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【169】-15- (第六章 廃墟を越えて……5.革命家.)
 Double Flags  - 08/9/24(水) 2:42 -
  
「ここがアリスドームの中心部だ」
 居住区から離れたドームの中心部、中央制御室。
 かつては人の手で管理されていたであろうその場所はロボットによって管理されている。巨大なディスプレイにパネル、意外と綺麗にまとまっていた。いや、綺麗にまとまっているというよりもそれ以外ほとんど無かった。
 そこはルッカは懐かしい場所だった。
 クロノ、マールと共に世界を救おうと決めた、決意した場所である。
 そのルッカに前にはボロボロのローブを来た長身の男がいた。
「で、リュトはここに来てなにを知りたいの」
 リュトの黒瞳がルッカを見た。
「アリスドームの秘密だ」
「秘密?」
「ルッカ、だったか?
 このアリスドームでおかしいと思ったことはないか?」
「? いやなにも」
「そうか、まあこの大陸に来て日が浅いというのなら分からないでもないが。
 なら、ここ以外に人のいるドームに行ったことがあるか?」
「トランドームに」
「トランドームに比べてこことなにが違う?」
「ここの方が大きいって事?」
「確かにアリスドームの方が大きいが、トランドームとあまり人口は変わらない」
「そうだけど、それはロボットに支配されているからで…」
「ロボットに支配されているというが、トランドームにロボットはいたか?」
「……見かけなかったけど。
 それはトランドームがここと違ってこの中央制御室があるから…………あれ?」
「考えてみたか?
 中央制御室でなくてもトランドームには居住区の環境を一定に保つ制御室があることに、そしてそこはロボットが管理していない。
 でもここにはロボットが制御室を支配している」
「でもそれはここが大きな施設だから」
「知らないかもしれないが、ここと同じ程度の施設はどのドームにも存在していた」
「それってどういうこと」
「ここの制御室はその中央制御室と言うように他のと少しだけ設備が違う。
 その一つに通信用のシステムがあるわけだが……」
「通信システムって、それが生きていれば……」
「そう、他のドームと交流を可能とすることができる。
 だが、この大陸のどのドームも通信システムだけ破壊されている。
 だから俺はこのアリスドームは他のドームと違ってロボットがドーム内、といっても居住区以外を支配している理由がここにあるのだと考えた。
 そしてそこから、一つ浮かんだのが、ロボットは完全に人を滅ぼそうとはしていないということ。
 もし滅ぼそうとしているなら、なぜ環境制御室を破壊しない? 俺はこの大陸のほとんどのドームを見て歩いたが制御室はほとんどすべてのドームの中に生き残っていた。中には新しく直されているところもあった」
「誰かが直したとは考えられないの?」
「そんな奴はこの大陸にはいないよ。俺が見て回った限りは」
「でも、ロボットなら通信システムだけを破壊することができるんじゃないの? 
 それとも、ロボットにはこのアリスドームを守る理由があるって言うの?」
「それは俺も考えた。
 だから、その理由を知りにここまで来た。
 まあ、ここに入り込むだけでも苦労したんだがな」
「苦労? あなたの実力ならばこの辺りのロボットにはそう簡単に負けはしないと思うけど」
「問題はロボットじゃなく人間さ。
 さっきも言ったがこのドームにはロボットがいる。
 そのためここの住人はなにがロボットの気に触るかビクビクしているのさ。
 そんなんじゃ、俺の言う反乱や反抗なんてとても無理、そんな気にはならない。
 それを促そうとする俺は厄介ものってわけになる。
 あんたらも似たようなものだろう?
 違うか?」
 確かに、ルッカはさっきのドンの様子を見ているとそんな感じがしていたのは事実だった。
「確かに下手に刺激してこっちが巻き込まれたんじゃどうにもならんからな。
 ここの人間はもうほとんどロボットに支配されている状態さ。
 抜け道探すのに一苦労だったな」
 リュト・サペルはパネルを操作しはじめた。
「それでな。なぜそこまでロボットがこのアリスドームを残す理由を、といっても仮説はあるんだがな」
「仮説?」
「まあな」
 それ以上続けず、パネルを操作した。
 ルッカもなんとなく歯切れが悪いがこの男とそれ以上喋らないというような雰囲気が出ていた。
「なるほど、このアリスドームはずいぶん古いんだな。昔の資料がたくさん入っているな」
「昔の資料?」

  カチカチ ポチ

「擬人ロボットや人造人間、対戦闘用ロボット、家庭用ロボット、昔の人は色々やったんだな」
「擬人ロボット?」
「ああ」
 ディスプレイに人間そっくりの構造をしたロボットが映し出される。
「大陸によっては近代になっても戦争をしていてな、そこで人間に姿かたちが似ている擬人ロボットって言うものが戦場を動かしたって話だ」
「人造人間となにが違うの?」
「人造人間は人間が素体となっているんだ。
 失った腕とかを機械に変えた人のこと、これはロボットが開発された初期にもっとも盛んだったていう技術らしいな。
 逆に、擬人ロボットは元から全て人工知能で補っていたものに、人間の姿かたちのからだを与えたもの。
 これが大変そっくりに作ってしまってな、戦争時、それは大変だったらしい。
 いま、擬人ロボットがいないのはその時の教訓から、擬人化の技術を廃棄したってらしい。
 まあ、このときにも色々と問題が起きていたらしいが……ロボットの歴史にも色々あるんだな。
 ロボットは人間が作り出した文化だ、これは否定できない事実だ。例え今がどんなものであろうともな。
 かつてはヒトとロボットが作り出したのが今の文明。
 かつては協力し合っていた時代もあったというのにこの始末。一体でどこで間違ったのか」
 リュト・サペルはため息をつく。
「? なるほど、ならば、ここの狂った機械を作り出した大元は何だ?
 どこからこの……」
 何かを掴んだのかさらにパネルを操作する手を早める。
「リュト」
「なんだ?」
「調べ物が終わったら、そのデータベースを使わせてもらってもいい?」
「……それはかまわない。
 どうせ、ルッカもこのデータベースを目的にしていたんだろ」
「ええ、まあ」
「大丈夫だ、たぶんそれほど時間はかからない、と思う」
 ははは、と笑いながら操作を続けるリュト・サペル。


「やっと見つけた。これがこの大陸の元凶だな」
 数分後、ディスプレイに現われたのはかつてルッカがマザーブレインとであった場所であった。
(あれは、ロボの故郷の工場? 歴史は変わっているといっても、マザーブレインという存在は変わっていなのね)
 少し暗い気持ちになった。
 そんな思いをよそにリュト・サペルはさらに深い情報を探って行く。

   ウィィィィイインウィィィィィイインウィィィィィィイイン

 突如、扉から三体のロボットが現われた。
 それに気づき、素早くその場を離れるルッカとリュト・サペル。

  ”レーザー”

 高圧レーザーが操作パネルを焼き切る。
「やろってのね」
 ルッカはミラクルショットを取り出しかめた。
「まてっ!!」
 リュト・サペルはルッカを止めポケットから黒い球体を取り出した。

  ”アクセス”

 球体は光を放った。
 光はロボット三体と包んだ。
 物陰に隠れ、光が収まるのを待ち、再びロボットを見ると三体は停止していた。
「見ていろ」

   スウィン

 ロボットの機能が回復し、互いに何かを確認しているようだ。
(なにが起きているの)
 少し把握し切れていないルッカはその様子をじっくり見ていた。
『音声確認』

   カーカー

 三体のロボットはその場を離れた。

   ウィィィィィン

 三体がこの部屋から出て行った。
「どうゆうこと?」
「今投げたのは、ロボットの認識するシステムを少しいじる信号を出すプログラムを、光として浴びせて誤認させるようにするもの、ロボットを壊さずその場をやり過ごすことができる兵器さ。
 ただ特殊な機器を使っているので、大量に使うことができないからな。
 あまりこの辺りを壊すことができないから仕方なく使ったまで、いわゆる秘密兵器だ」
(確かに、機械を詳しく分析していればそれも作れるかもしれないけど)

   ウィィィィィン

 再び扉が開き、ルッカは構える。
 数対のロボットが入ってきた。
 先ほどのロボットとは別の形をしたものであった。
「修復ロボットが来たか」
「修復ロボット?」
「ああ、おそらくさっき破壊したデータベースを直しに来たんだろう。
 すまないなルッカ、しばらくはここに入れないわ。
 なに調べるか分からないが」
 二人はロボットに気づかれないように外にでた。
「大丈夫よ、見当はついているから」
「そうか、俺はしばらくこのドームの中を漁っているつもりだ。
 金髪ポニーテイルのお嬢さんの母親を探すんだろ?」
「へっ、あ、ええ」
 リュト・サペルが苦笑いをする。
「また機会があたら会うこともあるだろう」
「データベースが直った頃に再びここに来ますよ」
「そのとき俺がいるか分からんがな」
「はははは」
「冗談はともかく、いつ直るか分からないぞ。
 まあ、数日中には直るだろうけどな」
 二人はそういって別れた。
 革命家リュト・サペルはそのまま留まり、ルッカは元の来た道を引き返した。
引用なし
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