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ドゴゴゴゴ
石橋の先の方、空中刑務所の出口まで来て聞いたことのある音にルッカは止まった。
「さあ来なさい。」
ドゴゴゴゴ
ドゴゴゴゴ
車輪の回る音と共に『前の周』よりひと回り大きいドラゴン戦車があらわれた。
大臣はその後ろからひょっりと顔を見せる。その後ろにはふたりの護衛官がついている。
「マ、マールディア様。何でこんなところに、こっちにきてください」
しかし石橋の上めいいっぱいに占められたドラゴン戦車の車体にはどこからも向こう側に移れるスペースはない。
そんな中無理やり顔を出す大臣を護衛官は抑える。
「大臣、危険です」
二人の護衛官は必死に大臣を抑えている。
「く、ぬぬぬ、王女様を人質にするとは」
「人質ではないわ! これから家出するんだもん!!」
「な、なんですと〜〜お! そんなこと許しませんぞ」
「許さなくたってもう決めたもん」
「マールディア様〜」
「大臣、危険ですって」
「分かっておる、ドラゴン戦車よ。マールディア様を傷つけるんじゃないぞぉぉ」
「大丈夫です。ドラゴン戦車には王族には傷つけないようしてありますから」
そのまま護衛官に大臣は引きづられた。
”レーザー”
いきなりドラゴン戦車が先制攻撃をはじめた。その後ろには「マールディア様〜〜」と叫んでいる。
「やっぱり強くなっているわね」
ルッカはミラクルショットを構えた。
「いくよ」
ミラクルショットのトリガーに力を入れる。
ドォキョッン
コン
弾丸はとも簡単にいとも簡単にはじかれた。
”アイス・ショット”
「水」の魔力を加えた矢が戦車に当たる寸前に矢がはじかれるが、勢いのついた氷の魔法はそのままドラゴン戦車の車輪に当たる。
「物理攻撃に対しての完全防御みたいなものがあるのかしら」
小さくつぶやくとルッカはスコープをつけた。
「ルッカ、矢も銃弾……」
「分かっているわ。おそらくは物理攻撃になにかしらのからくりがあるみたいだけど」
「どうする? 魔法は聞くみたいだから、魔法で攻める?」
「それはちょっと。あまり大規模な場合はこの石橋も壊れちゃうかもしれないわ」
「じゃあどうする」
ドゴゴゴゴゴ
ドラゴン戦車は車輪が回転し引っ付いた氷を引き剥がした。
時間は刻々と過ぎていく。ドラゴン戦車自体の攻撃は単調なのでそれほど危険ではないので、十分に考える時間はある。基本はマールに攻撃を仕掛けてこないのでルッカ自身が気をつけていればよい。ただ大車輪にだけ気をつけていればいい。
ただ、考える時間があるといっても時間がたてばそれがけこっちが消耗するし、扉外に警護官が集まってくる可能性もある。クロノの方も心配である。
「ルッカ、わたしが囮になるからその間に弱点を!!」
ルッカの前にマールがでて、ワルキューレを構えなおす。
「でもマール」
「ルッカ……」
マールは一回、後ろを振り向かずに答えた。
「……自分のできること、やることは、ねっ!」
その言葉にルッカは言葉が出なかった。それは前に自分のいったことであった。
ルッカはマールの決意に押され、すぐに新しく改良したスーパーサーチスコープをつけた分析を開始した。
マールは、マールなりに色々考えていろいろな攻撃をし多くの情報をルッカに与えようとしている。それは、いままでずっと一緒に戦ってきたからこそのできるものであった。今までの戦いの中で、マールは確実に成長していた。(度胸は元々あったが)
このスコープはいままではロボにつけていたサーチ機能を頼りにしていたが、ロボと分断されたときを考えて、構想だけはしてあったものだ。それをクロノが捕まっている間につくったもの。ちなみに今が試行中である。
ルッカのあせる気持ちを何とか抑えるように、マールはなるべく落ち着いて戦っていた。
その気持ちが見ながら伝わってきてルッカも分析を続けることができていた。
そんな中でスコープから、物理攻撃をはじき、魔法効果をわずかだが分散させる壁が存在し、瞬間的に発動し、ある変動が見られることが分かった。
「マール、戦車の弱点はアタマよ。
前と弱点が変わっていないのは相変わらずあの大臣がやりそうなことね」
「でもどうするの? 物理攻撃が全部はじかれちゃうし、魔法も少しだけ分散させられるみたいだけど」
やはりマールも魔法が少し分散させられていることに気づいていたようだ。これではアイス、ファイア級ではダメージを与えられないし、すぐに回復してしまう。
ルッカは白い手袋をはめた。
「少しの間ならあの壁を消すことができる、と思う。
だからその間にあの頭部を狙って、重点的に」
さらにルッカはバッグからハンマーを取り出した。ハンマーはいつも近距離用にルッカが使っているものとは違った形をしていた。
いままでルッカは近距離で銃が使えないときにハンマーを使っていたのだが、それは市販のハンマーをちょこっと合成したものであった。でも、それではどうにも威力が高くなく少しそれで悩んでいた。
ルッカはいつも接近戦で役に立たなかった。そんな中、少年の言葉、そして中世でのヤクラのパワーアップ。今後強力な敵が現われたときに、あまり使わないからといってあの市販のハンマーを合成したでは十分な戦力にならない(実際にギガガイアで一度破壊されている)。そんななかで考え出されたのがこのハンマーである。また違う効果を持つマールの分も作ってある。
ルッカはハンマーを手のひら小の弾丸状のものをハンマーの取っ手の付け根につけ、すぐにルッカは走り出した。マールを抜き、スコープで確認した壁ギリギリの場所で止まりハンマーを振り落とした。
「グラヴィティー・ショッ〜〜〜クッッッッ」
ハンマーがドラゴン戦車の謎の壁にあたり、そこから光の粒子が放出する。それと共に壁が消失していく、マールはその光景に見とれていた。
壁は少しずつ大きくなっていく。
ふと我に返りマールはワレキューレを構えた。
”ヘイスト”
狙いはドラゴン戦車の頭部。
シュン シュン シュン
十数発の矢は頭部を直撃し、壁が消えた。
ルッカはそれを確認してすぐさまハンマーの効果を止め、左腕を上げ手をグー、ゆっくりと親指を出した。
その合図にマールは簡単な魔法の構成を始める。
ドラゴン戦車は頭部が破壊されたことにより処理能力が格段に落ち、動きが緩慢になっていた。
魔法の構成が終わり、二人同時に放つ。
狙いをつけるのはルッカ、範囲を指定するのはマール。
お互いを補いつつ魔法を完成させる。
””反作用ボム―らいと―””
ドォォォォォン
ルッカの狙いで戦車の中心から少し上部へ吹き上げるように発動、マールの範囲指定で柱のように上空へ余分な破壊力が放出される。
ドラゴン戦車の三分の一がつつまれ、巨大な車体は壊れ始めた。
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