
 リュト・サペルはため息をつく。
「? なるほど、ならば、ここの狂った機械を作り出した大元は何だ?
 どこからこの……」
 何かを掴んだのかさらにパネルを操作する手を早める。
「リュト」
「なんだ?」
「調べ物が終わったら、そのデータベースを使わせてもらってもいい?」
「……それはかまわない。
 どうせ、ルッカもこのデータベースを目的にしていたんだろ」
「ええ、まあ」
「大丈夫だ、たぶんそれほど時間はかからない、と思う」
 ははは、と笑いながら操作を続けるリュト・サペル。


「やっと見つけた。これがこの大陸の元凶だな」
 数分後、ディスプレイに現われたのはかつてルッカがマザーブレインとであった場所であった。
(あれは、ロボの故郷の工場? 歴史は変わっているといっても、マザーブレインという存在は変わっていなのね)
 少し暗い気持ちになった。
 そんな思いをよそにリュト・サペルはさらに深い情報を探って行く。

   ウィィィィイインウィィィィィイインウィィィィィィイイン

 突如、扉から三体のロボットが現われた。
 それに気づき、素早くその場を離れるルッカとリュト・サペル。

  ”レーザー”

 高圧レーザーが操作パネルを焼き切る。
「やろってのね」
 ルッカはミラクルショットを取り出しかめた。
「まてっ!!」
 リュト・サペルはルッカを止めポケットから黒い球体を取り出した。

  ”アクセス”

 球体は光を放った。
 光はロボット三体と包んだ。
 物陰に隠れ、光が収まるのを待ち、再びロボットを見ると三体は停止していた。
「見ていろ」

   スウィン

 ロボットの機能が回復し、互いに何かを確認しているようだ。
(なにが起きているの)
 少し把握し切れていないルッカはその様子をじっくり見ていた。
『音声確認』

   カーカー

 三体のロボットはその場を離れた。

   ウィィィィィン

 三体がこの部屋から出て行った。
「どうゆうこと?」
「今投げたのは、ロボットの認識するシステムを少しいじる信号を出すプログラムを、光として浴びせて誤認させるようにするもの、ロボットを壊さずその場をやり過ごすことができる兵器さ。
 ただ特殊な機器を使っているので、大量に使うことができないからな。
 あまりこの辺りを壊すことができないから仕方なく使ったまで、いわゆる秘密兵器だ」
(確かに、機械を詳しく分析していればそれも作れるかもしれないけど)

   ウィィィィィン

 再び扉が開き、ルッカは構える。
 数対のロボットが入ってきた。
 先ほどのロボットとは別の形をしたものであった。
「修復ロボットが来たか」
「修復ロボット?」
「ああ、おそらくさっき破壊したデータベースを直しに来たんだろう。
 すまないなルッカ、しばらくはここに入れないわ。
 なに調べるか分からないが」
 二人はロボットに気づかれないように外にでた。
「大丈夫よ、見当はついているから」
「そうか、俺はしばらくこのドームの中を漁っているつもりだ。
 金髪ポニーテイルのお嬢さんの母親を探すんだろ?」
「へっ、あ、ええ」
 リュト・サペルが苦笑いをする。
「また機会があたら会うこともあるだろう」
「データベースが直った頃に再びここに来ますよ」
「そのとき俺がいるか分からんがな」
「はははは」
「冗談はともかく、いつ直るか分からないぞ。
 まあ、数日中には直るだろうけどな」
 二人はそういって別れた。
 革命家リュト・サペルはそのまま留まり、ルッカは元の来た道を引き返した。
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【186】-16- (第六章 廃墟を越えて……6ガードマ...
 Double Flags  - 10/9/20(月) 19:56 -
  
 クロノとマールは鉄筋の上を渡り問題のガードマシンの部屋の前に来ていた。『前の周』と同じなら、あと数歩でガードマシンのセンサーに引っかかるだろう。
「ルッカになにをもらったんだ?」
「うん、なんかふくろを渡されて」
 ごそごそと出す。
 取り出したものは手甲とペンチであった。
「ペンチ??」
「どっかの工具みたいだな」
「一つは太陽石とにじの貝がらを利用した攻撃力強化の手袋、命名ライフショットと空間を湾曲させることができるペンチって説明書には書いてあるけど」
「どういう仕組みなんだ」
「さあ?」
「じっくり読む時間がないから本番で確かめるしかないかな」
「大丈夫なのか?」
「緊急時マニュアルには、セーフティがかかっているから大丈夫だって」
「……」
「………」
「心配は残るが、急いでルッカを追わないといけないからな」
 クロノは一歩踏み出した。

   ピーピーピーピー

 警告音が部屋中に鳴り響く。
 同時に巨大なガードロボが出現する。
 姿かたちは『前の周』のものと同じであった。
 大きな図体に地面につかずにわずかに浮いている。その横にビットが浮いている。
 戦闘開始。
 クロノはすぐに壁を使い大きく跳び上がった。
  凍れる・・・
 マールは唱えた“アイスガ”の呪文をクロノのカタナに絡みつかせる。

  “アイスガソード”

 魔力でカバーした氷のカタナは一体のビットを直撃し

   ダアァァアアン

 瞬時に爆砕した。

  ”サンダー・ショット”

 右手により『天』属性の魔力を込めたナイフをガードロボに放つ。
 ナイフはガードロボ本体に直撃し大きく震わした。
 クロノはナイフが直撃したのを確認し、カタナを構えると、

   ドフゥン

 クロノが衝撃波で吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
 クロノはどこからの攻撃か気づく前に、マールの声が聞こえた。
「ビットを……」
 最後まで聞こえるまえに、クロノは体を少しずらした。

   ピュン

 ビットを見ると何か光るものが見え、肩に何か熱いものが通り過ぎるのを感じた。
 左肩に少し火傷のあとができた。
 ビットの攻撃は『前の周』ではこの圧縮ビームは軽くかただが痺れる程度だが今回はそうも行かない威力らしい。

  ”サンダー”
  ”サンダー”
  ”サンダー”

 連続雷撃、『天』の属性を持つ魔力の塊がガードマシンに直撃した。

   ドフゥン

 再び衝撃波がクロノを襲った。

  ”アイスガ・カルン”

   クルウゥゥゥン カン

 冷気はビットを包み、浮力を消し去り床に落とした。
 ガードマシンに注視しながらクロノの方に近づくマール。
「イマイチ能力が掴めないな」
「ビットの行動を停止しても、なんかすぐに復活しそうだけど」
 凍らせたビットは氷の塊に包まれながらもがたがたと揺れている。

  ”ケアル”

 マールの回復呪文はクロノの火傷を癒し、マールはクロノが立ち上がるのに手を貸す。
「大丈夫?」
「ああ」
 例え回復呪文で傷を治癒させたとしても痛みは残る、まだクロノの肩は痺れていた。
 クロノが再びカタナを構えるとマールは離れた。
 沈黙を続けるガードマシンに近づく。

  ”らくよう”

 わざの発動するまえに腕が伸びきったところで、重くなった。剣先はガードマシンにわずかなところで力及ばず止まった。
 クロノはその重さに何とか踏みとどまり、無理に横薙ぎに力を加えるため、カタナを傾けるが重さが増し、それが体全体に広がっていく感じがする。
 わずか数秒の間で体が動かないほどになり動けなくなっていた。

  ”ライフ・ショット”

 マールの声に呼応するかのように魔力の矢がガードマシンの中心に突き刺さり、消える。
 マールはさらに弓を引く。
 同じところに矢は刺さり。さらに弓を引く。
 強化された魔力の矢を放ったところで途中で消え去った。
 重さから逃れることができたクロノはその場をはなれ、マールの近くに行く。
「たすかったよ」
 クロノはガードマシンの能力に気づいたことを話した。
「たぶん、空気を操るとみた」
「空気?」
「衝撃波や近くに行ったとき、なんか空気が薄く感じた」
「どうするの?」
「サポートしてくれ」
 なにも言わずにマールは呪文の構成を始めた。

  ”ヘイスト”

 クロノの体がわずかに赤みをおびる。
 クロノはカタナを構え、ガードマシンに近づいた。
 体がだるくなる。
 そのときビットが動き出す。

  ”サンダガ”

 雷撃の波がガードマシン、ビットを巻き込み爆裂させる。

  ドゴォォォォォン

 体に感じていた気だるさが一気に抜ける。
 ビットはその機能を停止した。
 ガードロボの方は一時的に機能を停止していたが、クロノを認識し動き出す。

   ピーピーピーピー

 ガードマシンの警告音がなる。
 同時に冷気が辺りを包んだ。

  ”アイスガ”

 無数の氷がガードマシンを襲う。
 続いてマールは呪文を発動させる。

  ”アイスランス”

 人二人分の大きさの氷の刃が一気にガードロボを貫く。
 そこへクロノがカタナに『天』属性の魔力を込めたカタナを振り下ろす。

  ”サンダーブレイド”

 カタナに纏った”サンダー”の力が貫かれたガードマシンの装甲から中身をえぐるように斬り込む。

  ”かいてんぎり”

 追い討ちをかけるようにガードマシンを斬った。


 クロノはガラクタとなったガードマシンを見ていた。
 その表情は神妙でありマールは声をかけるのを戸惑った。
「……クロノ?」
「やるせないな」
 クロノは食料庫へ歩いていった。
引用なし
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【187】-16- (第七章 不思議の国の工場跡 一レジ...
 Double Flags  - 10/9/20(月) 20:11 -
  
 ドームの奥、じめったい空気とかび臭い匂いのなか一人の少女がある機械をいじっていた。
 機械の周りには多くの工具が散らばっており、それこそ足の踏み場もないものである。
 ただし、床とは違って少女はロボットに対してとても丁寧に扱っていた。
 連日の作業で疲れているにもかかわらず少女――ルッカは長期間放置されていたロボットを修理した。ロボット――ロボは、起動するとともに記録の混乱などがあったが、いまあ落ち着いている。
「クロノサンとマールサンはドウシタノデスカ」
「あの二人なら監視者ドームにいったわ。理の賢者に会いにね」
 ルッカはロボの動きを確認していた。
「やっぱりロボも『前の周』のこと覚えているのね」
「ハイ。クロノサンとの共に戦った日々。400年間フィオナの森を見続けた記録。全て残っていマス」
「そう、ね。ねえロボ。私達の周りで一体なにが起こっているのかな」
「やはり、ダレカの陰謀なのでショウカ?」
「まだ情報が足りなすぎるわ。ボッシュはなにも知らなかったけど、ガッシュやハッシュなら何か知っているのかもしれない、と思いたいけどあまり期待はできないわね」
「クロノサンとマールサンは知っているノデスカ?」
「ええ、でも可能性にかけてみたいじゃない? それにガッシュは……」
「訪ねたときにはナクナッテイマシタネ」
「ええ」
 無言。
 ルッカは作業をし続けた。


  ”サンダガ”
  ”サンダガ”
  ”サンダガ”
 四回目の三連続の雷撃。
 突き抜けた雷撃はクロウリーさまから放出される。
 クロウリーさまの驚異的な復元能力を細胞の限界から焼きつかせる。
 クロノはカタナを、マールは弓を構える。しかしクロウリーさまは限界をむかえて灰となり消え去った。
「マール、大丈夫?」
 敵の脅威が去ったのを確認してクロノはマールにかけよる。手に持ったミドルポーションを傷口と体内に取り込ませる。
「少し頑張りすぎたみたい」
「復元にかかる時間差に気づかなければ大変だったよ」
「へへへ」
 額に汗がにじみ、顔色も少し悪くなっているが、精一杯の笑顔を見せたマール。
 マールの体調が十分に回復すると地下水道跡を出た。


 地下水道跡を出ると、そこは前と変わらない風景が見えた。
 死の山も監視者ドームも。変わらない風景。こわれた風景。
「死の山も、ドームも変わらないな」
 二人は死の山の山道を通りすぐ、監視者ドームに歩いた。
 ちょうど監視者ドーム入り口近くでマールが聞いてきた。
「ガッシュはわたし達のこと分かるのかな? ……といってもわたし達の会ったのはガッシュさん本人じゃないけど」
 『前の周』ではクロノたちはガッシュの思考パターンが入ったヌゥと出会っていたが、ガッシュ本人とは会うことはなかった。
「ボッシュは聞いてもなにも知らなかったことを考えると、やっぱりルッカのいったとおりなにと考えたほうがいいかも……、あけるよ」
 クロノは扉に手をかけ、監視者ドームの扉を開けると、そこは以前とは違った人の気配。今まで二人が訪れたどこのドームよりも人の気配があった。
 しかし、ライトはついていなく、二人は目の前は薄暗い。足元にはガラクタ。二人は手を引きながらその気配のするほうへ向かう。
 数メイトル歩いたところでクロノは足を止めた。
 マールのそれに続いて足をとめる。
 それからクロノは体を動かすことをとめた。
 クロノの額には銃口。
 人の気配があったことに油断していた。
 いきなり銃口を突きつけられるとは、おもわずマールが動こうとするが背中から硬い何か、おそらく銃口を押し付けられた。
 他にも数人がクロノとマールの周りを取り囲んでいる。
 クロノはよくルッカにミラクルショットで殴られているが、こうやって突きつけられるのははじめてである。ガルディア王国の兵士にも銃士はいるのだが直接対峙することはなくここまで来た。と、ここでクロノは銃についてあまり知らないことに気づいた。クロノの技術の多くは、剣技に注がれている。ウェポンマスターと称される師匠からは剣技を中心に、中近接戦闘を主として鍛えられたためあまり遠距離に対しては覚えなかった。ある程度の基礎知識らしきものはあるのだが、正直忘れている。銃に関してはルッカの方が師匠から学んでいたのであまり気にしなかったせいもある。そのため、内心、まずいと感じながら、どのように対応するべきなのか考えていた。
「何用だ」
 低い男性の声。クロノに銃を突きつけているほうの男が発した声。それほど歳を食ったわけではなく、年齢の近さが感じられる若者といった印象をクロノは受けた。
「人に会いに来た」
 正直にクロノが答えると、男は少し黙り、さらに質問をしてきた。
「どこから来た」
「アリス、ドーム」
「……誰に会いに来たんだ?」
「ガッシュ、という老人に会いに来た」
「そんな人物は知らん」
 男は即答した。
「魔神器、海底神殿、黒鳥号を見たことがある」
 気配のいくつかが動くのを感じた。
 男もその単語に何かあるのか、動きを止めていた。
 しばらく、硬直状態が続くと、近づいてくる気配がある。そして、小声で何かの話が広まる。
 やがて、銃口を突きつけている男に伝わる。
「少し歩いてももらう」
 男は銃口をクロノからはずした、同じくマールの背中に突きつけられていた銃も離れる。
 男が先導し、クロノとマールはその後ろを歩く。さらにその後ろからは何人か付いてくる。
 50メイトルほど歩いたところにある部屋に入れられた。
 部屋の中は簡素なもので、ソファーらしきものが二つとディスプレイがあるだけであった。
「座っていてくれ」
 二人が腰掛けたのを見ると、男も座った。どうやら、客人として迎えているようだ。
 男は二人を見て口を開いた。
「さっきはすまなかった。
 最近物騒な輩が出歩いていて少し警備を強くしていたんだ」
「輩といいますと?」
「まあ、それはいい。
 君達は他の大陸の人間なんだろ?」
「ええ、まあ」
「なら分かると思うが、この大陸は異常なほど機械が支配している場所。
 おかげでこの大陸のドームの人々はみな生きる気力を無くしてしまっている。
 そんな中でもこのドームは、おそらく唯一活気のあるドームなんだ」
「活気のあるドーム?」
「チーフ、喋りすぎでは?」
 クロノたちの後ろに座っていた男が言った。
「大丈夫だ、それにいくつかの知らせるようにといわれていただろ?」
「しかし」
「心配するな」
 先ほどまでクロノに銃口を向けていた人物とは思えないほどの笑顔で部下であろう男に言った。
 部下であろう男も、チーフと呼ばれたこの男にそれ以上なにも言おうとはしなかった。ただし、少し納得がいかないといったことが顔に表われていた。
 マールが顔を向けると、その部下であろう男は顔を背けた。
「まあ、話が折れたが、どこまで話したか……
 え〜と、たしか唯一活気のあるドームというところまでだったかな」
「はい」
「君達はアリスドームから来たといっていたから、少しちがうだろ?」
「ええ」
「例えば、我々のようにドームを守る組織があること。
 他のドームでは、ドームを守る組織はなかっただろ」
「はい」
「それには理由がある。
 このドームは、他のドームから集まってきた人間で構成されている。
 生まれたドームの暗い雰囲気になじめなかった者。
 ドームの外に出てミュータントに襲われた者。
 そんな人間が集まってこのドームを自分達で動かしている。
 知っているかどうか分からないが、他のドームは人間が住むのに最低限な自動環境制御システムが働いている。しかし、このドームにはそれがない。
 なぜか、それはこのドームが機械に反抗するレジスタンスでもあるからだ。
 機械のヤツらは、オレたちがこのドームに集まり、機械に反抗するそぶりを見せていたために、かなりはじめのときに自動環境制御システムを破壊されたんだ。
 他のドームはこのことを知っているから機械に手出しはしたくないと考えているのだろうが、それでは機械共の思うツボ。
 だから、オレ達は何とか自動環境制御システム自分達の手で直そうとしたんだ。
 でも、自動環境制御システムはもう100年近い前のシステム。
 当時を知るものはいないから、ほとんど手探りで直していったでも、それも途中で難しくなった。そんなときに、数年前にこの大陸にガッシュさんが現れた。
 ガッシュさんはオレ達の知らない技術で、いままでの自動環境制御システムを作り出したんだ。
 そこからオレ達は仲間を集め、機械から再びこの大陸の支配権を取り戻すために戦っている。いまはまだ、このドームの守りを固めることを優先しているから、まだまだ機械共との戦いは避けている。
 なんたって相手は無尽蔵に兵士がいる。
 人間は有限だから、持久戦になったら確実に敗れるのはこっちだ。それに相手は面倒なことに学習機能を持っている。それを考えると、一気に畳み掛けるって言うのが…」
 そこでチーフの話は終わった。なぜなら、部屋に青い服を着た小さな老人――ガッシュ、ガッシュに付き添うようにヌゥ、そしてガタイのいい男が入ってきたからだ。
「エド、彼らが……」
 チーフは立ち上がり紹介した。
「ええ、彼らが先ほど伝えた二人です。
 おっと、紹介が遅れた。オレは組織の自衛部門のチーフをやっているエドガーだ」
 クロノとマールも立ち上がった。
「オレはクロノ、彼女はマール」
 ガッシュはつぶれた声で紹介を始めた。
「私は、もう知っているかもしれないがこのドームの所長のガッシュだ。
 後ろにいる、青いのはヌゥ。
 となりにいるのがこのドームの責任者の一人、自衛部門のリーダーのトルエ」
 ヌゥの方は全く動かないが、トルエの方は柔らかい直礼をした。
「すまないが、自衛団の人たちは少し外してもらえないか」
「なっ!!」
 チーフのエドガーとリーダーのトルエ以外は、何か抗議しようとしたが、二人に制止される。しぶしぶ、エドガーとトルエに連れられて部屋を出る。
 自衛団が外に出たをの確認すると、ガッシュは二人にソファーに座るように勧め、自分も二人の目の前の席に座る。
「おぬし達が見たという海底神殿、黒鳥号は本当の話か」
「はい、それでガッシュさんはわたし達に見覚えがありますか?」
「見覚え、か」
 長い白い眉毛のそこに隠された目がうっすらと大きくした。
「いや、ないな。
 おぬし達のような、懐かしい力を持ったものならば忘れないと思うが」
「懐かしい力?」
「過去に失われた力。
 エレメントが広まるとともに次第に使われなくなった力。
 時に神の法、魔の法と呼ばれる力。
 自らを最も消費する力」
 クロノとマールは自分たちのことを話し始めた。
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【188】-17- (第七章 不思議の国の工場跡 二 古...
 Double Flags  - 10/9/20(月) 20:13 -
  
 監視者ドームの個室。
 大きなディスプレイ、ソファーと机、そして青い物体ヌゥがいるだけの空間で
 老人――ガッシュと若者二人――クロノとマールがソファーに座って話していた。
「時を越えて、か」
 つぶれた声が部屋にひびく
「タイムトラベラー。
 いや、タイムジャンパーとでも言うべきか。
 ふむ、だが、わしの『時を翔ける翼』が役に立ったことは開発者として、十分な成果といえるか。
 それで再びタイムゲートによって、お前さん達はラヴォスを倒したにもかかわらず、この未来のありようをみて、どうするべきか考えているということだな」
「ガッシュさん。
 未来で生きているあなたならこの未来の原因は何か知っていませんか?」
「確かに、未来という時代を考えれば原因を探るのは一番だな。
 この未来に落とされたわしもこの未来のありようをみれば、その原因がどこにあるのか、実際に調べたくなるものだ。
 それにこのドームは、他のドームからデータを収集するために改造を施した。もちろん、このドームの人間に協力しながら。
 はじめ、わしはラヴォスについて調べた。ここの落とされた原因がラヴォスにあったからな。そして私が調べた中では、おぬし達の言う『ラヴォスの日』以前に正確な時間は分からないが倒されていることが分かっている。
 これは、おぬし達がラヴォスを倒すことが前提でこの時間平面があるのだろう。そして、AD1000年以降に何かが起こり、この星を滅ぼしたということ。では、なにが起きたのか。
 このドームの中にもともと残っていたデータに面白いものが残っていた。どうもこのドームは、そもそもこの星に関係したエネルギー観測所を持っていたらしい」
 ガッシュは手元から、手のひらに納まるほどの機械を取り出した。
 そのような機械をクロノは見たことがあった。以前ルッカの発明で有線操作から無線操作を行うためにつくったリモートコントローラ、略してリモコンに似ていた。ただルッカが作ったものはもう少し大きく、また上手く操作できないということから完全自立自動型ロボをつくることにしていた。この未来の技術では、すでにリモコンの技術があるとは、少し知識があるだけに、クロノは驚いていた。
 またここにルッカが居たらこういった技術にもっと驚いていただろう。ディスプレイから発せられる光から机の上の空間に立体的な映像を映し出す。
 そこに映し出されたものはグラフであった。
 ギザギザの折れ線グラフ。
 ただクロノには、数字と線の羅列にしか見えず、なにを意味しているのかサッパリわからなかった。一方少し知識のあるマールは、横の数字がかろうじて年代を表していることぐらいしか分からなかった。
 そこへガッシュが説明をしはじめた。
「このグラフから百年周期でエネルギーの異常な高さが見られる。
 これが君たちのいう何かに関係しているのかもしれないな」
 グラフには、AD1000年以降でいくつかのエネルギーの高さが見られる。
「これがエネルギーの異常ですか?」
 マールがAD1000以降で一番最初の突出した場所をさす。
「いやこれはエネルギー革命だ。
 他にもこういった産業上の革命というのが起きてな、分かりにくいから史実に基づいて少し分けてみるともう少し分かりやすい」
 ガッシュはリモコンをさらに操作した。すると、立体的なグラフの線が黒から、赤と青に変わった。
 さっきマールが示した点は、青で示されていた。
 もう一つ、赤の線は、ほぼ百年周期で高い値を出していた。
「100年周期で何かが起きている?」
「その通り。
 この記録を見るにはAD1010年近くからこの赤い線は始まり、十数年後に一度大きな値を示している。
 これを始まりとして、AD1120〜1130年ごろ、AD1210〜1230年ごろ、AD1320〜1330年
ごろと少しずれているが、何かしらのエネルギーが発生している。
 わしははじめ、これはラヴォスの影響ではないかと考えたのだが、どうもエネルギーの質が違うようなのだ。
 ただし、このエネルギーの影響は多くのものに影響を与えていることはたしかのだ」
「それはどこまで分かっているの?」
「この影響は負の遺産と、わしは考えている。
 ラヴォスでないにしろ、これほどまで長い時間この星に影響を与えているのだ。
 そして今から200年ほど前、AD2100年の中頃にそれは起きた。
 現在この大陸群を支配している存在、マザーブレインの暴走が明るみに出たときだ。
 これにより、この時代の人類は知らないうちに機械に支配されていくようになっていった。
 このAD2100年、人類はマザーブレインのヴァージョンアップ作業をしていたのだ。
 今思えばマザーブレインはこの時をまっていたのかも知れんな。
 そして、人に危害を加えるようになったロボット、機械知性体と人類との抗争いや戦争が始まった」
「その戦いは? まさか二百年も戦争が続いているわけではないだろう?」
「そう、この時の戦争は、お互いに消費し続け戦争は自然消滅した。
 このときはまだ人類もロボットと十分な戦いをするだけの力を持っていたのだが、戦争が消滅し、人類は破壊された町で生きていくことになり、自然と文化レベルが下がっていった。
 一方のロボット側は、戦争中につくった環境を操作し、人類を滅亡させるようなシステムがやがて自らにも影響を与えるようになり、主要なアンドロイドたちが動かなくなっていくなど、ロボットも文化レベルを下げることになってしまったんだな」
「では、なんでいまロボットが襲ってくるんですか?」
 そしてガッシュは立ち上がり、部屋を一周した。
 その様子をクロノとマールは不思議そうにみていた。
 再びソファーに戻り座る。
「これでよし」
「なんなんですか?」
「いや、知っていると思うがここには監視カメラが設置されている。
 これ以上の話はここの人間には聞かせられないのでな……」
「?」
「自分達にも制限が課されるようになったロボット、マザーブレインはロボットの生産を止め、必要以上の消費を抑えた。
 しかし人類は戦争が終わると、人口が増加の一歩を辿っていった。
 そこでマザーブレインは人間の人口を管理するために、人間を刈り取りはじめた」
「…………」
「そんな…」
 二人の顔が変わる。
「マザーブレインにとっては星を守るためなのだろうな。
 しかもマザーブレインの意図は人類には知らされていない。
 人類は知らないので対抗しようとするが、マザーブレインからすればそれは自分の計画に邪魔になる存在、故に叩かれる。
 それが何年も、何十年も続いている。
 やがて人は生きる気力をなくし、今の時代のようになっているのだ」
「なんでガッシュさんはそれを教えてあげないんですか?」
「わしはこの時代の人間ではない。手助けはするがこういった本質には自分達で近づいていかなければならない。
 それに本来ならもう十分に星の環境は元に戻っているはずだった。しかし再びAD2234年にエネルギーの嵐、しかも今まで出最大級のものが起き、この大陸の環境が悪化していったのだ。
 ロボットは予想だにせず、十分な防衛策を持たずに、更なる暴走を、人類はすでに機械文明とは離れたものではあったが、ヒトの無気力を増大させていくものであった。
 現状の環境は多くがこの最後のエネルギーの嵐が原因だ」
 少し静かになったあとマールが立ち上がった。
「よし! これが今度の冒険の目標だね」
「?」
「だから、このエネルギーの嵐の原因を探ることが今度の目標。
 このエネルギーの嵐の原因を探らなきゃ、このままこの星は悪くなっていくばかり、私達でそれを止めないと、きっとそれがあの少年の望んでいたことなんだよ」
 クロノは少し考え口に出した。
「……そうだな、よしやろう」
 クロノも立ち上がり、同意する。
「このエネルギー嵐の原因か、これは困難をきわめるぞ」
「覚悟の上です」
「そう、わたし達は一回世界を救っているんだから、今度も救ってみせるよ」
 ガッシュは、クロノ、そしてマールをみた。
「たしかに覚悟はあるな。
 まあ、時代を飛べるのなら可能かもしれないな。
 再びここに来るときには『時を翔ける翼』を完成させておこう」

 クロノたちは監視者ドームを去りしばらく経った後。
「これでよかったのか? 少年よ」
 ガッシュの前には、子供、ただしこの未来の大陸では見たことのない服装を着た少年がいた。
「聞いている分には冷や冷やしたけどね」
「ふぁふぁふぁ」
「ふう、分かってやっているのならなお悪いよ」
「ここのレジスタンスも安定してきて、やっと自分の研究にはいれるからのう」
「古代の賢人ガッシュ、あなたの専門は……」
「わしは別に歴史を変えたいわけじゃない。
 ただわしの研究と世界の関わりをもつのか知りたいだけなんだよ」
「ルッカ女史の研究は?」
「彼女はわしと少し考えが違っていた。
 彼女の研究も完成されたものに近い、なんといっても最初のエネルギー革命を起こした火付け役でもあったからな。
 ただし、わしの考える研究とは違った。
 わしの元の時代、BC1万年以上前の頃、それからいままで、わし以上の研究の成果が見えないのだ」
「ふん、私以上の天才は居ないと?」
「それは違う。
 参賢者の中で自分が天才と思っている人物は誰も居ない。
 そうでなければ、自国の崩壊、女王とその系譜を救えたのだから」
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【189】-18- (第八章 時の最果て@古代の賢者ハ...
 Double Flags  - 10/9/20(月) 20:15 -
  
「確かに私たちはそのエネルギーの嵐が起きた原因について調べてその原因をつぶしていけばのね?」
 赤髪のとがった頭の少年――クロノと金髪でポニーテイルの少女――マールがプロメテドームに入るとすでに不思議なメットをしてメガネをかけた少女――ルッカによって後ろにタンクを積んだ人型のロボット――ロボは全快していた。
 プロメテドームの奥には、ロボの腕力によりすでにゲートの扉が(ムリヤリ)開けられていた。
 クロノとマールによって監視者ドームでのことを話し終わった。
「デモ、おどろきでした。ソンナ事実があったソンザイしていたトハ」
「ロボは知らされていないのね」
「ハイ」
「なぜかしら?」
「必要ない、ということか?」
「う〜ん、でも、やっぱり納得いかないわね」
「どうゆうこと? ルッカ」
「う〜ん、上手く説明できないけど、なんか引っかかるのよね」
「ルッカ、とりあえず時の最果てに行こう。
 今のところ目標も決まったことだし、ここで考えていても進まないよ」
 クロノはそう言って、ドームの奥の扉の近くに歩いてく。そこにはすでに破壊された扉があった。どうも、クロノとマールが監視者ドームに行っている間に(ムリヤリ)破壊したようだ。
 たしか、プロメテドームの入り口の近くに残骸が積まれており、すでに掃除も終わっていた。初め、クロノとマールが来て、扉が(見るから)にムリヤリ開けられた様子を見て、少し非難するような目をルッカに向けると、一言「面倒だったから、壊しちゃった」といっていた事が思い出される。
 三人と一体は扉の中に入り、ルッカはゲートホルダーを掲げ、スイッチを押した。
  ウウウィウィウィウィウィウィウィイイイイイン
「いくわよ、時の最果てに」
 ルッカの声に呼応するかのように、時空の穴が開く。
 三人と一体はその流れに身を任せ、吸い込まれていく。
  グオォォォォォォン
  クォォヲオオン
  キュルウウウウ

 目が覚めると、三人と一体は、小さな部屋。柵のようなもので正方形に囲まれた場所、その部屋には三人と一体以外には、ヒト一人立てるぐらいの円の中が円柱状に上に伸びる黄色がかった白い光の柱が三本立っていた、いや立っていたというよりも存在していた。
 クロノが監視者ドームで見たことのある、空間に浮かぶ映像のように、まるでそこに映し出されているかのようにあった。クロノたちはこの存在を知っている。『光の柱』。次元の歪みが存在する場所、時代に繋がっているゲートの入り口である。
 ここは、時の最果て。
 全ての時代と近く、そして遠い場所。
 そこで三人は、石にしては感触の柔らかい、木材にしては違和感のある床に転がっていた。
 この三人が転がっているのには理由がある。ゲートは時代の違う四人分を運ぶという、不安定な中状態。次元の力場が捻じ曲がり、すべての時間に通じる、時の最果てに行き着く、そう、この不安定な状態こそが時の最果てに行くカギでなのだ。そしてこのゲート、いつもより不安定な分、ものすごく「酔う」。
 『前の周』でもそうだったが、ロボ以外三人とも「うぅぅあぁ」「はぁぁぁぁぁぁ」などとうめき声を上げている。ロボが声をかけるが、あまりかんばしくない様子である。まあ、だいたいだそっとしておいてくれというものであった。体が揺れるのも、体にさわる機敏な状況であった。
 しばらくして三人は回復に至る。
 三人とも乗り物酔いはほとんどしない。酔う酔うといわれている船に乗っていても彼らは平然としているのである。その三人がこれほどきつく感じる、いわゆる『ゲート酔い(マール命名)』。『前の周』彼らがここに来たとき、ラヴォスゲートはそれようのバケツだと思ったぐらいだ。
 バケツの上に、『ゴミ箱ではありません』と書かれた紙がなかったら勘違いしていたところだ。また、その紙を無視してやってしまったという話も聞く。
「今日はなんとか」
 少しひたいに汗がにじみ出ているのを袖で拭いてクロノは立ち上がる。
「無理してないでさっさと行くわよ」
 一番初めに回復したルッカはそんな様子のクロノを置いて奥の部屋に歩いていった。
 そのあとをマール、ロボもあえて無視して続く。

 三人と一体は奥の扉を開け、『光の柱』の部屋より少し大き目の正方形の形をした部屋に着く。
 その真ん中には灯のついた柱とともに、灯の光に当てられ、わずかに影のある老人が立っていた。しかも立ったまま「カーカー」と寝ていた。
 先頭に居たルッカがほんの2メイトルまで近づくと、老人はパチンと、器用にも立ったまま寝ていた体を少し動かし、目を擦り三人を一体を確認した。
「おや、お客さんか……。
 最近ここに訪れるものもすっかり減ったというのに懐かしい……」
「ハッシュさん! 私たちのこと覚えているんですか?」
「はて……? ずいぶん懐かしい響きじゃな。
 たしかにどこかで会ったことがあるような、懐かしい気もするが」
 ルッカの顔にどっと疲れが見えた。そこへクロノが、
「しょうがないさ、他の賢者も覚えていなかったんだから」
「それもそうよね」
 そんなルッカをみて、マールが前に出た。
「わかったわ、おじいちゃん」
「なんじゃ、お嬢ちゃん」
「私たちはラヴォスを倒したものよ」
 マールの発言に老人はその白い眉毛にかかった目を大きく開いた。
「なんと、お前さん達があのラヴォスを……、ということはあのときの……。
 いやまてまて、彼らは別のさぃ……」
「覚えているの!!」
 大きな声をだすマールに少し身じろぎながら肯く老人。
「まあ、覚えておるよ。
 しかし、あの少年達とは……。
 確かに見た目も全く同じじゃな、いや最近似て非なる存在を見るから、すっかりお前さんたちも、新しく……」
「似て非なるもの……?」
「いやいやこっちの話じゃ、それよりなんでおぬし達がここにいる? 世界を救ったのではないのか? すでにゲートが閉じられているというのに」
「それが私たちにもさっぱり」
「? 一体どういうことじゃ」
 ルッカは、今自分たちに起こってることを老人に話した。

「なるほど、だいたいわかった。
 いまお前さん達は、ラヴォスを倒したことで救ったはずの未来が、なにかしらの災厄によって再びこの星が危機に見舞われていることから、それを救いたいと……」
「まあ、だいたいそんなところね」
「そうか」
 老人ハッシュはうなる。
「お前さんたちは覚悟ができているのか」
「もちろん」
 言ったクロノの目を見る。
「確かに覚悟はあるようじゃな。
 ただ一つ……」
「?」
「ただ一つ、わしらのように星の痛みをつくったものに対してはそれなりの代償が存在する」
「代償ですか」
「そうじゃ……。
 この時間平面、いや、二周目といったほうがいいじゃろう。
 この二周目で感じたことは」
「感じたこと?」
「何か知っているの」
「いや、おぬし達は気づいているのかということじゃ。
 二周目の意味を。
 ふ〜む、そうじゃな『前の周』と比べて何か変わったことはないか?」
 ロボはこの二周目で目覚めてまだ間もないといってもいいため、なかなか難しい質問であった。
 そのため投げかけられたのは他の三人。そのなかクロノが発言した。
「敵が一部強くなっていたことか?」
「違うのお」
「『前の周』から武器を引き継いでいるって事?」
「いやいや」
「『前の周』では出会わなかったヒトに出会うようになったこととか?」
「近いのぉ」
「歴史?」
「ふむ、及第点三歩手前というところかのぉ。
 よく考えるんじゃ、時代を作り変えたお前さんたちなら分かるだろう」
「そんな事言われてもねぇ」
「まあよい、この時間平面で結末(エンディング)までに気づけばいいことじゃ」
「結末ですか」
「そう、お前さんたちがあのエネルギーの嵐の原因を探し、そしてそれを解決した後までに気づいてくれればよい。
 前の時間平面で覚悟してラヴォスを倒すという途方もなかった目的はすでに達成しておるのだからのぉ。
 自信を持って行けば良い」
「ソレデ、ハッシュサンはエネルギーノアラシの原因について、どこまで知っているのデスカ」
「さて、エネルギーの嵐の原因か。
 正直、なにが原因なのか詳しくはわからん」
「ハッシュでも……」
「しかし、結局のところお前さんたちが関わってきたことが、少しずつ複雑に絡み合っておる。
 一つのことが原因だというには難しいのではないのではないのか?」
「一つ一つ原因をつぶしていくしかないのか」
「そうなるだろうな。わしも少し考えてみよう。
 まあ、あまり参考にもならないかもしれないが、この知識を役に立てよう」
「アリガトウゴザイマス」
「なに、気にするな。ラヴォスを倒した恩人だ、悪くは扱わんよ。
 それからスペッキオの部屋に寄っていくとい……」
  ウウウィウィウィウィウィウィウィイイイイイン
「!! ゲート」
「どうやら時間の迷い子らしいのぉ、最近はめっきり時空の歪みも減ったというのに
 これも時間全体に影響を及ぼしている何かがなくなったためなのかも知れんな……」
「わたしが行きましょうか」
「いやいや、大丈夫じゃ。スペッキオの部屋に行ってるがよい」
 老人は三人と一体をスペッキオの部屋に送り出すと、光の柱の部屋からの迷い子が姿を現すのを待った。
 その姿は少年、服装は現代風、黒茶の髪色に青い目、一般的な中央大陸の血統である。
「ここは、『時の最果て』……。時間の迷い子が、行き着く所だ。
 君はどっから来なすった?」
「え、僕はパレポリから来ました」
「いつの時代が分かるか?」
「時代?」
「君が来た年代、年のことだ」
「ああ、王国暦……」

  がちゃ

 扉を開けると1匹の緑の野カエルがいた。
「ス、スペッキオ??」
 マールは思わずその野カエルに向かって言う。
「なんだ、おめーら 確かにオレ、スペッキオ。 戦の神! ん? お前ら見たことがあるぞ。
 なかなかの心の力をもっているな」
「クロノ、あれ、スペッキオなにに見える?」
「野生のカエル、かな?」
 マールに聞かれてクロノは答え、近くにいたロボをみる。
「ワタシニハ、ミドリカラーのゴンザレスにミエマスガ」
「私には、モスティに見えるけど」
「モスティ、ってガルディアの森にいる?」
「ええ、確かにモスティに」
「オレの姿、おめーの強さ。おめーが強ければ強そうに 弱ければ弱そうに見える。
 ん? おめーら、十分に力を使いこなしていないな
 そうか、表のジジイ、それでここに通したか」
「使いこなしていないって、どう言うことよ」
「にしても厄介なヤツらをもってきたな
 わかった、実戦で教えてやる、かかって来い」
 そういってスペッキオは戦闘体制に入った。
「三体一でも、四体一でもいいぞ、かかって来い。
 おめーらの持ってる心の強さ、力。ためしてやる」
「もうあの顔を見ると、何を言っても無理なようね」
 三人と一体、一様にして同じ姿ではないのだが、全員がスペッキオの姿をそう感じた。
「行くわよ、ロボ、マール、あとクロノ」
「……あ、ああ」
 なんかついでのように言われたクロノは、なんとなく、いや、なんとなくだが。
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【190】-19- (第八章 時の最果てAエレメント)
 Double Flags  - 10/9/20(月) 20:17 -
  
 部屋の中央ではスペッキオが踊っていた。
 クロノたちは傷ついていないものの疲労の色が見える。
「どーした、もう終わりか? まだ始まったばかりだぞ」
 スペッキオの手には、淡く光る石を持っていた。
(強い……)
 クロノは今までにないほどの強さを感じた。
 最後に戦ったときとは、終始こちら側の有利に進んでいたはずだったが、いまは全く歯が立たない。
「……あれじゃ、全くの別人ね」
 疲労困憊ながらも喋るルッカ。
「使っているものは魔法じゃないし、なんなの」
 そう、スペッキオは魔法ではない、何か物の不思議な力をつかいクロノたちを圧倒したのだ。
「魔法は、完全とはいい難いが使いこなしているようだな」
 スペッキオは跳ね、踊るのをやめた。
「俺が使ってたちからは エレメント。
 名前ぐらい、聞いたことがあるだろう?」
 スペッキオの手には白い板をどこからか取り出した。
 三人と一体は顔を見合わせた。
「知らないのか。まーいい。
 エレメントを扱うにはグリッドがいる」
 ポンッ と白い板を投げ渡された。
「それがグリッド。しばらく持ってろ」
 するとクロノたちの持っていた白い板が次第に半透明になった。
「これって?」
「消えていったけど」
「それでいい。
 エレメントはだいたい白、黒、青、赤、緑、黄の六つの属性の成り立っている」
「だいたいって」
「まー、その辺は気にするな。
 ツンツン頭のおまえは『白』が強いな、他に『緑』、『黄』がやや強めだな。
 このポニーテールのギャルは『青』と『白』。
 こっちのメガネのネーちゃんは『赤』とやや『黒』が強めだな。
 ロボットのニーちゃんは『黒』。
 てな具合に、この星に存在するものには、ある程度の属性が備わっている。
 その力はあまり変わらないが、環境や性格などで強めになったり、弱くなったりする。
 それがエレメント。
 昔の者が自然を操るために作り上げた、世界の循環システムの一部。
 そして、世界を支配していた事のある力。
 魔法とは質の違うちから。
 じゃあ、身体を慣らすために今回も、『エレメントが使いたい〜』と念じながら、ドアの所からはじめて
 この部屋の柵に沿って、時計回りに3回まわる!
 あんまり回りすぎてバターにならないよう、気をつけろ」
 三人と一体は部屋の周りを三回回った。
 その様子をスペッキオはしっかりと確認した。
「よーし! ハニャハラヘッタミタ〜イ!!」
 スペッキオが呪文を言うと
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
 特に効果音は流れなかった。
「どーだ、新たな力わくだろ。試してみるか?」
「ええ、特になにが変わったか分からないけど」
「そうか、だったらこれ握ってみ?」
 スペッキオはこぶし小の宝石をクロノたちに渡した。
「それがエレメント、少し魔法を使う感じで力を込めてみ」
 言われたとおりに渡されたエレメントを強く握り、魔力を込めると淡く光り始めた。光り始めるとさっき渡されたグリッドが胸元辺りぐらいの宙に浮かぶ。
『おお』
 歓声が上がる、ロボ以外。
 ロボは魔法を使えなかったので、イマイチ魔力を込めるという使い方がよく分からなかったのだ。
 そんなロボをみてスペッキオは一言。
「おまえは、もう少しグリッドを考えながら回ってろ」
「ハイ」
 ロボは再び、一人で部屋の周りを回り始めた。
 それを見つつルッカは言った。
「これは一体どんな原理なの?」
「グリッドをよく見てみろ。エレメントが入るぐらいの穴が入っているだろ?
 そこにエレメントをはめ込んでみな」
 空中に浮かんでいるグリッドの中にエレメントをはめ込む。
  ガチ
 それはちょうど納まった。
「これでツンツン頭はこのエレメントを使うことができる
 これは魔法のように、詠唱や構成を組まなくても発動できる」
「へー、これだけでエレメントが使えるんだ」
「ちなみに他人にはこのグリッドが淡く光っているようにしか見えていない」
 スペッキオは自分のエレメントを開いた。
 すると、三人(と走っているロボ)にはほんのり薄い光が見えた。
「ただこれは意識してないと見えない。
 まあ、この光が見えたら相手がエレメントを使っていると分かるけどな。
 ツンツン頭、ためしに使ってみろ。
 声と魔力にエレメントは反応する、自分でエレメントの音を聞いてみろ」
 クロノははめたエレメントに手を添え、聞けといわれた音を聞く。
 そして一言。
  ●レーザー(白)
 一筋の光が、スペッキオの少し脇を通る。
「簡単だろ?」
 肯く。
「さてグリッドを良く見てみろ、エレメントの輝きがなくなっているだろ?
 こうなったらしばらくはエレメントは使えない」
「一発限りってこと?」
「ちがうちがう。
 当分使えない使えないだけ、エレメントは自然エネルギーを使って発動させるもの。
 一度使えばエネルギーを消費して溜めなくてはいけない。
 まあ、自然に溜まっていくからそんなに心配しなくてもいい。
 時間がたてば勝手に回復してる。特に周囲の環境が重要なんだ。
 白のエレメントなら、光。
 青のエレメントなら、水。
 赤のエレメントなら、熱源。
 黒のエレメントなら、影や高いところ。
 緑なら、植物や風。黄なら、岩やイカズチ。
 そういった要素が多いところでは回復力が高い。
 場合によるが、早くて10分、長くて1日なんてものもある。強力なものほど回復する時間は長くなる。
 まあ、でも」
  カツン
 スペッキオは器用に足を鳴らす。
「これで、エレメントは回復した。
 この空間には全ての要素がある、とっても回復しやすい。
 それとエレメントの力加減はグリッドで調整してくれ、グリッドのレベルはその穴にある横の列にいくほど高くなっている。
 グリッドにはレベルがあるから、低すぎると使えないから気をつけろ。
 エレメントを沢山使ったり、グリッドに力が蓄積されれば自然とグリッド数は多くなる
 そうそう、もう走らなくてもいいぞ」
 スペッキオはいまだ走り続けていたロボをとめた。
「使えば使うほど強くなっていくのね」
「強くなっていくというより、成長していくといったほうが正しいな」
「で、成長していく過程でエレメントの色と自分の色が関係していくのね」
「まあ、そうだな、グリッドの裏面を見てみろ。
 それがエレメントバランス。
 一番高い位置にあって強く輝いているのが、先天属性といって、もともとの属性。ほかに輝いているのはまあ、扱える程度だ。まあ、各々の属性には得手、不得手がある」
「アノ、ワタシには緑のエレメントが0%と描かれているのですが」
「それは全く扱えないってことだ。
 もしかすると、特殊な経験をして消費したり、出てきたりしたのかもしれないな、今のところはガマンしとけ」
「ソウデスカ」
 そこにマールが割って入ってきた。
「でもロボは、砂漠を緑の大地に変えたんだよ」
「よくわからないが、そのボディに蓄積されていないのかもしれないな」
「でも、納得いかないよ」
「大丈夫デス、マールサン。
 緑のエレメントガ使えナクテモ、ミナサンガ居るので十分デス。
 ソレニ経験を積メバ、可能性はアルノデショウ」
「そうだな。 
 それといい忘れたけど、グリッドにエレメントが入っていないと使えないからな。
 それに一つのグリッドにエレメントをつけたら6時間ぐらいは外せないから、気をつけろ。
 さて、長々と説明も終わったし、もう一戦するか?」
「どうするクロノ」
「ああ、でも、エレメント一つずつじゃあ、無理だな」
「おー、忘れていた。
 選別だ、もらっとけ」
 スペッキオはそれぞれ5つのエレメントをクロノたちに投げ渡した。
 そして、再びスペッキオとの戦いが始まる。
引用なし
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【191】-20- (第八章 時の最果てBグリッド)
 Double Flags  - 10/9/20(月) 20:22 -
  
 やはりその光景は実にあっさりしたものであった。
 奇怪な生物が正方形の部屋の中央に立ち、周囲には焦げた何かが転がっていた。
「まだまだおれ 強い。 戦いの神」
  ”しお”
 戦いの神、スペッキオは『しお』を振り蒔いた。
 『しお』は焦げた何かを囲み、大きな柱をつくった。
 光りの放つ柱が消えると、そこからクロノ、マール、ルッカ、ロボの姿は現われた。
「少しはグリッドが成長したか?
 周囲、数十メイトル内で発動されたエレメントもグリッドは吸収する。最初の成長は早いぞ。
 また強くなったらここに来る。おめーら、オモシロイ」
  ガチャン
 三人と一体は無言でその部屋を去った。

「お〜〜い」
 いつもと同じように老人が呼んだ。
 老人は彼らの意気消沈とした様子を見ると、
「やはりスペッキオにコテンパンにされたか。まあ、代わりに新しい力を手に入れたよじゃな」
「ハイ、慣れるまで何周も部屋の中を走らサレマシタ」
「走ったの? と??」
「ええ、エレメントを身体になじませるためにロボはあの部屋を何周も回ったのよ」
「何周も、か」
「ええ」
「……なるほど、そりゃスペッキオに一杯やられたな」
「へっっ?」
 マールが呆気にとられる。
「どういうことですか??」
「たしかに、体になじませるというために回ったのは分かるが、そんなに何回も回る必要はないのじゃな」
「それじゃあ、なんのために回らしたのよ、スペッキオは」
「まあ、奴のことだから軽い暗示をかけたのじゃろ」
『暗示?』
「そう暗示だ」
「機械ノワタシニモ、暗示ガカカルノデスカ?」
「……知性があるのなら、予測と現実、そして入り込みやすい情報を組み合わせれば不可能ではないだろう」
「ソウナノデスカ」
「?……あまり納得がいっておらんようだな。あんまり深く考えることではない、それにエレメントが使えるようになったのだろう。十分な成果ではないのか?」
「ハイ」
 少し気の抜けた返事をするロボ。
「でも、エレメントなんて一体これはいつの時代のものなの? 現代では聞いたことがないわ」
「そんなことはあるまい。このエレメントははるか昔、浮遊大陸が浮かぶ理由はこのエレメントの技術を利用したもの」
「浮遊大陸をこのエレメントで??」
 小さなエレメントを握るルッカ。しかし、このエレメントが一体どれだけのが数が必要なのか想像だにできなかった。
「それは失われた技術って事か?」
「失われた? そんなことはない。お前さん達が知らないだけでエレメントは現代でも流通しておるぞ」
『ええェェェ!!』
 三人は同時に声を張り上げる。
「エレメントなんて聞いたことがないわよ、使ったことがないわ」
「それは気づかんだけじゃろ。すでに身近なものに沢山のエレメントが日常の一部として使われておる。環境が悪化したところでは十分なエネルギーが確保できないから、ほとんどがエレメントの力を失っているときもあるがのお。
 エレメントとは昔の者が自然を操るために作り上げた、世界の循環システムの一部いわば人工の兵器だ。それを世界中に広めて、人工のちからを自然と置き換えることによって世界を支配しようとしたものがはじめ作り出したものだ。だが実際は、自然のエネルギーを吸収していたりするからエレメントが野生化して失敗したという話じゃ。
 まあ現代に使われているエレメントのほとんどはグリッドの方法が失われ、エレメントから滲み出るエネルギーを使っているに過ぎないが」
「グリッドってさっきもらったこれのこと?」
 ルッカが取り出した白い板、さきほどスペッキオからもらったものだ。これがないとエレメントは発動しないといっていたしなものである。
「グリッドは別に特別なものでできているわけじゃない。
 やろうと思えば、そこらへんに落ちている石でも、木の枝でも、紙でさえもグリッドにすることができる」
 老人ハッシュは1枚の紙を取り出し、目の前で空(から)のグリッドにしてしまった。グリッドにしたのが分かったのは、老人から淡い光が滲み出ていたからだ。しかし、淡く光る長方形のグリッドは、瞬時に紙に戻り床に落ちてしまった。
「紙に戻ったけど」
「それはわしが拒否したからだ。わしにはもうグリッドがあるからな、一人一つしかグリッドは持てん」
「だったらなんでグリッドの方法をみんな忘れていったの?」
「忘れていったのではなく、認識できなくなったのじゃ。
 充分な自然の力がないところには、消費したエレメントは回復しにくい。
 回復する時間が長くなっていくに連れて、人々は他の便利なものを作り出し、やがてエレメントは人々の記憶から薄れていったのじゃ、まあ他にも理由はあるがのお。
 エレメントが認識されなければ、やがてグリッドを扱うことも忘れ、人は物質をグリッドにできるということを忘れていったのじゃよ。
 おぬしたちはここでエレメントと、グリッドについて認識できたからこそ、それらが使えるようになったのじゃ。
 エレメントが再び世の中に認識されれば、またエレメントは復活する。
 ただし、中世、現代ではエレメントを作る技術は人にはないがのお」
「じゃあ、現代にあるっていうエレメントはどこから来たの?」
「はるか、東の国じゃ、果てしなく東の、極東といわれる場所から流れ出るといわれておる」
 老人はポケットからカギを取り出す。
「さて、これがわしのグリッドじゃ。グリッドは物質。
 一度グリッドに指定したものは、絶対離れないというわけではないがどこかで繋がっている。ある種の契約みたいなものじゃ。
 もちろん、元の物質として持っておくこともできるが、自分がイメージしたものに変化することもできる。こういうことができるのも全て、世界中にエレメントが広まっているということの証なのかも知れんな。
 ほれ、おぬし達もやってみなさい」
「どんな形にもなるの?」
「生き物でなかれば、何にでも」
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