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「(こちら地球連邦軍、月防衛隊。連邦軍准将閣下の指揮のもと、シスターフェアレディに加勢します。)」
「(加勢感謝します。以後、リンクはシスターフェアレディに委譲。我が軍はシスターフェアレディ指揮下としてこの防衛戦に当たる事を命じます。)」
「(了解)」
「(ガイア、NTリンクをガイアに移管。ガイア、オペレーションスタッフをミシャールマ、アーカンソーの両名に戻します。)」
「(<コンピュータ>移管を受け付けました。)
「(有り難う。ガイア。)…ふぅ。疲れたわ。こんな大仕事は大概にしたいわね。」
「おめでとうございます。閣下。いやぁ、見事でした。」
ドーンが労いの言葉を掛けた。
彼女は微笑んで左手を軽く上げてそれに応じると、すっくと立ち上がって彼に席を譲った。
「皆さん、形勢は逆転しました。反転攻勢と参りましょう!」
その頃、月軍の復旧を見たトヨトミは、形勢の不利を悟ると全機に撤退命令を出した。だが、その時に反応の無い機体が2つ。…どうやら撃墜されたらしい。
「ッチ、思ったより敵さんの方が反応良いか。さすが連邦の精鋭と言った所か。(全機撤収。任務は達成した。深入りする利は無い。オサフネに帰投後、マサムネをしんがりに後退。いいな。)…というわけだ。あんたとの戦いはお預けだぜ!」
トヨトミは相手には伝わることもない独り言を言いながら、サイバストのエンジンを急速に吹かして後退した。そのまま機体は透き通るように消えると視界からは勿論、センサーからも反応が消えた。
オルドーは敵の素早い後退行動を見て、敵がこの攻撃から撤退することを悟った。だが、感応波はまだこの空域に居る限り安心出来ない。
「逃がすかよ!!!」
ビットストリームのファンネルが飛ぶ。しかし、彼が集中した空域には既に何の反応も現れなかった。
「くそ!!」
オルドーは思わず壁を叩いた。
目前で空を切った敵の見事なまでの撤収ぶりは、その手際の良さが鼻について苛立ちを倍増させる。以前の機体ならいざ知らず、この最新鋭の機体をもってこの程度の戦果では、してやられた感が強かった。しかし、そう腐り続けるわけには行かない。彼は冷静さを取り戻すとセンサー情報を眺めた。センサーには機体後方に味方機の機影が認められる。
「…ひよこどもは殻を抜けたか。(おい、悪戯ボーズども、悪運は強いようだな。)」
彼の問い掛けに、当の問い掛けられた本人達は喜びの歓声を上げた。
「(隊長ーーー!!!!)」
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