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【148】-01- (第一章 旅立ち!夢見る千年祭)
 Double Flags  - 08/8/12(火) 2:20 -
  
 今日はガルディア王国建国1000年を祝うお祭り、千年祭。その記念すべき初日であった。
 そんな日にクロノとマールの二人は出会った。
 1つの違和感を残して。


 リーネの鐘の前、わずかに汗の滲んだ額をおさえつつ二人は話しはじめた。
「クロノ、どう?」
「いや、何の収穫もないよ。どうなっているんだこれは」
 腰に二本の刀を差した赤い髪の少年――クロノは首からペンダントを下げた金髪でポニーテイルの少女――マールに言った。
 彼らは、ほんの少し前に『ここ』に戻ってきたのである。
 それこそ、何もかも終えて、物語で言うならエンドロールが流れているころだろう。
 二人の記憶が確かなら、クロノとマール、そしてもう一人の少女が『ここ』に戻ってきたのは夜中である。
 それがいつの間にか朝に、しかもベッドで寝ていたのだ。
 ベッドの中にいつの間にかいることに気づいたクロノは母親が起こしに来る前に飛び起き、母親の存在を確認した。
 しかし、話しかけてみるが、どうにも要領を得ない返事しか返ってこない。
 すぐに外へ出ると、そこには他の大陸からの人々が港から降り立つところであった。
 ますます混乱し、幼馴染でさっきともに『ここ』へ帰ってきた少女――ルッカの家に行くがそこにはルッカはおらず、直ったはずのルッカの母親ララさんの足が悪いままであった。
 ルッカの家を飛び出し、そのままガルディア城へ向かうが門前払いを食らう。
 衛兵に対しては何を言っても無駄であった。
 仕方なくリーネ広場へ向かったクロノ。
 そこには同じように動揺していたマールが、武器商人――ボッシュに何か言っているところであった。
 しかしボッシュはどうにも困った様子。
 クロノはすぐにマールに話しかけ、ことの事態を把握しようと話し合い、とりあえず情報を集めることにしたのであった。
 それでもなんの情報は得られない。
 それこそ、クロノとマールがはじめてであった千年祭の初日と同じ反応を皆がするのだ。
 そんな時二人に、一人の少年が歩いてきた。
 その少年に気づいた二人。
 少年からは、懐かしいような、恐ろしいような、奇妙な感じがにじみ出ていた。

 見た目11.12歳程度の少年がクロノとマールの前に突然現われ言った。
「君たちにはもっと強くなってもらいたい。
 まだ足りない。だから、強くなってもらわなくてはいけないんだ」
 クロノはその少年の目線に合わせてるためにしゃがんだ。
「君はこの世界のことをしっているのかい?」
 少し強めに、少年の肩を掴んだ。
 マールはそれを注意しようとしたが、少年はそれを簡単に振りほどいた。
 いや、クロノの目の前からその少年は消失し、少し先に居た。
 クロノとマールは驚き固まった。
「やっぱり気づいていたんだ。よかった。時間が繰り返しているって」
 目を合わせるクロノとマール。
「!」
「それならいいかな。頑張って、
 少ししかヒントはあげられないけど」
 それだけ言って少年は、文字通り消えてしまった。
 少年が消えてしまったことは周りを見る限り、自分たちだけしか気づいていないようだった。

 一瞬で現れた少年は、それは陽炎のように消えてしまった。
 呆然としているしかなかったマールは、なんとか声を絞り出す。
「クロノ、あの子の話どう思う?」
「・・・・・・何がなんだか、さっぱりだ。
 『繰り返している』ことに気づいていて。
 いや、あの少年が繰り返しているんだって言うんだっていう、信じられないけどそれが現実だっていうことを・・・・・・」
 クロノの声はそこで小さくなり、ふたたび声を出す。
「繰り返しているって言うなら、次に起きるのはリーネ様の誘拐だ。
 そうなら、俺は中世でもうマールに消えて欲しくないと思っている」
 思わず体に、拳に力が入っていた。
「わたしもクロノにもう死んでほしくない」
 古代のことを言っているのだろ。
 あの事件はクロノにとっても、それはマールを初め仲間たちにとっても、強烈な出来事であった。
「それにしても何が起こっているんだ」
 何もつかめないという事実がそこにある。
「…クロノ」
  カン、カラン、カン
 リーネの鐘が鳴る。
「またこの鐘が始まりか…」
「これはわたしとクロノの始まり」
 サッとマールはクロノの手を掴んだ。
「さっ、行こう。ルッカなら何か掴んでいるかもしれない」
 引っ張るマールにクロノはつられた。
 それはこれから何があっても大丈夫だといえる強さを感じた。
 ふたりははじまりの場所、あの広場に向かった。

 広場には多くの人が集まっていた。
 クロノとマールは思っていたよりも早くその広場に入ることができた。
 二人の記憶では、それが完成するのはもう少し後の時間であったからだ。
 広場ではルッカが装置の調子を見ている。
 広場に入ってきたクロノとマールに気づくと近づいてきた。
「やっと来たわねクロノ。準備は万全、さあ早くのって」
 その様子に少しクロノは戸惑った。
「ルッカ実は・・・」
 それを見て、すぐにルッカはその先の発言を手で制した。
「やっぱり、わたしと同じ時間軸のクロノよね」
 それは何を意味しているのかクロノにははじめ分からなかった。
「ルッカ?」
 疑問を声にしたマールにルッカはにこっとした。
「時間が繰り返しているのよマール。
 わたし達の冒険が始まったこの場所の時間軸に
 はじめはなんだか訳が分からなかったわ
 だって、いきなりこの空間転送装置の前に座っていたんだもん
 横ではタバンがこれの配線いじっているし」
 タバンを指差すと、それに気づいたタバンがクロノに気づいて簡単に声をかけすぐに装置の前に戻った。近づこうとしているちびっ子をいなしていた。
「すぐに嫌な予感がして家に戻ると母さんが足が治っていなくて
 さすがにその時は動揺したわ
 そして、考えたわ
 時間が移動できるようになったきっかけのヒト
 そのヒトがまだやってほしいことがあるんじゃないかって
 だからまた時間を戻したんじゃないかって」
「・・・」
 クロノとマールは唖然とルッカを見た。
「どうしちゃったの二人とも」
「ルッカすご〜〜い」
「ええ、まあサイエンティストだから」
 気をよくしたルッカが高笑いをしようとした時にさっきの少年があられた。
「三人そろったね」
 ルッカは高揚した気分を邪魔され、不機嫌に子供の方を向く。
「あんた何者?」
 そのときルッカは、少年にいつか古代であった不思議な少年――ジャキのときと同じようで全く別の何かを感じた。
 それはクロノとマールがその少年に感じたものに近いものでもあった。
「ルッカ」
「『真実を求めれば現われる
  わたしが消えた後もそれが残らん』」
 呪文にも似た何か不思議な言葉であった。
 ひどく、その言葉が三人に響きわたる。
「なんだそれは」
「アドニー・コンフォートの『銀楼』」
 そっとマールがつぶやいた。
「コンフォートって、あの!」
 ルッカの記憶にはその名が強く残っている。
「これは中世の偉人である歴史家が残したもの
 彼女はこれから起こる何かに気づいていたのかもしれない」
「意味が分からない」
「君たちには一つの選択肢がある。
 これは常に君たちに付きまとうこと…」
 少年はクロノの言葉を無視して進めた。
「ラヴォスゲートは現代にもある」
「!!」
「それに乗っていけばいつでもラヴォスを
 それも君たちの好きなタイミングで倒せる。
 もちろん、いますぐに行かなくてもいい
 ただ、その道を選ぶたびに僕は君たちの周りに現われる
 その道でいいのかと」
「どういうことだ」
「これから君たちにやってもらいたいことがある。
 でも、まだ今の君たちじゃ足りないんだ」
「足りないって」
「もう少し経験をつまないと」
「わたし達に何をさせようとしているの」
「それは君たちの手で見つけたほうがいいんだ。
 僕が直接いってもその本当の意味が分からない。
 対処できない
 今じゃダメなんだ
 ラヴォスゲートはあの小さなカプセルから行ける
 頑張って」
 三人が少年の指した先、装置の一方側に小さな光が見える。
 少年の方を振り返るとそこには少年の姿かたちが消えていた。

 クロノたちは実験を手早く終わらせ、観客を帰らせた。
「どう思うクロノ」
「なんともいえないな」
「せっかく救った世界なのに」
 クロノは小さなカプセル、ラヴォスゲートを見た。
「だったらもう一回救えばいいんだよ」
 マールの発言にクロノとルッカは、はっとした。
「そうよ、もう一回回ってもう一回救ってやればいいじゃない」
「そうだな、やろう」
 三人は決意を新たにポットに向かった。
「でもどうやって?」
 マールがそんな疑問を発した。
「あの少年は何かに気づいて欲しかったような気がするの」
「どういうこと」
「もう一回わたし達が繰り返すことで、
 前の時間軸
 前の周に気がつかなかった何かに気づいて欲しい
 つまりは、もう一回わたし達の行動を
 洗いなおして気づかせようとしているのよ」
「何を?」
「何かよ、何か」
「そこまで気づかせたいものって何なんだろうな」
「まあ、とりあえず進んでいけばわかるわよ
 今は絶対的に情報が足りないんだから」
「じゃあ行くね」
 マールはいつの間にかポットの中に入っていた。
「早っ!」
「そう、とりあえず進んでみろ、の精神よ」
「それでオレの幼い頃、一体何回ひどい目にあったことか」
「ぐずぐず言わない、さあ手伝って」
「おねがいねクロノ」
「分かっているよ。
 今回はマールが消える前に全部終わらせてやるからな」
「その調子よ、クロノ」
 ルッカとタバンは装置を動かしゲートを発動させる。
  ウウウィウィウィウィウィウィウィイイイイイン
  グオォン
 ゲートが開かれマールは吸い込まれていく。

 残されたクロノとルッカはすぐに中世へ旅立った。

引用なし
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【147】強くてクロノTrigger まえがき Double Flags 08/8/12(火) 2:14
【148】-01- (第一章 旅立ち!夢見る千年祭) Double Flags 08/8/12(火) 2:20
【149】-02- (第二章 帰ってきた王妃) Double Flags 08/8/13(水) 14:17
【150】-03- (第三章 消えた王女上) Double Flags 08/8/15(金) 1:06
【156】-04- (第三章 消えた王女中) Double Flags 08/8/31(日) 23:41
【157】-05- (第三章 消えた王女下) Double Flags 08/8/31(日) 23:42
【158】-06- (第四章 ただいま!) Double Flags 08/8/31(日) 23:45
【159】-07- (第五章 王国裁判I脱出) Double Flags 08/8/31(日) 23:51
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【161】-09- (第五章 王国裁判IIIガルディアの護り... Double Flags 08/8/31(日) 23:57
【162】-10- (第五章 王国裁判IV脱出) Double Flags 08/8/31(日) 23:58
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【167】-13- (第六章 廃墟を越えて……3.アリスド... Double Flags 08/9/24(水) 2:29
【168】-14- (第六章 廃墟を越えて……4.ガードマ... Double Flags 08/9/24(水) 2:37
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【188】-17- (第七章 不思議の国の工場跡 二 古代... Double Flags 10/9/20(月) 20:13
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【192】-21- (第八章 時の最果てC梯子の先) Double Flags 10/9/20(月) 20:23
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