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【74】O-本編試作改01 REDCOW 08/11/12(水) 23:28
【75】O-本編試作改02 REDCOW 08/11/12(水) 23:28
【76】O-本編試作改03 REDCOW 08/11/12(水) 23:30
【77】O-本編試作改04 REDCOW 08/11/12(水) 23:30
【80】O-本編試作改05 REDCOW 08/11/21(金) 18:36
【81】O-本編試作改06 REDCOW 09/3/21(土) 12:49
【82】O-本編試作改07 REDCOW 09/3/21(土) 12:50
【83】O-本編試作改08 REDCOW 09/3/21(土) 12:51
【84】O-本編試作改09 REDCOW 09/3/21(土) 12:52
【85】閑話休題 REDCOW 09/6/12(金) 14:34 [添付]
【86】色々と他の機体の道筋ださないと REDCOW 09/6/17(水) 1:55 [添付]

【74】O-本編試作改01
 REDCOW  - 08/11/12(水) 23:28 -

引用なし
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    凄いMSが沢山〜♪
 私も加筆編集を加えた第一話の書きかけを再度掲載。
 まだ未公開扱いだから、本当に気軽ですね。w
 徐々にガンダムらしい方向に持って行けたら良いなと思いつつ、基本的には自分の作れる範囲で自由に書いてます。文章上手くないけど、楽しめるものにしたいです。


 プロローグ
 
 時はユニバーサルセンチュリー0120年。
 既に戦争は遠い過去になろうとしていたその時代に、突如として咆哮が鳴り響いた。
 
 ディープスペースアライアンス(以下略DSA)…深宇宙同盟と名乗る一団は、木星圏エウロパを拠点として地球連邦軍に反旗を翻し、エウロパ戦争が勃発した。
 その戦いにおいて、地球連邦軍は当初の予想とは全く正反対な勝負を演じる。
 
 それは連邦の一方的な敗退。
 
 DSAは彼らの知る戦術の次元を越えた兵器を武器に、半ば過去の時代の産物となりつつあった「ニュータイプ」という存在の恐怖を植え付けることに成功する。
 
 宙域には実に100万を越えるファンネルが浮かび、一瞬にして全軍の4分の3を失った地球連邦軍は、旗艦パトリオット以下フラッグシップ艦を4隻も失い、あわや全滅と思われた。しかし、地球連邦にも、まだ彼らが失いつつあったニュータイプがいた。
 遠い時代、第一次ネオジオン紛争を勝利に導いたと言われる伝説的ニュータイプ能力者であり、連邦軍の試験艦フェアレディ号に搭乗していたパイロットであるジュドー・アーシタは、全軍が敗退する中、試験技術ジャンクションを利用し、戦術核兵器を遠隔操作使用してDSAの猛攻に対抗。
 地球連邦軍を辛うじて撤退に導く事に成功した。
 
 その後、地球連邦とDSAは休戦協定を結び、5年間の不可侵協定が規定され、一定の平和が訪れる。しかし、それは嵐の前の静けさと言え、地球連邦はDSAに対抗すべく本格的にニュータイプの研究に全力を投じた。
 …残された時間は、僅か5年。
 
 
 UC0125年7月…
 
 
 地球連邦軍はDSAに対抗すべく作戦計画「ツナミ」を発動。
 提督ヨハン・イスマ・グラハムはこの作戦計画にあたって、ケント・ナンジョー中将指揮下の東京計画部隊を組織。最先端のニュータイプ技術を装備した最新鋭艦「シスターフェアレディ」号の運用を開始した。
 
 
 月、フォンブラウン地球連邦軍基地。
 
 
「閣下、これが噂の新造艦ですか。」
「そうよ。」
 
 
 通路を歩く二人の上級士官の姿があった。
 一人は身長は170cm、中肉中背の黒髪にブラウンの目をした男で、年齢は52歳になる彼の名はドーン・ミハイル・マスカルポーネと言い、苦節30年にしてようやく上り詰めた新造艦の艦長にして中佐。
 そして、その隣を歩く女性は、容姿は30代に見えるが、実年齢は隣の彼よりも上で階級も上という、ルナツー方面軍総監にして地球連邦軍准将。名をルー・ルカという。
 彼らはこれから新しく建造された艦に乗り、初の任務に挑もうとしていた。
 
 
「…全長220m。インパルス9を誇るわが軍初のGUTドライブ艦ですな。美しい。」
「アマテラス級の設計は素晴らしい。ハー博士には宜しく伝えておいて下さい。」
「はい。必ず。…しかし、これですぐにルナツーへ?」
「時間が無いのよ。μは勿論、あれをばらされるわけにはいかないの。」
「…例の新型戦略兵器という奴ですか。」
「…軽々しく口に出さないで。」
「あ、失礼しました。あのぉ、准将閣下はご搭乗で。」
「当たり前よ。もう少し頭を使いなさい。あなた、よくそれでここまでこれたわね。」
「愚問を申し訳有りません。」
 
 
 二人は搭乗橋から船内に入った。
 入り口では下士官が敬礼して二人を迎える。
 彼らはそれに軽く手を振り応えると、通路を進みリフトに乗った。
 そこに若い士官の顔があった。
 
 
「艦長、それに准将閣下。お久しぶりです。」
「あら、お久しぶり。元気かしら。」
「はい、それはもう。」
 
 
 笑顔で気楽に話す彼は、アナハイムエレクトロニクス(以下略AE)社のエリートパイロットとして軍でも一目置かれた存在であり、アカデミーをトップで卒業したとも伝え聞く天才。その名はタロウ・ドウモト少佐。
 彼はこの艦の戦闘システムオペレータとして配属が決まっていた。
 
 
「艦長、既にブリッジにはカリスト少佐がドライブシステムのチェックを始めているそうです。ミシャールマ中尉がシナプスごしに艦長への接続許可を求めておりますが、艦長、その…シナプス起動してますか?」
「ん?あ、おぉ!すまん、忘れていた。今起動する。」
 
 
 ドーンは耳の裏にあるインプラントに触れて、シナプスと呼ばれる装置を起動した。
 シナプスとはニュータイプ通信を実現するシステムである。
 
 
 その昔、ニュータイプと呼ばれた人々がいた。
 
 
 彼らはミノフスキー粒子による電子ネットワークが不可能になった近年、超能力的な力で人と通じ合ったり、機械と同期することで多大な戦果を上げてきた。彼らの存在が言わば勝敗を決する程の影響力を持ち、連邦は勿論、敵対する勢力も多くの研究資源を投じてきた。しかし、その技術研究はとても乱暴な歴史を繰り返し、薬物による強引な「強化」と称する人体実験を繰り返した結果、人道的にも恥ずべき歴史を残す結果となった。
 だが、技術が進歩し研究が進んだ現在では、より現実的な手法が編み出されるに至る。
 
 
 それは、インプラント。
 
 
 サイバネティックインプラントを頭に埋め込むことで、ニュータイプ能力者と同様の脳電子波コントロールを実現し、ニュータイプ同士のみが行えると言われていた通信ネットワークを確立する事に成功した画期的な技術。
 ニュータイプという存在を語る時、今までの普通の人々をノーマルタイプと呼ぶが、インプラントはノーマルタイプを手軽にニュータイプの仲間入りをさせることが出来る道具と言える。
 そして、この装置によってニュータイプ能力を得たものをインプランターと呼ぶが、このシステム自体はまだ軍など一部の機関でのみしか採用されていない。
 
 インプラントを埋め込むと、「シナプス」と呼ばれるニュータイプ通信システムが頭の中の視神経を通して映像化され、様々な情報を柔軟に処理できるようになる。
 シナプスは様々な人と人は勿論、人と機械をも橋渡しする中継器の役割を果たし、過去の大戦とは全く違う情報処理を実現すると言われている。しかし、連邦ではこの戦争での投入が初のため、実装自体は速い段階から進めていたが、まだ活用は試験段階といえた。
 
「(艦長、マリです。船体システムについては整備状況が現在80%で推移しています。エネルギー充填が遅れているので、至急司令部に要請して頂きたいのですが…)」
「(うむ、伝えておく。ときに、…そこにアーシタ少佐はいるのかね?)」
「(はい。現在アーカンソー軍曹のオペレーションシステムについて、設定制御の説明をされています。お呼びしましょうか?)」
「(い、いや。呼ばなくても良い。私も向かっている所だ。ありがとう。)」
「(はい。では、失礼します。艦長。)」
 
 
 ミシャールマ中尉がシナプス通信から消えた。
 ドーンは一息入れると、隣の准将閣下を見た。
 彼の上司である准将閣下は木星帰りの生粋のエリートであり、彼の嫌う先程のマリとの話にもでてきた「アーシタ少佐」とも縁のある手強い女性といえた。
 彼としては気の重い航海だが、この作戦で新造艦の艦長に抜擢されたのは栄転中の栄転であり、この任務に堪えてマスカルポーネ家初の提督となりたい野望への道を考えると、逃げるわけにもいかないという個人的な事情もあった。
 
 ブリッジに入ると、そこにはほぼ全員が揃っているようだった。
 ルカ准将、それに艦長の入室にクルー達が一斉に入り口の方を向き起立し敬礼した。
 ルカはそれを下げさせると言った。
 
 
「さぁ、皆さんお揃いですね。これから本艦はルナツーへ向かう事が決定しました。皆さんもご存知の通り、最近は海賊の動きも活発化しています。ここでわが軍がこれらの小物に足をすくわれているわけにはいきません。皆さんの活躍を期待します。あとのことは、艦長にお任せしますが、私もルナツーまで一緒に同行いたします。短い間だけど、宜しく。」
 
 
 ルカ准将の挨拶の後、総員が持ち場につき作業を始めた。
 タロウは席につくとすぐにシステムを起動し、武器システムのチェックを始める。
 
 そこに40代くらいだろうか、深いブラウンのサングラスをした精悍な顔つきの男が近づいてきた。彼の服は佐官クラスであることを示している。
 
 
「ジュドー・アーシタだ。宜しく。」
「あ、タロウ・ドウモトです。お噂はかねがね。伝説的なあなたとの航海が出来ることを楽しみにしていました。」
「はは、昔の話だよ。アナハイムでも一目を置く君の活躍を期待している。」
「有り難うございます。私の経験不足はあなたのお知恵を拝借させて下さい。」
 
 
 ジュドーはそれに笑顔で軽く手を上げて応えると、入ってきた二人の方へ歩いて行った。
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.17) Gecko/...@113x32x0x179.ap113.ftth.ucom.ne.jp>

【75】O-本編試作改02
 REDCOW  - 08/11/12(水) 23:28 -

引用なし
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    2
 
 
「くそぉ、お前がなんでガンダムなんだよぉ!」
「うへへ、おれにしか合わないって言うんだもん。仕方ないだろ?」
「ちぇ、F92良いなぁ。」
 
 
 少年達の視線の向うには、多くのモビルスーツの姿があった。
 パイロットルームで待機する事が命令され、ドックの機体を見ながら待機しているのは、先程羨ましがった少年とそれを自慢する少年、その他にもう一人の少年と少女の姿があった。
 羨ましがっていた少年はシドー・トクガワ少尉といい、アカデミー在学中だがエリート士官コースを進む生粋のニュータイプ。そして、もう一人の自慢していた少年もニュータイプで、名をグレイ・スタインバーグと言い、彼もまた階級は少尉だ。
 二人がじゃれていると、そこに冷静にもう一人の少年が忠告する。
 
 
「グレイ、シドー。君らは機体システムのチェックを済ませたのか?もうすぐ大尉が来る。その時に済ませてなかったら…知らないぞ?」
「あ、やっべー!?」
 
 
 二人は慌てると、すぐにドックへと走って行った。
 二人に忠告を与えた長いプラチナブロンドの髪の少年はマーカス・サンディベルトと言い、階級は中尉で二人より一つ上の階級にあり、彼らの中ではリーダーの様なポジションを任されている。だが、普段の彼らとの関係もどちらかというと兄と弟の様な関係だ。
 彼もまたニュータイプで、アカデミーをトップの成績で在学中の生徒だ。
 彼に言われて慌てて二人が走り去ったのを見て、マイペースに椅子に座って読書をしていた少女がマーカスに言った。
 
 
「あなたも意地悪ね。自分で分かっているなら、さっさと教えてあげればいいじゃない。」
「ワルツワンドこそ、知っていたんだろ?」
「知っていたら教えてるわ。ベーだ。」
 
 
 彼女は悪戯っぽく舌をだして返答すると、メガネを外してライトブラウンの髪を掻上げた。彼女はワルツワンド・ヘンリークと言い、彼女もまた他の3人と同様にニュータイプの才能を持っている士官候補生だ。
 
 
「しかし、ヘンリーク総監もよく君をここへ出したね。今もって不思議だよ。」
「良いのよ、あのベタ可愛がりの父には良い薬。子は旅をしたいのに、馬鹿な父を持つと大変なのよ。だーかーら!ジュドーには感謝してるのよーだ。」
「君くらいだよ。ジュドーって呼び捨てにできるのは。」
「そう?そんなに階級に縛られてちゃ、生きて行けないわよーだ。」
 
 
『はっはっは、相変わらずだな。』
 
 
 そこに現れたのは、端正な顔立ちをした大人の色気も漂う彼らのチームリーダーである、オルドー・セット大尉。
 彼はこの少年たちで構成されたパイロット見習いを率いることを任された、言わば教官兼務の上官だ。しかし、先のエウロパ戦争ではトップの撃墜成績を残し、軍の撤退に大きく貢献したことが知られており、撃墜王という異名も持つ。
 だが、そんな異名を持たずとも、彼の黒髪に桃色のメッシュを入れ短く刈り込んだ頭は、遠くからでもとてもよく目立つ。
 
 マーカスとワルツワンドはすぐに姿勢を正して敬礼した。
 彼はそれに軽く礼を返して直すと、笑って言った。
 
 
「どうやら、あの悪戯小僧二人は慌てて調整に向かったようだな。」
「…大尉、申し訳有りません。自分の監督責任です。」
 
 
 マーカスが深く礼をして謝罪した。
 オルドーは苦笑しつつ礼を戻させ、頬をぽりぽりと掻きながら応える。
 
 
「…おいおい、お前が謝ることじゃないだろ?セットアップは自分の責任だ。死にたくなかったらしっかりやる!それが軍ってもんさ。…はぁ、あいつらはまだまだ青いな。」
「ねぇ、隊長。」
 
 
 そこにワルツワンドが目をうるうると輝かせて彼に尋ねた。
 その目を見たならば、並の男なら誰もがぐっと来るに違いない…が、当の相手はと言えば、どうやら以前にもこの目を見たことがある様だ。
 
 
「…なんだ。」
「その…いつ見ても綺麗なピンクですね!」
「…お前の褒め言葉は聞きたくないぞ。」
「えー!どうしてですか〜?その、あたしの機体カラー、隊長のステキなメッシュと同じピンクにできないんですか〜?」
「…はぁ〜、まだ拘っていたのかぁ。」
「だってぇ〜、F92じゃないんだから、それくらい〜。」
「お前なぁ。コックピットをピンクにしただけで十分だろ?塗装も大変なんだぞ。」
 
 
 彼の視線がドックの彼女の機体コックピットに、まるで光学1500倍ズームでもしたかの様に飛んだ。
 そこには他の機体とは明らかに違う全面桃色で、殺伐とした雰囲気の対局にあるだろうファンシーな雰囲気が漂う、おおよそ戦術兵器としての軍の機体とは思えないコックピットの姿が有った。その内装は単なるピンクではなく、ご丁寧にもパンダとハートの模様が描き込まれている念の入れようだ。
 
 
「ビームコーティングのカラー変更でなんとかならないんですか〜?」
「あのなぁ、お前の機体って光学遮蔽対応じゃなかったか?」
「…はい。」
「色なんて見せる必要無いじゃないか。金の無駄無駄。」
「え〜〜〜!ブゥーブゥー!!!。」
 
 
 彼らがそんな話をしていた頃、ドックへ駆けて行った二人は各自の機体コックピットで調整を始めていた。
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.17) Gecko/...@113x32x0x179.ap113.ftth.ucom.ne.jp>

【76】O-本編試作改03
 REDCOW  - 08/11/12(水) 23:30 -

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   「…スタインバーグ少尉」
「あ、マリアさん。」
 
 
 グレイに呼びかけたのは、この艦のメカニックチームのリーダーである、マリア・フォンテーヌ大尉。階級上は大尉だが元々は民間人で、特別にAEから派遣されてきているこの道のプロだ。
 彼女はこの金髪碧眼の少年が乗る機体である、連邦軍最新鋭MS「F92NT-Spitfire」の調整を手伝っていた。
 
 
「OSの最終調整は済んだかしら。」
「あ、待ってください、もうすぐ終わります。」
「そう、私の方の作業は終わったわ。」
「どうも、有り難うございます!」
「どういたしまして。」
 
 
 グレイの元気な返事に、彼女が微笑む。
 彼女は機体を優しく触れながら、何か感慨深げな表情で見ていた。
 
 
「…しかし、この機体をあなたが操縦するとはね。あ、別に腕のことを言っているんじゃないわ。ただ、思っていたよりずっと若いパイロットで驚いたわ。」
「そうですね。俺、あ、自分も驚いてます。でも、凄く嬉しいです。」
「そうね。私もこの機体の面倒を見れて嬉しいわ。これは私も開発に加わっていたから、他の誰よりも詳しいって思ってた。だから、配属先が決まった時は驚いたけど嬉しかったわ。」
「へぇ、そうだったんですか!いやぁ、それならめちゃくちゃ安心ですね!」
「そう?ありがとう。」
 
 
 その時、突然シナプスがアラートを表示した。
 二人の視線の宙空にアラート表示が現れる。そこにはブリッジオペレーターのエリーゼ・アーカンソーの顔が映っていた。
 
 
『緊急警報を発令します。総員、第一戦闘配備。直ちに各自の任務を遂行し、作戦に備えてください。モビルスーツパイロットは直ちに出撃準備を整えてください。』
 
 
 シナプスが全員に緊急警報を伝える。
 艦内が非常照明に切り替わり、クルー達が慌ただしく動き始めた。
 アラートにマリアは頷くとコックピットハッチから退いた。
 ボーディングブリッジに下がった彼女を認めると、彼は機体のハッチを閉じてシステムの起動を開始する。
 グレイはシナプスを部隊長であるセット大尉に合わせて問い掛けた。
 
 
「(大尉、何が起こったんですか?)」
「(攻撃だ。俺も今機体に乗る。詳しくはブリッジのエリーゼから来るはずだ。それまで俺達はコックピットで待機だ。)」
「(はい。)」
 
 
 ブリッジではフロントビュースクリーンに、基地外部での攻撃の様子が映し出されていた。
 この状況に冷や汗をかきつつもドーンは艦長シートに座っていた。
 彼のシナプスには多くの情報が次々と報告として入り、彼はそれを処理するだけで精一杯だった。そんな彼の様子に半ば呆れつつ、ルカ准将はアーシタ少佐の隣に座っていた。
 
 
「ジュドー、間違いないかしら。」
「…あぁ。」
「(基地の情報によると、ゲリラ組織の新撰組ね。…面倒な時に。)」
「(奴らが来たということは、内部の問題か。)」
「(…考えたくないわね。さて…)」
 
 
 基地を攻撃しているグループは新撰組と言い、この地球圏内で近年活発にゲリラ攻撃活動を繰り返す過激派組織だ。彼らの主張は旧世代のコロニー至上主義と同一であり、半ばカルト的な人気を誇るシャア・アズナブルを崇拝している。
 
 短く刈り込んだ黒髪に鋭い目をした男は、視線の向うに映る月面基地を見ていた。
 連邦軍を攻撃する彼らにもニュータイプ通信技術があった。
 その名を「ニューロン」という。
 

「(…ヒジカタ。お前達はお宝を探せ。俺達が引きつける。)」
「(…わかった。トール、しっかり引きつけてくれよ。以上。)」
 
 
 通信を終了すると、トールと呼ばれた男は、他の隊員達にも次々とニューロン越しに命令を与えると、自身はブリッジを出ていった。
 
 
 無数の光線が真空中から月面を狙う。
 どこからともなく走る光線は基地をピンポイントに攻撃し、次々に施設を破壊してゆく。その動きは掴めず、まるで意志を持ち生きているかのようにふらりふらりと軌跡を変えて攻撃をしかけた。
 連邦月面防衛部隊は圧倒的攻撃を前に、次々に撃墜され一方的に押されている様な状況だった。
 
 
「艦長、基地への攻撃による損害は甚大です。このままでは基地と一緒に埋まりかねません。」
 
 
 戦術システムオペレータのドウモト少佐が、基地からの損害情報を報告した。
 艦長であるドーンは苦々しい表情で問う。
 
 
「むぅ、トルストイ大佐からは何もないのか?」
 
 
 通信システムオペレーターであるアーカンソー軍曹が答える。
 
 
「月軍本部からは、まだ何も…。」
 
 
 そんなやり取りをみて、オブザーバーシートに座るルカ准将が立ち上がった。
 
 
「…私が許可します。本艦はこれより強行出港致します。…皆さん良いですね。」
 
 
 ルカ准将の一言で艦内が出港でまとまった。
 ドーンはすぐに全クルーに対して出港を指示、出発オペレーションが始まった。
 シナプス内部でクルーの確認承認が始まる。
 
 
「(<ミシャールマ中尉>船体整備100%、エネルギー充填率65%、スラスター起動を開始します。)」
「(<艦長>スラスター起動確認。操舵承認。)」
「(<カリスト少佐>操舵承認確認。スラスター出力上昇確認。インパルスドライブ出力上昇確認。)」
「(<ドウモト少佐>攻撃システム起動します。主砲、副艦砲、両舷ミサイル発射管オンライン、後部ファンネルバンクオンライン、全攻撃システムオールグリーン。)」
「(<ミシャールマ中尉>船体サブシステム起動。オールレンジスキャンを開始します。)」
 
 
 ドドドォォォォォォォォォォォン!!!
 
 
 艦内に強い衝撃が走る。
 ドーンが叫ぶように言った。
 
「報告!」
 
 彼の命令に戦術オペレーターのドウモト少佐が答える。
 
「ビュースクリーン、…基地前方800kmより攻撃を確認。前方ドックポート被弾。入り口が塞がれました。」
「…ドウモト少佐、ファンネル射出。攻撃目標前方ゲート、並びにポート周辺の敵攻撃機を破壊せよ。これより、本艦は強行出港を開始する。ミシャールマ中尉、ファンネル射出後基地内部ではシールド50%起動、脱出後100%出力。」
「ファンネル射出、先行開始。」
「シールド50%出力、オンライン。」
「カリスト少佐、基地脱出までスラスター微速前進4分の1インパルス、脱出後メインエンジン起動、インパルス3で月軌道上の敵と対峙する。」
「後部、底面、両弦スラスター起動、4分の1インパルス。」
 
 
 全員の出発操作が完了した。
 ドーンは姿勢を正し、前方スクリーンに向けて力強く指さし宣言した。
 
 
「アマテラス級強襲揚陸艦、シスターフェアレディ、発進!」
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.17) Gecko/...@113x32x0x179.ap113.ftth.ucom.ne.jp>

【77】O-本編試作改04
 REDCOW  - 08/11/12(水) 23:30 -

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    4
 
 ファンネルが射出される。
 先行したファンネルが宙を舞い、前方のドックポートの瓦礫を瞬時に破砕した。
 その後をシスターフェアレディは威風堂々、それは貴婦人が社交界デビューを果たす様な眩いシールドの輝きに包まれて宙域に出撃した。
 
 
「ははは、出たな。(全員に告ぐ。戦功を立てたい奴は俺に続け。)」
 
 
 男の声に複数の仲間の声が同意する。
 
 
「(了解。)」
「(了解。)」
「(了解。)」
「(了解。)」


「衛星軌道上に浮上します。コース設定、インパルス1から3に加速。」
「上昇確認。アーカンソー軍曹、センサー参照。」
「センサー参照。艦長、センサーが敵MSを3機捕捉。以後、これらをレッドにマーキング。3機中2機は機種不明…形状類推から1機はAT社製機体と思われます。もう一機は…AE社製…バギ・ドーガ!?あ、あの、これ、30年前の機体ですよね?」

 
 ドックではそれぞれの機体に搭乗を済ませて待機するパイロット達の姿が有った。
 

「(なぁ、グレイ。もうすぐ実戦だな。)」
「(あぁ。)」
「(…怖くないか?)」
「(はぁ?何ビビってんだよシドー。しょんべんちびるなよ。)」
「(真面目に聞けよな。ったくよぉ。)」
 
 二人の会話中に割り込みで大尉の呼掛けが入った。
 
「(全員に告ぐ。出撃命令だ。グレイ、シドー、お前達は攻撃隊として俺に続け。マーカスとワルツワンドはステルスで敵艦を索敵。良いな。)」
「(<グレイ&シドー>了解。」)」
「(<マーカス&ワルツワンド>了解。)」
 
 そこに、エリーゼ・アーカンソー軍曹がオルドーに出撃管制メッセージを告げる。
 
「(<エリーゼ>大尉、カタパルト射出後3秒遅れで主砲が10秒斉射されます。射出コントロールは大尉の判断に任せます。)」
「(援護射撃感謝する。コントロール移譲確認。)(全員に告ぐ。攻撃隊出撃3秒後に援護射撃10秒斉射。斉射中ステルスで索敵機出撃。攻撃隊の出発コントロールは俺が採る。索敵隊はマーカスに任せる。」
「(<マーカス>出撃コントロール移譲了解。)」
「全機、これより作戦行動に入る。…コントロールカウントは3。」
「(<エリーゼ>3確認。前方シールド解除。セットカウントどうぞ。)」
「カウントスタート…3、2、1…ビットストリーム、出る。)
「スピットファイア、行きます!」
「ガンハンター、出ます!」
 
 オルドーのビットストリームを先頭にグレイとシドー機が続く。
 彼らの後方から閃光が走った。アーカンソー軍曹の予告通り主砲の援護射撃が始まる。だが、その閃光の向うから反撃の光線が走った。3機は即座に回避行動をとるが、その光線はそのまま母艦への衝突コースを走った。
 
 
 ドォオオオオオオオン。
 
 
「中尉、報告。」
「前方防御プレートに被弾。損傷無し。プレート出力100%。」

 艦は前方に展開した防御プレート(前方展開した強力なビームシールド)によりダメージを受けず、何事も無かったかのようにコースを維持した。
 ミシャールマ中尉は報告後センサーを展開する。
 
「艦長、センサーは宙域に3機のレッド機影維持を確認。我が方はブルー3機が向かいます。敵母艦の姿は依然不明。我が方はブルー2機を射出し索敵に入りました。」
「中尉、引き続き母艦の探索に。本艦はブルー2機の情報を待ち待機。攻撃3機の援護に努める。」
 
 シスターフェアレディが全くの無傷であることを確認した新撰組側は、予想以上の高性能振りに色めき立った。
 
 
「(ヒジカタ、あれを見たか?)」
「(連邦にしては随分ハイスペックなシールドだな。これは他に何が付いているのか楽しみだ。トール、あれは俺の獲物だぜ?)」
「(良いだろう。俺はあの新型を頂く)」
「(…ほぅ、あんたにしては珍しい。何かあるのか?)」
「(…似ているんでな。それに、このサイバストの性能を試したい。)」
「(そうか。ま、楽しもうぜ。俺は行くぜ。)」
 
 
 サイバストと呼ばれた機体の側からバギ・ドーガが離れた。サイバストに乗るトールは前方からやって来る機影にわくわくするものを感じていた。ニュータイプだけが感じられるプレッシャーが彼を威圧する。彼はその威圧に半ば心地よさを感じているかのように笑みを浮かべると、システムをニュータイプモードに切り替えた。
 ファンネルが射出される。
 強い思念波が一点に集中する。思いを乗せたファンネルがビットストリームを狙う。
 
「(…このねっとりした思念は…)」
 
 強い思いの篭った力はオルドーの脳裏に1人の面影を映し出す。それは5年前の戦いで互いに刃を交えた男の波動だ。名前も知らぬ相手だが、感覚が確かに覚えている。それはニュータイプだからこそわかる直感だろうか。
 
 
「ハハハハ、待ちに待ったぜ、この時を。あの時を腕の差とは言わせないぜ。」
 
 
 トールはサイバストから4機のファンネルを射出し先行させた。
 
 
 ヒュン、ヒュン…
 
 
「!?(散開!)」
 
 前方の思念波が分散するのを感じた瞬間、突如あらぬ方向から光線が走る。ファンネルの襲来を感じたオルドーは散開命令を出すと、自身は反応を感じる方向へアームビームソードを起動して突進する。そこにファンネルが周囲を囲み斉射した。
 
「大尉!!」
 
 グレイとシドーは上官の危機に思わず声が出る。二人はオルドーを援護しようと接近を試みるが、そこに二機のザクサスが阻む。
 
「お前たちは俺達の獲物だ。」
「覚悟するんだな。」
 
 ザクサスに乗る敵機パイロットは余裕の笑みで新兵に対峙した。
 それを見てトールはしたり顔でアームビームソードを起動してオルドーへ迫る。
 ファンネルの直撃を受けた機体が無事でいられるはずはない。しかし、トールは用心深く留めを指さずにはいられない。だが、
 
「…前とは違うんだよ!」
 
 射止めたと思った機体は無傷でその攻撃を跳ね除けていた。
 
「フォースシールド!?」
 
 重力ビームによる空間の断裂層が作り出した360度全方位のフィールドが、ファンネルによる全方位攻撃を全て弾き返していた。フォトン(光)を透過するもエネルギー粒子はフィールドの干渉によって弾かれ、その力が小さなスパークを発して消失する。
 
 トールはファンネルを引くと、ビーム出力をソードに移転して出力を強化し突撃する。
 オルドーはその攻撃を自らのビームソードで受け止めると、歯を食いしばり集中した。
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.17) Gecko/...@113x32x0x179.ap113.ftth.ucom.ne.jp>

【80】O-本編試作改05
 REDCOW  - 08/11/21(金) 18:36 -

引用なし
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    5
 
 その頃ブリッジでは一方的に押されている連邦軍の建て直しについて話し合われていた。
 
「中尉、状況を報告。」
「艦長、現在連邦月軍の勢力は総崩れ状態です。敵母艦が散布したと思われる高濃度のミノフスキー粒子の干渉により、域内の通信は混乱しています。…域内粒子濃度は75%。これほどの高濃度の粒子散布は想定の範囲を超えています。」
 
 ミシャールマ中尉の報告は、現在の連邦軍側が電波ネットワークの混乱という形で指揮系統を乱されていることを示していた。
 過去の時代からミノフスキー粒子による電子撹乱フィールドは戦場において存在する問題として認識されていた。ミノフスキー粒子がもたらす電子撹乱によって精密誘導兵器が無力化された1年戦争以来、大艦巨砲主義は没落し、接近戦による攻撃でなくては効果が上がらなくなった。そのような状況で時代の要請に応えたのがMSの存在であり、現在のMS主体の戦場の登場となる。
 しかし、いくら電子撹乱によって長距離精密誘導兵器を無力化したとはいえ、MSとの通信には依然として安価な電子ネットワークを利用しており、ミノフスキー粒子による完全な撹乱は同時に味方側も同様の状況に置かれる事を意味し、散布する側は濃度を自軍の短距離通信を困難にするレベルを避け、通信内容を比較的復元しやすい暗号単純化することで通信能力を確保できる限界の濃度を散布する戦術がとられていた。それ故、完全に通信不能に陥る粒子濃度50%以上の散布は極力避けていた。だが、現在展開されている散布濃度は連邦の考えるそれまでの常識を完全に覆した濃度だった。
 
「…ぐぅ、完全遮断濃度散布とは。たかがゲリラに何故そんな戦術が。」
 
 ドーンが苦るのも無理はない。
 この非常識な通信環境で戦いを挑むようなゲリラ組織はこれまで存在しなかった。
 そもそもミノフスキー粒子はゲリラ組織が簡単に生成出来るものではない。高濃度の粒子を散布するには相当のコストがかかる。それに加えて自陣営の通信も撹乱される様な戦況など、仮にもそれに対応する通信を用意するとなると相当額の投資が必要となる。
 ゲリラはその組織力の小ささ故に、高価な撹乱フィールドを展開するより安価な電子ネットワークを利用した戦術を採るものだが、彼らは単なる散布に留まらず完全な遮断環境の中で乱れも無く、光学遮蔽まで施して攻撃を仕掛けることができるということだ。
 
「艦長、状況からみて、DSA-ブラインドフィールドとの類似性を考慮すると、当時のジャンクションシンク戦術以外に有効な戦術は無いものと思われます。よって、私はシナプスの基地全域展開を提案します。」
 
 ドウモト少佐の提案は、UC0120年にて木星圏エウロパでの戦闘、後の世に言う「エウロパ戦争」においてDSA軍が展開した高濃度ミノフスキー粒子散布による域内の通信遮断環境下でのニュータイプ通信による対抗戦術のことを示しており、連邦軍はDSA軍の圧倒的な攻撃の前に敗退を余儀なくされるが、その退却すらもジャンクションと呼ばれる有線制御式ニュータイプ通信技術が無かったら不可能だったと言われている。
 
「むぅ、しかし、ドウモト少佐、まだあれの実装は完全ではない。艦と周辺部隊だけの制御ですら相当のNT能力を要求する。現に本艦のSyncもミシャールマ中尉とアーカンソー軍曹の二人で制御しているではないか。それを基地全域など…」
「艦長、敵がこの戦術を使う以上、敵にNTsync環境があると考えるべきでしょう。だとすれば、対抗策はこちら側もNTSync環境を整える以外に道はありません。」
「だが、しかし、一体誰がやるというのだね。私には無理だよ。」
「では、アーシタ少佐にやってもらってはいかがでしょう?」
 
 ドウモト少佐の提案に、腕組みしてオブザーバーシートに座るジュドーは動じる様子も無く言った。

「…俺には権限が無い。」
「し、しかし…」
 
 彼が言いかけた時、ジュドーの隣に座るルーがすっくと立ち上がった。

「はーいはいはい、お話やめて。戦況は悪く処方箋はNTSync。処方する医者はいて、問題の薬を調合できる薬剤師もいるけど、問題は親不在で子どもに勝手にお薬は出せませんってことね。じゃぁ、他の保護者が出てこいってことでしょ?…それにはここにいる皆さんでは半人前。なら、私がやれば良い。というわけで、私がやります。」
「准将閣下!?」
「艦長、シートを開けて下さる?」
 
 彼女はにっこりと微笑み同意を求める。
 ドーンは上官の命令である以上、彼女の要求を飲まざるを得ず、ピッと起立すると素早く横に立ち座席を譲った。
 彼女は艦長シートに座ると、ジャケットの胸ポケットからロムスティックを取り出し、それを艦長シート横のスロットに射し込んだ。そして、目を閉じるとシナプスごしに艦のシステムにアクセスし始める。
 
「(<コンピュータ>新しい認証コードを承認します。ルー・ルカ准将閣下、ようこそシンヴィジウム・ガイアへ。)」
「(ガイア、NTシンクビーコン射出、グリッド390マーク5i。)」
「(<コンピュータ>本艦の指揮範囲を大幅に逸脱します。命令実行にはLv.5クラスのNTSync能力と大佐以上の階級コードの審査を必要とします。…階級認証クリア…NTSync適性クリア…命令を実行します。よろしいですか?)」
「(ガイア、実行。)」
「(実行します。)」
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.1.18) Gecko/...@i60-35-181-81.s04.a001.ap.plala.or.jp>

【81】O-本編試作改06
 REDCOW  - 09/3/21(土) 12:49 -

引用なし
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    6
 
 その頃マーカスはワルツワンドと共にステルスモードで敵の母艦を索敵していた。ステルスモードになると光学迷彩により機体を光学的に周辺環境と同化し、エンジン出力なども極力セーブして航行し、航跡を消す撹乱フィールドを展開することができる。
 
「(NTシンクビーコン射出。スキャンビット射出。母艦クラスのプラズマ及びイオン航跡を追跡開始。ワルツワンド、解析を頼む。)」
「(了解。解析開始。ビーコンエリア内エネミーセンサーは3機のMS機影を確認。フェアレディよりレッドマーキングをトレース。母艦らしき機影は無いわ。スキャンをイオン航跡スキャンに切り替えます。…スキャンエリア内には………ラインに撹乱痕跡を確認。母艦がステルス航行している可能性があるわ。」
「わかった。俺はこれからNTモードに移行し、ディープスキャンに入る。)」
「(了解。)」
「(ガイア、システムモードチェンジ、NT。)」
「(<コンピュータ>「ニュータイプモード」に移行します。)」
「(ディープスキャン開始。)」
 
 システムモードがニュータイプモードに移行すると、突如として機体の全ての情報がマーカスの頭の中に流れてくる。それはまるで手足のような感覚を持ち、機体とリンクし始める。

「(…微かに感じる。)」
 
 スキャンビットを強く反応を感じる宙域に向けて先行させると、領域から帰ってくる反応がより強くなるのを感じた。その力はとても強く、まるで自分を串刺す様なとげとげとした印象を受けた。
 
 一方その頃、グレイ達の前には二機のザクサスが立ちはだかった。
 火星のアレキサンドリア・テクノロジー(以下略AT)社製の汎用工作用MSを兵器転用したモデルであるこの機体は、彼らの上官が乗るオクト・ドーガとほぼ同じ頃に生産が開始された機体で、新撰組が駆る機体としては情報より遥かに新しい機体だ。
 以前の彼らなら、ジェガンやギラ・ドーガといった旧式のMSを中心とした布陣であり、その中にあって彼らのパイロット適性の高さが光っていたのだが、目前の彼らはほぼ最新の現用機体を駆っており、その技術力の高さに性能が追いついたといえる程動きが良かった。
 それに対峙するは、実戦はまだ不慣れな新兵である少年学徒兵。経験の差は歴然としていた。
 
「(このままじゃやられる。グレイ、オレが奴らの気を引き付けるから、その間に隊長を援護してくれ。)」
「(何を言っているんだ!そんなの無理だ。第一あいつらの機体はザクサスだぞ!長距離支援のガンハンターの性能で二機は無理だ。その役目、オレがやる!)」
「(おい、グレイ!?)」
 
 グレイはOSのコントロールをファイティングモードからNTモードに変更した。NTモードに合わせた瞬間、彼の視界は宇宙空間に切り替わった。機体全身のコントロールが彼の肉体感覚とリンクしたのだ。
 視界前方に映る2機のザクサスのパイロットは、戦闘経験の豊富さから接近戦は不利な様に感じられる。だが、機体性能はこちらの方が上。問題は相手方から感応波への干渉波が放たれており、NTリンクに対して機体制御が乱される危険性があることだ。
 
「(くそ、奴らの方がNTレベルは上か…機体スペック…ザクサスはワイヤレスビットコントロール…あぁ、ぐだぐだ考えるのはやめだ。面倒くせぇ!)うらぁ!!!」
 
 両腕を構えるとバーニアをフルパワーで吹かす。インパルス2のスピードは強烈なGを発してグレイの身体を威圧するが、この程度の衝撃は彼にとって問題ではない。問題は目前の敵に間違いなく当てる事だ。狙いは右の機体。
 当の右の機体に乗るサイトウは余裕の表情で目前の連邦兵の攻撃に対峙していた。彼らのシステムは前方のガンダムタイプの機体からNT反応が吹き出すのを関知していた。スキャン結果に現れた数値はNTレベル2。彼らにとって雑魚に等しい能力レベルだった。
 
「…勿体ねぇ。ガンダムで突進かよ。そんなもん牛でもできるぜ。」
 
 サイトウが攻撃をひらりと交わそうとした瞬間、突如機体がアラートを鳴らす。センサーエリア後方から攻撃ビット反応を検知したのだ。
 グレイの機体はかわされる寸前にファンネルを起動し、4機のファンネルを背中から射出すると、一斉に攻撃を開始した。あの僅かな瞬間にファンネルを高速起動出来る機体性能に苦るが、彼もまたそれに対応してビームシールドを展開すると、各個ファンネルの破砕を試みる。しかし、機体機動性能が段違いに高く容易ではない。
 
「なんだこりゃ!?」
 
 ファンネルが背後を狙う。しかし、ファンネルは火を吹く間も無く破砕された。
 左に居たクドウ機が加勢したのだ。彼の機体は素早くサイトウを狙うファンネルを打ち落とす。
 
「(油断するな。)」
「(サンキュー、クドーちゃん。)」
「(ちゃんはやめろ。ちゃんは…!?)」
 
 ドォオオオン!

「おい、クドー!?」
 
 クドー機の足が打ち落とされた。
 打ち落としたのはガンハンターに乗るシドーによるものだ。シドーはグレイを援護すべく距離を置いてビームガンの照準を定める。その勢いに乗るようにグレイはサイトウ機を攻撃。
 
「(捉えた!)…え!?」
「…残念だな。」
 
 ニヤリと笑みを浮かべたサイトウのザクサスは、回避パージするとパージされたパーツがファンネルビットの様に散開してグレイの背後へ飛んだ。咄嗟にビームシールドを後方に展開する。しかし、攻撃は無かった。いや、攻撃目標は彼では無かったのだ。
 
「うわぁあああ!!!」
「シドー!?!」
 
 シドー機の頭と左肩と右足が打ち落とされた。
 そこにクドウ機がシドー機に迫る!
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X 10.4; ja-JP-mac; rv:1.9.0.7) Gecko/200...@i118-21-86-159.s04.a001.ap.plala.or.jp>

【82】O-本編試作改07
 REDCOW  - 09/3/21(土) 12:50 -

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    7
 
「グレイ、あなたは入って!」
「ミュー、君も一緒に!早く!!!」
「…駄目よ。あなたは中に居て。私は大丈夫だから。またね。」
 
 少女はそう言って微笑んだ。彼女の顔に悲壮感は無い。だが、彼女の選択は彼女の命を失う事を意味していた。
 
「おい!離せ!まだ人が居るんだ!ミューが、ミューが!!!」
 
 彼がシェルターの戸を開こうとするのを、中に居る先に避難した大人達が止めた。彼が見ている目前でドアはシャッターで閉ざされ、更に分厚い防護壁が上部から折りて固く閉ざした。
 その後、大きな爆発音と衝撃波がシェルターを揺らす。
 
「…ゥウォオオオオオオ!!!」
 
 スピットファイアのNTリンクゲージが急速に上昇する。機体周囲のNTリンクフィールドが急速に拡大し、ファンネルの行動フィールドが拡大する。出力ゲージがインパルス3をマークし、通常スピードの倍速で動き始めた。
 
「お、おい、なんだぁ!?」
「(油断するな、サイトウ!)」
「(あー、分かってる…!?)グアァアアアァ…………」
 
 サイトウの絶命の叫びが聴こえる。
 圧倒的スピードの前に、サイトウは抵抗する間も無く横一文字に両断された。グレイの機体はそのままクドウ機に迫る。
 
「(大層なスピードだ。だが、)やらせるか!!!)
 
 クドウ機もまたザクサスをNTモードに切り替えると、機体をパージし散開させる。彼のNTレベルならば、たったのレベル2のグレイを上回るのは容易い筈だった。だが、相手の実力は予想以上に上昇していた。目前に展開されている相手方のフィールドは、ほぼ自分と互角と言えるものだった。
 これほどに瞬間的な変化を起こせる能力者はそうそういるものではない。彼は連邦軍が一体どの様な研究をしていたのだろうかと苦った。
 
「ふん、ほぼ互角だけじゃ、勝てないな。」
 
 クドウが本気を出した。
 NTリンクフィールドが更に拡大してグレイのファンネル射程限界を超えた。
 その瞬間、一斉にグレイのファンネルを打ち落とし始める。その勢いはグレイの力を遥かに凌駕していた。
 
「(グッ!)」
 
 瞬時に全ファンネルが打ち落とされ、一気に形成が不利になった。
 グレイがアームビームソードを構えて突進する。その無防備な攻撃に無慈悲なるファンネルの斉射が行われた。しかし、彼はその選択を後悔する事となった。
 
「フォースシールド!?」
 
 クドウは無防備だと思っていたグレイの機体から、まさか全方位防御の重力波フィールドが現れるとは思いも寄らなかった。あらゆる攻撃を跳ね除けるフォースシールドは、ファンネルに因る攻撃を全て弾き飛ばした。彼はそのままの勢いでザクサスに迫る。形勢は逆転していた。四肢をバージしたザクサス本体は丸腰同然だった。
 
「(ぐ、こ、このままでは!?)ガァアアアアアアアアアア!!!!」
 
 ドドォォォォォォォォン!!!

 スピットファイアは鮮やかなラインを描き、ザクサスを切り抜けた。
 緋色に閃光を発して機体が爆発する。二人の新兵は二機の敵機を撃墜する事に成功したのだ。
 グレイはシナプス越しに呼びかけた。
 
「(シドー、大丈夫か!!)」
「(グレイ、なんとか、大丈夫………っぽい?…いや、だめぽ。)」
「(シドーーーー!!!)」
「(………、グレイ、本気にすんなって。)」
「(……おい。)」
 
 スピットファイアのアームがガンハンターを狙う。
 
「(わぁあぁああ!?おい、マジやめろよ!!!)」
「(許さねぇ!!!)」
 
 シドーが身動きのとれないガンハンターを必死で動かそうとコントロールを試みる。だが、機体は既にシステムフリーズ状態。サブシステムで辛うじてNTリンクに応答しているに過ぎない。まさか味方にやられるとは…と思ったその時。
 
 ガシン
 
 乾いたような軽い金属音を鳴り響かせて、スピットファイアのアームより飛び出したワイヤーロープがシドーの機体を掴んだ。グレイの出した物はビームではなく牽引ロープだった。
 
「(…まじ、殺す。)」
「(ロープ切るか?)」
「(あぁ、ごめん!グレイ様お助けをー!!)」
「(よし、つか、それどころじゃねぇ、隊長は!?)」
 
 その時後方から複数のビームが飛ぶのが見えた。
 センサーが連邦月軍が加勢した事を告げた。
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X 10.4; ja-JP-mac; rv:1.9.0.7) Gecko/200...@i118-21-86-159.s04.a001.ap.plala.or.jp>

【83】O-本編試作改08
 REDCOW  - 09/3/21(土) 12:51 -

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    8
 
「(こちら地球連邦軍、月防衛隊。連邦軍准将閣下の指揮のもと、シスターフェアレディに加勢します。)」
「(加勢感謝します。以後、リンクはシスターフェアレディに委譲。我が軍はシスターフェアレディ指揮下としてこの防衛戦に当たる事を命じます。)」
「(了解)」
「(ガイア、NTリンクをガイアに移管。ガイア、オペレーションスタッフをミシャールマ、アーカンソーの両名に戻します。)」
「(<コンピュータ>移管を受け付けました。)
「(有り難う。ガイア。)…ふぅ。疲れたわ。こんな大仕事は大概にしたいわね。」
「おめでとうございます。閣下。いやぁ、見事でした。」
 
 ドーンが労いの言葉を掛けた。
 彼女は微笑んで左手を軽く上げてそれに応じると、すっくと立ち上がって彼に席を譲った。

「皆さん、形勢は逆転しました。反転攻勢と参りましょう!」
 
 その頃、月軍の復旧を見たトヨトミは、形勢の不利を悟ると全機に撤退命令を出した。だが、その時に反応の無い機体が2つ。…どうやら撃墜されたらしい。
 
「ッチ、思ったより敵さんの方が反応良いか。さすが連邦の精鋭と言った所か。(全機撤収。任務は達成した。深入りする利は無い。オサフネに帰投後、マサムネをしんがりに後退。いいな。)…というわけだ。あんたとの戦いはお預けだぜ!」
 
 トヨトミは相手には伝わることもない独り言を言いながら、サイバストのエンジンを急速に吹かして後退した。そのまま機体は透き通るように消えると視界からは勿論、センサーからも反応が消えた。
 オルドーは敵の素早い後退行動を見て、敵がこの攻撃から撤退することを悟った。だが、感応波はまだこの空域に居る限り安心出来ない。
 
「逃がすかよ!!!」
 
 ビットストリームのファンネルが飛ぶ。しかし、彼が集中した空域には既に何の反応も現れなかった。
 
「くそ!!」
 
 オルドーは思わず壁を叩いた。
 目前で空を切った敵の見事なまでの撤収ぶりは、その手際の良さが鼻について苛立ちを倍増させる。以前の機体ならいざ知らず、この最新鋭の機体をもってこの程度の戦果では、してやられた感が強かった。しかし、そう腐り続けるわけには行かない。彼は冷静さを取り戻すとセンサー情報を眺めた。センサーには機体後方に味方機の機影が認められる。
 
「…ひよこどもは殻を抜けたか。(おい、悪戯ボーズども、悪運は強いようだな。)」
 
 彼の問い掛けに、当の問い掛けられた本人達は喜びの歓声を上げた。
 
「(隊長ーーー!!!!)」
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X 10.4; ja-JP-mac; rv:1.9.0.7) Gecko/200...@i118-21-86-159.s04.a001.ap.plala.or.jp>

【84】O-本編試作改09
 REDCOW  - 09/3/21(土) 12:52 -

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    9
 
 彼は何かが視線を向けている様なものを感じた。それは彼自身に対して向けられているわけではないが、彼の乗艦を探り当てようとしているようだ。しかし、有視界上に機影は無いどころか、センサーにも全く反応は無い。考えられるのは光学遮蔽した機体が潜行し、NTリンクを利用して索敵しているものと思われた。
 
「………チィ!」
 
 マーカスは引き金を引いた。
 ステルスファンネルビットがビームを放った瞬間、ビットは攻撃を受けて破壊された。だが、ビットの放ったビームは目標を暴き出した。
  
「…ジェネレータをピンポイント狙撃。…敵にしておくのが惜しい逸材というべきか。しかし、シールドを貫通した。デュアルフェイズビームか…?まぁいい。(オキタ、頼むぞ。)」
 
 マーカスは遮蔽を解き、ステルスのファンネルを全機射出する。そして、アームビームソードを両腕に出力すると、一気に突進した。ファンネルが先行し攻撃する。ビームが敵母艦を全方位から攻撃するが、先程は効いたはずのビームが効かない。
 
「フォースシールド…っくそ」
 
 そこに突如巨大な機体が目前に姿を現す。
 それは彼の機体の2倍はありそうな巨体を誇るバギ・ドーガ。マーカスは完全に虚を突かれ、何らの防御体制も取れていない。その時後方から悲鳴が聞えた。

「(ワルツワンド!?)」
 
 目前の敵機はマーカスの機体ではなく、まだ光学遮蔽しているはずのワルツワンドの機体を正確に狙撃したのだ。バギ・ドーガのファンネルはガン・ステルスの右足と右腕を貫通していた。スペックを考えると30年前のバギ・ドーガには特殊なシステムは搭載していないだろう。だとするならば、これを実行したパイロットは相当の腕だろうと思われた。
 マーカスのファンネルがバギ・ドーガを背後から狙う。しかし、それすら予想していたかのようにファンネルを浮かべていたバギ・ドーガの命令に従って、ステルスのファンネルは全て打ち落とされてしまった。
 
「…強い。だけど!!!」
  
 マーカスの強力な感応波が飛ぶ。
 
「!?(強い意志。なんだ、こいつ…)…チィ!!」
 
 オキタはマーカスの両腕をファンネルでピンポイント攻撃し破壊すると、フルスピードで光学遮蔽を始めつつ消えて行った。
 
「…ふぅ。(ワルツワンド、自力で戻れるな?)」
「(えぇ。大丈夫。)」
「(そうか。帰投する。)」
 
 マーカスはワルツワンドを保護しながら母艦へ帰還した。
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X 10.4; ja-JP-mac; rv:1.9.0.7) Gecko/200...@i118-21-86-159.s04.a001.ap.plala.or.jp>

【85】閑話休題
 REDCOW  - 09/6/12(金) 14:34 -

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[添付]〜添付ファイル〜
・名前 : zaxus.jpg
・サイズ : 112.3KB
   2話目に突入するまでのつなぎで悪戯してみました。
ザクサスにしようか迷ってサイバストとしました。

添付画像
【zaxus.jpg : 112.3KB】
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X 10.4; ja-JP-mac; rv:1.9.0.10) Gecko/20...@i121-115-46-15.s04.a001.ap.plala.or.jp>

【86】色々と他の機体の道筋ださないと
 REDCOW  - 09/6/17(水) 1:55 -

引用なし
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[添付]〜添付ファイル〜
・名前 : gun-type.jpg
・サイズ : 121.4KB
   ガンシリーズについて、アサトーさんのイラストを色々と見比べていて、こちらの設定でヘビーガンNTという機体がF91の簡易量産型NT対応仕様という感じだったので、F91系パーツを型同じで素材違いの新型量産プロトタイプという方向かなと考えてみたら、この機体のヘッドの感じが良い感じかなぁと思ってみました。(こうすると基本武装性能はF92系に劣るけど、その代わりオプションパーツの豊富さでカバーというのはフォーミュラ計画の考えに合致すると思うので)

また、この方向でこちらのマシンは動かしていけば、後に出て来るミューシステムと合体というネタに進んでも無理が無いかな…と。|-゜)

…とまぁ、MSのデザイン確定に動いている今日この頃。
デザインが色々あって贅沢な悩みを抱えている所ですが、出来れば提案頂いたやつは何とか全部活かしたいと思ってます♪

添付画像
【gun-type.jpg : 121.4KB】
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X 10.4; ja-JP-mac; rv:1.9.0.11) Gecko/20...@113x32x0x179.ap113.ftth.ucom.ne.jp>

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