|
第4話 不完全
「…不用心だぞ。」
「ぐあぁあ!!」
セブンが手刀で侵入者の腹を一撃した。
侵入者は彼女の一撃でドックの壁面へ強かに打ち付けられた。だが、彼女の一撃をくらいながらもよろめきつつ立ち上がった侵入者は、素早くイージスの方へ駆けた。私は彼をマシンガンで牽制するも、コックピットに入られてしまった。
その時、ラミアス大尉がストライクのコックピットへ少年と共に入っていく姿が見えた。彼女が動かすというのか?…ともかく、私はセブンと共にその場を後退。イチェブのいるデュエルのもとへ向かった。
イチェブはデュエルを操縦し侵入者の攻撃を防いでいた。侵入者はデュエルへ向けて攻撃をするが、フェイズシフト装甲が機能している彼の機体には傷一つ付ける事は不可能だ。だが、その隙にバスターのコックピットに侵入された。PS装甲が起動する。
「何故俺がお前にお姫様だっこされねばいかんのだ!!」
「…イザーク、狭いんだから大人しくしろよ。しかし、…なんだこのOS、事前の情報とまるで違うぞ。でも、ロックはされていないから動かせる。っつーか、何だよこれ。俺達のOSより使いやすいぞ。」
「なんだと?ナチュラルが俺達を超えただと?笑わせんな。」
「いや…だけどよ、俺が何のカスタマイズもしないどころか、OSが俺に合わせて自動でセットアップしてるんだぜ?ん、ボイスコントロール?えーと、武器はあるか?」
コンピューターは彼の言葉に反応して幾つかの選択肢を出した。
「220mm径6連装ミサイルポッド」
両肩に装備されるミサイルポッド。本機の白兵戦能力の低さをカバーするために搭載された武装で、攻撃兵器としては充分な火力を持つものの、基本的に弾幕形成による敵の幻惑・撹乱や、ミサイル迎撃等近接防御に使用される事が多い。煙幕や放電ガス弾など搭載ミサイルによって多彩な用途がある。
「350mmガンランチャー」
右腰アームに接続される電磁レールガン。散弾による複数目標への攻撃など、「面」の破壊に特化された武装。通常の質量弾頭の他にも、AP弾(徹甲弾)やHESH弾(粘着榴弾)などの各種特殊弾頭も射出可能。
「94mm高エネルギー収束火線ライフル」
左腰アームに接続される大型ビームライフル。他の前期GAT-Xシリーズに比べ大口径、高出力を誇り、当時の戦艦の主砲をも上回る火力を持つ。
「対装甲散弾砲(連結時)」
ガンランチャーを前に、収束火線ライフルを後に連結した広域制圧モード。
「超高インパルス長射程狙撃ライフル(連結時)」
収束火線ライフルを前に、ガンランチャーを後に連結した高威力・精密狙撃モード。
「…おいおい、全部飛び道具ばかりかよ。とりあえず逃げるぞ。」
バスターは立ち上がると急いで逃げ始めた。
イチェブはそれを見て牽制しようと動くが、セブンがそれを止めた。これは私の指示だ。
彼はそれに従うと彼らを見送った。私達がするべき道は他にある。今は生きているラミアス大尉を生かすべきだろう。
イージスもまた起動し立ち上がったその時、外部からの砲撃で壁が大きく破壊された。そして、その攻撃を知っていたかの様にイージスはそこから脱出して行く。だが、ラミアス大尉の乗ったストライクは起動する様子を見せない。何故だ。
「…OSのインストールが上手く行っていない。この子だけケーブルが断線していたんだわ。でも、私にも動かすくらいは。」
ラミアス大尉は必死に動かそうと元のOSを弄っていた。何とか立ち上がると、ゆっくりと前進して破壊された壁穴から外へ出た。そこには緑色に塗装されたジンと呼ばれるZAFTのMSが待っていた。
「ヘリオポリス全土にレベル8の避難命令が発令されました。住民は速やかに最寄りの退避シェルターに避難して下さい。」
外ではコロニー全域で緊急避難放送が流れていた。至る所で住民達の避難が進んでいる。そこに前方のジンが発砲した。
ストライクに乗るラミアス大尉は寸での所でPS装甲の起動に成功した。装甲が弾丸から機体を保護する。しかし、その一方でコックピット内のカメラは、それた弾丸から逃げる一般市民の姿が映されていた。そこには少年の友人達の姿もあった。
「あー!!サイ!トール!カズイ!」
ジンのパイロットは、連合のMSがジンの攻撃を弾いて無傷で立っていることに驚いていた。
「こいつ、どうなってる…こいつの装甲は!?」
「…こいつらはフェシズシフトの装甲を持つんだ。展開されたらジンのサーベルなど通用しない。」
「アスラン、まだいたのか!お前は早く離脱しろ!いつまでもウロウロするな!邪魔だ!」
「な、邪魔!?…ラスティは失敗した。油断はするな。」
「…余計なお世話だ。お前の将来は絶対ズラだ。なんなら俺がズラの似合う男にしてやろうか。」
「…離脱する。(なんで俺はズラ扱いばかりされるんだ。髪が長いからって必ずズラになるとは限らないだろう。くそ。)」
「ふん、いくら装甲が良かろうがっ!」
ジンがサーベルを構えて突進してきた。
ラミアス大尉は必死に動かそうとしているが、少年の目にはとてもまともに動きそうなシステムに見えない。
「(あっ、…これってまだ!?)うわぁあああ!!」
「あ、きゃぁああ!!」
ジンのサーベルは実際に通用しなかったが、その打撃の衝撃でストライクはそのまま後方に倒れてしまった。
ストライクのコックピット内では、ラミアス大尉の上から身を乗り出して少年が操縦を試みた。
「君!?」
「ここにはまだ人が居るんです!こんなものに乗ってるんだったら何とかして下さいよ!」
「そんな動きで、生意気なんだよ!ナチュラルがモビルスーツなど!」
ジンが振りかぶってサーベルを下ろしてきた。
少年はストライクの操縦桿を握りなんとか姿勢を変えて避ける。
「無茶苦茶だ!こんなOSでこれだけの機体を動かそうなんて!」
「まだ全て終わってないのよ、仕方ないでしょ!」
「…どいて下さい。」
「え?」
「早く!!」
ラミアスは少年に席を譲った。少年はシートに座るとキーボードを出してシステムを弄り始めた。
そこになおもジンの攻撃が続く。しかし、少年は巧みに操縦桿を握るとその攻撃をかわし、その合間に設定を急ぐ。
「あ、あ。(この子…!?)」
「キャリブレーション取りつつ、ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定…、チッ!なら疑似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結!ニュートラルリンケージ・ネットワーク、再構築!メタ運動野パラメータ更新!フィードフォワード制御再起動、伝達関数!コリオリ偏差修正!運動ルーチン接続!システム、オンライン!ブートストラップ起動!」
にわかにストライクの挙動がスマートになり始めた。
「なんなんだあいつ、急に動きが…ッチ、ヤバくなる前に斬る!」
執拗なサーベルによる斬撃から両の手をクロスして耐えるストライク。少年は受けながらそのまま腕をクロスした姿勢で強く押し返した。ジンは突然の押しに対応できずよろめいて後退した。
「うっ、武器…!…後はアーマーシュナイダー…?これだけかっ!」
「くっそー!チョロチョロと!」
「こんなところでっ!やめろっー!!!」
少年はアーマーシュナイダーを構え突進する。
アーマーシュナイダーはジンの主要な駆動部を破壊。ジンのシステムはフリーズした。
「ハイドロ応答無し。多元駆動システム停止。ええぇい!」
「あっ!まずいわ!ジンから離れて!」
「え?」
ジンの自爆命令が起動し、ストライクはそのままもろにその爆発の衝撃を受けて後方へ吹き飛ばされた。
|
|