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【80】O-本編試作改05
 REDCOW  - 08/11/21(金) 18:36 -

引用なし
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 その頃ブリッジでは一方的に押されている連邦軍の建て直しについて話し合われていた。
 
「中尉、状況を報告。」
「艦長、現在連邦月軍の勢力は総崩れ状態です。敵母艦が散布したと思われる高濃度のミノフスキー粒子の干渉により、域内の通信は混乱しています。…域内粒子濃度は75%。これほどの高濃度の粒子散布は想定の範囲を超えています。」
 
 ミシャールマ中尉の報告は、現在の連邦軍側が電波ネットワークの混乱という形で指揮系統を乱されていることを示していた。
 過去の時代からミノフスキー粒子による電子撹乱フィールドは戦場において存在する問題として認識されていた。ミノフスキー粒子がもたらす電子撹乱によって精密誘導兵器が無力化された1年戦争以来、大艦巨砲主義は没落し、接近戦による攻撃でなくては効果が上がらなくなった。そのような状況で時代の要請に応えたのがMSの存在であり、現在のMS主体の戦場の登場となる。
 しかし、いくら電子撹乱によって長距離精密誘導兵器を無力化したとはいえ、MSとの通信には依然として安価な電子ネットワークを利用しており、ミノフスキー粒子による完全な撹乱は同時に味方側も同様の状況に置かれる事を意味し、散布する側は濃度を自軍の短距離通信を困難にするレベルを避け、通信内容を比較的復元しやすい暗号単純化することで通信能力を確保できる限界の濃度を散布する戦術がとられていた。それ故、完全に通信不能に陥る粒子濃度50%以上の散布は極力避けていた。だが、現在展開されている散布濃度は連邦の考えるそれまでの常識を完全に覆した濃度だった。
 
「…ぐぅ、完全遮断濃度散布とは。たかがゲリラに何故そんな戦術が。」
 
 ドーンが苦るのも無理はない。
 この非常識な通信環境で戦いを挑むようなゲリラ組織はこれまで存在しなかった。
 そもそもミノフスキー粒子はゲリラ組織が簡単に生成出来るものではない。高濃度の粒子を散布するには相当のコストがかかる。それに加えて自陣営の通信も撹乱される様な戦況など、仮にもそれに対応する通信を用意するとなると相当額の投資が必要となる。
 ゲリラはその組織力の小ささ故に、高価な撹乱フィールドを展開するより安価な電子ネットワークを利用した戦術を採るものだが、彼らは単なる散布に留まらず完全な遮断環境の中で乱れも無く、光学遮蔽まで施して攻撃を仕掛けることができるということだ。
 
「艦長、状況からみて、DSA-ブラインドフィールドとの類似性を考慮すると、当時のジャンクションシンク戦術以外に有効な戦術は無いものと思われます。よって、私はシナプスの基地全域展開を提案します。」
 
 ドウモト少佐の提案は、UC0120年にて木星圏エウロパでの戦闘、後の世に言う「エウロパ戦争」においてDSA軍が展開した高濃度ミノフスキー粒子散布による域内の通信遮断環境下でのニュータイプ通信による対抗戦術のことを示しており、連邦軍はDSA軍の圧倒的な攻撃の前に敗退を余儀なくされるが、その退却すらもジャンクションと呼ばれる有線制御式ニュータイプ通信技術が無かったら不可能だったと言われている。
 
「むぅ、しかし、ドウモト少佐、まだあれの実装は完全ではない。艦と周辺部隊だけの制御ですら相当のNT能力を要求する。現に本艦のSyncもミシャールマ中尉とアーカンソー軍曹の二人で制御しているではないか。それを基地全域など…」
「艦長、敵がこの戦術を使う以上、敵にNTsync環境があると考えるべきでしょう。だとすれば、対抗策はこちら側もNTSync環境を整える以外に道はありません。」
「だが、しかし、一体誰がやるというのだね。私には無理だよ。」
「では、アーシタ少佐にやってもらってはいかがでしょう?」
 
 ドウモト少佐の提案に、腕組みしてオブザーバーシートに座るジュドーは動じる様子も無く言った。

「…俺には権限が無い。」
「し、しかし…」
 
 彼が言いかけた時、ジュドーの隣に座るルーがすっくと立ち上がった。

「はーいはいはい、お話やめて。戦況は悪く処方箋はNTSync。処方する医者はいて、問題の薬を調合できる薬剤師もいるけど、問題は親不在で子どもに勝手にお薬は出せませんってことね。じゃぁ、他の保護者が出てこいってことでしょ?…それにはここにいる皆さんでは半人前。なら、私がやれば良い。というわけで、私がやります。」
「准将閣下!?」
「艦長、シートを開けて下さる?」
 
 彼女はにっこりと微笑み同意を求める。
 ドーンは上官の命令である以上、彼女の要求を飲まざるを得ず、ピッと起立すると素早く横に立ち座席を譲った。
 彼女は艦長シートに座ると、ジャケットの胸ポケットからロムスティックを取り出し、それを艦長シート横のスロットに射し込んだ。そして、目を閉じるとシナプスごしに艦のシステムにアクセスし始める。
 
「(<コンピュータ>新しい認証コードを承認します。ルー・ルカ准将閣下、ようこそシンヴィジウム・ガイアへ。)」
「(ガイア、NTシンクビーコン射出、グリッド390マーク5i。)」
「(<コンピュータ>本艦の指揮範囲を大幅に逸脱します。命令実行にはLv.5クラスのNTSync能力と大佐以上の階級コードの審査を必要とします。…階級認証クリア…NTSync適性クリア…命令を実行します。よろしいですか?)」
「(ガイア、実行。)」
「(実行します。)」

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