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第3話 侵入者
その時、工場外部で爆発音がした。私はセブンにシャトルのトゥヴォックへ繋ぐ様に促した。
セブンはサイバネティック・インプラントにより外部との通信を会話無しで行う事が出来る。
彼女を通して話す方がこの場は都合が良い。
「セブンよりシャトル・アーチャー。何が起きている?」
「アーチャーよりトゥヴォック。2機のMSが侵入した。その他に工場区画に何者かが侵入した模様。連合のサインは無いため、ザフトの攻撃と思われる。
基地周囲生命反応内に特異な遺伝子配列を持つ者が十数名いるが、外部区画より侵入している者はそのうちの数名だろう。そちらへ向かっている。転送タイミングを言ってくれ。」
「待て、今はまずい。艦長に報告する。別命有るまで待機してくれ。」
「了解。」
「艦長、侵入者は数名のザフト。こちらが目的だろう。転送タイミングを任せると言っている。」
「トゥボックには待機してもらって。私達がここで動くのはまずいわ。今は流れに任せましょう。」
「分かった。既に待機する様に伝えている。」
セブンの言葉に私は思わず目を丸くした。だが、こういう成長こそ私は嬉しい。
私達はとりあえずこの場を避難する算段をつける必要がある。しかし、この場を動くのはなかなか難しい。まだテストすら終わっていない機体をそのまま渡しては、連合の分が悪いのは間違いないだろう。ならば、先に全てのMSにシステムをインストールしてしまう事にした。
私はラミアス大尉にロムスティックを渡すと、全ての機体に基地システムから同時にインストールさせた。これで何とか機体の制御は我々の方で行える。
彼らが如何に自然に存在するより高度な行動が出来るとしても、それらは同じ条件が与えられた場合での話であり、全く違う条件に適応するのはそう簡単には行かないだろう。ならば、我々が出来る事はそうした条件を与えることだ。
「セブン、イチェブにはそのままMS内で待機し、場合によってはそれを動かして交戦する可能性がある事を知らせて。私達も白兵戦の用意をするわ。」
私はラミアス大尉に掛け合って武器を持った。
侵入者は少数だがなかなか捕まる気配は見えない。
かなりの手練が侵入しているのだろう。
マシンガンが手に馴染むのを感じる。
こういうシチュエーションが嫌いじゃない自分がいる。
来た。
大きな爆発で建物が揺れ、爆風が吹き荒れた。
幾人かの悲鳴が聞こえるが、ラミアス大尉が檄を飛ばしている声もする。
私は研ぎすまして侵入者を探る。その時、上の方で声がした。
「…やっぱり…地球軍の新型機動兵器…うっ…お父様の裏切り者ー!」
上を見上げると若い女の声。となりには少年の姿も見える。何故こんなところへ。
「…子供!?」
案の定、ラミアス大尉も驚いている様だ。
無理も無い。軍の施設内にいる子供は不自然だろう。
そのラミアス大尉は兵士達に機体を動かす様促している。
「ハマダ!ブライアン!早く起動させるんだ!」
二人の兵士が走って向かった。
銃撃戦の音が聴こえる。私も握っていたマシンガンで彼らの走りを援護した。
その時、
「あ!?危ない後ろ!」
「さっきの子?まだ!……!」
「うぉ!?」
ラミアス大尉は華麗に避けると、ザフト兵を撃ち殺した。
その身のこなしはなかなかのものだった。
そして、彼女は上方の少年達に言った。
「来い!」
「左ブロックのシェルターに行きます!お構いなく!」
「あそこはもうドアしかない!」
「え!?うわぁ。」
爆発で壁面が破壊され、構造物が落下した。
少年はそれを軽やかに避ける。
「こっちへ!」
「あっ。」
少年の声で振り向くラミアス大尉。
そこには緑色の服を来た侵入者がラミアス大尉へ攻撃を仕掛けてきた。しかし、彼女は冷静にその攻撃を避けると返り討ちにした。
そこにもう一人の赤い服を来た侵入者が走りながら銃を射ってきた。
「ラスティーーーー!うぉぉぉおおおおおお!!!」
「がぁあああ!!!」
彼の銃撃はMSに乗り込もうとしていたハマダを撃ち抜いていた。
「ハマダ!?!ぅわああ!!」
不意の攻撃に対応が間に合わず彼女も腕を負傷。
そこに先程促されて降りてきた少年が駆けつけた。だが、彼は何故か敵を前に呆然と立ち尽くした。いや、彼だけではない。侵入者もまたそこに立ち止まっていた。
「…アスラン。」
「…キラ。」
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