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【149】-02- (第二章 帰ってきた王妃)
 Double Flags  - 08/8/13(水) 14:17 -
  
 着いたのは予想通り裏山――ボーア山の開けた場所である。
「間違いない
 周囲にジャリがいる」
 モンスターの気配は把握し、後ろにいるメットをかぶった幼馴染の少女――ルッカに声をかける赤い髪、二本のカタナが目立つ少年――クロノ。
「分かっているわよそれぐらい」
 これも小声で話すルッカ。

  ガサガサ

 緑のモンスター――ジャリが草むらから現われる。

  "回転切り"

 すべてのモンスターにほぼ一撃ずつ与える。
 モンスターは一撃を受けて動く気配がなくなった。
 それらは、すぐに緑の砂になって山と一体化していく。
「弱いわね。強さも前の周のままなんて」
「まあ、早いほうがいい
 簡単に進めるならそれはそれで楽だ
 早く山を下りよう」
 二人は山を下り、クロノはガルディアの森へマールのもとに、ルッカはトルース村へ情報を集めに分かれた。


「あなたが情報屋のトマね」
 見慣れたトルース村の宿屋。
 宿屋は、いつになく暗い雰囲気を出していた。それは、この時代が今まさに戦争状態にあるからであろうか。宿屋一階にある食堂のカウンターはそのほとんど埋まっているのは人々が不安から逃れるために少しでも集まりたいという気持ちからのようにも見える。
 その中ではちまきをした見るからにおっさんの感じで出ている男――情報屋のトマにルッカは話しかけた。
 声をかけられ振り返るトマ。しかし、すぐに向き直ってしまう。
 無視されたと感じたルッカが何かを言おうと声を溜めると
「なんだい嬢ちゃん」
 返事をしてきたので、すぐにのどまで出ていた言葉を呑み込む。
「き、聞きたいことがあるの」
 ちょっと詰まりながらも別の言葉を出す。
「聞きたいことか…」
 空のコップを置いた。
「どこからやってきたのか分からないが
 さっさとこの土地から離れたほうがいい」
「どういうことよ」
「あんたの格好、ここの人間じゃないだろ?
 俺は情報屋というより冒険家なんでね
 世界中を回ってきたんだ
 少なくともこの中央大陸群にはあんたみたいな格好はいない
 別にあんたらが何者か知らないし、知る気もない
 今ここは戦争中
 旅はもっと安全な場所でしてきな」
「ちょっ、ちょっとある人の情報を探しているの」
「人探しは専門外だぜ」
「別に探してもらいたいわけじゃないわ。
 その人の情報がほしいだけ」
「なるほど
 その人がこの大陸にいるかもしれないからやってきたのか」
 トマは再びルッカの方を見た。
 一瞬驚いた様でもあったが、またいつものトマの表情に戻っていた。
 やっとこっちを向いたことに気をよくし、ルッカは話を進める。
「ちゃんと、一杯でも二杯でもおごるわよ」
 にやりとした。
 トマはカウンターの親父をを呼びつけ一杯を注いだ。
 ルッカは10ゴールドをカウンターの上に置いた。
「しっかり人の使い方わかっているじゃねえか。
 よし、なんでも聞いてくれ」
「ここにミドリのデカガエル見なかった」
「・・・デカガエル? 人じゃねえのかよ。
 巨大ガエルの料理でもつくるのか?」

  ドン

 思わずカウンターをたたく。
「そんなのどうでもいいでしょ?
 知っているの知らないの」
 迫力に押される。
 あたりの人もこっちを一瞬注目する。
 相手がトマと知ってか、すぐに自分たちの話題に戻っていく。
 トマ少々驚きはしたが、すぐに話し始めた。
「それは今二階にいる奴のことか?
 それともこの北ゼナン大陸に来たゴールデンフロッグのことか
 昔は南ゼナン大陸に居たんだが突然この来たゼナンに現われてな
 あの時は大変だったらしいが
 何でもガルディア騎士団団長に何年か前に退治されたらしい」
「う、上にいるの?」
 呆気に取られたようで少し止まる。
「ああカエルに似た亜人は確かに上にいるが・・・」
「ありがとう」
 トマの言葉を最後まで聞かず、ルッカは体をひるがえし階段を見ると会談から独特の足音が聞こえてくる。
「カエル!!」
 階段を下りてきた小柄な男に向かっていった。
 すぐにルッカが近づく。
 マントを着け、胸にはプロテクター、腰には剣が見られることから剣士である全身ミドリ色をした男――カエルはその言葉に反応した。
「ルッカか、久しぶりだな……? ん?」
 と、自分の言葉を頭の中に繰り返し、少し混乱し、固まった。
 そんな様子をルッカは見て、彼が何に混乱したのかのに気づいた。
「やっぱりカエルも同じ時間軸のカエルなのね」
「同じ時間軸? どういうことだ?」
「わたしの名前覚えているんでしょ」
「ああ」
「ううん
 今は時間がもったいないわ
 すぐにマノリア修道院に行くわよ」
「おい、ちょっとは説明しろ」
 そこへトマが近づいてくる。
「嬢ちゃん
 マノリア修道院は気をつけたほうがいい
 どうも最近のあの場所はきなきくさくてしょうがない
 オレが思うによからぬ事が起きているんじゃないかって思うんだ
 消えたここの王女様もそれに巻き込まれたんじゃないかって」
 その会話にマスターが関わってくる。
「はっはっは
 お嬢ちゃんにガセをつかませちゃいけないよ
 リーネ王女様はボーヤ山に見つかったて話じゃないか」
「そうか、見つかったのか
 でもあの場所には気をつけたほうがいい」
「分かったはトマ
 それとわたしは嬢ちゃんじゃなくてルッカよ
 さあ行くわよカエル」
「あ、ああ」
 ルッカは宿屋の出入り口に立つと
「トマ、無事に帰ってきたらもう一杯おごるわ」
「それはありがてぇ
 無事を祈っているぞ」
 笑顔で返事をすると、ルッカはカエルを押し出すように外へ出た。


 しばらくして
「マスター、不思議な奴だったな」
「あれがいつもあんたの言う西や東の大陸の人間か」
「いや、あのじょ…ルッカはちょっと違う
 なんか別の何かだ」
「へっ、相変わらずなに言ってんだ」
「そうだな、何を言っているんだろうな
 もしかすると、この世界を救うかもしれないな」
「大きく出たな」
「こういうことは大きく言った方がいいんだよ
 なんでもな
 まあ、なんとなくだが、何かをやりそうな目をしている」
「まあ、確かに不思議な感じをしていたが…」
 そこで二人の会話は終わった。
 トマはルッカに振り返った二度目、なにか強いものを感じていた。
 以前にも西や東の大陸で何度か見たことのあるそんな強い目をしてた。
 この中央大陸では魔王軍の勢力が強くなった今、あんな目をしている奴は見たことがない。
「なんか世の中いい方向に向かいそうな気がするぜ」
 誰に言うでもなく、一人トマはつぶやいた。


 一方のクロノは、いつの間にやら王の間に居た。
 王の間には二つ座。
 空席ともう片方にこの国の王、ガルディア王が座っていた。
 威厳と風格をかもし出すガルディア王、しかし戦争中ということもあってか少しやつれているように見える。これがしばらくたつと倒れこむまで心労を溜め込むのかと思うと少し心が痛い。
「おおそなたがリーネが外で世話になったという」
「ええまあ一応」
 どうも、先に着いたマールが色々と手を回してくれていたらしい。
「格好をみるに、この大陸、いや中央大陸のものではないな」
「ええ」
 多少、質問に答え難く、失礼かと思いながら短く済ます。
「なにやら不思議な感じのする少年だ
 リーネが裏山で見つかってここに帰ってきたときもこんな感じがした
 ふむ……なにやらそなたに感化されたのであろうか
 いや、まあよい
 外にでてしまい行方不明になってしまったリーネを助けたことに礼を言う
 近頃魔王軍の活動が活発になってきたせいなのか
 魔物も騒がしくなってきおった
 そなたに助けてもらわなければ今頃リーネはどうなっていたか
 想像するのも恐ろしい」
 クロノはただその言葉を膝を付いて聞いていた。
「今リーネは帰ってきた安心感からか自分の部屋で休んでおる
 そなたが来たら部屋に通して欲しいということだ
 よければ顔を見せてやってくれ」
「はい!」
「ふむ、なかなか元気がいい
 今度、他の大陸の話を聞かせてくれ」
「ええ、時間がありましたら」
「そうか、それは良い
 それにしても、あれほど大事にしていた髪飾りをなくしてしまうとは
 どこかに落としたのかもしれない
 そなたは知っているか」
「いえ」
(だってそれは今マノリア修道院あるから……)
「わたしも少し探してみます」
「いや、客人の手をわずらわすわけには」
「いえ、わたしもこの大陸を練り歩くつもりなので……」
「そうか」
「ではわたしは」
 そう言ってクロノはリーネの部屋へ向かう。
 同時にガルディア王の横に居た大臣が外へ向かう。
 大臣は侮蔑に満ちた目を向け、それをクロノは受け流す。
 この大臣の正体がヤクラという魔物だということを知っているだけに、今すぐに行動を起こしたいという衝動が起こる、がそれを押さえ込みマールの待つリーネの部屋へ向かう。
 大臣はクロノが見えなくなると、憎憎しくその方を睨んだ。
 しかしガルディア王が近くにいるため、すぐに足を外へ向ける。 

 相変わらず長い階段を登るクロノ。
 心の中ではすでに消えてしまったのではないかという焦りから少し強めに扉を開ける。
 そこには綺麗なドレスを着た、金髪でどうやったらその髪形ができるのか不思議な形の頭をした少女――マールがそこに居た。
(……か、かわいい)
 目のあったマールはキョトンとした。
「私はこのものと話があります
 少し席をはずしてください」
 さすが本当のお嬢様、堂に入っている。
 マールはお付きの者が部屋の外へ出たのを確認するとクロノに近づいてきた。
「クロノ、来てくれたんだ。結構早かったね」
「あたりまえだよ。でもすぐに行かないと…」
「分かっている、早くリーネ様救いに行ってあげて」
「わかってるよ」
「ガンバ、クロノ。
 あっ!
 それとこの紙を料理長に渡してくれる」
 机の引き出しから折りたたんだ紙を取り出し、クロノに渡した。
「わかった」
 じっとマールと見た。当のマールはまたキョトンとしている。
「行ってくる」
「よろしくね」
 クロノは一気に階段を下りていった。

引用なし
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【149】-02- (第二章 帰ってきた王妃) Double Flags 08/8/13(水) 14:17
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