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【165】-11- (第六章 廃墟を越えて……1.)
 Double Flags  - 08/9/24(水) 2:11 -
  
 ガルディアの森からゲートを通ってバンゴドームに抜け出した三人、クロノ、マール、ルッカの三人。
 三人はこれからのことについて話し合いを始めた。
「許せないわね」
「いきなり、どうゆうことなのルッカ?」
「なんかさあ、全部あの少年の手の上で動かされているような気がして」
「??」
 ルッカの言いたい事が、わかっていない様子のクロノとマールに向かって言った。
「つまりは。この現象を引き起こしているのはあの少年の仕業っていうことよ」
「この現象って、俺たちが二周目に存在しているってことが?」
「おそらく、おそらくよ。あくまで仮説の域を出ないけど」
 ルッカは息を置き、二人をあらためて見直してから話し出した。
「……あの少年は言ったわ。
 私たちにやってもらいことがあるって、そして経験も積んでもらいたいとも。
 つまり今の私たちじゃ足りなくて、それでも私達に何かをやってほしいってことよ」
「今のわたしたちに足りないもの?」
「あるいは見逃しているもの、ね」
 ルッカはその指を何も無い宙でくるりと回す。
「想像がつかないな」
「そうよねぇ、今の私たちじゃ想像がつかない。
 だから、あの少年が現われて私たちの進む方向を直していく、間違った道を行かないようにしているんじゃないかっておもうのよ」
「別にかまわないじゃないか、進むべき道が分かっていることは楽で」
「構うわよ!!
 つまり私たちの行動は全部少年によって誘導されているってことよ!!
 あの少年のやりたいことが何なのか聞かされていないことから考えると」
「わたし達が操り人形になっているってこと?」
「そう、少年が何を考えているか分からないのに、知らない間に片棒を担ぐのはいやよ」
 ルカが拳をぐっと握った。
「つまり、あの少年は悪い奴かもしれないってこと?」
「……ええ、まあ……でも悪い奴っていうことも見方によるわ。
 悪いなんて判断はその人の立場によって違うもの。
 例えば、ジールや恐竜人にとって私たちは悪だったといえるでしょうね」
「でもジールはこの星を……」
「マール、これはあくまでも見方によってちがうってことよ。
 ジールもはじめはこの星を滅ぼそうとしていたわけではないはずよ。
 単に永遠の命を求めて、力を求めてしまったから、ああなってしまった。
 のかもしれない」
「ラヴォスに利用されたってことか」
「そうともいえるわ、それに恐竜人もあの大陸から追い出した私たちは、彼らにとって悪だったでしょうね」
「でも解決したんじゃないか? 『前の周』で、これ以上何を望むっていうんだ?」
「確かに、言い過ぎかもしれないけど恐竜人は私たちがいなければ滅亡していたのは確かね」
「あの少年が何が目的で私たちの前に現われたのか……」
「意外とあの少年がすべての原因で、最後に自分を倒して欲しいってパターンじゃないかしら」
「それは……」
「そうね……、言ってしまってからなんだけど、あまり想像したくないわね」
「ああ、でも……まさか、また未来はこのままなんてな」
 そこはすでに捨てられたドーム。
 人だけでなく、ロボットやミュータントさえいない。
 灰の空気が漂う空間。
 それはクロノ達が見た、希望が閉じてしまった未来だ。
「あの救った未来はどこに、未来のロボはどうしたんだろう?」
「また壊れているかもしれないわね……」
 マール、ルッカは少し沈んだ気持ちになった。
「にして一体何があったの?
 この未来で、あの少年の言うことを信じるなら、ラヴォスは私たちが倒すことは確定済みなはずなのに」
「何かがあったってことだろ」
「その何かが重要なのはわかっているけど」
 そこでマールはすっと立ち上がった。
「わたしたちはこんな野望に屈してはいけないのよ」
「へっ?」
「野望よ、野望。
 こんなの許せないよ! せっかく救った未来を!!」
「マール?」
 クロノもルッカも呆気に取られている。
「だって、こんなのおかしいよ、こんなのってあんまり、あんまりだよ」
 肩を落とし崩れた。
「マール……」
 それを呆然と見ていたクロノは、ふと何かが繋がった。
「野望か」
 低く、確かめるようにクロノは言った。
「クロノ?」
 マールを見ていたルッカは顔を上げた。
「『前の周』の世界では、オレたちが過去に何かやるとその後のすべての時代に何かしら影響がでていた。
 メディーナの村、パレポリ、黒の夢、すべてオレたちが何かをやってきた結果つくられたものだよな」
「ええ」
「それはオレたちが巻き込まれたから起きた結果なんだよな」
「巻き込まれたって言う表現が正しいかどうか分からないけど。
 まあ、そうなるわね」
 ルッカには今だクロノが何を言いたいのか分からない。
「でも、オレ達の記憶は変化する前の物が残っていた、これはなぜなんだ」
「変化の前の記憶?」
「つまり、『前の周』だけでなく、『今の周』の記憶も持っているってこと」
「それは、私たちがその変化を目のあたりにして……ってあれ?」
「それっておかしなことだよな。
 オレ達の頭の中にはメディーナの村がまだ人間と友好的ではないときの記憶と友好的な記憶が混在している。
 一見見逃しがちで、そのときはラヴォスを倒せば世界が救えるって思っていたからあんま考えなかったけどな」
「確かにヒトの記憶って曖昧なところがあるから、そういう風に二重に記憶があることに何の疑問も浮かばなかった」
「でもそれの何がまずいの、クロノ」
 クロノは二本のカタナの鞘を腰から抜きだし、目の前に二本の鞘のまま手に持った。
「この武器は共に『前の周』の世界で鍛えられたもの。
 マールの弓やルッカの銃も同じだろ?」
 肯く二人。
「オレたちは取り残されているんだ、世界の変化に」
「取り残されているって、それは逆じゃないの?
 私たちの方が進んでいるんでしょ?」
「世界が変化しているのに、変化前の記憶が残っているのに?」
「あっ」
「二重の記憶を持つこと、本来そこにあるはずのないものを持っていること。
 変わった側から見ればオレ達は過去の遺物をいつまでも引きずっている存在だってこと」
「!! それって私たちの存在の否定じゃない!」
 その言葉にマールはびくっとした。
「でも、オレ達はここにいる」
 なだめるような声でやさしく言う。
 クロノは再び腰に二本のカタナをさした。
「これはオレ達が世界から否定されているとは思えないよ」
「確かにそうだけど」
「逆に二周目があるってことは、必要とされているって事なんだろ?」
 まだルッカは納得のいっていないようだった。
「だったら、あの少年はなんでわたし達の前だけに見えるのも……」
「そういうことなんだろうな、必要のある人間にしか見えない」
「なんか選ばれしものってかんじね」
「まあ、『前の周』での冒険は偶然だった。
 それでも戦い、生き残った俺たちだから選ばれたのかもしれない」
「わたしは偶然でもよかったと思う、それでクロノやルッカ、それにみんなに会えたから」
「私もマールに会えてよかったわよ? たぶん私じゃ、未来を変えようなんて思わなかったから」
「アリスドームのことね」
「そうよ、あのとき、ここぞってときなのにクロノッたらどもるんだもん」
「しょッしょうがないだろ!! 驚いていたんだから」
 そう、あの時クロノは未来であるということに少し絶望していた。
 この未来のあまりの悲惨さに。
 だからあの時、自分がラヴォスを倒すなんていう、あんなすごいものを倒すなんていうことは思いつかなかった。
「で、今回はもうラヴォスの心配はしなくていいんだよな」
「たぶんね、あの少年の言う通りなら」
「少年……。ほんと何者なんだろう」
「未来を見せてくれる少年、それは少年が未来を知っているってことかな?」
「たぶん、あの少年のやってもらいたい何かっていうのは、過去の遺物を持っているオレ達だからこそできることなんだろ。
 この過去の遺物を使ってもらわないとこの星は救えない。
 今度も何があろうとやってやろう」」
  ほおぉぉぉ
 という声がマールとルッカの口から洩れる。
「今度はどもらずに言えたわねクロノ」
「ルッカ!!」
「うん、すごい決心だよ」
「マールもそこまで驚かなくてもいいだろ」
「あはははは、ごめんごめん、ついね。
 でも、私達だからできることか、なんかそう思うと、なんかいいほうに向かっているって気がするわ。
 私達のやっていることは、まだ間違いじゃないって。
 その辺はさすがクロノね、前向きぃ〜前向きぃ〜」
 それは愛刀”あおぞら”を失ったクロノ自身の一つの結論だった。
 失ったものに意味がなければクロノは今、ひどく混乱していたどろう。
 自分に対しての区切りをつけるための結論でもあった。
 そんなミュージックが流れる中、突然ドームの出入り口が開いた。
引用なし
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