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【157】-05- (第三章 消えた王女下)
 Double Flags  - 08/8/31(日) 23:42 -
  
「マール、どう? 大丈夫だった?」
 ガルディア城に戻った五人は、大臣とリーネ様、カエルに事情を説明してもらい、そのうちにクロノとルッカは王女の部屋に向かった。
 金髪の髪をドレスを着た少女――マールが無事にその部屋で座っていた・
「うん、少し自分が薄くなった感じだけど消えなかったよ。
 ありがとう、クロノ、ルッカ
 ところでカエルは元気にしていた」
 元気いっぱいに返事をする。
「ええ、やっぱりカエルもわたし達と同じだったわ」
「ふーん
 それでこれからどうする?
 このまま戻るとクロノ捕まっちゃうし」
「確かに、ここでこの時代の大臣を説得して
 裁判所をつくってもらわないようにしないと」
「そうだよ、それに父上を説得しなくいけないし」
「あの時点ではすでに
 ヤクラと本物の大臣が入れ替わっていたと考えたほうがよさそうね
 あの時期じゃ王様も説得するのは難しいし」
「じゃあどうする?
 城に戻るのは止めてそのまま未来に向かうって言うのは」
「それじゃダメだよマール」
「どうしてクロノ、自分が捕まっちゃうんだよ?」
「一回捕まらないとフリッツさんを助けることができない。
 やっぱり一回空中刑務所に入らないと」
「そうね、現代の大臣がヤクラなら
 裁判とかなくって裏でフリッツさんを亡き者とするでしょうね
 裁判があるから公にできるものだから
 そう考えると、クロノは独房に入るしかないか」
「もともとそのつもりだ」
「そう、やっぱり助けに行くべきよね
 ちょこっとつくりたいものがあるから
 それをつくってから向かうわ」
「ねえ、わたしも何か手伝えない?」
「そうね、ドラゴン戦車のとき補助としてきてくれるとありがたいわ」
「わかった」
「決まったな、次の行動が」
「さあ、今度は下で待っているリーネ様やカエルに挨拶しないと」


「カエルよ、この度そなたの活躍をきいた
 その功績で十分に騎士団に戻れるはず
 それでもこの城を去るのか」
 玉座に座り、その威厳をもつ王――ガルディア王は、目の前のカエルに話す。
「王の申し出はありがたいのですが
 わたしにも思うところがあります」
 カエルの違和感は大きかった。
 ルッカの言う『前の周』では、リーネ様誘拐の時点ではまだ自分は騎士団の中にいた。ただ一人独自にリーネ様を探していたはず。
 それなのに今回はどうだ。いつのまにやら、いや記憶は残っているのだが、大臣により自分が騎士団を辞めさせられてから、その後に、リーネ様が誘拐されたという。
 もうそのときにはヤクラは大臣と入れ替わっていたのだろう。
 あのヤクラもおかしかった、クロノたちしか知らないはずのサイラスとの事情を知っていたのだ。かつての自分がグレンだということは言っていないし、知られていないはずだ。
 事実、それまでサイラスとともにこの城に訪れることのあるグレンである、サイラスが行方不明になれば、グレンである自分に何か聞くはずであろう。
 いままで騎士団に所属していてそれを聞かれることはなかった。
 過去に調べたとき、グレンはサイラスとともに行方不明となっていた。
 自分はグレンという名を捨てた一人の亜人として生きていくことにしたと決心のついた瞬間でもあった。
「カエルよ、また騎士団の一員としてわたし達に力を貸してくれませんか」
 リーネ様の一言にもカエルは動じなかった。
「リーネよ、カエルを困らしてはいけない
 もう決心が固いようだ
 わしは引き止めることはしない
 思うように生きなさい
 それでも、いつでもこの地に戻ってきてその力を振るって欲しい」
「ありがたいお言葉」
 カエルは立ち上がり、扉の方へ歩く。


 下に降りたクロノたちはガルディア国王ガルディア21世と王妃リーネに挨拶をした。
 やはり大臣から裁判所をつくる提案がなされた。
 クロノたちはそれを複雑な模様で聞いていた。
 話が終わり、王の間を出るとマールが呼び止めた。
「ちょっと待って、食堂によってもいい」
「? お腹すいたの」
「それもあるけど」
 マールは恥ずかしそうに笑い、食堂の方へ走っていった。
 ルッカたちはその後を追う。
 食堂に入ったルッカとクロノは、すでに席についていたマールの横に座る。
「なにを待っているんだ」
「いいから、いいから」
 しばらく待つと調理場から甘い匂いとともにやってきた。
「これって」
 黄色く平たいもの・・・。
「クレープ?」
「そうクレープ」
 さっそくマールはもぐもぐと口に運ぶ。
「なかなかの出来ね」
「そうじゃないわよ、こういう現代のものを教えたら・・・」
 キョトンとしたマール。
「大丈夫、西の大陸ではすでに作られていたって調べたんだから」
「でも伝わるのはもっと後でしょう?」
 あっ、マールとクロノの時間が止まった。
「・・・どうしよう」
「どうするのよ」

 ふう

「まあ次に来たときまでに……」
「それじゃ遅いわよっ!!」
「なら、先に行ってくれ」
「なんで」
「オレが何とかする」
「どうするの?」
「内緒」
 のこりのクレープを口に運んだあと、クロノは立ち上がり、調理場の方へ歩いて行った。


 この時期のゼナン橋は穏やかである。
 もう2、3ヶ月経つと海流の流れが強くなり、海風がひどくなる。たとえ橋の上でもその強風はおおきく、たびたび通行止めになるのだが今は橋は完全に壊れている。
 先の戦いで橋を破壊されてしまった。
 橋を破壊されたことは偶然であったが、おかげで魔王軍の進行が一時的に止まったことは事実である。
 現在、北ゼナン橋にはガルディアの兵士が着々と橋をつなぐ準備をしていた。
 その端の方へカエルが立っていた。
「カエル待たせたわね」
「ああ、クロノはどうした?」
「あとから来るわ」
「そうか……で、これからどうするんだルッカ
 さっきの話から、色々限定されそうだが」
「さっきの話って」
「修道院で少しこの世界のことを話したんだ。
 それでこれから俺たちの行動はどうするのかってことを」
 ルッカはバックの中からゲートホルダーを取り出した。
「時間がなかったからこれ一つしか作れなかったの
 だからカエルを現代に連れて行くことはできないの
 とりあえず、ゲートホルダーをまたもう一個つくるから
 一度現代に戻らないと」
「で、おれは?
 さすがに『前の周』みたいに隠匿生活っていうのもまずいからな
 積極的に動いていかないと」
「そうね」
「ならカエルにはグランドリオンを先にとってきてもらおうよ」
「そうね、確かにこれから先少しスムーズになるわね
 お願いねカエル」
「あっ、ああそれくらいなら構わないが」
 そこへクロノが合流してきた。
「なんとか、大丈夫そうだ」
「ほんと」
 まだちょっと疑わしいという顔でクロノの顔を見るルッカ、それを話すようにマールは言った。
「もう、心配しすぎだよルッカ
 大丈夫クロノなら何とかしてくれているから」
「そ、そう
 まあ、クレープ一つくらいでさすがに歴史が
 大きくどうこうなるとは思わないけど」
「なんだ、クレープって?」
「こっちの話よ」
「ところでどこまで話が進んだんだ?」
「オレが先にグランドリオンを取りに行くってところまでさ」
「先に?」
「ああ」
「ちょうどいいわクロノが来たことだし話しておくわ
 私の今の考えを」
「考え?」
「ええ、私は、
 ってまあこの時間軸にきてから考えたんだけど
 私はちょうど魔王との闘いがあってから
 私たちが直接世界に影響してしてきたんだと思うの」
「確かに、あの魔王のヤローと戦って巨大ゲートができた
 それでオレたちは原始へ、魔王のヤローは古代へ飛ばされたんだよな」
「そう、原始で私たちがやったこと覚えている?」
「わすれないよ
 わたしたちは滅びるはずだった恐竜人を生き延びさせた」
「ええ、アザーラといった主要な恐竜人は滅びたけど
 彼に反する恐竜人が極東の大陸へ行くのを
 もう人類と争わず干渉しないという約束とともに」
「結果は巨人のツメの守護者として
 ふたたび私たちの前に現われた」
「古代では魔王が来たことにより
 三賢者が封じられ
 魔神器の改良、もっと強力なもの」
「そして、黒の夢の出現、大きく歴史を変革してしまった」


 カエルは北と南ゼナンを流れる、バムロー海峡を越え南ゼナンに渡り、クロノたちは現代に戻っていった。
引用なし
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