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【112】Voy in Seed 7
 制作者REDCOW  - 11/12/23(金) 23:18 -

引用なし
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   第7話 

 ヴェサリウスの艦橋からスクリーン越しにクルーゼはブリーフィングをしていた。
 
「…我々はあの新造艦を今後足付きと呼ぶ。足付きには我々が取り損ねた2機のMSがある。アスラン、ディアッカ、ニコル、君らが持ち帰ってくれたお陰で、私の失態も首が繋がろう。
 そして、ミゲル。君の持ち帰った戦闘データも興味深い。諸君らも知っての通り、あれのOSの出来は次元を超えている。連合があれほどのシステムを整備して立ち向かってくる時…それは、我々の破滅の時と言っても良い代物だ。」

 クルーゼの言葉は、スクリーンに映る面々は勿論、艦橋のクルー全員が同意する話だった。彼らは鹵獲した機体のOSをハックしようと何度も試みた。しかし、それは全て失敗に終わり、全ては…
 
「…抵抗は、無意味だ。…ですか。馬鹿にしている。」

 アスランの発言もまた、この場の皆が感じている屈辱的ワードだった。しかし、それが嘘ではないから始末に悪い。
 
「でも、確かに我々の力では及ばない高度なプロテクトがされていました。あのプログラムは本国の最先端の演算システムを用いても…天文学的計算を要して解けるか…といったレベルでしょう。」
「ニコル、お前は悲観的過ぎる。イザークぐらいカラッと熱いくらいが丁度いいんだぜ?」
「にゃ、にゃにぃにゅぐぐg」

 イザークは反発する途中でディアッカに口を押さえられた。
 そのディアッカがクルーゼに問う。
 
「隊長、鹵獲機体、使うんですか?…機体の解析は済んでいます。それに、あのOSは親切な程使いやすい。でも、中身は全くのブラックボックスだ。」
「…罠かもしれんな。だが、あれらを野放しでジョシュアに持ち帰らせてみたまえ…戦況は一層厳しい物となるだろう。ならば、使える物を使う他あるまい。我々は元々圧倒的に量を不足している。奴らに時を与えるだけで…我らは時をも敵に回すだろうよ。」
「では、使うんですね。」
「その通りだ。だが、念には念を入れる。私もただしてやられてばかりでは癪だからな。向こうがその気なら、こちらも対応するまでだ。作戦は予定通り執り行う。出せる機体は全て使う。ジンには本国と掛け合ってD装備の許可を取得済みだ。これより…我々は修羅になる。」
「…隊長。了解しました。」

 ディアッカはクルーゼの決意を悟った。
 それを聞いていたクルー達もまた、クルーゼの非情なる決断を受け止めていた。
 
 ラミアス大尉がブリッジに入ると、艦はバジルール少尉のもと発進準備が進められていた。
 フラガ大尉が怒鳴る。
 
「遅いぞ!」
「すみません!状況は?」
「ヘリオポリス外壁に攻撃、そこから数機のMSが侵入したのをヘリオポリスのモニターシステムから探知した。その中には鹵獲された機体も含まれている。」
「ハンセンさん!?それにジェインウェイさんも。その情報はどうやって?」
「我々はコンピューターシステムとサイバネティクスのスペシャリストです。我が社ではこのくらいの仕事は出来て当然です。まぁ、もっとも彼女は我が社のエースですが。この出航、私もしばし見学させて貰いますよ。あと、アニカ(セブン)には整備チームに参加させて貰っても良いかしら。彼女の技術力は必ず役に立ちます。」
「…わ、わかりました。そのようにお願いします。大尉のモビルアーマーは?」
「ダメだ。出られん。」
「では、フラガ大尉には、CICをお願いします。ミリアリアさん、艦内通信を開いて。」
「はい。」
「アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスより全クルーへ告ぐ。本艦はまた戦闘に入る。シェルターはレベル9で警報を維持しており、我々の目標はヘリオポリスからの脱出を最優先とする。戦闘ではコロニーを傷つけないよう留意せよ!…あの攻撃にも生き残った皆の運を信じている。以上。」

 アークエンジェルが発進した。
 セブンにはまずは機関室へ向かわせた。彼女にはこの間にエンジンの出力効率の改善を指示している。連合軍が開発したフェイズシフト装甲はとてもエネルギー消費効率が悪い。
 セブンはこの効率をシステムの改良で3割の改善を見込んでいる。完全な整備にはシャトルを呼ぶ必要があるが、差し当たって3割の消費効率改善は十分だろう。
 言い換えればそれだけ杜撰なシステムで無駄に浪費しているとも言えるが。
 MSハンガーでは整備員達が忙しく駆け回っていた。
 
「3番コンテナ開け!ソードストライカー装備だ!」
「ソードストライカー?剣か。ビームだと穴を空けちゃうか。」

 キラ少年は緊張しつつシステムを調整していた。
 そこにデュエルに乗るイチェブが話しかけてきた。
 
「キラ」
「イチェブさん」
「イチェブで良い。怖ければ無理をするな。」
「うん、でも、倒さなくちゃ。」
「…そうだな。だけど、ジェインウェイ社長ならこういう。生きて帰れと。」
「うん。」
「大丈夫だ。俺がお前を射たせはしない。全ての障害は排除する。」
「うん。」

 ブリッジではトノムラが敵の機体を探知した。
 
「接近する熱源1。熱紋パターン、ジンです!」
「なんてこったい!拠点攻撃用の、重爆撃装備だぞ!あんなもんをここで使う気かっ!?」

 フラガは機体情報を見て驚愕した。彼らの武装はとてもコロニー内での戦闘を考慮した物ではなかったからだ。
 トノムラが続けて探知した情報を読み上げる。
 
「タンネンバウム地区から更に別部隊侵入!うち、一機はX-303、イージスです!」
「ストライク、デュエル、発進させろ。」

 バジルール少尉の命令下、二機が出撃する。
 続けて少尉は誘導弾兵器コリントスを装填し、レーザー誘導で敵全面での誘爆を仕掛けMS隊の発進を支援する。
 彼女の判断は実弾兵器のPS装甲への効果は薄い事を考慮して、目くらましとして使用した様だが、この判断が結果的に良かったのは彼女に運も味方しているからだろうか。
 
「オロールとマシューは戦艦を!そして、ズラ!無理矢理付いてきた根性、見せてもらうぞ!」
「…あぁ、だが、俺の名前はズラじゃない。ア・ス・ラ・ン・ザ・ラ・だ!」
「アズラン?なんか言ったか?知ってるぞ?お前のお父上も隠れたハゲだってこと。いくら優秀にコーディネイトしても…ハゲは超えられない壁だったようだな。」
「…俺の事は良いが、父上のことは言うな。…本人も相当気にしている。」
「…そうか。すまない。……ってなわけで、落ちろ!!!」

 彼らは散開して攻撃を回避しつつ各自アークエンジェルへの攻撃を開始した。
 しかし、その攻撃を尽くビームの正確な射撃が撃ち落として行く。
 
「でたな、化け物兵器め!」
「…抵抗は、無意味だ。」

 イチェブのデュエルはアークエンジェル付近から相当の距離が有るにもかかわらず、正確にミサイル誘導を利用してビームに当てていた。キラは彼の攻撃方法を見てとても勉強になった。
 敵を倒すのは何も自分の武装だけに頼る必要は無い。こんな簡単なことではあるが、張りつめた状況では冷静に思考を回すのは難しい。それだけに、イチェブという仲間が居る事がとても頼もしく思えた。
 イチェブも攻撃しながらキラの様子を伺っていた。彼の精神はとても弱いが、OSを書き換える等の知識や行動力は非凡な物を持っている。彼程の理解力があるなら、自分の行動からヒントを掴むだろうと考えていた。
 
「厄介なのはデカ物よりお前か!なら、これならどうだ!!!プランD(デストロイ)」

 ミゲルの命令でジンから次々に砲撃が走る。
 それは一見するとアークエンジェルへの攻撃に思えたが、微妙に照準をそらしていた。

「!?」
「あぁ!?」

 キラの周囲を弾丸が過ぎ去り大地に着弾し大爆発が生じた。同時に大地に急速に亀裂が走り始めた。
 避難民達の逃げたシェルターでは悲鳴が起こり、不安が渦巻いた。そして、
 
「警報レベルが10に移行しました。このシェルターは救命艇としてパージされる可能性があります。全員…」

 大地の崩壊に合わせてシェルターがパージされ始めた。
 
「アズラン!!お前、何処へ行く!」

 ミゲルが叫ぶ。
 アスランは戦艦からの攻撃を巧みに避けてキラに迫る。
 
「おれはズラじゃない!って、(ミゲルとの通信をカットし)キラなのか!!」
「アスラン!?」
「ズラ!手柄は貰ったぁーーーー!!!」

 アスランの後方からミゲルがサーベルを構えてキラを捉えた。
 キラが咄嗟にソードで受け止める。その瞬間、ジンは頭部から垂直にビームで打ち抜かれ、爆散した。
 イチェブのビームは正確にミゲルの機体を貫通させたのだ。
 
「ミゲルゥウーーーーーーーーーー!!!」
「ウワアアアアアアーーーーーーーー」

 ミゲル機の爆発により両機が爆風で弾かれる。そのままキラとアスランの両機は開いた穴から宇宙空間へ放り出された。
 アークエンジェルの艦橋では彼らが弾き出されても何らのしようもなく絶句した。
 イチェブが敵機を攻撃するが、敵のジンはコロニーコアを砲撃して破壊し離脱。
 
 ついに、コロニーは完全崩壊を始めた。

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【122】Voy in Seed 16 制作者REDCOW 12/2/25(土) 0:08
【123】Voy in Seed 17 制作者REDCOW 12/2/26(日) 23:59
【124】Voy in Seed 18 制作者REDCOW 12/3/3(土) 1:18
【126】Voy in Seed 19 制作者REDCOW 12/3/19(月) 20:08
【127】Voy in Seed 20 制作者REDCOW 12/3/22(木) 23:26
【125】VOY 資料 制作者REDCOW 12/3/11(日) 17:32 [添付]

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