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彼は何かが視線を向けている様なものを感じた。それは彼自身に対して向けられているわけではないが、彼の乗艦を探り当てようとしているようだ。しかし、有視界上に機影は無いどころか、センサーにも全く反応は無い。考えられるのは光学遮蔽した機体が潜行し、NTリンクを利用して索敵しているものと思われた。
「………チィ!」
マーカスは引き金を引いた。
ステルスファンネルビットがビームを放った瞬間、ビットは攻撃を受けて破壊された。だが、ビットの放ったビームは目標を暴き出した。
「…ジェネレータをピンポイント狙撃。…敵にしておくのが惜しい逸材というべきか。しかし、シールドを貫通した。デュアルフェイズビームか…?まぁいい。(オキタ、頼むぞ。)」
マーカスは遮蔽を解き、ステルスのファンネルを全機射出する。そして、アームビームソードを両腕に出力すると、一気に突進した。ファンネルが先行し攻撃する。ビームが敵母艦を全方位から攻撃するが、先程は効いたはずのビームが効かない。
「フォースシールド…っくそ」
そこに突如巨大な機体が目前に姿を現す。
それは彼の機体の2倍はありそうな巨体を誇るバギ・ドーガ。マーカスは完全に虚を突かれ、何らの防御体制も取れていない。その時後方から悲鳴が聞えた。
「(ワルツワンド!?)」
目前の敵機はマーカスの機体ではなく、まだ光学遮蔽しているはずのワルツワンドの機体を正確に狙撃したのだ。バギ・ドーガのファンネルはガン・ステルスの右足と右腕を貫通していた。スペックを考えると30年前のバギ・ドーガには特殊なシステムは搭載していないだろう。だとするならば、これを実行したパイロットは相当の腕だろうと思われた。
マーカスのファンネルがバギ・ドーガを背後から狙う。しかし、それすら予想していたかのようにファンネルを浮かべていたバギ・ドーガの命令に従って、ステルスのファンネルは全て打ち落とされてしまった。
「…強い。だけど!!!」
マーカスの強力な感応波が飛ぶ。
「!?(強い意志。なんだ、こいつ…)…チィ!!」
オキタはマーカスの両腕をファンネルでピンポイント攻撃し破壊すると、フルスピードで光学遮蔽を始めつつ消えて行った。
「…ふぅ。(ワルツワンド、自力で戻れるな?)」
「(えぇ。大丈夫。)」
「(そうか。帰投する。)」
マーカスはワルツワンドを保護しながら母艦へ帰還した。
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