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クロノとマールは鉄筋の上を渡り問題のガードマシンの部屋の前に来ていた。『前の周』と同じなら、あと数歩でガードマシンのセンサーに引っかかるだろう。
「ルッカになにをもらったんだ?」
「うん、なんかふくろを渡されて」
ごそごそと出す。
取り出したものは手甲とペンチであった。
「ペンチ??」
「どっかの工具みたいだな」
「一つは太陽石とにじの貝がらを利用した攻撃力強化の手袋、命名ライフショットと空間を湾曲させることができるペンチって説明書には書いてあるけど」
「どういう仕組みなんだ」
「さあ?」
「じっくり読む時間がないから本番で確かめるしかないかな」
「大丈夫なのか?」
「緊急時マニュアルには、セーフティがかかっているから大丈夫だって」
「……」
「………」
「心配は残るが、急いでルッカを追わないといけないからな」
クロノは一歩踏み出した。
ピーピーピーピー
警告音が部屋中に鳴り響く。
同時に巨大なガードロボが出現する。
姿かたちは『前の周』のものと同じであった。
大きな図体に地面につかずにわずかに浮いている。その横にビットが浮いている。
戦闘開始。
クロノはすぐに壁を使い大きく跳び上がった。
凍れる・・・
マールは唱えた“アイスガ”の呪文をクロノのカタナに絡みつかせる。
“アイスガソード”
魔力でカバーした氷のカタナは一体のビットを直撃し
ダアァァアアン
瞬時に爆砕した。
”サンダー・ショット”
右手により『天』属性の魔力を込めたナイフをガードロボに放つ。
ナイフはガードロボ本体に直撃し大きく震わした。
クロノはナイフが直撃したのを確認し、カタナを構えると、
ドフゥン
クロノが衝撃波で吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
クロノはどこからの攻撃か気づく前に、マールの声が聞こえた。
「ビットを……」
最後まで聞こえるまえに、クロノは体を少しずらした。
ピュン
ビットを見ると何か光るものが見え、肩に何か熱いものが通り過ぎるのを感じた。
左肩に少し火傷のあとができた。
ビットの攻撃は『前の周』ではこの圧縮ビームは軽くかただが痺れる程度だが今回はそうも行かない威力らしい。
”サンダー”
”サンダー”
”サンダー”
連続雷撃、『天』の属性を持つ魔力の塊がガードマシンに直撃した。
ドフゥン
再び衝撃波がクロノを襲った。
”アイスガ・カルン”
クルウゥゥゥン カン
冷気はビットを包み、浮力を消し去り床に落とした。
ガードマシンに注視しながらクロノの方に近づくマール。
「イマイチ能力が掴めないな」
「ビットの行動を停止しても、なんかすぐに復活しそうだけど」
凍らせたビットは氷の塊に包まれながらもがたがたと揺れている。
”ケアル”
マールの回復呪文はクロノの火傷を癒し、マールはクロノが立ち上がるのに手を貸す。
「大丈夫?」
「ああ」
例え回復呪文で傷を治癒させたとしても痛みは残る、まだクロノの肩は痺れていた。
クロノが再びカタナを構えるとマールは離れた。
沈黙を続けるガードマシンに近づく。
”らくよう”
わざの発動するまえに腕が伸びきったところで、重くなった。剣先はガードマシンにわずかなところで力及ばず止まった。
クロノはその重さに何とか踏みとどまり、無理に横薙ぎに力を加えるため、カタナを傾けるが重さが増し、それが体全体に広がっていく感じがする。
わずか数秒の間で体が動かないほどになり動けなくなっていた。
”ライフ・ショット”
マールの声に呼応するかのように魔力の矢がガードマシンの中心に突き刺さり、消える。
マールはさらに弓を引く。
同じところに矢は刺さり。さらに弓を引く。
強化された魔力の矢を放ったところで途中で消え去った。
重さから逃れることができたクロノはその場をはなれ、マールの近くに行く。
「たすかったよ」
クロノはガードマシンの能力に気づいたことを話した。
「たぶん、空気を操るとみた」
「空気?」
「衝撃波や近くに行ったとき、なんか空気が薄く感じた」
「どうするの?」
「サポートしてくれ」
なにも言わずにマールは呪文の構成を始めた。
”ヘイスト”
クロノの体がわずかに赤みをおびる。
クロノはカタナを構え、ガードマシンに近づいた。
体がだるくなる。
そのときビットが動き出す。
”サンダガ”
雷撃の波がガードマシン、ビットを巻き込み爆裂させる。
ドゴォォォォォン
体に感じていた気だるさが一気に抜ける。
ビットはその機能を停止した。
ガードロボの方は一時的に機能を停止していたが、クロノを認識し動き出す。
ピーピーピーピー
ガードマシンの警告音がなる。
同時に冷気が辺りを包んだ。
”アイスガ”
無数の氷がガードマシンを襲う。
続いてマールは呪文を発動させる。
”アイスランス”
人二人分の大きさの氷の刃が一気にガードロボを貫く。
そこへクロノがカタナに『天』属性の魔力を込めたカタナを振り下ろす。
”サンダーブレイド”
カタナに纏った”サンダー”の力が貫かれたガードマシンの装甲から中身をえぐるように斬り込む。
”かいてんぎり”
追い討ちをかけるようにガードマシンを斬った。
クロノはガラクタとなったガードマシンを見ていた。
その表情は神妙でありマールは声をかけるのを戸惑った。
「……クロノ?」
「やるせないな」
クロノは食料庫へ歩いていった。
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